119 / 604
叙勲の日
PHASE-07
しおりを挟む
「兵士の方達がもうすぐここに来るから、頑張って、避難誘導!」
周りの職員をロールさんが鼓舞する。やはりというべきか、僕たちが一番最後になるんだろうね。まあ、いいけど。
サージャスさん達もいるし。
「おのれ! 大義なき者たちめ!」
「無茶苦茶やってて、大義も何もない。一般人にまで被害が出るところだった」
「少ない被害で、これからの多くの犠牲がなくなるのだ!」
「意味が分からない! こんなのは勇者のやる事じゃない」
「分からないのは、お前がまだ若いからさ」
「年老いても、理解したくない!」
剣が打ち込まれる度に口を交わす、サージャスさんとアルコン。
勇者って名乗るだけあって、結構強いな、あのおっさん。
――でも、サージャスさんの実力を知ってるからね。問題ないってのが正直な感想だな。
「はあ!」
細い腕からは創造出来ない剣圧に、アルコンの体が押される。
「ぬう! 娘、やるな」
「フォローします」
ゲルニオが二人の間に入り込む。
勇者の称号を持つ人間が二人。サージャスさんでも厳しいか? 周りのクエストを受けている方々も、他に対応していて掩護には迎えない。
数はあっちが多いけど、クエスト受諾組の方が押している。
流石はゲイアードさんが選出しただけはある。実力だけじゃなく、避難する方々の事を考えて何人も通さないと、壁になって戦っている。
背に守る者が有りながら戦うのはそれだけで不利だろうけど、それでも戦線を維持している事から、相当の実力者だ。
この方々が本気で戦えるように、避難を急がせないと。
でも、普段から美味い物食べて、悠々自適な生活の方々の体力の無さはいただけない。
庭園から城壁まで辿り着くのにどのくらいを要するつもりなのか。
彼等が目標としている、魔王軍の方々にだけでも、さっさと撤収してもらいたいところ。
「キドさん。皆さんで先に撤退を」
「了解した」
ほら、さっさと空飛んで、城内まで行ってください。
「止めよ」
アルコンの声に呼応して、城内から飛翔し、キドさんに迫る赤い光。
「くっ」
咄嗟に結界をはり、赤い光から振るわれる剣を防ぎ、後ろに下がる。
――というより、下がらされた。
なんだよ、まだいるのか。しかも、城内から出てきたけど、
赤い光の正体は、深紅の鎧の、双剣の使い手。
「流石に、丸腰相手は気が引けるが、ここで逃がすわけにはいかねえ」
「中々の力だな。名は?」
「ダイアン・ヘルツシュ。パルパーナの出だ。勇者ではない。職種は屠竜者」
屠竜者って、すげえ! 初めて見た。カルタさんの魔剣士ほどじゃないにしても、そうそうなれる職種じゃない。
無茶苦茶強いぞ、この人。
右目には眼帯、深紅の左目、ゲイアードさんみたいに光沢のある白髪のボサボサの髪型。
髪型が荒々しさを表現しているみたいで、好戦的な口角の上げ方だ。
屠竜者、竜殺しを生業にしていて、ドラゴンスレイヤーとも呼ばれてる職種。殺めた竜の鱗なんかを売りさばいて莫大な富を得ているとか。
赤い鎧から察するに、火竜あたりの鱗を加工した物かもしれない。
空飛ぶ移動要塞こと、カグラさんの配下である火竜ブラッドシップさんの眷属を討伐したのかな?
火竜を倒せるなら、実力は相当のものだろう。武器を携帯していない。そして、戦闘を出来ない状況の防戦の魔王軍の方々では、幹部といえど手こずるかもしれない。
「抵抗してこない相手ってのもやりにくいが、抵抗しないあんたが悪い」
双剣を交差させつつ、勢い任せにキドさんに振るう。
豪腕のそれに、さしものキドさんも口元が歪んだ。
「いいね、いい顔だ」
「女の歪んだ顔を見て喜ぶなんて、いい趣味とは言えないね」
「チビには興味ないな」
背後から動きを封じようとしたちびっ子の動きを、剣先を向けて止めると、距離をとった。
いくら、攻撃出来ないといっても、そこは魔王幹部である。素人の目で捕捉出来るものではない。
その動きについて行けているダイアンなる人物、この強襲を仕掛けた方々の中で、一番の手練れと考えられる。
「これは、何ともなめた口を利くもんだ、まあ、口上を裏付ける実力はあるようだね」
と、ちびっ子も、ダイアンって方を認めている。
それだけ、現状では相手にしたくないといったところか。
「城内の兵隊は!?」
城内から出てきたんだ。もし命でも奪っているなら、彼と、そして共に行動している強襲者たちは言い逃れが出来ない。現状でもお尋ね者確定だけど、更に極刑も加算される。
「安心しな。眠ってもらってるだけだ、命どころか怪我も負ってねえ。王様のいるところにも足は踏み入れないさ。そこまで馬鹿じゃねえ。だが、王様に言っときな。こんな奴らに勲章をやれば、不満を抱く者達は多く出て来るし、こうやって過激に行動もする」
僕の質問に喋々と返してくれた。
「しかし、それはそちらの勝手な考えであり、それで自分たちの行いが正当性を得れるとは思わないでいただきたい」
と、僕が返す。
「んなこた、ここにいる全員わかってる…………だろうさ。多分……きっと……そうだといいな…………それによ、矜持もある。やはり、魔王軍を賞するのはいただけえね。だからこそ、コイツ等はここで叩く。叙勲なんて無かった事にする。そう思うから勇者殿たちは行動してんのさ」
言うだけ言って、二王に斬りかかる。
台詞からして自分は蚊帳の外、第三者目線での考え方みたいだ。
行動を起こしている時点で、貴男も同類なのに。
豪快な双剣にさしもの二王も、何とも面倒な相手だと、渋面になっている。
* *
「やらせない」
割って入るのは、サージャス。
それに続き、二王の前に立つのは、黒豹の獣人であるルガールと、風雷王テトの護衛である長身の美女。
「おお!? なんだよ! アルコンのおっさん、ちゃんと止めろよ。こっちは二人と、その付き人の相手もやんねえといけねえのに」
「すまんな、中々に強い」
「二人がかりだってのに情けねぇな~」
「悪かったな! アルコンと私でも難しい相手なのだ」
サージャスの東奔西走での奮闘。守る対象の為に必死の形相。
アルコン、ゲルニオの二名がダイアンと合流。
その間に、二王と、二王の護衛二名の前に立ち、下がるように告げるサージャス。
一人で三人と対峙しなければならない状況に、息吹を行い、精神と呼吸を整える。
周りの職員をロールさんが鼓舞する。やはりというべきか、僕たちが一番最後になるんだろうね。まあ、いいけど。
サージャスさん達もいるし。
「おのれ! 大義なき者たちめ!」
「無茶苦茶やってて、大義も何もない。一般人にまで被害が出るところだった」
「少ない被害で、これからの多くの犠牲がなくなるのだ!」
「意味が分からない! こんなのは勇者のやる事じゃない」
「分からないのは、お前がまだ若いからさ」
「年老いても、理解したくない!」
剣が打ち込まれる度に口を交わす、サージャスさんとアルコン。
勇者って名乗るだけあって、結構強いな、あのおっさん。
――でも、サージャスさんの実力を知ってるからね。問題ないってのが正直な感想だな。
「はあ!」
細い腕からは創造出来ない剣圧に、アルコンの体が押される。
「ぬう! 娘、やるな」
「フォローします」
ゲルニオが二人の間に入り込む。
勇者の称号を持つ人間が二人。サージャスさんでも厳しいか? 周りのクエストを受けている方々も、他に対応していて掩護には迎えない。
数はあっちが多いけど、クエスト受諾組の方が押している。
流石はゲイアードさんが選出しただけはある。実力だけじゃなく、避難する方々の事を考えて何人も通さないと、壁になって戦っている。
背に守る者が有りながら戦うのはそれだけで不利だろうけど、それでも戦線を維持している事から、相当の実力者だ。
この方々が本気で戦えるように、避難を急がせないと。
でも、普段から美味い物食べて、悠々自適な生活の方々の体力の無さはいただけない。
庭園から城壁まで辿り着くのにどのくらいを要するつもりなのか。
彼等が目標としている、魔王軍の方々にだけでも、さっさと撤収してもらいたいところ。
「キドさん。皆さんで先に撤退を」
「了解した」
ほら、さっさと空飛んで、城内まで行ってください。
「止めよ」
アルコンの声に呼応して、城内から飛翔し、キドさんに迫る赤い光。
「くっ」
咄嗟に結界をはり、赤い光から振るわれる剣を防ぎ、後ろに下がる。
――というより、下がらされた。
なんだよ、まだいるのか。しかも、城内から出てきたけど、
赤い光の正体は、深紅の鎧の、双剣の使い手。
「流石に、丸腰相手は気が引けるが、ここで逃がすわけにはいかねえ」
「中々の力だな。名は?」
「ダイアン・ヘルツシュ。パルパーナの出だ。勇者ではない。職種は屠竜者」
屠竜者って、すげえ! 初めて見た。カルタさんの魔剣士ほどじゃないにしても、そうそうなれる職種じゃない。
無茶苦茶強いぞ、この人。
右目には眼帯、深紅の左目、ゲイアードさんみたいに光沢のある白髪のボサボサの髪型。
髪型が荒々しさを表現しているみたいで、好戦的な口角の上げ方だ。
屠竜者、竜殺しを生業にしていて、ドラゴンスレイヤーとも呼ばれてる職種。殺めた竜の鱗なんかを売りさばいて莫大な富を得ているとか。
赤い鎧から察するに、火竜あたりの鱗を加工した物かもしれない。
空飛ぶ移動要塞こと、カグラさんの配下である火竜ブラッドシップさんの眷属を討伐したのかな?
火竜を倒せるなら、実力は相当のものだろう。武器を携帯していない。そして、戦闘を出来ない状況の防戦の魔王軍の方々では、幹部といえど手こずるかもしれない。
「抵抗してこない相手ってのもやりにくいが、抵抗しないあんたが悪い」
双剣を交差させつつ、勢い任せにキドさんに振るう。
豪腕のそれに、さしものキドさんも口元が歪んだ。
「いいね、いい顔だ」
「女の歪んだ顔を見て喜ぶなんて、いい趣味とは言えないね」
「チビには興味ないな」
背後から動きを封じようとしたちびっ子の動きを、剣先を向けて止めると、距離をとった。
いくら、攻撃出来ないといっても、そこは魔王幹部である。素人の目で捕捉出来るものではない。
その動きについて行けているダイアンなる人物、この強襲を仕掛けた方々の中で、一番の手練れと考えられる。
「これは、何ともなめた口を利くもんだ、まあ、口上を裏付ける実力はあるようだね」
と、ちびっ子も、ダイアンって方を認めている。
それだけ、現状では相手にしたくないといったところか。
「城内の兵隊は!?」
城内から出てきたんだ。もし命でも奪っているなら、彼と、そして共に行動している強襲者たちは言い逃れが出来ない。現状でもお尋ね者確定だけど、更に極刑も加算される。
「安心しな。眠ってもらってるだけだ、命どころか怪我も負ってねえ。王様のいるところにも足は踏み入れないさ。そこまで馬鹿じゃねえ。だが、王様に言っときな。こんな奴らに勲章をやれば、不満を抱く者達は多く出て来るし、こうやって過激に行動もする」
僕の質問に喋々と返してくれた。
「しかし、それはそちらの勝手な考えであり、それで自分たちの行いが正当性を得れるとは思わないでいただきたい」
と、僕が返す。
「んなこた、ここにいる全員わかってる…………だろうさ。多分……きっと……そうだといいな…………それによ、矜持もある。やはり、魔王軍を賞するのはいただけえね。だからこそ、コイツ等はここで叩く。叙勲なんて無かった事にする。そう思うから勇者殿たちは行動してんのさ」
言うだけ言って、二王に斬りかかる。
台詞からして自分は蚊帳の外、第三者目線での考え方みたいだ。
行動を起こしている時点で、貴男も同類なのに。
豪快な双剣にさしもの二王も、何とも面倒な相手だと、渋面になっている。
* *
「やらせない」
割って入るのは、サージャス。
それに続き、二王の前に立つのは、黒豹の獣人であるルガールと、風雷王テトの護衛である長身の美女。
「おお!? なんだよ! アルコンのおっさん、ちゃんと止めろよ。こっちは二人と、その付き人の相手もやんねえといけねえのに」
「すまんな、中々に強い」
「二人がかりだってのに情けねぇな~」
「悪かったな! アルコンと私でも難しい相手なのだ」
サージャスの東奔西走での奮闘。守る対象の為に必死の形相。
アルコン、ゲルニオの二名がダイアンと合流。
その間に、二王と、二王の護衛二名の前に立ち、下がるように告げるサージャス。
一人で三人と対峙しなければならない状況に、息吹を行い、精神と呼吸を整える。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる