31 / 604
王都の休日・舞台鑑賞
第一幕
しおりを挟む
緞帳が上がっていく。
煌びやかだったり、地味だったり、様々な服装を纏った役者達が舞台の上で動き回る。
自信に満ちた、なんの迷いも見せることのない演劇。
まるで、役を行う一人一人に、ご本人が憑依したかのようだ。
――先代の王様が防衛に徹する都を山脈の中腹から眺め、落胆している所から第一幕は始まる。
魔石の発する明かりが調整されて薄暗くなり、王の家臣が手にする松明の炎の明かりが目立つ。
かならず、奪還すると大音声。見ているこちらの体の芯まで届く声。
追撃してくる不死王軍とは別の魔王軍に、我が身を盾にし、王と、その家族を守るために散っていく忠臣たち。
歯を軋らせ、鞘から剣を走らせ体を反転し、怒りにまかせて戦いに挑もうとする王を、必死に諫め、その言葉を耳にしない王の体を数人で担ぎ上げ逃げに徹する。
激昂し、転身を命じる王の言葉を無視して、家臣団は自らを犠牲にしながら懸命に王を逃がす。
二十二日の間、大地を駆け抜けた王とその家族。そして生き残った忠臣と兵の数は一瞥する程度で数えられる程度にまでなっていた。
交易都市である地にたどり着き、その日に王は、この都市を新たなる王都と定めた――。
ここで緞帳が降り、第一幕の終了を伝える。
観客の口からは一斉に弛緩の息が漏れる。演技に見入っていた証拠だ。
見ている側は、緊迫から開放されて、ざわつきが始まる。
持参した飲料を飲んだり、談笑、雉撃ちにお花摘み。次が始まるまでの短い時間で、小用をかたずけていく。
煌びやかだったり、地味だったり、様々な服装を纏った役者達が舞台の上で動き回る。
自信に満ちた、なんの迷いも見せることのない演劇。
まるで、役を行う一人一人に、ご本人が憑依したかのようだ。
――先代の王様が防衛に徹する都を山脈の中腹から眺め、落胆している所から第一幕は始まる。
魔石の発する明かりが調整されて薄暗くなり、王の家臣が手にする松明の炎の明かりが目立つ。
かならず、奪還すると大音声。見ているこちらの体の芯まで届く声。
追撃してくる不死王軍とは別の魔王軍に、我が身を盾にし、王と、その家族を守るために散っていく忠臣たち。
歯を軋らせ、鞘から剣を走らせ体を反転し、怒りにまかせて戦いに挑もうとする王を、必死に諫め、その言葉を耳にしない王の体を数人で担ぎ上げ逃げに徹する。
激昂し、転身を命じる王の言葉を無視して、家臣団は自らを犠牲にしながら懸命に王を逃がす。
二十二日の間、大地を駆け抜けた王とその家族。そして生き残った忠臣と兵の数は一瞥する程度で数えられる程度にまでなっていた。
交易都市である地にたどり着き、その日に王は、この都市を新たなる王都と定めた――。
ここで緞帳が降り、第一幕の終了を伝える。
観客の口からは一斉に弛緩の息が漏れる。演技に見入っていた証拠だ。
見ている側は、緊迫から開放されて、ざわつきが始まる。
持参した飲料を飲んだり、談笑、雉撃ちにお花摘み。次が始まるまでの短い時間で、小用をかたずけていく。
0
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生キッズの魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
西園寺わかばEX
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ
桜井正宗
ファンタジー
帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。
ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。
【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる