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ITADAKI-頂-
PHASE-04
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「頑張れって言っていいものか――」
「ね、私も言いたいけど、この独特の空間がそれをさせないよね」
とにかく静かに見守るといった感じで、息詰まる。
試合が終われば、〝おお〟と言う感嘆が、方々から交わって大きくなる程度。
派手な歓声がないってのも、このワギョウならではなのか――――。
「始め!」
小柄な体を更に低くして、ドレークさんの攻撃範囲を狭めて、有効打を打ち込ませない戦法。
床を這っているかのような移動で加速し、一気に間合いを詰めると、双剣を持つ諸手を胸の前で交差。
足下を狙うように振り抜くが、
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
この空間ではとても珍しい、落雷を思わせる声と共に、木斧を空に掲げて、そのまま力任せに、斜め下に振り抜く――。
刃の部分ではなく、表面の平たい部分を、相手の腕に思いっ切り叩き込み、木斧が再び空に振り上がる。
小柄な男性は豪快に闘技場の外へと叩き落とされた。
「場外――――それまで!」
の、主審の声に、
「「「「おお」」」」
と、しじまな空間がどよめいた。
静かに見守る中で、圧倒的な強さに驚き、ついつい声を大きく出してしまったといったところ。
声が大きくなればなるほど、その人物の強さを表すバロメーターになると、考えていいかもしれない。
――ドレークさんって、本当に強いんだな。
相手の方だって、あの敏捷な動きからして、相当のやり手だったはず。
並の相手なら、手も足も出ないで倒されているだろう。
でも、圧倒的な剛力の前には、素早い動きも活かすことが出来なかった。
勝者として、拳を高らかにあげて、僕たちの方に体を向けると、
「どうよ! やるだろ。俺!」
屈託のない笑顔ですね。
純粋な強さに対して、僕たち三人も笑顔で手を振り、拍手を送る。
怪我を負う事なく、ドレークさんは次に進む。
――――。
何組かの試合を見てから、サージャスさんの登場だ。
「頑張ってください」
と、欄干から身を乗り出して、ついつい大音声になってしまう。
ドレークさんの時は静かにしてたけど、ここは推してる勇者様だからね。
声を出さずにはいられない。
まあ、そのせいで、観衆の視線を集めてしまったけども。
「恥ずかしいヤツだな」
うるさいよ。ニヤニヤと笑うなよ。
恥ずかしさを抱いて、純粋な応援が出来るわけないだろ。心から解放するんだよ――――。思いの丈を!
パッションですよ! パッション!! これ大事。
「どんな試合になるかな」
僕の隣で、ロールさんも同様に欄干から乗り出して、奥の方でこちらに手を振るサージャスさんに手を振り返している。
黒い胴着姿。普段の鎧と同じ色だから、違和感がないな。
木刀を右手で持って、闘技場の中央に移動。
相対する方は、長身細身で、無造作な髪型の、壮年の男性。
先ほど目にした、鎖鎌を模している物を諸手に持っている。
――――双方、典雅な一礼を行ってから、
「始めて下さい」
女性の主審の方の合図で、火蓋が切られる。
「ね、私も言いたいけど、この独特の空間がそれをさせないよね」
とにかく静かに見守るといった感じで、息詰まる。
試合が終われば、〝おお〟と言う感嘆が、方々から交わって大きくなる程度。
派手な歓声がないってのも、このワギョウならではなのか――――。
「始め!」
小柄な体を更に低くして、ドレークさんの攻撃範囲を狭めて、有効打を打ち込ませない戦法。
床を這っているかのような移動で加速し、一気に間合いを詰めると、双剣を持つ諸手を胸の前で交差。
足下を狙うように振り抜くが、
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
この空間ではとても珍しい、落雷を思わせる声と共に、木斧を空に掲げて、そのまま力任せに、斜め下に振り抜く――。
刃の部分ではなく、表面の平たい部分を、相手の腕に思いっ切り叩き込み、木斧が再び空に振り上がる。
小柄な男性は豪快に闘技場の外へと叩き落とされた。
「場外――――それまで!」
の、主審の声に、
「「「「おお」」」」
と、しじまな空間がどよめいた。
静かに見守る中で、圧倒的な強さに驚き、ついつい声を大きく出してしまったといったところ。
声が大きくなればなるほど、その人物の強さを表すバロメーターになると、考えていいかもしれない。
――ドレークさんって、本当に強いんだな。
相手の方だって、あの敏捷な動きからして、相当のやり手だったはず。
並の相手なら、手も足も出ないで倒されているだろう。
でも、圧倒的な剛力の前には、素早い動きも活かすことが出来なかった。
勝者として、拳を高らかにあげて、僕たちの方に体を向けると、
「どうよ! やるだろ。俺!」
屈託のない笑顔ですね。
純粋な強さに対して、僕たち三人も笑顔で手を振り、拍手を送る。
怪我を負う事なく、ドレークさんは次に進む。
――――。
何組かの試合を見てから、サージャスさんの登場だ。
「頑張ってください」
と、欄干から身を乗り出して、ついつい大音声になってしまう。
ドレークさんの時は静かにしてたけど、ここは推してる勇者様だからね。
声を出さずにはいられない。
まあ、そのせいで、観衆の視線を集めてしまったけども。
「恥ずかしいヤツだな」
うるさいよ。ニヤニヤと笑うなよ。
恥ずかしさを抱いて、純粋な応援が出来るわけないだろ。心から解放するんだよ――――。思いの丈を!
パッションですよ! パッション!! これ大事。
「どんな試合になるかな」
僕の隣で、ロールさんも同様に欄干から乗り出して、奥の方でこちらに手を振るサージャスさんに手を振り返している。
黒い胴着姿。普段の鎧と同じ色だから、違和感がないな。
木刀を右手で持って、闘技場の中央に移動。
相対する方は、長身細身で、無造作な髪型の、壮年の男性。
先ほど目にした、鎖鎌を模している物を諸手に持っている。
――――双方、典雅な一礼を行ってから、
「始めて下さい」
女性の主審の方の合図で、火蓋が切られる。
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