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勇者御一行対炎竜王麾下戦闘後

PHASE-07

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「んじゃ。ここからやるか~」
「了解です」
 最初に取りかかるのは、ミリ―さんとンダガランさんのフレアがぶつかり合って、地表に出来た二つのクレーターから。
 
 先ほどポンポンしたポシェットから卵サイズの魔石を二つを手にして、土に埋める。
 
 ――少し離れると、すぐに目を眩ませるほどの青白い輝きが土の中から発生。
 直接見ないように背中を向けて、目を手で隠しつつ、足下の自分の影が伸びるのが確認できる。
 
 次第に影が太陽で作られるサイズに戻ることで、輝きが収まるのを確認。
 
 ゴゴゴゴゴゴゴッと、大きな地鳴りと揺れが生じるので、体の向きを百八十度回頭。
 眼前には土と草のまだらな色彩からなる、魔道開発局が誇る、驚異の魔原動力であるゴーレム勤労君シリーズより、壱號君と弐號君が力仕事ならお任せ! と、ばかりにポージングをきめている。
 
 成人男性の平均身長と比べると、2.5倍くらいの全長を持つ、迫力ある体型が見せるポージング。

「キレてる! キレてるよ! ナイスカット!!」
 こう言うと、喜んでくれて、働き方に俄然やる気を漲らせてくれる。

 壱號君。横向きになって、胸を強調のサイド・チェスト。
 
 弐號君。腹部から脚部は任せておけとばかりのアブドミナル・アンド・サイ。
 
 これが魔道開発局が誇る驚異の魔原動力…………。

 ――続きまして、二体同時に背面見せてのバック・ダブル・バイセップス…………。

 ――――…………。
「いやもうポージングいいから!」
 どれだけ見せつけてくるの。自分たちの体に酔わないでくれるかな。
 
 体型に惚れ惚れしている姿に呆れてしまうし、なんだか頭が重くなる感覚にとらわれてしまって、額に手を添えてしまう。
 
 長嘆息を一つ打ってから、気分を一新させるために、柏手を二度打ち、

「じゃあ、穴埋めからしていこうか」

「「はい、よろこんで!!」」
 大衆居酒屋を思わせる快活のよいシンクロした返事とともに、ゆっくりと脚部を上げて強い一歩を踏み出し、大地を震わせながら、クレーターへと向かう。
 
 位置につくと、土で出来た腕部が横長の弧を描く一枚板の排土板に変形して、それで荒れ地を整地しつつ、クレーター部分に土を盛っていく。
 
 
 ――――――順調だけど、人手に難あり。
 僕たちは作業用手袋を装備して、車に積まれたスコップで小さな穴なんかを埋めて、踏んで固めていくぐらいの事しか出来ないので、二体に比べると大した事は出来ていないのが現実。
 
 僕たちが数個の穴を埋めている間に、壱號君と弐號君は一つ目のクレーターの三分の一を平地にしており、魔道原動力の力を人間に見せつけてくる。
 こうなると、人海戦術の力で対抗したいところだけど、まだ、ロールさん達は到着していない。

「こりゃ無理だ」
 と、早々に面倒くさくなったのか、スコップを土にさして固定し、杖代わりにしつつ葉煙草を楽しみ始めた。
 カグラさんやエルンさん達の真面目さがこの人には必要だな。 
 話すと、面倒くさそうなので、僕は黙々と穴埋めに力を注ぐ。


「そい、そい」
「ちょい、ちょい」
 小気味よく壱號君と弐號君が人間では持つことが出来ない大石や、倒木をどかしていきながら整地を続けていき、一つ目のクレーターが姿を消す。早いものである。
 
 でも、壱號君たちが出来るのは大まかな部分だけ。
 慣らした大地に、長方形に加工した敷石を埋め込んでいって、ならしていくのは、僕たち人間の仕事だ。
 それが出来れば石畳の街道が復活して馬車の往来も問題ないだろう。
 
 
 一つ目が整地されて、敷石の埋め込み作業が出来る段階で、

「おまたせです」
 ロールさんが荷馬車でようやく他の局員の方々と到着。サイドテールの銀髪美人の登場に心が癒やされる。

「遅くないか?」
 偉そうなもんだ。煙草ばっか吸ってたくせに。
 
 ――遅くなった理由として、現在、この道が使用できないことを、王都および、近隣の町村の商人や旅人の方々に説明し、別ルートの利用指示の対応に追われていたそうだ。
 
 結果、到着は夕暮れ前になってしまった。

「本日は作業道具を収める仮設テントを設置して、修繕箇所の優先順位をつけて軽作業を行いましょう」
 テキパキしております。

「優先度はどうします?」
 杖にしていたスコップに背を預けて座っている整備長に、諸手を膝に付けて覗き込むようにロールさんが指示を仰ぐと、

「まあ、あれだ――――クレーター部分をならして……」
 だから、それはもう元気なゴーレム君たちがやってるんでね。この人、街道に被害が出てるクレーターから修繕を始めたもんだから、プラン考えてるのかと思ったけど、言葉の曇り具合から、ノープランのようだ。

「ロールさん。とりあえずコレを」
 頼りになる人に直ぐさま報告書を渡して、どの当たりが被害が大きく、優先すべきかを判断してもらう。

「大地系も使ってるんだね~」
 ね~。使ってるんですよ。僕なんて軽く殺意を抱いたくらいですよ。でも、ロールさんは笑顔を崩さない。
 素敵な美人さんは、やり応えのある仕事が多いということで、生き生きしておられます。

「皆さ~ん」
 ロールさん、報告書を円錐型に丸めてメガホン代わりにすると、全体に指示を出し始めた。
 夕暮れのなか、埋められた一つ目のクレーター部分に人が集まり、数輛の馬車から敷石が運ばれ、埋め込まれて、ならされていく。

 ――――夕日が作り出す逆光の中で、人影が作業をしている。
 そんな中でもロールさんの銀髪は輝きを放つかのように目立っている。
 そんな風景を目にしながら僕と整備長は遅めの昼食をいただいている。
 ――もはや夕食か。
 ロールさんが対応に追われながらも作ってくれた炙りチキンとレタスのサンドイッチ。
 簡単な物だけども、おいしい。美人が作ってくれたとなれば更に数倍の美味さが口に心に喜びを与えてくれる。

「明日から本腰入れていかんとな~」
 まったくです。
 仕事やった感だして、両手を腰に当てて柔軟しつつ、葉煙草に火をつけて食後の一服をうまそうに吸ってますね。
 
 ――明日は、煙草吸う暇なんて休憩以外では与えてやりませんから。
 そう、心に誓う。

 ――――ロールさん達が持参した勤労君シリーズ捌號はちごう君、玖號きゅうごう君たちの活躍もあって、二つのクレーターは見事にその姿を消し、土の平地に埋め込まれていく敷石によって、少しずつだが街道が蘇り始める。

「よっしゃ! 暗くなれば作業は危険。今日はここまでだ! 明日は石畳の修繕がんばるぞ~」
 柏手を数度打って、終了を伝えつつ、これから他の作業に比べると楽だと考えたのか、皆に聞こえるように自分の今後の作業を口にする整備長。
 後半、僕たちなんもしてないからね。感謝の気持ち持ちましょうね。
 
 ――――最後に馬車から降ろされた道具を仮設テントに収納して、本日の作業終了。
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