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熱砂地帯の二王

PHASE-03

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 幻獣使いビーストテイマーさんは優秀な方なんだろう。砂漠オオトカゲの乗り心地は悪くない。
 四肢を激しく動かして、体が左右に波打つような動きではあるけども、不思議と乗ってる僕たちには振動が伝わってこない。
 
 ラクダや馬なんかよりよっぽど乗りやすい。
 扱いにくい生き物を、丁寧に育てて可愛がり、信頼を得た証拠だろうね。
 
 グライフ君には小馬鹿にされる僕でも、砂漠オオトカゲはちゃんと、僕を乗せて走ってくれる。
 
 大地に波打つ砂漠地帯をわけもなく上り下り、まるで平地を疾走するかのような足の進め方。休むことなく、ひたすら走り続けてくれる。
 
 口を開けば大人一人くらい簡単に飲み込みそうな体躯をもっているから、砂漠生息のモンスターも姿を見ただけで、砂に潜って身を隠す。
 ラクダなら何とか逃げ果せる。かちならばモンスターに挑む力が無い限り、餌になるってところかな。
 かちでこの広大な砂漠地帯を移動するのは、そもそもが自殺行為だけども。
 ラクダでも、周囲に気を配っての移動。倍額払っても、砂漠オオトカゲを選択するのが砂漠の旅での今後のトレンドになるかもしれない。
 
 鞍にのって二刻半ほど、流石にお尻も痛くなってきたけども、目的の場所には無事に到着出来そうだ。
 風景に少しずつ草木が加わってきている。砂漠には不釣り合いな青々とした光景。
 
 ――――光景と言えば、道中、衝撃的な光景も目にしてしまったが……。
 
 砂漠生息地には天敵がいないと考えられるのが、大熊くらいの大きさである、タイラント・デス・ストーカーって呼ばれる、刺されればコロイチな毒を持ったサソリ。
 本来は人間やそのほかの生き物を見たら捕食対象として襲ってくる砂漠生態系の頂点にいる生物だが、唯一の天敵であろう存在が、僕たちが騎乗している砂漠オオトカゲ。
 
 しかし、そこは砂漠の頂点に君臨するプライドか、はたまた空腹だったのかは分からないが、タイラント・デス・ストーカーが僕たちを襲ってきた。
 恐怖の僕たちは、制止させようと手綱を引くも、砂漠オオトカゲは僕たちを乗せたまま加速し、長距離走の給水所感覚で、漆黒の外骨格をバリバリと音を立てて食しはじめた時たるや……。
 
 ピギィ! って鳴き声なのか、外骨格の軋む音だったのかは知らんけども、タイラント・デス・ストーカーの断末魔として、耳に残った……。
 トラウマみたいなものを植え付けられてしまった……。

 ロールさんも整備長も、それ以降、眉間に皺を作って、表情が曇る。
 ちなみに、タイラント・デス・ストーカーの外骨格って、珍重で、鎧や盾などの防具にも使用されて、一流の職人が仕立てれば、宝具にも認定される代物なんだけどね……。バリバリといってたね……。
 脱皮したてだったと思いたいところ……。
 この衝撃的光景は当分、忘れることは出来ないにしても、眼界に広がる風景で、少しでも気分を変えたところ。
 
 ――――――。

 ――――森林地帯である。
 以前までの地図ならば、ここは砂漠地帯でしかなかった。
 だが、今では全くの別物。
 
 更新された、地図を見てみると、未だに砂漠だ……。制作者が怠けたのか? と言われると語弊も出て来る。
 現在進行でこの森林は広がっていっているからだ。
 なので、描き直しても意味が無いと、怠けたのではなく、萎えたというのが正解だろう。
 
 未だに地図にはゲンジ砂漠とだけ名前が記されているだけ。
 
 本来、このゲンジ砂漠は、ヴィン海域同様に、大魔法制限解除域だったんだけども、この森林の発生によって、自然保全の観点より大魔法制限解除域から禁止区域に認定されてしまった。
 
 ガチ勢な方々からは、非難囂々ひなんごうごうだったみたいだけども、そんな方々の今の現状は、ヴィン海域で命の擦り切れる快感に、絶賛、悦に入っている。
 
 うっそうとした木々の前で、砂漠オオトカゲからおりて、足での移動。

「ここで待ってて」
 の一言で、慣らされた砂漠オオトカゲは、勢いよく沙中さちゅうに潜り込み、僕たちが戻ってくるまでお休み状態になるようだ。


「真っ赤ですね」
 隣に立つロールさんに話しかける。

「そうだね」
 と、感嘆の一言。
 
 砂漠の夕日は、王都や古都で見るのとは違うものだ。とにかく真っ赤。夕日だから真っ赤なのは当たり前なんだけども、なんというか、辺りが砂漠っていうのもあるのかな。障害物てきな建造物がないもんだから、ダイレクトに真っ赤な色が目に飛び込んでくる感じだ。
 だからこそ、真っ赤って感想が、真っ先に頭に浮かんできた。
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