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驕った創造主

PHASE-1655【繋がってきた】

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「それで――関係性は?」

「あいつは元々、騎鳥隊に所属していた男です」
 身長制限があるエリート部隊の騎鳥隊。
 小柄だが威圧感があったのは、エリート部隊にいたからってことか。
 
 となると、

「ルーフェンスさんが知っているということは、ソドンバアムというあの人物も貴男を知っているってことですね?」
 顔ばれしてしまうから、俺から急いで兜を借りたわけだ。

「知っているもなにも、あいつも自分と同じ立場でしたからね」
 隊長ってことね。
 騎鳥隊の編隊を指揮する存在だったわけだ。
 エリート部隊でしかも隊長。

「なのになぜここで私兵をしているんですかね?」

「あいつはつい最近、規則を破って謹慎処分となったんです」

「謹慎処分ですか」
 ――ルーフェンスさんが語ってくれる。
 謹慎処分となったソドンバアムはそれを不服とし、反省の弁を述べる事もなく、騎鳥隊どころか軍自体を処分を受けたその日に辞めてしまったそうだ。
 騎鳥隊というエリート部隊。しかも隊長の任に就いていたのにあっけない辞め方。
 反省の弁もなかった事から、騎鳥隊のメンバーは情けなさと苛立ちを抱く者が多かったそうで、ルーフェンスさんもその一人とのこと。
 騎鳥隊は百四騎ということだったが、ソドンバアムを入れれば百五騎。
 この地へと訪れた時、ルーフェンスさんは五騎編隊だったな。
 一部隊が五騎編制なら、百五だと綺麗に割切れたのにね~。
 現在はエリート部隊を辞めて、この製造所にて私兵として活躍しているってことか。
 
 まるで、

「就職先が決まっていたみたいですね」

「間違いなく。でなければこんな短期間にこの場にて私兵をやっているなど考えられませんよ」
 それほどまでにここの給金が魅力的なのかな。
 門番とやり取りをした時も、良い給金をもらっているんだから余計な事はしないと言っていたからな。
 袖を通す事も拒むくらいに安定して良い収入があるのは、確かに魅力的だ。
 しかも騎鳥隊の元隊長となれば、再就職の時には有利なステータスになるだろうから、給金は他の面子よりもいいだろうね。

「収入よりも騎鳥隊という矜持にこそ価値があるというのに!」
 ルーフェンスさんは歯を軋らせる。

「人にはそれぞれの考え方と価値観がありますからね。ソドンバアムなる人物は生活を豊かにしたいと考えたんでしょう」

「向上心と物欲は人より強かったのは間違いないです」
 同じ隊長クラスだからソドンバアムの人間性も理解はしているようだが、騎鳥隊を誉れと思っているルーフェンスさんの怒りは徐々に強くなっているようで、言葉が返ってくる度に荒いものになっていく。

 それにしても――、

「一体なにをやらかして謹慎処分になったんですか?」

「隊長でありながらあの男は空での巡回中に突如、編隊から離れてしまったのです」

「ほうほう」

「一日以上、音信不通となり、戻ってきた時には軽い謝罪だけ。追求してもだんまりでしてね。それで謹慎処分になったのですが、それに激怒して辞めてしまったのです」
 逆ギレのお手本だな。

「それはいつ頃だったんです」

「公しゃ――オルト殿たちがこのロイル領を訪れた前日でした」

「おん?」
 前日。

「ソドンバアムという人物は巡回中に編隊から外れて丸一日ほどいなくなったと言いましたね」

「はい」
 リレントレス・アウルに騎鳥した人物が丸一日いなくなっていた。
 それも俺たちが訪れる一日前の出来事。
 で、この製造所で私兵として即再就職。
 ――……スティミュラントはベルセルクのキノコに似た効果を持っているとガリオン。
 そしてこの場所のどこかにゴロ太がいる。
 王都から馬で八日はかかるとされるロイル領。
 その王都から出て既にゴロ太がこの地――この製造所のどこかにいる。
 ツッカーヴァッテならあっという間にこの地に来る事が出来た。
 事前に計画を立てておけば、リレントレス・アウルでもそういった芸当が可能かもしれない。

「――なんか繋がってきたな」
 独白――のつもりだったが。

「その様だな」
 ベルが拾ってくれる。
 俺とルーフェンスさんの会話からベルも理解したご様子。
 ゴロ太をここへと連れてきたのは十中八九ソドンバアムという目の前で金持ち連中を制止している男。
 あの男からは聞き出さないといけない事があるようだ。
 目下の標的はあいつとなりそうだし、この製造所の連中がカイメラのメンバーからなっているという可能性も大きい。
 というか、こっちも十中八九そうだろう。
 お馬鹿のカリオネル。破邪の獅子王牙に力を提供していた者達。
 ミルド領では、魔術学都市ネポリスにジャンパーという上位の転移魔法を利用して入る事ができる研究施設を密かに建造し、中で危ない実験をしていた組織。
 ムアーってのもカイメラのメンバーってところか。
 ゲッコーさん命名のジョン・ドゥその人と出会えたかもしれない。

「アップ、まだ我慢だからな」

「問題ない」
 俺たちの話を耳にしていても、ベルは発言どおり冷静。
 場を凍りつかせるような圧が体から漏れ出ることもない。
 ここまで来て焦りから失態をおかせば、それこそ今までの我慢が無駄になるってのは理解してくれているようだ。

「オルトには散々、世話になっているからな」

「お、おう」
 我慢というより、俺への配慮の方が大きかったご様子。
 肩越しに俺を見てくるベル。
 薄地のフェイスベールの奥では、優しさのある微笑みで俺を見てくれていた。
 これからが大事な時だというのに、そんな素敵な微笑みを向けられれば、俺の鼓動がヘビメタのドラム並に激しくなるってもんですよ。
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