上 下
129 / 604
報告

PHASE-05

しおりを挟む
「で、どうするんです?」

「どうしようか……」
 このままラゴットを調べるにしても、相手は玄人、しかも魔法使いや剣士なんかとなると、もし反撃なんてしてきた日には、警務局の方々では厳しい。
 勇者にお願いするべきか。

「継続できます?」

「う~ん。あの申し訳ないんですが、ワギョウに用がありまして」
 エルンさん一行も出たいのか。
 勇者だからね。挑んでみたいよね。それを無理させて今後も継続させるのも、申し訳ないし。  
 フィットさんもその事が原因か、申し訳なさそうな表情だ。
 元侍。現戦士。
 刀剣を使用しての戦い方を好む方にとっては、ITADAKI-頂-は外せないイベントなのかもね。
 これを逃せば十年後――。
 十年は待ちたくないよね。
 
 エルンさん達、クエストを受ける事は難しいといった感じだ。
 いたたまれないのか、無口になってしまった。

「すいません。今回だって私の我が儘を無理に頼んでもらったのに。今後はこちらで対応してみます」

「危険です。先ほども言いましたが泳がせる程度で」
 断った手前、危ない橋は渡ってほしくないようで、エルンさん語気を強めて、これ以上は首を突っ込むのは良くないと、ロールさんの考えを制する。
 危険は避けてほしい。それに関しては、賛成なので、
「公開で調査クエストにでもします?」
 報酬は、個人ではなく、国からの支払いになるだろうから、報酬としては秘匿もある個人のクエストに比べると、公である公開は支払われる金額は基本、少ない。
 受ける人も限られてくるかもだろうけど、調査なら簡単だと、小遣い稼ぎでやってくれる方も出て来るだろう。

「公開はダメかな。信頼性の無い人だと、失敗した時に相手が身を隠すだろうし」
 自分たちは信頼されてたんだなと、その発言を耳にした四人はまんざらでも無い表情だ。
 確かに、調べを進めるなら、非公開で信頼出来る人たちにまかせるのがいいだろうけど、中々にそんな人材はいないよね。
 知ってる方なら、サージャスさんとか、現在最強の勇者御一行の中のカルタさん。でも、どちらもワギョウに行くし、魔王軍に頼むってのもいいんだろうけど、人間じゃ無いからね。警戒されるよね。

「現状は監察が限界ですね」

「それがいいと思います。深く入らないで、警務局の方に取り締まってもらうのがいいでしょう」
 ラゴットは、王都より北西のグルガル交易都市の中にある。
 グルガルの警務局にお願いして、監視をしてもらうのがいいだろう。もちろん無理しない程度に。
 不自然な動きをした時に、一気に公開クエストを開いて、一網打尽で良いでしょう。
 相手が元戦士やら魔法使いとなると、警務局でもつらいからね。
 玄人には玄人で。
 グルガルの警務局に連絡を入れて、監視という事で、話は終えた。
 
 ――――。

「では、俺たちはこれで。くれぐれも、深く入り込まないでください」
 くどいと思われてもいいとばかりに、念を押すエルンさん。

「ご心配ありがとうございます。では、ワギョウで合いましょう」

「へ? 来るんですか」

「はい、応援させてもらいます」
 おい。応援してもらえるのが嬉しいからって、顔をほころばせるんじゃないよ。貴男はロールさんに対して毎度、毎度、紅潮しない。三人の美人さん達が、ふてくされてますよ。
 まったく! ――では、僕はフィットさんと、サージャスさんを全力で応援させてもらいましょう。
 
 四人を局前まで見送る。
 本日はゆっくりと王都の宿で過ごして、明日、出発だそうだ。
 僕としてはさっさと王都から立ち去ってもらいたいんですけどね。なんか、この方々がいると、やらかしそうで嫌ですから。
 いるとしても、何もせずに、宿で静かにしててください。

 ――。

「じゃあ、グルガルの警務局に連絡いれてみるね」

「深入りだけはしないように伝えてくださいね」

「了解」
 敬礼で返してきた。
 元勇者一行の可能性のある者達が働いているラゴット。粗悪品のタリスマンを制作、販売。危険な存在である事は間違いない。
 何かが起こる前に対応する事も大事だから、警務局の方々には無理せず頑張ってもらいたいところ。

 ――。

「なに、黄昏れてんだ」
 ゲシリと、お尻を蹴られてしまった。
 何とも、懐かしいじゃないですか。僕のお尻に蹴りを入れてくるなんて。 
 黄昏れてるんじゃない。格好付けて考えてただけです。

「働け。ほら」
 貴男がやればいい事なんじゃないですかね。
 新人にばかり仕事させないでさ。
 整備長が手にしているパピルスの束を受け取る僕も僕だけどね。
 断る勇気! NOと言える人間になりたいもんです。

 ――で、なんなのこの書類の量は?
 ――――何この内容…………。
 イーロン。大陸北に位置する豪雪地帯にある街だ。
 書類の内容は、イーロンの整備局からの助けてな内容が一割。イーロン住人からの苦情が九割のものだった……。
 近隣の万年雪の山岳地帯であるロトト山脈は、魔王軍幹部である甲鎧王こうがいおうさんの支配下。

 その、甲鎧王さんが非常に迷惑な行為を行っているそうで、配下の方々と雪中戦の訓練中の魔法の乱発で、雪崩が発生し、街と他をつなぐ街道が雪で塞がれ、物流がストップしてしまう事が多々あるそうだ。
 今のところ、住人にも旅人にも人的な被害は出てないらしいけど、いつ出てもおかしくないと、戦々恐々だそうだ。
 無論、抗議をし、それでも止めなかった事で、違反金まで発生しているのだけども、甲鎧王さんが支配するロトト山脈は、上質な鉄がとれ、生産と販売で、莫大な資金を有しているようで、違反金は即日支払われ、直ぐに、雪中戦を始めるという事らしい。
 
 抗議すれば、違反金は支払っていると凄まれ、全くもって反省もしておらず、むしろ、脅してくるそうだ。
 金さえ払えば問題ないだろ! と、何とも傲慢な方のようだな甲鎧王さん。
 で、この書類を見る限り、王都の整備局に出張ってもらって、事を治めて欲しいとの事なんだけども、なぜに他の整備局は、困ったらこっちに回そうとするのか。なんとか自分たちで解決する努力を育んでいただきたい。
 出張ばっかりで嫌なんですよ。まあ、ワギョウのは大いに楽しみなんだけども。
 わざわざ寒いところには行きたくないよ。しかも、おっかないし。整備局員を軽く見ているから余計に怖い。
 なんかあっても、お金で解決しそうだし。
 貴族なんかに言い寄って、賄賂なんか流された日には、僕たちの局員としての権力なんて無いも同じ。
 ああ……、これには関わりたくないから、そっと不要として、ゴミ箱にでも入れてしまおうかな――。
 もみ消しの誕生の時であった――。
 ごめんなさいね。

「何してるの?」

「整備長から受け取った書類を整理しようかと」
 整理。ウソは言っていない。

「処分と整理は違うよ。曖昧な言葉の使用で、はぐらかそうとしてるのかな?」
 ぐぬぬぬぬぬ……。

「これは、最近の甘えに対する処理なんです」

「甘え」

「だって見てくださいよ」
 なんか、逆ギレ気味になってしまったけども、甘えは良くないと思う。

「うん。解決してもらわないと、私たちの体も一つだしね」

「でしょう。何のためにイーロンにも整備局があるんだって話ですよ」
 よしよし。怒られないですみそうだ。

「でもね、実際こうやって困ってるんだし、協力はしないとね。ここが何かあった時に、協力してもらえるでしょ」
 笑顔で言われると、頷くしか出来ないじゃないですか。
 ちょっとまって、これ、頷いちゃったけど、行かなきゃ行けないの? 
 ヤアヤアヤアヤアヤア! 行きたくないですよ。

「今日の夜、ケーシ―さんの所でご飯一緒にどうかな? そこで、話し続けようか」

「はい、よろこんで!」
 イヤッホォォォォォォォォォォォ! 最高だぜ!!

 ――――――――――――――――。

 イヤッホォォォォォォォォォォォ! 極寒だぜ!! 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

色彩の大陸2~隠された策謀

谷島修一
ファンタジー
 “色彩の大陸”にある軍事大国・ブラミア帝国の遊撃部隊に所属し、隊長を務めていたユルゲン・クリーガーは帝国首都の城の牢屋で自らが裁かれる軍法会議の開催を待っていた。その軍法会議ではクリーガーは叛逆罪で裁かれることになっている。  弟子であるオットー・クラクス、ソフィア・タウゼントシュタイン、オレガ・ジベリゴワの三人とは戦場で別れた後は連絡はとれないでいた。お互いの安否が気になる。  そんなある日、牢のクリーガーのもとへ軍法会議で弁護人を引き受けると言うパーベル・ムラブイェフが訪れた。弁護士ムラブイェフはクリーガーから事の経緯を詳しく聞き取る。  1年前、“チューリン事件”では帝国の危機を救い、“帝国の英雄”とまで呼ばれていたクリーガーが、なぜ反逆罪で裁かれることになったのか?  帝国軍主流派である総司令官との対決。共和国再独立派による反乱。命令書の偽造による旅団と都市の掌握。  ムラブイェフはクリーガーの話を聞き取り、軍法会議で無罪を勝ち取るための方針を画策する。 そして数日後、ついに軍法会議が開催されクリーガーとムラブイェフは法廷に出向く。クリーガーは何人もの証人と対峙する。  果たして二人は無罪を勝ち取ることができるのか? ----- 文字数 148,497

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫
ファンタジー
大人気スマホMMO『ネオ・ワールド・オンライン』、通称ネワオンの廃人プレイヤーであること以外はごく普通の一般的なおっさんであった彼は今日もいつもと変わらない日常を送るはずだった。 しかし無情にもネワオンのサ終が決まってしまう。サービスが終わってしまう最後のその時を見届けようとした彼だが、どういう訳か意識を失ってしまい……気付けば彼のプレイヤーキャラであるハイエルフの姿でネワオンの世界へと転移していたのだった。 ネワオンの無い元の世界へと戻る意味も見いだせなかった彼は、そのままプレイヤーキャラである『ステラ・グリーンローズ』としてネワオンの世界で生きて行くことを決意。 こうして廃人プレイヤーであるおっさんの第二の人生が今始まるのである。

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。 ☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*) 今後ともよろしくお願い致します🍀

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

処理中です...