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ITADAKI-頂-
PHASE-40
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意識を取り戻したようで、
「凄い」
医療班の一人が大魔法を唱えたリムに尊敬の眼差しを向ける。
瞼を勢いよく開けると、アメジストの瞳が現れ、
「あれ! 試合は!?」
ベッドから矢庭に起き上がる。
そんなサージャスのために男性陣との間に入るロール。
ピートに至っては諸手で顔を挟まれると、無理矢理に顔を横に向けさせられた。〝ぐえ〟っという苦しい声と共に、ピートの首回りからゴキゴキという音が室内に響く。
そんな事をしなくても、ピートも空気を読んで明後日の方向に目を向けるつもりだった。
エルンは〝フシュー、フィシュー〟と咄嗟のためなのか、元々不得手なのか、下手くそな口笛で誤魔化している。
「サージャスさん服!」
「え…………あ!?」
治療の為に胴着が脱がされており、薄衣一枚で隠されていただけのサージャスの体は、矢庭に起き上がった事で、上半身は白い肌がまる出しになっていた。
ロールの指摘でとっさに両腕で胸元を隠す。
「おお! サージャスって小柄なのに胸デカいな!」
彼女が無事に目覚めた事で安堵したのか、ザイオンは彼女の均整のとれた体を眺めて感想を口にする。
(ほう――そんなにトランジスターグラマーなのか)
耳朶にしたピートの顔が弛緩する。
「いだだだだ…………」
「すぐにそんなだらしない顔にならない」
緩んだ顔をシャキッとするのを手伝ってやろうと、ロールが頬をつねる。
反面そのような表情を作れ、その頬をつねるくらいまでに心にゆとりが出来る二人。
「あの――この状況からして、ボク負けたんですよね?」
胴着を着て、ベッドから、集まった者たちに顔を向けると、結果を聞きたがる。
ここにいる時点で、負けたという事は理解はしているようだが、記憶が飛んでいるためか、実感がないようである。
どの様に敗北したのかを知りたがっていたが、それを誰が言うのかと、その場の者たちが顔を見合わせる――――。
「ピートさん」
やはり……、一番の顔見知りである自分に聞いてくるのかと、頭を掻きつつサージャスに対して一歩足を前へと進める。
* *
「負けました」
と言ってもさ、僕は素人だからね。どう説明すればいいのか難しい。
なんってったって、目に映らなかったんだもの。不死王さんと戦った時のサージャスさんみたいな状況だったからね。
それに似た状況だったとしか伝えられない。
「気にすんなよ。あれはあたいにも見えなかったから」
僕を励ましてくれているのか、ザイオン氏が僕の背中をバンバンと叩きながら言ってくれる。
なんだろうか――――、この子。随分と昔から付き合いがあるような立ち位置で接してくるんですけど……。
「見えなかったわけですか」
「はい、僕の目では……」
「すごいな~」
清々しい笑顔。
負けた事よりも、ムツ氏の実力に感嘆している。
「ボクが聖闘衣と狂戦士の複合で到達する神速の動きを、生身で出来るなんて」
確かに生身ってのが凄いですけども、そこまで感心しなくても。サージャスさんにこれだけの怪我を負わせてる相手なのに――――。
「行きましょうか」
「表彰式ですか?」
「そうです」
「おう! 行こうぜ」
ベッドから下りると、言葉を交わすロールさんとザイオン氏の間に立つ。
でも――――、
「おととと……」
まだ足にはしっかりした力が入らないみたいで、直ぐに両サイドに立つロールさんとザイオン氏の二人が体を支えてあげている。
配慮が出来てるな。
そうなると分かっていたから、サージャスさんが自分たちの間に立つような位置取りをしていたんだろうね。
出来た女性陣である。一人はお馬鹿な感じが否めない子だけども――――。
「凄い」
医療班の一人が大魔法を唱えたリムに尊敬の眼差しを向ける。
瞼を勢いよく開けると、アメジストの瞳が現れ、
「あれ! 試合は!?」
ベッドから矢庭に起き上がる。
そんなサージャスのために男性陣との間に入るロール。
ピートに至っては諸手で顔を挟まれると、無理矢理に顔を横に向けさせられた。〝ぐえ〟っという苦しい声と共に、ピートの首回りからゴキゴキという音が室内に響く。
そんな事をしなくても、ピートも空気を読んで明後日の方向に目を向けるつもりだった。
エルンは〝フシュー、フィシュー〟と咄嗟のためなのか、元々不得手なのか、下手くそな口笛で誤魔化している。
「サージャスさん服!」
「え…………あ!?」
治療の為に胴着が脱がされており、薄衣一枚で隠されていただけのサージャスの体は、矢庭に起き上がった事で、上半身は白い肌がまる出しになっていた。
ロールの指摘でとっさに両腕で胸元を隠す。
「おお! サージャスって小柄なのに胸デカいな!」
彼女が無事に目覚めた事で安堵したのか、ザイオンは彼女の均整のとれた体を眺めて感想を口にする。
(ほう――そんなにトランジスターグラマーなのか)
耳朶にしたピートの顔が弛緩する。
「いだだだだ…………」
「すぐにそんなだらしない顔にならない」
緩んだ顔をシャキッとするのを手伝ってやろうと、ロールが頬をつねる。
反面そのような表情を作れ、その頬をつねるくらいまでに心にゆとりが出来る二人。
「あの――この状況からして、ボク負けたんですよね?」
胴着を着て、ベッドから、集まった者たちに顔を向けると、結果を聞きたがる。
ここにいる時点で、負けたという事は理解はしているようだが、記憶が飛んでいるためか、実感がないようである。
どの様に敗北したのかを知りたがっていたが、それを誰が言うのかと、その場の者たちが顔を見合わせる――――。
「ピートさん」
やはり……、一番の顔見知りである自分に聞いてくるのかと、頭を掻きつつサージャスに対して一歩足を前へと進める。
* *
「負けました」
と言ってもさ、僕は素人だからね。どう説明すればいいのか難しい。
なんってったって、目に映らなかったんだもの。不死王さんと戦った時のサージャスさんみたいな状況だったからね。
それに似た状況だったとしか伝えられない。
「気にすんなよ。あれはあたいにも見えなかったから」
僕を励ましてくれているのか、ザイオン氏が僕の背中をバンバンと叩きながら言ってくれる。
なんだろうか――――、この子。随分と昔から付き合いがあるような立ち位置で接してくるんですけど……。
「見えなかったわけですか」
「はい、僕の目では……」
「すごいな~」
清々しい笑顔。
負けた事よりも、ムツ氏の実力に感嘆している。
「ボクが聖闘衣と狂戦士の複合で到達する神速の動きを、生身で出来るなんて」
確かに生身ってのが凄いですけども、そこまで感心しなくても。サージャスさんにこれだけの怪我を負わせてる相手なのに――――。
「行きましょうか」
「表彰式ですか?」
「そうです」
「おう! 行こうぜ」
ベッドから下りると、言葉を交わすロールさんとザイオン氏の間に立つ。
でも――――、
「おととと……」
まだ足にはしっかりした力が入らないみたいで、直ぐに両サイドに立つロールさんとザイオン氏の二人が体を支えてあげている。
配慮が出来てるな。
そうなると分かっていたから、サージャスさんが自分たちの間に立つような位置取りをしていたんだろうね。
出来た女性陣である。一人はお馬鹿な感じが否めない子だけども――――。
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