52 / 604
胎動
PHASE-13
しおりを挟む
「本当に復活されていたとは……混乱を来すつもりか?」
「何を言う。我は混乱など来たさん。我は義妹に会いに来ただけだ」
混乱はもう来たされております。貴男がこの整備局にダイナミック入室した時から。
「義妹? 何を訳の分からないことを? まあ、昔から貴男様は、訳が分からなかったですが」
おう、なんかカグラさんの見下したような目線での言いよう。ゾクリとしてしまいます。いい意味で。
叱られてみたいという感情が生まれてしまった。
「それで、御身の一部を封じていた、私の主が作りし兵仗は?」
「は? 知らんぞ」
「それを信じろと?」
「信じてもらわねば困る。知らんものは知らん」
やばい。素人の僕でもカグラさんが怒ってるのが分かる。キーンって感じの静けさが、一気に局内に走った。
白く細くて綺麗な指を動かすと、コキコキと骨の鳴る音だけが響いている。
「いやいや、まて、何をするつもりだ? 我は本当に知らんぞ」
焦ってるな。邪神でも、カグラさんは怖いのだろうか?
「では、開放した者達がそれを?」
「そんなことは知らん。だが、我を信仰しているのだ。忌々しい物として、うち捨てたのではないか? それに、それを手にしているのならば、我に伝えるだろう」
「どうだか……徳のある存在ではないでしょう」
グサリと刺したな~。ロールさんに断られて、カグラさんには辛辣な発言を受ける。
そんな、邪神の背中は煤けていた。
まあ、徳がないのは、大いに賛同ですけどね。妹に封じられるんだから。
ズンズン絶対躍進の、カグラさんに迫られて困っているご様子。
正直、怒気を纏っててもいいから、迫られたいと、羨ましがる僕がいる。
「なんなのだ……分かった、しばし待て」
そう言うと、朱肉のついた手で空間に円を描く。
所作で、ンダガランさんが以前使用した魔法と同じと推測出来る。
「あ……」
って、声に出したけども、時すでに遅かった。
空間に出来た暗闇の支配した穴から、最高神祇官のグラドさんが出て来る。
「なんでしょうか? 私、これから日課である、花壇のチューリップに水をやりに行くところだったんですが?」
邪教のトップとは思えない行動だな……。手に如雨露なんか持って…………。
まあ、僕も、サボテンに水をやる事を、朝一の日課としているから、親近感は湧く。
いきなり呼び出されたものの、ロールさんを見るや、〝女神様〟と跪き、祈りを捧げ始め、なぜここに炎竜王が? と、カグラさんの存在に身構えながらも、質問を受けたグラドさんは、邪神同様に知らないと口にした。
――最も厳重であると考えられていた、パンゲアの心臓。
それを奪取するために、グラドさん自らが、信徒を率いて動いたそうだが、封印塚を取り囲むように造られた神殿の中は、肩すかしをくらうほど、抵抗する者は少なかったそうだ。
いても駆け出しクラスの勇者たちによって編成されているのか? と、思えるくらいに脆弱だったそうだ。
封印塚への進入は更に容易で有り、心臓を手にする時も、兵仗はなく、あまりにも容易だったから、罠なのかと考え、本山に戻るまでは警戒を緩めなかったそうだ。
残りの封印塚も同様で有り、塚まわりには結界もなく、むろん各所にも邪神の一部に突き刺されていたであろう兵仗はなかったそうだ。
「その兵仗で刺されてないなら、封印はその時点で解除されてたんじゃないですか?」
気になってしまい、口を開いてしまった。
兵仗もなく、結界もないなら、邪神なんだから、一部だけでもどうにかなったりしないのかと思うのが当然だと思うんだけどね。
「無論可能だが。お前、我が妹の性悪さを理解しておらん」
性悪と耳にして、カグラさんが邪神を睨むと、それを避けるように明後日の方向に視線を向けてから話を続ける。
封印されていた神殿にあった壺的な物。あれが一番やっかいな物だったそうだ。
邪神と意思疎通が出来たのは、心臓を捧げたことで可能となったのだけども、その前の状態は、意思疎通はとれずとも、黒煙状の邪神自体には意志は存在していた。
意志さえあれば、一部を動かすことも本来ならば可能らしいのだが、あの壺、神通力と捉えればいいのか、それを遮断する作りになっていて、神殿自体にもそれと同じ工夫が施されていたそうだ。
なので、どれだけ意志を彼方の封印塚に飛ばそうが、届かなかった。
神殿内で、留まるだけだけ。その神通力が神殿内の寒さの原因だったようだ。
出来て、壺を震わせるくらいだったそうだ。
確かに震えてたね。それに恐怖してたよ僕……。
「一部には意志とかないんですか?」
「あるさ、これまた本来ならな。さっきも言ったであろう。我が妹は性悪だと」
性悪と言って、直ぐさまカグラさんと目線を合わせないように首を稼働させた。とても早かった。
――各部分に宿る意志自体も、全てを統合して壺の中に封じられたそうだ。
意志も届かない物に封じられたから、その意志で、彼方の一部を移動させる事も叶わず、一部が宿す意志も、全て一緒くたに壺に封じられ、彼方の一部は独立して動く事も出来ない。
よって、黒煙の元には自力でたどり着く事はない。
完全に、復活を否定された封印だったそうな。
つまりは、この邪神は、妹様に、相当に嫌われていたんだなと、容易に推測できんだね。
「何を言う。我は混乱など来たさん。我は義妹に会いに来ただけだ」
混乱はもう来たされております。貴男がこの整備局にダイナミック入室した時から。
「義妹? 何を訳の分からないことを? まあ、昔から貴男様は、訳が分からなかったですが」
おう、なんかカグラさんの見下したような目線での言いよう。ゾクリとしてしまいます。いい意味で。
叱られてみたいという感情が生まれてしまった。
「それで、御身の一部を封じていた、私の主が作りし兵仗は?」
「は? 知らんぞ」
「それを信じろと?」
「信じてもらわねば困る。知らんものは知らん」
やばい。素人の僕でもカグラさんが怒ってるのが分かる。キーンって感じの静けさが、一気に局内に走った。
白く細くて綺麗な指を動かすと、コキコキと骨の鳴る音だけが響いている。
「いやいや、まて、何をするつもりだ? 我は本当に知らんぞ」
焦ってるな。邪神でも、カグラさんは怖いのだろうか?
「では、開放した者達がそれを?」
「そんなことは知らん。だが、我を信仰しているのだ。忌々しい物として、うち捨てたのではないか? それに、それを手にしているのならば、我に伝えるだろう」
「どうだか……徳のある存在ではないでしょう」
グサリと刺したな~。ロールさんに断られて、カグラさんには辛辣な発言を受ける。
そんな、邪神の背中は煤けていた。
まあ、徳がないのは、大いに賛同ですけどね。妹に封じられるんだから。
ズンズン絶対躍進の、カグラさんに迫られて困っているご様子。
正直、怒気を纏っててもいいから、迫られたいと、羨ましがる僕がいる。
「なんなのだ……分かった、しばし待て」
そう言うと、朱肉のついた手で空間に円を描く。
所作で、ンダガランさんが以前使用した魔法と同じと推測出来る。
「あ……」
って、声に出したけども、時すでに遅かった。
空間に出来た暗闇の支配した穴から、最高神祇官のグラドさんが出て来る。
「なんでしょうか? 私、これから日課である、花壇のチューリップに水をやりに行くところだったんですが?」
邪教のトップとは思えない行動だな……。手に如雨露なんか持って…………。
まあ、僕も、サボテンに水をやる事を、朝一の日課としているから、親近感は湧く。
いきなり呼び出されたものの、ロールさんを見るや、〝女神様〟と跪き、祈りを捧げ始め、なぜここに炎竜王が? と、カグラさんの存在に身構えながらも、質問を受けたグラドさんは、邪神同様に知らないと口にした。
――最も厳重であると考えられていた、パンゲアの心臓。
それを奪取するために、グラドさん自らが、信徒を率いて動いたそうだが、封印塚を取り囲むように造られた神殿の中は、肩すかしをくらうほど、抵抗する者は少なかったそうだ。
いても駆け出しクラスの勇者たちによって編成されているのか? と、思えるくらいに脆弱だったそうだ。
封印塚への進入は更に容易で有り、心臓を手にする時も、兵仗はなく、あまりにも容易だったから、罠なのかと考え、本山に戻るまでは警戒を緩めなかったそうだ。
残りの封印塚も同様で有り、塚まわりには結界もなく、むろん各所にも邪神の一部に突き刺されていたであろう兵仗はなかったそうだ。
「その兵仗で刺されてないなら、封印はその時点で解除されてたんじゃないですか?」
気になってしまい、口を開いてしまった。
兵仗もなく、結界もないなら、邪神なんだから、一部だけでもどうにかなったりしないのかと思うのが当然だと思うんだけどね。
「無論可能だが。お前、我が妹の性悪さを理解しておらん」
性悪と耳にして、カグラさんが邪神を睨むと、それを避けるように明後日の方向に視線を向けてから話を続ける。
封印されていた神殿にあった壺的な物。あれが一番やっかいな物だったそうだ。
邪神と意思疎通が出来たのは、心臓を捧げたことで可能となったのだけども、その前の状態は、意思疎通はとれずとも、黒煙状の邪神自体には意志は存在していた。
意志さえあれば、一部を動かすことも本来ならば可能らしいのだが、あの壺、神通力と捉えればいいのか、それを遮断する作りになっていて、神殿自体にもそれと同じ工夫が施されていたそうだ。
なので、どれだけ意志を彼方の封印塚に飛ばそうが、届かなかった。
神殿内で、留まるだけだけ。その神通力が神殿内の寒さの原因だったようだ。
出来て、壺を震わせるくらいだったそうだ。
確かに震えてたね。それに恐怖してたよ僕……。
「一部には意志とかないんですか?」
「あるさ、これまた本来ならな。さっきも言ったであろう。我が妹は性悪だと」
性悪と言って、直ぐさまカグラさんと目線を合わせないように首を稼働させた。とても早かった。
――各部分に宿る意志自体も、全てを統合して壺の中に封じられたそうだ。
意志も届かない物に封じられたから、その意志で、彼方の一部を移動させる事も叶わず、一部が宿す意志も、全て一緒くたに壺に封じられ、彼方の一部は独立して動く事も出来ない。
よって、黒煙の元には自力でたどり着く事はない。
完全に、復活を否定された封印だったそうな。
つまりは、この邪神は、妹様に、相当に嫌われていたんだなと、容易に推測できんだね。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています
奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。
生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』
ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。
顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…?
自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。
※エロは後半です
※ムーンライトノベルにも掲載しています
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
真実の愛ならこれくらいできますわよね?
かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの
でもそれは裏切られてしまったわ・・・
夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。
ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?
白紙にする約束だった婚約を破棄されました
あお
恋愛
幼い頃に王族の婚約者となり、人生を捧げされていたアマーリエは、白紙にすると約束されていた婚約が、婚姻予定の半年前になっても白紙にならないことに焦りを覚えていた。
その矢先、学園の卒業パーティで婚約者である第一王子から婚約破棄を宣言される。
破棄だの解消だの白紙だのは後の話し合いでどうにでもなる。まずは婚約がなくなることが先だと婚約破棄を了承したら、王子の浮気相手を虐めた罪で捕まりそうになるところを華麗に躱すアマーリエ。
恩を仇で返した第一王子には、自分の立場をよおく分かって貰わないといけないわね。
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる