上 下
1,614 / 1,668
驕った創造主

PHASE-1614【内のギルドは頑張ってるね】

しおりを挟む
 ブリオレに対して怒りを抱きつつも、二人の後に続く。
 そんな最中、俺の左肩と背後では、フシュゥゥゥゥゥゥ――と、蒸気機関を思わせるような呼気。
 ミルモンとジージーが怒りを体外へと吐き出しているようだ。
 そんな呼気が気になり耳障りだと思ったようで、

「おい、お前等はお呼びじゃねえよ。アップちゃんはお前等より俺を選んだんだからよ。このギルドで仕事を貰いたいなら受付に行きな。俺とアップちゃんの楽しい時間を妨げるなら痛い目だけじゃ済まねえぞ」
 本当に言うね~。
 良かったよコクリコを連れてこなくて。
 ここにいたら間違いなくそのアホ面に、発言を許すことなくミスリルフライパンを叩き込んでいたことだろう。
 というか、こっちの強面であるガリオンを見てもその態度が揺るがないのは流石に鈍感すぎるだろう。
 それとも似たような風貌だから免疫があるのかね~。小馬鹿にしてたくらいだし。
 相手の膂力を推し量ることも出来ないレベルのようだな。

「アップ。どうする? 出るか」

「おい! ふざけた提案だしてんじゃねえぞガキ!」
 なんかあれば直ぐ恫喝。
 こうやって今まで好き勝手やってたんだろう。

「構わない。情報を得るのは大事だ」

「とまあ、アップちゃんは俺と一緒にいたいそうだ。美人ちゃんのこの態度に免じて今の発言は許してやる。さっさと他を当たりな」
 ――……ぬぅ……。

「アップ」

「なんだ?」

「得るものが無いなら、その後は好きにしていいから」

「分かった」

「でも良ければ俺に譲ってね」

「検討しよう」

「二人でなに話してんだ? おら、お前等はあっち行け」
 羽虫でも見るかのように、シッシッと俺達を手で追い払うブリオレ。
 これ以上はベルの邪魔にもなるので、我慢しよう。
 それにベルだ。変な事をされようものなら、される前に制圧するだろう。
 その安心感は絶対だ。まあ、変なことが起きようものなら俺が一気にぶっ飛ばすけどね!
 
 ――大テーブルから少し距離を取り、気怠そうな受付のお姉さんと向かい合う。

「災難だったね。内の最強の一角に目をつけられるなんて。あの美人さんも大変かもね」
 内の最強の一角とか言われても、内の最強をどうこう出来るとは思えないけどね。
 運が無かったと諦めなよ。という言い様……。受付の怠慢も大概だな。
 本来ならギルマスなどの責任者を呼んで、新顔のフォローをするもんだろうに。
 全体的にレベルが低い。

「ガリオン。こんな所で有益な情報が得られのか?」

「ここの連中がゲスってのは分かった。ならゲス通しが共有する情報ってのを得られるかもしれん」
 蛇の道は蛇ってか。

「で、ここには何しに来たんだい新顔さん達。明らかに新米じゃないよね。修羅場は潜ってる感じだもの。それに装備も新米が手にするようなモノじゃないし」
 流石は受付。
 全体的なレベルは低いけども、最低限の目利きは持っているみたいだ。
 ブリオレ相手に臆してなかったのが何よりの証拠だそうな。
 あんなのに臆してたら魔王軍となんて戦えるかっての。

「ここいらで受けられる仕事ってのはなんだ? 掲示板の依頼書を見る限りでは討伐系は少ないようだが」
 と、ガリオン。

「ここはロイルの中心地。治安はいいから野盗やモンスター討伐なんてのはないね。中心地から離れた村や町ならそんなのもあるだろうけどさ」

「そこでの活動とかは?」

「ここのギルドはそんな面倒なことはしないよ」

「面倒ですか」
 冒険者はそういったところに浪漫を抱いたりするものだろう。
 少なくとも俺のとこのギルドメンバーは、いろんなクエストをこなして成長してくれている。

「ここは安定しているからね。わざわざ汚くて面倒なことはしない。依頼は護衛が殆どだよ。大人数で動くから野盗も襲ってくることがない」
 特に王都と取引をする場合、道中は治安がよいから護衛も気楽で良い。
 収入も大きいから旨味しかないそうだ。

 ――……その治安がいいのって……、

「王都の連中があくせくと働いてくれているから道中も安全で楽に護衛が出来るのよ。王都のギルド連中には感謝しないとね」
 って、言うけども、受付嬢の顔は小馬鹿にしたもの。
 バカみたいに真面目に働くのと、可能な限り楽をして金を得るなら後者だって感じだな。
 内のギルドメンバーの努力が巡り巡ってコイツ等の仕事を楽にしているわけだ。
 誇らしいよ。
 ギルドの皆が励んでくれているから、街道を利用する人々は安心して活動できるんだからな。
 
 ――……それはそれとして、ムカつく受付嬢だ。

「どうしたんだい?」

「いえ、別に。それで仕事となると」

「いま言ったけど、ここは積荷の護衛が殆ど。このギルドは主にクルーグ商会の商隊護衛をしているよ」
 出たなクルーグ商会。
 王都やその周辺の商人だけでなく、さっき話をしてきたこの都市の商人さん達もいい顔をしなかった嫌われ商会。
 
 上空から見た時は、商魂たくましく活気ある声を上げながら馬車を走らせてもいたようだが、ここまで嫌われているなんてな。

「最近は特に稼ぎが大きいからね。このギルドで活動を考えているなら、クルーグ商会の皆さんには腰を低くすることだね」
 この辺りで大きな商会であり、尚且つ最近は更に活動の範囲も広げて利益を生んでいる。
 だからこそ、この地の領主である伯爵様もクルーグ商会にはもっと励んでもらいたいからと後方で支援をしている――とのこと。
 
 なるほどね。だから俺達のギルドハウスにハダン伯が自ら乗り込んで来て、ポーションの独占契約をしつこく交渉してきたわけだ。
 商会の発展が領地の発展にも繋がるって考えだったんだろうな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...