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ITADAKI-頂-
PHASE-43
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「度々――――三度、申し訳ない」
心なしかムツ氏の血色がよくなったような気がする。
試しにと、体のあちこちを動かしている。
「凄い! 回復魔法があれば飛電の欠点も払拭される」
「払拭ではないですよ」
「確かに、自分自身で補って始めて払拭と言うべきですな」
雰囲気いいなクソッ! まあいいさ。サージャスさんが笑顔でいるし、ここはグッと堪えましょう。
「そろそろ――――よいか?」
おっと、お奉行様が空気あつかいになっていた。
確かにこのままだと、表彰の進捗を遅らせてしまう。
歓声もなくなっているし、続きは? と、待ちくたびれてるようだ。
今一度とばかりにお奉行様がムツ氏を称える事で、歓声も復活だ。
そして始まる僕の愉悦タイム。
歓声を体で受けている時に気になったのは、〝この後いいですか?〟と、ムツ氏がサージャスさんに向けて発していた事だ。
愛の告白なら、全力で妨害するよ……。
――――。
「で――――なんだこりゃ?」
「さあ?」
整備長にドレークさんと、ライゴウさんも闘技場にやって来た。
ここに来ての整備長の開口一番に、僕は肩をすくめる所作と共に返答。
先ほどまでと違って、観衆の方々はいない。
「寂しいもんだな」
ね~。整備長の声がよく響く。
殺風景に加えて、夕焼けってのが、寂しさに拍車をかけるよね~。
「いいんですかね?」
サージャスさん、悪い事をしてるみたいだと、横に立つお奉行様に確認を取っている。
「まったく問題ない。と――いうより私自身が見たい!」
「そうですか」
「うむ」
子供のように瞳を輝かせてサージャスさんと言葉を交わすお奉行様。
現在この場にいるのは僕とロールさん、整備長の整備局員。
エルンさん、フィットさん、リムさん、ミリーさんの御一行。
ドレークさん、ザイオン氏の大会参加者。
お奉行様とライゴウさんの奉行所勢。
この十一人がこれから始まるエキシビションの目撃者になる。
「では――――、今一度」
「分かりました」
ムツ氏と、頷き、応えるサージャスさん。
お奉行様の隣から、ムツ氏へと相対する位置に移動。
決勝戦と同じ状況だ。
違いは、太陽が高い位置ではなく、薄暮に進んでいく夕暮れ時の時間帯。
夕陽が三分の一ほど山に隠れる。
カナカナカナカナ――――と、ヒグラシが鳴き始める。
風景も相まって、哀愁を感じさせながらも、昼間に忙しなく鳴いていた蝉とは違い、不思議と安心感も与える独特な鳴き声が心地いい。
「始めようか」
モンジ氏の代わりにお奉行様が二人の間に立つ。
横にはライゴウさんだ。
主審をお奉行様。副審をライゴウさんが務めるようだ。
準備が整ったのか、相対する二人の表情が引き締まる。
でも、決勝と違って、ピリピリとはしていない。のびのびとした雰囲気だ。
「本当にいいんですね?」
「現実を見せつけていただきたい」
ムツ氏が深くお辞儀をしてお願いすると、問うたサージャスさんが強く頷き――――、待ったなしと判断したお奉行様が、
「では――――、始めっ」
腹から出した力強い声で、開始を伝える。
「初手から聖闘衣! からの~狂戦士!!」
「おう、いきなりの全力だ」
一切の手抜き無しとばかりにサージャスさんが赤いチャクラを纏う。
目を丸くするエルンさん一行。
やはり初めて見ると、驚きを隠せないようだ。チャクラと魔法の融合。
それも、身体能力を高めるも、興奮状態になり、見境のない状態になる狂戦士を使用しているのに、
「行きますよ。ムツさん」
と、しっかりとした意識で自我をコントロール出来ている事が信じがたいといったところみたいだ。
宣言通りに、まずはサージャスさんが動く。
心なしかムツ氏の血色がよくなったような気がする。
試しにと、体のあちこちを動かしている。
「凄い! 回復魔法があれば飛電の欠点も払拭される」
「払拭ではないですよ」
「確かに、自分自身で補って始めて払拭と言うべきですな」
雰囲気いいなクソッ! まあいいさ。サージャスさんが笑顔でいるし、ここはグッと堪えましょう。
「そろそろ――――よいか?」
おっと、お奉行様が空気あつかいになっていた。
確かにこのままだと、表彰の進捗を遅らせてしまう。
歓声もなくなっているし、続きは? と、待ちくたびれてるようだ。
今一度とばかりにお奉行様がムツ氏を称える事で、歓声も復活だ。
そして始まる僕の愉悦タイム。
歓声を体で受けている時に気になったのは、〝この後いいですか?〟と、ムツ氏がサージャスさんに向けて発していた事だ。
愛の告白なら、全力で妨害するよ……。
――――。
「で――――なんだこりゃ?」
「さあ?」
整備長にドレークさんと、ライゴウさんも闘技場にやって来た。
ここに来ての整備長の開口一番に、僕は肩をすくめる所作と共に返答。
先ほどまでと違って、観衆の方々はいない。
「寂しいもんだな」
ね~。整備長の声がよく響く。
殺風景に加えて、夕焼けってのが、寂しさに拍車をかけるよね~。
「いいんですかね?」
サージャスさん、悪い事をしてるみたいだと、横に立つお奉行様に確認を取っている。
「まったく問題ない。と――いうより私自身が見たい!」
「そうですか」
「うむ」
子供のように瞳を輝かせてサージャスさんと言葉を交わすお奉行様。
現在この場にいるのは僕とロールさん、整備長の整備局員。
エルンさん、フィットさん、リムさん、ミリーさんの御一行。
ドレークさん、ザイオン氏の大会参加者。
お奉行様とライゴウさんの奉行所勢。
この十一人がこれから始まるエキシビションの目撃者になる。
「では――――、今一度」
「分かりました」
ムツ氏と、頷き、応えるサージャスさん。
お奉行様の隣から、ムツ氏へと相対する位置に移動。
決勝戦と同じ状況だ。
違いは、太陽が高い位置ではなく、薄暮に進んでいく夕暮れ時の時間帯。
夕陽が三分の一ほど山に隠れる。
カナカナカナカナ――――と、ヒグラシが鳴き始める。
風景も相まって、哀愁を感じさせながらも、昼間に忙しなく鳴いていた蝉とは違い、不思議と安心感も与える独特な鳴き声が心地いい。
「始めようか」
モンジ氏の代わりにお奉行様が二人の間に立つ。
横にはライゴウさんだ。
主審をお奉行様。副審をライゴウさんが務めるようだ。
準備が整ったのか、相対する二人の表情が引き締まる。
でも、決勝と違って、ピリピリとはしていない。のびのびとした雰囲気だ。
「本当にいいんですね?」
「現実を見せつけていただきたい」
ムツ氏が深くお辞儀をしてお願いすると、問うたサージャスさんが強く頷き――――、待ったなしと判断したお奉行様が、
「では――――、始めっ」
腹から出した力強い声で、開始を伝える。
「初手から聖闘衣! からの~狂戦士!!」
「おう、いきなりの全力だ」
一切の手抜き無しとばかりにサージャスさんが赤いチャクラを纏う。
目を丸くするエルンさん一行。
やはり初めて見ると、驚きを隠せないようだ。チャクラと魔法の融合。
それも、身体能力を高めるも、興奮状態になり、見境のない状態になる狂戦士を使用しているのに、
「行きますよ。ムツさん」
と、しっかりとした意識で自我をコントロール出来ている事が信じがたいといったところみたいだ。
宣言通りに、まずはサージャスさんが動く。
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