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働く方々
PHASE-03
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「本当に馬鹿。支払える時に素直に支払えばいいのに……」
支払いたくても巨額すぎて苦労している、十六歳の言葉は重い――――。
「助かりました」
「いえ、たまたま王都に用があって。まさか、こんな場面に出くわすなんて、え~と……」
「ああ、不死王さんの時は自己紹介してませんでしたね。ピートマック・ウィザースプーンです」
あの時は、戦闘終わって、熱血劇場始まって、そのままサージャスさんは古都から出て行ったからな。
「ところで王都に用件とは?」
「この借り馬車の積み荷を、魔道開発局に運ぶクエストをやってまして」
そうなんだ。馬車は貸し出された物か。
頑張って、手に入れたのかと、喜んでたんだけどね。
クエスト中の借り物とはいえ、馬車があるのは助かると笑顔だ。
旅の最中に馬車で眠る事も出来て、野宿で夜風に晒されないだけでも助かると、何ともポジティブだ。
この子が目の前にいなかったら、健気な姿を想像して、涙を流しているかもしれない。
全力で応援してあげたいと心から思える。
「中身はなんです?」
「魔石です」
勇者に回すクエストだから、高価な物だね。
壌獣王さんの所とは別の、実力あるフリーランスの魔法使いさんとかに任せている魔石かな?
壌獣王さんは自身の配下の方々が運搬してくれるけど、他は人手がない分、クエストで依頼するからね。
高価な物だと、賊に普通に狙われるけども、勇者が守ってるとなれば易々とは手を出せないからね。
その分、クエストをこなした方への支払いは大きいから、それなりに稼ぎが有る人物でないと、依頼は出せない。
ケチると、賊に奪われる可能性も大きく、大損になるし、こういう時、フリーの人たちって、依頼料をどこまで出すかで苦労しそう……。
いっその事、壌獣王さんと合同でやればいいのに。
魔王軍と一緒にやるってのは、矜持が許さないのかな?
幻獣使いさんは有り難がっていたけども。
――魔道車のハンドルを手にし、サージャスさんの馬車と併走しながら、そんな事を考えてみたりもする――――。
――――。
南門をくぐり抜けると、
「あの、魔道開発局って分かります?」
サージャスさん、初めての王都らしく、車から降りた僕に教えて欲しいと言ってくる。
まあ、後は書類整理ぐらいだし、お昼休憩ももう直ぐだし、一緒について行ってあげよう。
スムーズに支払い促せたのも、サージャスさんのおかげだからね。
整備局に戻り、整備長に了承をもらってから、隣に乗せてもらう。
「さっきの違反者の方、崩れ落ちましたけど、何をしたんです?」
隣席してから、気になった事を聞いてみる。
「ただ、顎先を軽くはたいただけですよ」
簡単に言いますね。僕の位置からは何をしたかなんて、動作すら見えなかったですよ。不死王さんには負けたけども、この子ってやっぱり凄い子なんだな。
ホーリーさんの千五百年に一人の天才って発言も頷ける。
手慣れた感じで手綱を引いてる。楽しいのかな? 笑顔で馬を操っている。
「ボクも頑張って、こんな馬車を手に入れて、勇者としての勤めを果たしたいですね」
荷を運ぶための、恵まれた四肢を持つ馬の背を眺めながら、今後の展望を語る。
かなり先になるだろうけど、頑張って欲しい。
王都に入る際に、身分を証明する為に外套を脱いだ状態のサージャスさん。
量産の皮の鎧に、青銅製のプレートを鎧に沿わせてから、穴を開け、甲冑紐を通して固定している。
明らかに手作りなのが見て取れる。
少しでも防御力を上げるための工夫なのか、見栄えを少しでもよくしたいのか……。いびつな作りに、見てるこっちの心が締め付けられてくる……。
先ほどのバラクーダの軽装鎧。
鋼のプレートがしっかりとリベットで固定されていた上等の物。
それを見た後だから、特に来る物がある。
頑張ってるよな~。この子……。
一応、不死王さんの応援もあったから頑張ってんだよね。
春を鬻ぐとか言い出した時の表情は、見ていて、とても辛かった……。
頑張れ。
――――さっきから、頑張れって感情ばっかりが、芽生えてしまう……。
前向きにクエストをこなしていく、この子を本気で応援していこう。そして、この子をここまで陥れてしまった、男の魔法使いと、そそくさとパーティーを抜けた二人には手痛い罰を与えねば! 公務員として!!
「あ、次の通りを左です」
目抜き通りから、西の通りに手綱を取ってもらう。
――――見えてきました、白亜のドーム型からなる、大きな建造物。
王都の人々の暮らしを豊かにしてくれる、魔道開発局だ。
そこに辿り着くまでには、警務局の方々が立つ四重のゲートを通らないといけない徹底ぶり。
僕は整備局員であるから、証明書を見せればいい。
サージャスさんは、自分の立場と、クエスト時にもらった、魔道開発局に入れるための許可証と、受取書を見せる事で、ゲートを通過。
建物の大きさに目を大きくしているけども、魔術学都市クリネアの出身がそんなに驚く事かな?
大陸の中心ではあるけども、歴史の長さではクリネアの方が遙かに長いし、立派な建築物もあると聞く。
それでもやはり、王都の先端を行くデザインに魅了されているようだ。
周囲をキョロキョロと見渡すところはお上りさん丸出しなので、警務局の方がほほえましく笑みを向けている。
「おや、整備局のウィザースプーン君まで」
「困っていた所を助力してもらったので、お礼に案内をしてきました」
建物まで来ると、兵服の警務局員から、白衣の出で立ちである、魔道開発局員の方々が目立ち始める。
僕たちの前に止まって、白衣をなびかせつつ、挨拶をすると、馬車の後方に回り、中身を確認し始める。
馬車から降りて、それに付き合う僕たち。
サージャスさんは受取書を片手に、白衣の方の確認を待つ。
「流石は勇者殿。損失なく運んでくださいましたね」
笑みを見せて、受取書にサインをするのは、第四研究所主任のブンゴ・リフタスさん。
ボサボサの茶髪に、皺の多い白衣が特徴。
眠たそうな半眼に、目の下のクマが体の不健康さを物語っている。
「寝てないんですか?」
「寝れないよ~その原因つくったの、ウィザースプーン君だからね」
もらった銃は一応、ここで預かってもらっている。
情報公開はしないという約束で、銃を見てもらい、シンプルながら、効果的な武器を作るもんだと、感心し、魔石を粉にして使用するという考えは想像出来なかった。と、ブンゴさん、強い衝撃と感銘を受けたようで、それ以来、様々な魔石を粉砕して実験してるとの事。
第四研究所は魔石を専門にしているという事もあって、壌獣王さん達に触発されているみたいだ。
「新しい武器なんて作らないでくださいよ」
「作らないよ。作れる技術を持っているのに作らない。それが粋ってもんだよ」
格好いいこと言ってるけども、その風体じゃねえ……。二十代後半には見えないですよ。後、十は加えていいくらいだ。
研究のために命削ってるね。
この方々の努力が、僕たちの生活を支えているんだから、頭が上がらない。
暗がりを照らし、食べ物の保存を長期に出来る技術に、魔道車なんて乗り物から、僕たちが出来ない仕事をこなしてくれる勤労君シリーズ。
魔道開発局様々である。
支払いたくても巨額すぎて苦労している、十六歳の言葉は重い――――。
「助かりました」
「いえ、たまたま王都に用があって。まさか、こんな場面に出くわすなんて、え~と……」
「ああ、不死王さんの時は自己紹介してませんでしたね。ピートマック・ウィザースプーンです」
あの時は、戦闘終わって、熱血劇場始まって、そのままサージャスさんは古都から出て行ったからな。
「ところで王都に用件とは?」
「この借り馬車の積み荷を、魔道開発局に運ぶクエストをやってまして」
そうなんだ。馬車は貸し出された物か。
頑張って、手に入れたのかと、喜んでたんだけどね。
クエスト中の借り物とはいえ、馬車があるのは助かると笑顔だ。
旅の最中に馬車で眠る事も出来て、野宿で夜風に晒されないだけでも助かると、何ともポジティブだ。
この子が目の前にいなかったら、健気な姿を想像して、涙を流しているかもしれない。
全力で応援してあげたいと心から思える。
「中身はなんです?」
「魔石です」
勇者に回すクエストだから、高価な物だね。
壌獣王さんの所とは別の、実力あるフリーランスの魔法使いさんとかに任せている魔石かな?
壌獣王さんは自身の配下の方々が運搬してくれるけど、他は人手がない分、クエストで依頼するからね。
高価な物だと、賊に普通に狙われるけども、勇者が守ってるとなれば易々とは手を出せないからね。
その分、クエストをこなした方への支払いは大きいから、それなりに稼ぎが有る人物でないと、依頼は出せない。
ケチると、賊に奪われる可能性も大きく、大損になるし、こういう時、フリーの人たちって、依頼料をどこまで出すかで苦労しそう……。
いっその事、壌獣王さんと合同でやればいいのに。
魔王軍と一緒にやるってのは、矜持が許さないのかな?
幻獣使いさんは有り難がっていたけども。
――魔道車のハンドルを手にし、サージャスさんの馬車と併走しながら、そんな事を考えてみたりもする――――。
――――。
南門をくぐり抜けると、
「あの、魔道開発局って分かります?」
サージャスさん、初めての王都らしく、車から降りた僕に教えて欲しいと言ってくる。
まあ、後は書類整理ぐらいだし、お昼休憩ももう直ぐだし、一緒について行ってあげよう。
スムーズに支払い促せたのも、サージャスさんのおかげだからね。
整備局に戻り、整備長に了承をもらってから、隣に乗せてもらう。
「さっきの違反者の方、崩れ落ちましたけど、何をしたんです?」
隣席してから、気になった事を聞いてみる。
「ただ、顎先を軽くはたいただけですよ」
簡単に言いますね。僕の位置からは何をしたかなんて、動作すら見えなかったですよ。不死王さんには負けたけども、この子ってやっぱり凄い子なんだな。
ホーリーさんの千五百年に一人の天才って発言も頷ける。
手慣れた感じで手綱を引いてる。楽しいのかな? 笑顔で馬を操っている。
「ボクも頑張って、こんな馬車を手に入れて、勇者としての勤めを果たしたいですね」
荷を運ぶための、恵まれた四肢を持つ馬の背を眺めながら、今後の展望を語る。
かなり先になるだろうけど、頑張って欲しい。
王都に入る際に、身分を証明する為に外套を脱いだ状態のサージャスさん。
量産の皮の鎧に、青銅製のプレートを鎧に沿わせてから、穴を開け、甲冑紐を通して固定している。
明らかに手作りなのが見て取れる。
少しでも防御力を上げるための工夫なのか、見栄えを少しでもよくしたいのか……。いびつな作りに、見てるこっちの心が締め付けられてくる……。
先ほどのバラクーダの軽装鎧。
鋼のプレートがしっかりとリベットで固定されていた上等の物。
それを見た後だから、特に来る物がある。
頑張ってるよな~。この子……。
一応、不死王さんの応援もあったから頑張ってんだよね。
春を鬻ぐとか言い出した時の表情は、見ていて、とても辛かった……。
頑張れ。
――――さっきから、頑張れって感情ばっかりが、芽生えてしまう……。
前向きにクエストをこなしていく、この子を本気で応援していこう。そして、この子をここまで陥れてしまった、男の魔法使いと、そそくさとパーティーを抜けた二人には手痛い罰を与えねば! 公務員として!!
「あ、次の通りを左です」
目抜き通りから、西の通りに手綱を取ってもらう。
――――見えてきました、白亜のドーム型からなる、大きな建造物。
王都の人々の暮らしを豊かにしてくれる、魔道開発局だ。
そこに辿り着くまでには、警務局の方々が立つ四重のゲートを通らないといけない徹底ぶり。
僕は整備局員であるから、証明書を見せればいい。
サージャスさんは、自分の立場と、クエスト時にもらった、魔道開発局に入れるための許可証と、受取書を見せる事で、ゲートを通過。
建物の大きさに目を大きくしているけども、魔術学都市クリネアの出身がそんなに驚く事かな?
大陸の中心ではあるけども、歴史の長さではクリネアの方が遙かに長いし、立派な建築物もあると聞く。
それでもやはり、王都の先端を行くデザインに魅了されているようだ。
周囲をキョロキョロと見渡すところはお上りさん丸出しなので、警務局の方がほほえましく笑みを向けている。
「おや、整備局のウィザースプーン君まで」
「困っていた所を助力してもらったので、お礼に案内をしてきました」
建物まで来ると、兵服の警務局員から、白衣の出で立ちである、魔道開発局員の方々が目立ち始める。
僕たちの前に止まって、白衣をなびかせつつ、挨拶をすると、馬車の後方に回り、中身を確認し始める。
馬車から降りて、それに付き合う僕たち。
サージャスさんは受取書を片手に、白衣の方の確認を待つ。
「流石は勇者殿。損失なく運んでくださいましたね」
笑みを見せて、受取書にサインをするのは、第四研究所主任のブンゴ・リフタスさん。
ボサボサの茶髪に、皺の多い白衣が特徴。
眠たそうな半眼に、目の下のクマが体の不健康さを物語っている。
「寝てないんですか?」
「寝れないよ~その原因つくったの、ウィザースプーン君だからね」
もらった銃は一応、ここで預かってもらっている。
情報公開はしないという約束で、銃を見てもらい、シンプルながら、効果的な武器を作るもんだと、感心し、魔石を粉にして使用するという考えは想像出来なかった。と、ブンゴさん、強い衝撃と感銘を受けたようで、それ以来、様々な魔石を粉砕して実験してるとの事。
第四研究所は魔石を専門にしているという事もあって、壌獣王さん達に触発されているみたいだ。
「新しい武器なんて作らないでくださいよ」
「作らないよ。作れる技術を持っているのに作らない。それが粋ってもんだよ」
格好いいこと言ってるけども、その風体じゃねえ……。二十代後半には見えないですよ。後、十は加えていいくらいだ。
研究のために命削ってるね。
この方々の努力が、僕たちの生活を支えているんだから、頭が上がらない。
暗がりを照らし、食べ物の保存を長期に出来る技術に、魔道車なんて乗り物から、僕たちが出来ない仕事をこなしてくれる勤労君シリーズ。
魔道開発局様々である。
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