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お兄様Incoming
PHASE-13
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「我が義妹の指示に従え」
「御意に」
街に迷惑をかけた分の慰謝料と、誠意のこもった謝罪を必ず行う事。
物流の往来を無償で手伝う事。
整備局や、街の方々の言葉に耳を傾け、互いに議論し合う事。この時、高圧的な対応ではなく、同じ目線で対応する事。
魔王軍からの離脱などはそちらの内輪での問題なので、干渉はしないけれども、脱退、離脱の話は、他の幹部の方々にはきちんと伝える事。
「――だ、そうだ。分かったな」
弱り切って、項垂れている甲鎧王の髪の毛を掴んで無理矢理に前を向かせる邪神。
焦点の合っていない目でありつつも、首肯で返していた。だいぶ弱っている……。
「お宅がこうなったのも、最初から礼儀を持って耳を傾けなかったからよ。こんな惨めにならずに済んだのにな――――灰皿」
未だ玉座に座り、甲鎧王も顔負けの高圧的な態度で、配下の方々を動かしている。
灰皿を探すも無いようで、悋気に触れては大変と、焦燥しながら、うるさい金属音を立て走り回っている。
すると整備長、そんな彼等に目を向けると、諸手で水をすくう時のような形を作る。
理解したようで、整備長の前で跪き、一人の方が手を伸ばし、その中に葉煙草の灰を落としていた。
完全に輩だし、問題行動だよ!
流石にやり過ぎなので、
「あんまりそういうのをやると、問題に発展するので、ここらでやめましょうね」
と、助言してあげた。
もっと愉悦に浸っていたかったのか、満足していなかったけども、
「その辺で」
ロールさんもここに参加したので、渋々と玉座から立ち、
「二度と迷惑かけるなよ。誰が迷惑すると思うんだ? 本来ここに来なくていい、王都勤務の俺たち、即ち、邪神様の義妹であるロールちゃんに迷惑かかるんだぞ。邪神様、ロールちゃんに迷惑をかける阿呆は?」
「コロス」
上手い具合に手綱を引いているな。
ロールさんの名前を出して、邪神を操る技術を習得したようだ。
そして、義妹さんの身に危機が訪れたら、本当に、邪神が降臨するというのも、今回の事で立証された。
「だそうだ。あとあれだ、ロールちゃん、俺たちに危害が及んでも、ロールちゃんは迷惑だよね?」
「まあ、はい。もちろんです」
おっさん、しれっと自分も邪神の加護を受けるような立ち位置に入りやがった。ロールさんに迷惑かける=邪神の敵。希代の悪だよこのおっさん。こんな知恵の回りだけは本当に速い。
「重々、理解しました。それで、パンゲア様」
「なんだ? この背信者め」
「忠誠は今も昔も変わっておりませんが。あの、我らを今一度、末席でもいいので、パンゲア様のお側で働かせてください」
忠義だね。それだけの忠義心も持ってるんだから、他の方々にも礼節持った対応すればいいものを。
「お断りだ」
「なぜです!? 我々はパンゲア様が復活する事を信じ、今まで力を蓄えていたのです」
鉄を売買し、巨万の富を手にしたのも、邪神復活の時の活動資金に当てるためだったそうな。
「貴様は男だからな。男に興味は無い」
「そんな馬鹿な! 以前はお側で働かせてくださったではないですか!」
「そうなのか? 我、まったく覚えていないのだが?」
心を容易に抉ってくる発言だね。完全に力が抜けたのか、膝から崩れ落ちていった。こんな所は人間と変わらないんだね。
どうも、この甲鎧王が勝手に邪神の配下になってたと思い込んでいたみたいだ。
実際に、女性にしか興味の無い存在である。しかも、昔は今よりも傲慢だったわけだし、この邪神は自分の周りに女性しか侍らせていなかったはず。なので、男性を配下にすることはないと考えられる。
「お願いです。配下に!」
なぜにここまでこのシスコンの配下になりたいのか。
「ええい! 鬱陶しい。我の義妹に苦痛を与えた事は絶対に許せん! 今の我は義妹命なのだ!」
配下にしてもらえないみたいだね。
あ~落ち込んだよ。膝を抱えて丸くなって座り込んだよ。
でもって、義妹命ってなんだよ……。
「あの――――」
「なんだ? ご褒美か!?」
活躍したからね。ときめき溢れる期待感からの瞳の輝き。甘い記憶として、邪神の思い出の1ページに刻まれるかな。
まあ、今回は僕も目をつぶってやろう。でも、頭撫でるくらいで押さえていただきたい。それ以上だと、僕が嫉妬の化身になってしまいますから。
「いえ、我の義妹って大勢の前で言わないでもらえますか。そんな風に呼ばれて、皆に噂とかされると恥ずかしいので。自分たちの時だけにしてもらいたいんですが」
ぐは! 想像の物とは全く違った。聞いてる僕もなんか無性に悲しくなってきた。
邪神のときめきなメモリアルが大クラッシュした音が聞こえた気がした。
抱擁でもしてもらえるのかと思っていたら、期待とは正反対の言葉を浴びせられた邪神様は、それはそれは大いに落ち込みまして、甲鎧王の隣で同じ姿勢になっております。
姿だけ見てると、立派に主従の関係にも見えますよ。
「このままだと甲鎧王さんも可哀想ですし。それに、ちゃんと管理しないと、また皆さんに迷惑をかけるかもしれないので、お任せしたいのですが?」
ロールさん。それでは心に鍵をかけたシスコンは動かないですから。むしろその事務的な言い方は、傷口に塩をすり込んでるようなもんです。
反応がないのが、なぜなのか僕が言わなくても理解出来ているようで、首を傾げて、う~んと悩みつつも、
「お願いしますね。お兄様」
ぴくんと体が動いたのは見て取れた。
でも、それ以上は反応がない。
傷ついてるな。このシスコンがロールさんの発言に従わないとは…………。
噂されると恥ずかしいという発言が相当にパンゲアの心臓を抉ったようだ。もう一回、封印されるかい?
仕方ないな~。ここは、僕が知恵を与えませう。
「こう言えばいいですよ」
耳打ち。
――――耳打ち最高。超接近してしまった。
「え~」
「恥ずかしがらずに。頑張りましょう」
神殿で、【ひょうぉぉう】ってなかんじで、素っ頓狂な声上げてましたから。
それで、解決です。
観念したのか、ロールさんは大きく長嘆息を漏らし、小さく頷いてから、
「お願い、お兄ちゃん」
と、すっごく可愛い感じで言ってくれた。
――大気がまたも震える。
「任されよ! お兄ちゃんに任されよ。お兄ちゃんが世界を取ったる! おにいしゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁ」
今日はよく壊れるな。丸っこくなってたのに、宙に浮かんで体を輝かせてます。気合い入ってますね。
まったく、神殿ではお兄ちゃんではなく、お兄様って呼んでくれとか言ってたのにね。
でも、可愛い感じでのお兄ちゃん発言は破壊的だな。正直、僕もグッときたもの。言われてみたいもの。僕が邪神ポジションでも世界を取ってあげようと思う。
「御意に」
街に迷惑をかけた分の慰謝料と、誠意のこもった謝罪を必ず行う事。
物流の往来を無償で手伝う事。
整備局や、街の方々の言葉に耳を傾け、互いに議論し合う事。この時、高圧的な対応ではなく、同じ目線で対応する事。
魔王軍からの離脱などはそちらの内輪での問題なので、干渉はしないけれども、脱退、離脱の話は、他の幹部の方々にはきちんと伝える事。
「――だ、そうだ。分かったな」
弱り切って、項垂れている甲鎧王の髪の毛を掴んで無理矢理に前を向かせる邪神。
焦点の合っていない目でありつつも、首肯で返していた。だいぶ弱っている……。
「お宅がこうなったのも、最初から礼儀を持って耳を傾けなかったからよ。こんな惨めにならずに済んだのにな――――灰皿」
未だ玉座に座り、甲鎧王も顔負けの高圧的な態度で、配下の方々を動かしている。
灰皿を探すも無いようで、悋気に触れては大変と、焦燥しながら、うるさい金属音を立て走り回っている。
すると整備長、そんな彼等に目を向けると、諸手で水をすくう時のような形を作る。
理解したようで、整備長の前で跪き、一人の方が手を伸ばし、その中に葉煙草の灰を落としていた。
完全に輩だし、問題行動だよ!
流石にやり過ぎなので、
「あんまりそういうのをやると、問題に発展するので、ここらでやめましょうね」
と、助言してあげた。
もっと愉悦に浸っていたかったのか、満足していなかったけども、
「その辺で」
ロールさんもここに参加したので、渋々と玉座から立ち、
「二度と迷惑かけるなよ。誰が迷惑すると思うんだ? 本来ここに来なくていい、王都勤務の俺たち、即ち、邪神様の義妹であるロールちゃんに迷惑かかるんだぞ。邪神様、ロールちゃんに迷惑をかける阿呆は?」
「コロス」
上手い具合に手綱を引いているな。
ロールさんの名前を出して、邪神を操る技術を習得したようだ。
そして、義妹さんの身に危機が訪れたら、本当に、邪神が降臨するというのも、今回の事で立証された。
「だそうだ。あとあれだ、ロールちゃん、俺たちに危害が及んでも、ロールちゃんは迷惑だよね?」
「まあ、はい。もちろんです」
おっさん、しれっと自分も邪神の加護を受けるような立ち位置に入りやがった。ロールさんに迷惑かける=邪神の敵。希代の悪だよこのおっさん。こんな知恵の回りだけは本当に速い。
「重々、理解しました。それで、パンゲア様」
「なんだ? この背信者め」
「忠誠は今も昔も変わっておりませんが。あの、我らを今一度、末席でもいいので、パンゲア様のお側で働かせてください」
忠義だね。それだけの忠義心も持ってるんだから、他の方々にも礼節持った対応すればいいものを。
「お断りだ」
「なぜです!? 我々はパンゲア様が復活する事を信じ、今まで力を蓄えていたのです」
鉄を売買し、巨万の富を手にしたのも、邪神復活の時の活動資金に当てるためだったそうな。
「貴様は男だからな。男に興味は無い」
「そんな馬鹿な! 以前はお側で働かせてくださったではないですか!」
「そうなのか? 我、まったく覚えていないのだが?」
心を容易に抉ってくる発言だね。完全に力が抜けたのか、膝から崩れ落ちていった。こんな所は人間と変わらないんだね。
どうも、この甲鎧王が勝手に邪神の配下になってたと思い込んでいたみたいだ。
実際に、女性にしか興味の無い存在である。しかも、昔は今よりも傲慢だったわけだし、この邪神は自分の周りに女性しか侍らせていなかったはず。なので、男性を配下にすることはないと考えられる。
「お願いです。配下に!」
なぜにここまでこのシスコンの配下になりたいのか。
「ええい! 鬱陶しい。我の義妹に苦痛を与えた事は絶対に許せん! 今の我は義妹命なのだ!」
配下にしてもらえないみたいだね。
あ~落ち込んだよ。膝を抱えて丸くなって座り込んだよ。
でもって、義妹命ってなんだよ……。
「あの――――」
「なんだ? ご褒美か!?」
活躍したからね。ときめき溢れる期待感からの瞳の輝き。甘い記憶として、邪神の思い出の1ページに刻まれるかな。
まあ、今回は僕も目をつぶってやろう。でも、頭撫でるくらいで押さえていただきたい。それ以上だと、僕が嫉妬の化身になってしまいますから。
「いえ、我の義妹って大勢の前で言わないでもらえますか。そんな風に呼ばれて、皆に噂とかされると恥ずかしいので。自分たちの時だけにしてもらいたいんですが」
ぐは! 想像の物とは全く違った。聞いてる僕もなんか無性に悲しくなってきた。
邪神のときめきなメモリアルが大クラッシュした音が聞こえた気がした。
抱擁でもしてもらえるのかと思っていたら、期待とは正反対の言葉を浴びせられた邪神様は、それはそれは大いに落ち込みまして、甲鎧王の隣で同じ姿勢になっております。
姿だけ見てると、立派に主従の関係にも見えますよ。
「このままだと甲鎧王さんも可哀想ですし。それに、ちゃんと管理しないと、また皆さんに迷惑をかけるかもしれないので、お任せしたいのですが?」
ロールさん。それでは心に鍵をかけたシスコンは動かないですから。むしろその事務的な言い方は、傷口に塩をすり込んでるようなもんです。
反応がないのが、なぜなのか僕が言わなくても理解出来ているようで、首を傾げて、う~んと悩みつつも、
「お願いしますね。お兄様」
ぴくんと体が動いたのは見て取れた。
でも、それ以上は反応がない。
傷ついてるな。このシスコンがロールさんの発言に従わないとは…………。
噂されると恥ずかしいという発言が相当にパンゲアの心臓を抉ったようだ。もう一回、封印されるかい?
仕方ないな~。ここは、僕が知恵を与えませう。
「こう言えばいいですよ」
耳打ち。
――――耳打ち最高。超接近してしまった。
「え~」
「恥ずかしがらずに。頑張りましょう」
神殿で、【ひょうぉぉう】ってなかんじで、素っ頓狂な声上げてましたから。
それで、解決です。
観念したのか、ロールさんは大きく長嘆息を漏らし、小さく頷いてから、
「お願い、お兄ちゃん」
と、すっごく可愛い感じで言ってくれた。
――大気がまたも震える。
「任されよ! お兄ちゃんに任されよ。お兄ちゃんが世界を取ったる! おにいしゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁ」
今日はよく壊れるな。丸っこくなってたのに、宙に浮かんで体を輝かせてます。気合い入ってますね。
まったく、神殿ではお兄ちゃんではなく、お兄様って呼んでくれとか言ってたのにね。
でも、可愛い感じでのお兄ちゃん発言は破壊的だな。正直、僕もグッときたもの。言われてみたいもの。僕が邪神ポジションでも世界を取ってあげようと思う。
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