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叙勲の日
PHASE-12
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「流石に三人は休めないですよ。私が遠慮しましょうか?」
そんな事は許されない。
いけ、整備長。男を見せるのだ。
「いやいや、仕事で行くから」
なんだ? また、出張か?
多すぎだろ。本当にどれだけ多いんだよ。こんなにも移動が多いなんて思いもしなかったよ。
――だがしかし、仕事なら有給取らなくていいから、その分が浮くな。
でも、仕事だと、自由も利かないし。
「自由、利くぜ」
なんと!? まことか! 相も変わらず僕の心を読むな。怖き顔の者よ。
どうやら、ワギョウにおける交易拠点に、役所を設ける話が出ているようで、向こう様との話し合いの席も設けるらしいのだけれども、今は試合の準備期間も重なっている事から、試合が終わってから談話を行うとの事。
前乗りして、ワギョウの大会の見物も出来るらしい。
【異文化交流】この素敵な文字の羅列のおかげで、僕たちは観光を満喫する事が出来るんだ。
普通に働いている方々からすれば、ずるい、怠惰だ、卑怯、などなど、罵声を浴びせられるかもしれないけども、それなりに僕たちは命張ってますからね。
これくらいの役得ないと、活力も生まれせん。
これを口にしたら、間違いなく袋だたきだな。でもね、普通に働いていて、魔王軍やら、邪神やら、モンスターの襲撃を受けたり、奈落に落ちそうになったり、過激派が目の前で、大いに暴れたりなんて無いでしょ? 僕たちはそれがあるんです。
だから、異文化交流させてください。
「なにを、唸ってるの?」
「ロールさん。僕たちはちょっとした行動で、世間様を敵に回す可能性もあるという事を忘れてはいけないのです。慎重に異文化交流です」
「なんだろう……言わんとしている事は理解出来たよ。けど、きちんと仕事もこなすと、誰も何も言わないよ。きちんとしないから言われるの。端から娯楽目的だから、そういう心配事が心に宿るんじゃ無いかな」
「「仰るとおりです……すみませんでした」」
僕以上に、整備長が真摯に受け止めたようで、同じ発言でも、僕とは違ってえらく重みを感じるものだった。
僕はちゃんと仕事はこなしますから、おっさんだけが完全に、道楽目的ですから。
「では、行くんですね!」
嬉々として飛び跳ねる。
行きますよ。実力を刮目させてもらいましょう。
魔法だけでなく、剣にも自信があるみたいだから、剣っていうか、徒手空拳な気もするけども。
「厳しいでしょうけど、優勝してみせます」
「サージャスさんなら、優勝候補に名乗りを上げられますよ」
「参加予定にはクシュリナさん一行の名前もありますからね」
ああ……、そりゃ無理だ。
サージャスさんが優秀な方であっても、それは難しい。
魔王軍幹部とやり合うようなもの。不死王さんを相手にして敗れてるからな~。
その一行が出るなら、優勝はその一行の三人の中の誰かになるだろうね。
一人は魔法使いだから、実質、勇者のクシュリナ・パラシュラさんか、面識のある、魔剣士になられた、右手が残念なカルタ・リターさんのどちらかとなるな。
決勝はこの二人となるだろう。凄いな、二人の対決なんてあるなら、入場券は一気に高騰。ダフ屋が大いに懐を潤わせるだろうね。
「出来る事なら、お三方の誰かと戦ってみたいですね」
勝ち負け関係なくそう思えるのは、憧れの部分が強いんだろうね。
戦うところを想像しているのか、興奮気味だ。
でも、優勝して、剣もクリネアって言わせたいんですよね。
準決勝で、クシュリナさん一行同士がぶつかって、サージャスさんと決勝で戦うとなれば、ワンチャン有りそうなんだけど。
ぬるくなったようで、カップの中の紅茶を一気に飲み干す事で、興奮を抑えている。
「では、ボクはこれから馬車を返却してから、ワギョウに渡る為の船賃をクエストで稼ぎつつ、ワギョウとの交易を行っている湾港都市ネーガルへ向かいますね」
一礼して、カップをロールさんに返し、笑顔を局内の皆さんに与えながら、サージャスさんは旅へと出て行った――。
本当に明るい子になったね。
本来はああいう性格だったんだろうけども、違反金の支払いで、人格が正反対になってしまったのだろうね。
元パーティー共はどこで何をしているのやら。是非とも神罰が下っていただきたい。
サージャスさんの事を考えると、セットでそいつ等も頭の中に出て来るから、不愉快でもあるけど、それ以上に、サージャスさんが明るさを取り戻したのは、僕も少しは関係していると思いたいですな――。
「どうぞ」
「お! ありがとう」
なぜに整備長にだけ紅茶を入れてあげてるの?
「僕のは?」
「自分で入れるといいよ」
やはり、ヤキモチを焼いてますな。重畳だ。僕に対する好感度が高いから、ヤキモチを焼くわけだし。
いや~、嬉しい。
「ロールさんの入れる、美味しい紅茶を飲みたいです」
素直に言うのが一番だね。嘘とか言われるのが、キライだもんね。虚言を口にすると、演習にまた送られてしまう。
「しかたないな~」
なんて言いながらも、笑みを見せてくれるからね。
この優しさが、最高です。
整備長は、面白くなさそうな顔ですけども、ロールさんの好感度は、この局内では僕が一番なんだ!
――と、自負出来る。
紅茶を注いでくれる光景。
その幸せな光景に、方々から舌打ちが聞こえてくる。
見渡せば、同僚の男性陣から、怨嗟の視線が僕に再び向けられている。
職場の女神だけでなく、勇者にも好意をもたれやがって! とばかりの怒りを纏っている。ペキリと羽根ペンが折れる音――――、あれ? これはまずいですよ。本気でしばかれそうな勢いですよ。
何という事でしょう。整備長を飛び越えて、僕、この局内で一番嫌われた存在になってしまった気がする……。
そんな事は許されない。
いけ、整備長。男を見せるのだ。
「いやいや、仕事で行くから」
なんだ? また、出張か?
多すぎだろ。本当にどれだけ多いんだよ。こんなにも移動が多いなんて思いもしなかったよ。
――だがしかし、仕事なら有給取らなくていいから、その分が浮くな。
でも、仕事だと、自由も利かないし。
「自由、利くぜ」
なんと!? まことか! 相も変わらず僕の心を読むな。怖き顔の者よ。
どうやら、ワギョウにおける交易拠点に、役所を設ける話が出ているようで、向こう様との話し合いの席も設けるらしいのだけれども、今は試合の準備期間も重なっている事から、試合が終わってから談話を行うとの事。
前乗りして、ワギョウの大会の見物も出来るらしい。
【異文化交流】この素敵な文字の羅列のおかげで、僕たちは観光を満喫する事が出来るんだ。
普通に働いている方々からすれば、ずるい、怠惰だ、卑怯、などなど、罵声を浴びせられるかもしれないけども、それなりに僕たちは命張ってますからね。
これくらいの役得ないと、活力も生まれせん。
これを口にしたら、間違いなく袋だたきだな。でもね、普通に働いていて、魔王軍やら、邪神やら、モンスターの襲撃を受けたり、奈落に落ちそうになったり、過激派が目の前で、大いに暴れたりなんて無いでしょ? 僕たちはそれがあるんです。
だから、異文化交流させてください。
「なにを、唸ってるの?」
「ロールさん。僕たちはちょっとした行動で、世間様を敵に回す可能性もあるという事を忘れてはいけないのです。慎重に異文化交流です」
「なんだろう……言わんとしている事は理解出来たよ。けど、きちんと仕事もこなすと、誰も何も言わないよ。きちんとしないから言われるの。端から娯楽目的だから、そういう心配事が心に宿るんじゃ無いかな」
「「仰るとおりです……すみませんでした」」
僕以上に、整備長が真摯に受け止めたようで、同じ発言でも、僕とは違ってえらく重みを感じるものだった。
僕はちゃんと仕事はこなしますから、おっさんだけが完全に、道楽目的ですから。
「では、行くんですね!」
嬉々として飛び跳ねる。
行きますよ。実力を刮目させてもらいましょう。
魔法だけでなく、剣にも自信があるみたいだから、剣っていうか、徒手空拳な気もするけども。
「厳しいでしょうけど、優勝してみせます」
「サージャスさんなら、優勝候補に名乗りを上げられますよ」
「参加予定にはクシュリナさん一行の名前もありますからね」
ああ……、そりゃ無理だ。
サージャスさんが優秀な方であっても、それは難しい。
魔王軍幹部とやり合うようなもの。不死王さんを相手にして敗れてるからな~。
その一行が出るなら、優勝はその一行の三人の中の誰かになるだろうね。
一人は魔法使いだから、実質、勇者のクシュリナ・パラシュラさんか、面識のある、魔剣士になられた、右手が残念なカルタ・リターさんのどちらかとなるな。
決勝はこの二人となるだろう。凄いな、二人の対決なんてあるなら、入場券は一気に高騰。ダフ屋が大いに懐を潤わせるだろうね。
「出来る事なら、お三方の誰かと戦ってみたいですね」
勝ち負け関係なくそう思えるのは、憧れの部分が強いんだろうね。
戦うところを想像しているのか、興奮気味だ。
でも、優勝して、剣もクリネアって言わせたいんですよね。
準決勝で、クシュリナさん一行同士がぶつかって、サージャスさんと決勝で戦うとなれば、ワンチャン有りそうなんだけど。
ぬるくなったようで、カップの中の紅茶を一気に飲み干す事で、興奮を抑えている。
「では、ボクはこれから馬車を返却してから、ワギョウに渡る為の船賃をクエストで稼ぎつつ、ワギョウとの交易を行っている湾港都市ネーガルへ向かいますね」
一礼して、カップをロールさんに返し、笑顔を局内の皆さんに与えながら、サージャスさんは旅へと出て行った――。
本当に明るい子になったね。
本来はああいう性格だったんだろうけども、違反金の支払いで、人格が正反対になってしまったのだろうね。
元パーティー共はどこで何をしているのやら。是非とも神罰が下っていただきたい。
サージャスさんの事を考えると、セットでそいつ等も頭の中に出て来るから、不愉快でもあるけど、それ以上に、サージャスさんが明るさを取り戻したのは、僕も少しは関係していると思いたいですな――。
「どうぞ」
「お! ありがとう」
なぜに整備長にだけ紅茶を入れてあげてるの?
「僕のは?」
「自分で入れるといいよ」
やはり、ヤキモチを焼いてますな。重畳だ。僕に対する好感度が高いから、ヤキモチを焼くわけだし。
いや~、嬉しい。
「ロールさんの入れる、美味しい紅茶を飲みたいです」
素直に言うのが一番だね。嘘とか言われるのが、キライだもんね。虚言を口にすると、演習にまた送られてしまう。
「しかたないな~」
なんて言いながらも、笑みを見せてくれるからね。
この優しさが、最高です。
整備長は、面白くなさそうな顔ですけども、ロールさんの好感度は、この局内では僕が一番なんだ!
――と、自負出来る。
紅茶を注いでくれる光景。
その幸せな光景に、方々から舌打ちが聞こえてくる。
見渡せば、同僚の男性陣から、怨嗟の視線が僕に再び向けられている。
職場の女神だけでなく、勇者にも好意をもたれやがって! とばかりの怒りを纏っている。ペキリと羽根ペンが折れる音――――、あれ? これはまずいですよ。本気でしばかれそうな勢いですよ。
何という事でしょう。整備長を飛び越えて、僕、この局内で一番嫌われた存在になってしまった気がする……。
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