上 下
96 / 604
ブートキャンプへようこそ♪

PHASE-26

しおりを挟む
「なんか、随分とモテてるね」

「そうですかね?」

「そうだよ~演習はちゃんとまじめにしてたのかな~」

「痛い、痛いです」
 鼻を摘ままれてしまう。

「何を笑ってるのかな~」
 そりゃ、笑うさ。
 ――だって、ロールさん、この状況で怒るって事はヤキモチと考えて良いと思うんだ。嬉しさから笑顔がこぼれるよ。後者であってほしいと願ってよかった。

 お互い、心通じてると考えて良いですか? 合意と見てよろしいですね?

「もう知らない!」
 僕が、笑顔を崩さないものだから、鼻を摘まむの止めて、そっぽ向いてます。
 頬を膨らませましたよ。可愛い! ギュュュウってしたい。

「あのさ……話しをしても、いいかな?」
 おう、ちびっ子、いたのか。
 いいぞ、話せ。僕は今凄く気分が良い。頑張った甲斐があったてもんよ。

「僕たちに二心なんてないから。この事だけは、整備局から、カグラ様に強く言っておいてよ」

「その通りです、常にオープンにしておりますから、整備局の方々の訪問を年中無休で歓迎します」
 キドさんが現れた。
 二人の姿、低頭平身。威厳をどこかに忘れているかのようだ。 

 この二人にとって、カグラさんは絶対に逆らえない存在なんだな。
 まあ、特に、キドさんと配下の方々は怖いだろうね。特にジュラルミンさんの種族とか。不死王さんの所と同様に、燃やされたらエライ事になりそうだもんね。

「その辺りは、我々からも伝えますので」
 整備長のその言葉に、二王が深々と頭を下げている。

「それで、なんで、お二人と皆さんが?」
 大仰しいったらないよ。

「最後に、見せておこうと思ってね」
 何を? ちびっ子は何を僕たちに見せようとしているのか――。
 
 

 ――――とりあえず、銃を作る前に、この森をスムーズに移動出来る物でも開発しないかい? 
 王都の魔道開発局とシンパシー通じるような気もするし、木々を縫って走れる魔道車の小型版を作ろうぜ。
 
 僕はこの一週間の演習で、道無き道を走り回ったから大丈夫だけど、整備長は相変わらずの顔面蒼白。
 本気で、葉煙草やめればいいよ。

 ロールさんに目を向ければ、やはり辛いようで、肩で息をしてる。
 なので、
「大丈夫ですか?」
 って、言うとさ、頬を膨らませるんだよ。可愛すぎる。
 そのリアクション見たさに、歩く合間合間にロールさんに語りかける僕がいる。
 
 これは、本当にモテ期が来たんじゃないかな。
 心が踊るし、久しぶりに僕の脳内では、小さな複数の僕が、中央の櫓太鼓を取り囲んで、小躍りをしている。

「あっ」
 ほら言わんこっちゃない。
 転びそうになったから、僕が体を支えてあげようと動く。

「大丈夫かい? お姉さん」

「ありがとうございます」

「このくらい、お安いご用さ」 
 ――ええと、キドさんは二心を抱いていないけど、ちびっ子は抱いていると――――、そのように、カグラさんに伝えれば良いのかな?
 僕が支えるつもりだったのに! 二人して手をつないじゃって! 
 今度は僕が頬を膨らませる事になってしまいました。リスの頬袋も顔負けだね。
 
 ――――。
 
 久しぶりに砂漠を見た。
 そうだった――。ここは砂漠地帯だったな。油断してると忘れてしまう。
 
 熱風だね……。この森の中とは本当に別世界だ。くっきりと境が目に見えてきそうだ。
 
 ――でだ、こんな場所にわざわざ足を向けさせて、何がしたいのか。出来れば、僕たちがここに立ち入った場所に移動してもらいたかった。
 そしたら、そっちの用事を目にしてさ、さっさと帰れるのに。

「じゃあ、今から僕たちがどうやってこの森を作っていったかを見せてあげるよ」
 おお、それは見てみたい。
 でも、それはガチ勢達の集いで、大魔法の放ち合いが招いた副産物だと理解しているから、わざわざ唱えてもらわなくてもいいんだけど。
 
「今では制限もあるし、演習中だからね。砂漠地帯には、ちょっとした雨くらいしか降らせてなかったけど、これから目にするのはレアだよ」
 そうそう見れる物じゃないのなら、見せてもらいたい。
 現在は新兵、正規兵の演習が行われているから、全ての行程が無事に終えるまでは、無理はしたくないそうだ。
 使用すれば、体力を大きく消費して、演習の監督が出来なくなるらしいからね。

「だから、今回は僕とキキの融合魔法を見せてあげるよ。これ、僕たちの幹部の中でも、目にしているのは、片手の指で数えるくらいしかいないからね。光栄に思いなよ」
 上からだな~。まったく。可愛げないが無いけども、周りの期待感たるや、子供みたいに目を輝かせてるよ。
 まあ、僕も、レアだという事で、高揚しているけどね。

「――では、やるか」

「OK」
 ふわりと二人が宙に浮かぶと、そのまま上昇していく。
 見えなくなる――、という距離ではない。
 動作なんかも理解出来るし、声も聞こえる距離だ。
 
 手をつないで、息を合わせたかのように、残った手を前に向ける。
 
 二王の姿に、皆が固唾を呑み、木々の鳥たちも肌で感じ取っているのか、無理に飛び立つ事もせず、木々に留まっているのが分かる。
 
 森のしじま――――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ
ファンタジー
主人公ゴウキは幼馴染である女勇者クレアのパーティーに属する前衛の拳闘士である。 スラムで育ち喧嘩に明け暮れていたゴウキに声をかけ、特待生として学校に通わせてくれたクレアに恩を感じ、ゴウキは苛烈な戦闘塗れの勇者パーティーに加入して日々活躍していた。 だがクレアは人の良い両親に育てられた人間を疑うことを知らずに育った脳内お花畑の女の子。 そんな彼女のパーティーにはエリート神官で腹黒のリフト、クレアと同じくゴウキと幼馴染の聖女ミリアと、剣聖マリスというリーダーと気持ちを同じくするお人よしの聖人ばかりが揃う。 勇者パーティーの聖人達は普段の立ち振る舞いもさることながら、戦いにおいても「美しい」と言わしめるスマートな戦いぶりに周囲は彼らを国の誇りだと称える。 そんなパーティーでゴウキ一人だけ・・・人を疑い、荒っぽい言動、額にある大きな古傷、『拳鬼』と呼ばれるほどの荒々しく泥臭い戦闘スタイル・・・そんな異色な彼が浮いていた。 周囲からも『清』の中の『濁』だと彼のパーティー在籍を疑問視する声も多い。 素直過ぎる勇者パーティーの面々にゴウキは捻くれ者とカテゴライズされ、パーティーと意見を違えることが多く、衝突を繰り返すが常となっていた。 しかしゴウキはゴウキなりに救世の道を歩めることに誇りを持っており、パーティーを離れようとは思っていなかった。 そんなある日、ゴウキは勇者パーティーをいつの間にか追放処分とされていた。失意の底に沈むゴウキだったが、『濁』なる存在と認知されていると思っていたはずの彼には思いの外人望があることに気付く。 『濁』の存在である自分にも『濁』なりの救世の道があることに気付き、ゴウキは勇者パーティーと決別して己の道を歩み始めるが、流れに流れいつの間にか『マフィア』を率いるようになってしまい、立場の違いから勇者と争うように・・・ 一方、人を疑うことのないクレア達は防波堤となっていたゴウキがいなくなったことで、悪意ある者達の食い物にされ弱体化しつつあった。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

錬金術師カレンはもう妥協しません

山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」 前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。 病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。 自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。 それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。 依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。 王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。 前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。 ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。 仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。 錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。 ※小説家になろうにも投稿中。

超空想~異世界召喚されたのでハッピーエンドを目指します~

有楽 森
ファンタジー
人生最良の日になるはずだった俺は、運命の無慈悲な采配により異世界へと落ちてしまった。  地球に戻りたいのに戻れない。狼モドキな人間と地球人が助けてくれたけど勇者なんて呼ばれて……てか他にも勇者候補がいるなら俺いらないじゃん。  やっとデートまでこぎつけたのに、三年間の努力が水の泡。それにこんな化け物が出てくるとか聞いてないし。  あれ?でも……俺、ここを知ってる?え?へ?どうして俺の記憶通りになったんだ?未来予知?まさかそんなはずはない。でもじゃあ何で俺はこれから起きる事を知ってるんだ?  努力の優等生である中学3年の主人公が何故か異世界に行ってしまい、何故か勇者と呼ばれてしまう。何故か言葉を理解できるし、何故かこれから良くないことが起こるって知っている。  事件に巻き込まれながらも地球に返る為、異世界でできた友人たちの為に、頑張って怪物に立ち向かう。これは中学男子学生が愛のために頑張る恋愛冒険ファンタジーです。 第一章【冬に咲く花】は完結してます。 他のサイトに掲載しているのを、少し書き直して転載してます。若干GL・BL要素がありますが、GL・BLではありません。前半は恋愛色薄めで、ヒロインがヒロインらしくなるのは後半からです。主人公の覚醒?はゆっくり目で、徐々にといった具合です。 *印の箇所は、やや表現がきわどくなっています。ご注意ください。

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。 ☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*) 今後ともよろしくお願い致します🍀

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

処理中です...