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驕った創造主

PHASE-1665【轍の先】

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「下らない事に時間を費やして……」

「まあそう言うなよ。確実にこの先は進みたいからな。猶予は半刻しかないから、ここで二十分ほど使ってしまったのは申し訳ないけどさ」

「仕方ない。ここからは速度を上げていくぞ」

「分かった」
 ベルへと返しつつ、肌を密着させて幸せな表情で眠っている野郎の一人のベルトに手を掛ける。

「さ、流石に悪趣味が過ぎるぞ……」
 更に紅潮するベルが可愛かったが、

「ちょっとの間、拝借するだけさ」
 腰に佩いたショートソードが収まる鞘を手にしてベルへと渡す。

「この先、なにがあるか分からないからな」
 ここの連中がカイメラなのは確定している。
 となれば、ネポリスの地下研究施設のようなこともあり得る。
 無手でもなんの問題もないだろうけど、

「ないよりましだろ」

「そうだな」
 踊り子の衣装の帯部分に鞘を差してから抜剣。
 普段のレイピアに比べれば刃幅の広いショートソード。

「悪くない。粗製物だが現状、手に入れられる物では最高の物だ」
 生産性重視ではあるが良いもだとベルからお褒めのお言葉。
 腰に差した剣。
 踊り子の服でその装備だと、RPGならソードダンサーだな。
 スキルで剣の舞とか使えそう。

「あと一つ工夫をしたい」
 言えばベルは羽織り物の一部を手にし、ショートソードで細長く切れば、それをヒールの高い履き物にグルグルと巻き付ける。

「これで少しはマシになった」
 と、継ぎつつ室内を歩く。
 カツカツと音を鳴らしていたがそれが見事に消される。
 装飾品も俺が野郎二人に薔薇味バラみを演じさせている最中に取り外したようで、ベルのストレスとなっていた音の原因が無くなってご満悦だった。

「後は入室してきた方向の立哨だな。入ってこられるのは困るというもの」

「何かしら理由をつけて内鍵をしよう」
 そう返して、入ってきたドアを開いて立哨に説明。
 踊り子はナイーブだから休憩を取る時はとにかく人が入ってこない状況がいいと伝えて内鍵を閉めると述べれば、俺をもの凄く睨んできた。
 施錠した室内で二人きり。
 ナニをするつもりだ! って嫉妬を炯眼にて伝えてくる。
 お前達が思っているような事なら最高なんだけどな!
 立哨を誤魔化しつつ施錠し、ソファで気持ちよく眠っている二人が守っていた方のドアから出て行く。
  
 ――一本道の通路は先ほどと変わらない白亜のもの。
 静かに素早く通路を進む。
 直ぐに次のドアが視界に入ってくる。木製ではなく鉄製からなるものだった。
 念のためにノック。
 ゴンゴンと金属特有の音を響かせるが――、

「――反応なし」
 再度のノックでも反応は返ってこない。
 やおら開けば、

「外だな」
 出れば碁盤目のような道からなり、同じような建物が並ぶという見慣れた光景。
 
 ただ違うのは――、

「ここらへんには立哨がいないな」

「それに灯りもないようだな」

「ベルは見えるか?」

「問題ない」
 ビジョンを発動してから辺りを見るも、これまでと違って建物の入り口に二人組からなる立哨が確認できない。
 他と違って等間隔に設置された灯りもない。
 白色で煌々と照らすこともなく、暗闇が支配する一角。

 明らかに――、

「不気味」
 ホラーテイストだな。
 ビジョンで隈無く周囲を警戒。
 今のところ人影は無し。
 加えてベルの感知能力にも引っかからないので、

「もう少し堂々と動こうか」

「いいだろう」
 残りの時間でどこまでいけるか。
 石畳の上を早歩きで移動。
 布地をグルグル巻きにした履き物の消音は素晴らしく、颯爽と
移動するベルに俺が続く。
 
 ――出てきた建物に沿って碁盤目を曲がる。

「ここにも見張りはいないか」

「そうだな。そしてトール」
 指さす先には大きな扉。
 俺たちが出てきた建物の壁にあったのは――搬入口。

「ここから運ばれてきたわけだな」

「そのようだ」
 言いつつベルは視線を下方へと落とす。
 視線を追えば――轍。

「最高の道しるべじゃないか」
 ――轍の跡をたどれば一つの建物に辿り着く。
 これまた一緒の造り。

「ここには見張りが立っているな」
 二人の立哨の側には篝火があり、最低限の灯りで一帯を照らしている。
 相手がビジョンを使えれば俺たちを発見できるだろうが、そのような反応を見せる事はない。
 それでも念のために身を潜めつつ接近。

「さてトール。どうする?」

「相手は二人――」
 急襲すれば余裕で制圧できる。
 麻酔銃で一人を眠らせてから、残った一人をベルが距離を詰めて当て身でダウンさせる。
 と、提案をすれば首肯が返ってくる。

「さっきの二人と違って雑に扱って悪いけどな」

「時間の節約にはなる。では行こう」
 言えば即行動。

「ちょっと!」
 俺に合わせてほしいね……。
 ベルに合わせるとか難易度が高いんだから――、

「さっ!」
 サプレッサー付きの麻酔銃。
 パシュン、カシャンとわずか生じる発射音とスライド音。
 膝から崩れおちるのを見れば命中したのは直ぐに分かる。

「お、おい! どうした!?」
 驚きの声が上がる次には――声を上げた方も倒れる。
 ベルの手刀一閃。
 首に打ち込まれた立哨は白目を剥いて反応なし。

「死んでないよな?」

「当たり前だろう」
 言葉を交わしながら俺が二人を引っ張って物陰に隠す。

「頼りになるな」

「おう!」
 ピリアのお陰とはいえ、鎧を装備した男二人を軽々と引きずっていく俺の姿に感心してくれる。
 逞しさに惚れてくれてもいいのよ。
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