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驕った創造主

PHASE-1613【程度は低い】

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「トーじゃなかったオルト君」

「はいはい。なんでしょうかワックさん」
 俺の考えた名前の由来を知りたいんですか?

「僕は中までついていった方がいいかな?」
 ギルドハウス内でなにかあった場合、足手まといになるかもしれないと不安げだけども、

「問題ないですよ。ただ話しをするだけなんですからね。俺達の側にいてくれればなんの心配もありませんよ」

「分かった。皆といるなら安心だね」
 そう言うと自分も偽名を欲しいとの事なので、ワックさんにはクボッタと名をつけてあげる。

 気を取り直して、

「お邪魔しますよ」
 スイングドアってのは何処のギルドでも同じようなもんだな。
 先頭のガリオンに並び、そして一歩前へと踏み出してから俺が一番にギルド内へと入る。

 昼間ではあるが、喧騒がするくらいには人がいる。
 でも俺達が入れば、それを合図にしたとばかりに静まり返る。
 見たことのない連中が入ってきた。と、こちらを射抜いてくる目力。

「酒くさ……」
 酒気がハウス一階に漂っている。
 この鼻にツンとくるニオイ――安酒だな。
 ギムロンが纏わせている酒気とは別物。ギムロンのはマイルドな感じだからな。
 
 ゲッコーさんが蔵元を務める王都の酒の方が、ここで飲まれている代物より上だというのがニオイからでも分かるってもんだ。
 
 にしてもガラが悪いな。
 ギルドっていうより、愚連隊の集まりって言った方がしっくりとくる。
 
 受付のお姉さんは、内のギルドの受付と違ってやる気がない。
 気怠そうにカウンターに突っ伏し、顔だけを上げて俺達を見てくるだけ。
 挨拶も無ければ営業スマイルを顔に貼り付けるってこともない。

「「「「おおっ!」」」」
 といったリアクションが一階全体から上がるのは、俺達に遅れてベルが入ってきたから。
 酒臭い野郎共の顔がにやけたモノになりましたよ……。

「おいガリオン」

「なんだ? ゆう――じゃなかった。ええっと――オルト」

「ここ本当にギルドか?」

「ギルドハウスと看板があったからな。ギルドだろう」
 俺の知ってるギルド。
 俺が会頭を務める【雷帝の戦槌】
 エンドリュー候のバランド領で活動する【シークランナー】
 広大なミルド領の大手ギルドであり、三本柱と称される【白狼の宴】【オグンの金床】【アーモリー・パライゾ】
 ここのギルマス達とは話もしたし、ギルドメンバーも目にしているが、皆、気の良い連中ばかり。
 でもここの連中は敵愾心まる出しだし、とびきりの美人を見ればニタニタとした表情になる。

 ――うむ。

「間違いなく仲良くなれそうにないぞ。ガリオン」

「まあそう言うな。情報は欲しいんだろう」

「だな」
 嫌々でも話は聞かないとな。

 まずは、

「どうも、メメッソに初めて来ました。冒険者のオルト・エーンスロープとその仲間達です」
 向こうの受付には出来ない営業スマイルを皆さんに向けてあげる。
 俺をお手本にしろとばかりに。
 
 ――…………。

「ハッ! お上りさんかよ」
 そこそこの間があったと思ったら馬鹿にする声が返ってくる。
 確かに発展はしている都市ではあるけども、こちとら王都で活動しているし、なによりここよりも大規模で尚且つ発展している領地の領主なんだけども。

「いや~すみませんね。まだまだ右も左も分からない若輩者です」
 腰は低くしますよ。
 下から下からな対応をしますよ。

「お上りには勿体ないくらいの女を連れてんな。そんなひょろガキより俺と行動しねえか? たっぷりと稼いでるからよ。苦労はさせねえぜ」
 ひょろガキ……。
 言うね~。気に入ったよコイツ。
 あまりにもストレートに言われると、そのアホ面にストレートを打ち込みたくなってくるね。

 俺達の前へと現れた一人の男。
 二メートル近い背丈。隆起した筋肉。
 それらを守るのは、胸部と肩を覆うレザーアーマー。
 腰にぶら下げる得物は手斧。
 完全なるパワーファイターだな。
 しかもおつむが残念なタイプ。
 自分の強さによほどの自信があるみたいで、その自惚れのままにベルへと近づけば、舐め回すように体全体を見てくる。
 特に大っきなお胸様に何度も視線を向けていた。
 この時点で俺はコイツとは完全なる敵対関係になった。

「向こうで俺の相手でもしてくれよ」
 お前よりも鍛えまくった王都の連中であっても、そんな大それた事をベルには言えないけどな。
 その証拠とばかりに、強者であるガリオンが引きつった表情になっている。
 ベルのエンレージがMAXになるところだけは見たくないようだな。
 目の前の脳筋は、ガリオンの引きつった表情が自分に気圧されているからと勘違いしているようで、ガリオンに対しても小馬鹿にした笑みを見せている。
 後でガリオンがしばき倒すだろうな。こんな軽口を叩くヤツは。
 
 そんな事を思っていれば、

「どのような相手をすれば良い?」

「へ?」
 何を言っているのだろうかベルさん。

「お、おい――ベ、アップ?」

「話を聞けるなら可能な事は受け入れよう」
 はぁ!?

「分かってるじゃねえか」
 ニタニタとした笑みに殺意が湧いてくる。

「酌の一つでもすればいいか?」

「まあ、それでもいいけどよ。出来れば密着して頼むわ。楽しい話しからしっぽりといこうや。金が欲しいなら好きなだけくれてやるぞ。このギルドでも俺は上澄みだしな」

「それは本当か?」

「おうよ! なあ!」
 野太い声が響けば、ハウス内にいる連中からは頷きが返ってくる。
 下卑た笑みも加えて。
 なんだろうか、このむさいのがベルと良い感じになったら、そのおこぼれでも貰おうとしているのだろうか。
 なんと程度の低い奴等が集まったギルドか……。

「で、美人ちゃん。名前はなんてんだい?」

「アップ・ファウンテンという」

「アップちゃんかい。とりあえず端の大テーブルに行こうか。あそこはこのブリオレ専用みたいなもんだからよ」
 言えば馴れ馴れしくベルの肩に手を回して歩き出す……。
 驚くのはベルがこれに対して眉一つ動かさずに従っているという事……。
 王都在住のギルドメンバーがこれを見れば、驚愕したことだろう。

 で、ベルが素直だから脈有りと思ったのか、脳筋男ことブリオレは何とも嬉しそうにテーブルへと足を進める。
 ブリオレ――ね。
 覚えておこう。
 ガリオンよりも先に俺がボコボコにするまでの間はな!
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