197 / 604
ITADAKI-頂-
PHASE-17
しおりを挟む
『しゃあぁぁぁぁぁ――』
二撃目を、迎撃とばかりに空に向かって振り上げるコロ氏。
それによって粉塵が左右に切り裂かれるように開いていく。
「決まったか!?」
この方の一撃は、力だけだけど、その力を生み出す、振る速度は、俊敏に動く事が出来る人物でも容易に捉えられるだけのものだ。
いくらムツ氏か敏捷であっても、これを回避するのは難しい。
魔石鏡はコロ氏がアップで映し出されてるだけ。
手応えありとばかりに口角が上がっているようだ。もじゃもじゃフェイスだからよくは分からないけど、髭の動きからして笑っているのは理解出来た。
でも――――、上がった角度が一文字に。髭が下がった事で分かった。
そして、ポカンと口を開いた。
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!」」」」
遅れて直ぐに観衆の方々が驚きの声を上げている。
魔石鏡で状況を見ていない方々は、アップのコロ氏ではなく、闘技場を直接見ているため、僕たちより早い反応。
何が起こったのか気になった僕たちは、息を合わせるように同時に欄干へと体を移して闘技場を眺める。
「軽業師だね」
ロールさんの感嘆を織り交ぜた声。
「そうですね……」
と、簡単な返答しか出来ない僕。
木斧を振り上げた状態で静止。
斧刃の部分に立っているムツ氏。
「なんてバランスだ」
コロ氏に負けないくらいに、ポカンと口を開けて言葉をこぼす整備長。
全くもって同じ意見ですよ。妙技を見せられて言葉を失っている僕にとってはありがたい代弁だった。
「ぬぉぉぉぉぉお」
生の声で聞くコロ氏の雄叫び。
自分の得物から離れろとばかりに振り回す。
力任せの無軌道なものだ。
でも――――、振り回せば振り回すほど、コロ氏の動きが硬くなっていく。
まるで、始めて棒きれを持った子供の遊戯剣劇のようだ。
恐怖がそれをさせているのかもしれない。
そりゃそうだ……。
「見てるこっちも恐怖だよ」
独白しちゃったよ。
だって、現実離れしてるからね。魔法は使用出来ないのにね。
鍛え続けると、そんな芸当が出来るようになるのかな。
流石は山を斬る事も出来るという、剣聖を目標にしているだけはある。
「離れないな」
「離れないですね~」
僕を挟んで二人がやり取り――――。
ムツ氏、振り払われる。
振り切ったところで、また斧刃へとふわりと乗り、コロ氏がまた振り払う。
これの繰り返しだ――――。
まるで羽毛のようだ。ムツ氏には体重という概念がないのかとすら感じざるを得ない。
コロ氏、自分の攻撃の最中に、現実離れした状況が眼前で行われているのだから、僕たちが抱いている感情の遙か上を抱いているに違いないだろうな。
コロ氏のバカ力も現実離れだけど、剛でなく、柔の現実離れの方が、現在の試合ではインパクトが大きいと認識。
「こりゃ、圧倒的だな」
「コロ氏も相当の実力者だと思うんですがね」
でも、どうしようもないな……。
「うわぁぁああぁぁぁぁっあ゛」
恐怖を振り払うように、豪腕を懸命に振り回し木斧を動かす。
大男の叫び声を意にも介さないムツ氏は、一言も発する事なく、能面のように無表情。
現在の動作だけで、相手の心を攻め立てているようだ。
エルンさんの時とは違い、膝を付く事も無ければ、息一つきらしていない。
圧倒的だな――――。
木刀を振るうまでもないといったところか。
力量差に大きな隔たりがある事はコロ氏も理解しているようで、心が折れたのか、打ちひしがれたように手にしていた木斧を床に置くと、肩で息をしている体は、両膝を付かせた姿になる。
――。
「まいった」
気力が削ぎ落とされたような、弱々しい一言。
それに対しムツ氏は一礼。
決着がついた事を所作で主審に伝える。
「そこまで」
――――ただの一刀も振るう事なく、大男との試合を終わらせてしまった。
二撃目を、迎撃とばかりに空に向かって振り上げるコロ氏。
それによって粉塵が左右に切り裂かれるように開いていく。
「決まったか!?」
この方の一撃は、力だけだけど、その力を生み出す、振る速度は、俊敏に動く事が出来る人物でも容易に捉えられるだけのものだ。
いくらムツ氏か敏捷であっても、これを回避するのは難しい。
魔石鏡はコロ氏がアップで映し出されてるだけ。
手応えありとばかりに口角が上がっているようだ。もじゃもじゃフェイスだからよくは分からないけど、髭の動きからして笑っているのは理解出来た。
でも――――、上がった角度が一文字に。髭が下がった事で分かった。
そして、ポカンと口を開いた。
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!」」」」
遅れて直ぐに観衆の方々が驚きの声を上げている。
魔石鏡で状況を見ていない方々は、アップのコロ氏ではなく、闘技場を直接見ているため、僕たちより早い反応。
何が起こったのか気になった僕たちは、息を合わせるように同時に欄干へと体を移して闘技場を眺める。
「軽業師だね」
ロールさんの感嘆を織り交ぜた声。
「そうですね……」
と、簡単な返答しか出来ない僕。
木斧を振り上げた状態で静止。
斧刃の部分に立っているムツ氏。
「なんてバランスだ」
コロ氏に負けないくらいに、ポカンと口を開けて言葉をこぼす整備長。
全くもって同じ意見ですよ。妙技を見せられて言葉を失っている僕にとってはありがたい代弁だった。
「ぬぉぉぉぉぉお」
生の声で聞くコロ氏の雄叫び。
自分の得物から離れろとばかりに振り回す。
力任せの無軌道なものだ。
でも――――、振り回せば振り回すほど、コロ氏の動きが硬くなっていく。
まるで、始めて棒きれを持った子供の遊戯剣劇のようだ。
恐怖がそれをさせているのかもしれない。
そりゃそうだ……。
「見てるこっちも恐怖だよ」
独白しちゃったよ。
だって、現実離れしてるからね。魔法は使用出来ないのにね。
鍛え続けると、そんな芸当が出来るようになるのかな。
流石は山を斬る事も出来るという、剣聖を目標にしているだけはある。
「離れないな」
「離れないですね~」
僕を挟んで二人がやり取り――――。
ムツ氏、振り払われる。
振り切ったところで、また斧刃へとふわりと乗り、コロ氏がまた振り払う。
これの繰り返しだ――――。
まるで羽毛のようだ。ムツ氏には体重という概念がないのかとすら感じざるを得ない。
コロ氏、自分の攻撃の最中に、現実離れした状況が眼前で行われているのだから、僕たちが抱いている感情の遙か上を抱いているに違いないだろうな。
コロ氏のバカ力も現実離れだけど、剛でなく、柔の現実離れの方が、現在の試合ではインパクトが大きいと認識。
「こりゃ、圧倒的だな」
「コロ氏も相当の実力者だと思うんですがね」
でも、どうしようもないな……。
「うわぁぁああぁぁぁぁっあ゛」
恐怖を振り払うように、豪腕を懸命に振り回し木斧を動かす。
大男の叫び声を意にも介さないムツ氏は、一言も発する事なく、能面のように無表情。
現在の動作だけで、相手の心を攻め立てているようだ。
エルンさんの時とは違い、膝を付く事も無ければ、息一つきらしていない。
圧倒的だな――――。
木刀を振るうまでもないといったところか。
力量差に大きな隔たりがある事はコロ氏も理解しているようで、心が折れたのか、打ちひしがれたように手にしていた木斧を床に置くと、肩で息をしている体は、両膝を付かせた姿になる。
――。
「まいった」
気力が削ぎ落とされたような、弱々しい一言。
それに対しムツ氏は一礼。
決着がついた事を所作で主審に伝える。
「そこまで」
――――ただの一刀も振るう事なく、大男との試合を終わらせてしまった。
0
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる