拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ITADAKI-頂-

PHASE-51

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「それよりもいいのか」

「何がかな?」

「人間同士の命の取り合いもあるぜ」
 経験のないムツ氏にドレークさんが重い口調で問う。

「覚悟を決めなければならぬなら、そうするように頭で切り替える」

「躊躇したら仲間が死んじまうからな。頼むぜ」

「是非もなし。その時は修羅となろう」
 そう返されてドレークさんは自分の眉間を触っている。
 サージャスさんがいなければ、この世とお別れしていたかもしれない一撃を見舞われた部分。
 修羅となることが出来ると判断したのかな。
 なれますよ。だってサージャスさんの左手を散々痛めつけてたもんね。
 沸々とぶり返す怒りの感情が、先ほどの暗黒面ダークサイドと混ざり合っていくよ。

「この人なら大丈夫ですよ」

「ウィザースプーン殿」
 意外な所からの後押し発言に、ムツ氏が笑みを見せる。
 へっ――――――、
「ムツ氏はきっと世に知られる、立派な人斬りになれますよ」

「人斬りとは、心外な……」
 擁護なんかするか! サージャスさんの左手を痛めつけたし、二人のおっぱいと、一人のお尻様を顔で堪能したんだ。貴男に対しては地吹雪の如く凍える声で応対だよ。
 女性に対してあれだけの事が出来るんだ。人斬りにだって簡単になれらあ。

「雪風と時雨――――――」
 あえて意味深な間を作り、皆の耳と目を僕に向けさせたところで、晴れ晴れとした笑顔を作ってからの、
「ムツ氏なら、どんな名刀でも、一日で妖刀に変えられますよ」

「小生をどんな目で見ているのか…………」
 上手く決まったぜ。
 二の句を継いだ僕の発言に、皆さんは苦笑だよ。
 そして落ち込むムツ氏。
 ケー―――ッケケケケケケケケケ――――――!?

「いだ!」
 思いっ切り後頭部をはたかれた。

「あたいの仲間を馬鹿にするな!」
 ああん! もう、素晴らしきパーティーとして活動してますか。
 まったく――、貴女ね、一般人の体力と、自分の力の差を考えなさいよ!
 軽くはたいたつもりだろうけども、こっちは鈍器で撲られたかと思ったよ。

「その力は僕じゃなく、悪しき存在に使ってくださいね」
「うるさい!」
「僕の事、怒らせちゃあいけないよ」
「うるさい!」
 なんだろう。可愛い女の子だけど、イラッとするよ。公務員パワーを見せてやろうか――――、冒険者!

10:0じゅうぜろでピート君が悪いから」

「あ、はい……」
 すみませんロールさん。調子に乗りました。怒りと嫉妬が織り交ざって変な考えに至ってしまいました。
 ので――、そんな冷ややかな目で見ないでください。心が砕けそうです……。
 
 ので――、膝を抱えて部屋の隅っこで丸くなる僕……。

「皆さんでサージャスさんを支えてくださいね」
 整備局を代表してロールさんが激励。
 整備長は、【あれ? それ俺が言うことじゃないの?】と、寂しげに食指を自分に向けていたけど、皆さんがロールさんに笑顔で、任せておけという内容を返していたので、その食指を静かに下ろして寂しくお茶をすすってる。
 
 ――。
 
 力のドレークさん。技巧のムツ氏。おば――元気っ子のザイオン氏。
 ふむ――――、なんだろうか。何かが引っかかる。
 力と技と元気――――。
 ふむん――――。

「!」
 なるほどな。

「皆さん。魔法は使えます?」
 丸くなった体から、背筋を伸ばして聞いてみると、
「うんにゃ」

「全くもって」

「使えるわけないじゃん。馬鹿なの?」
 先の男性陣はいいとしよう。
 お馬鹿な子に、馬鹿扱いされると、本気で頭に来るっていうのは理解出来た。
 ムツ氏に対して意地悪したもんだから、完全に僕の事を敵視してるのかな? 
 イライラする。イライラするよ。
 
 でも、僕は馬鹿じゃないので。
 勉強して立派な公務員になったので、馬鹿じゃないので。馬鹿って言われても許せる度量がきっと――、たぶん――――、あるはずだから、堪えましょう。
 


 コムリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ――――!
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