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王都の休日・舞台鑑賞
第一幕
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緞帳が上がっていく。
煌びやかだったり、地味だったり、様々な服装を纏った役者達が舞台の上で動き回る。
自信に満ちた、なんの迷いも見せることのない演劇。
まるで、役を行う一人一人に、ご本人が憑依したかのようだ。
――先代の王様が防衛に徹する都を山脈の中腹から眺め、落胆している所から第一幕は始まる。
魔石の発する明かりが調整されて薄暗くなり、王の家臣が手にする松明の炎の明かりが目立つ。
かならず、奪還すると大音声。見ているこちらの体の芯まで届く声。
追撃してくる不死王軍とは別の魔王軍に、我が身を盾にし、王と、その家族を守るために散っていく忠臣たち。
歯を軋らせ、鞘から剣を走らせ体を反転し、怒りにまかせて戦いに挑もうとする王を、必死に諫め、その言葉を耳にしない王の体を数人で担ぎ上げ逃げに徹する。
激昂し、転身を命じる王の言葉を無視して、家臣団は自らを犠牲にしながら懸命に王を逃がす。
二十二日の間、大地を駆け抜けた王とその家族。そして生き残った忠臣と兵の数は一瞥する程度で数えられる程度にまでなっていた。
交易都市である地にたどり着き、その日に王は、この都市を新たなる王都と定めた――。
ここで緞帳が降り、第一幕の終了を伝える。
観客の口からは一斉に弛緩の息が漏れる。演技に見入っていた証拠だ。
見ている側は、緊迫から開放されて、ざわつきが始まる。
持参した飲料を飲んだり、談笑、雉撃ちにお花摘み。次が始まるまでの短い時間で、小用をかたずけていく。
煌びやかだったり、地味だったり、様々な服装を纏った役者達が舞台の上で動き回る。
自信に満ちた、なんの迷いも見せることのない演劇。
まるで、役を行う一人一人に、ご本人が憑依したかのようだ。
――先代の王様が防衛に徹する都を山脈の中腹から眺め、落胆している所から第一幕は始まる。
魔石の発する明かりが調整されて薄暗くなり、王の家臣が手にする松明の炎の明かりが目立つ。
かならず、奪還すると大音声。見ているこちらの体の芯まで届く声。
追撃してくる不死王軍とは別の魔王軍に、我が身を盾にし、王と、その家族を守るために散っていく忠臣たち。
歯を軋らせ、鞘から剣を走らせ体を反転し、怒りにまかせて戦いに挑もうとする王を、必死に諫め、その言葉を耳にしない王の体を数人で担ぎ上げ逃げに徹する。
激昂し、転身を命じる王の言葉を無視して、家臣団は自らを犠牲にしながら懸命に王を逃がす。
二十二日の間、大地を駆け抜けた王とその家族。そして生き残った忠臣と兵の数は一瞥する程度で数えられる程度にまでなっていた。
交易都市である地にたどり着き、その日に王は、この都市を新たなる王都と定めた――。
ここで緞帳が降り、第一幕の終了を伝える。
観客の口からは一斉に弛緩の息が漏れる。演技に見入っていた証拠だ。
見ている側は、緊迫から開放されて、ざわつきが始まる。
持参した飲料を飲んだり、談笑、雉撃ちにお花摘み。次が始まるまでの短い時間で、小用をかたずけていく。
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