1,592 / 1,668
天空要塞
PHASE-1592【随行者】
しおりを挟む
――さてと。
――皆して広間から移動しての――、
「帰ります」
「次に出会う時は、互いに背中を預けながらの戦場ということで」
「喜んで委ねますね」
「いいわよ」
と、クロウス氏と戦った謁見の間にてベスティリスに別れの挨拶。
いいわよ――の妖艶な言い様に、朝っぱらから俺のERO値が上がる上がる。
「勇者としての顔で対応してもらいたいですね」
「本当だよ!」
はいはい、反省しますよ。いつもの如く二人して怒らないでいただきたい。
「男前が上がったね。ケサランパサラン」
「そっちこそ。コウモリ」
相対する方では、ポームスがベスティリスの側でちびっ子ワイバーンに騎乗して待機。
俺の左肩に座るミルモンと棘のある声音でやり取り。
そうなればベスティリスは第二ラウンドが始まるのかと不安げ。
でも、昨日よりはまだ穏やかな感じだ。
二人揃って腫れ上がった顔。ライバル関係だからだろう。相手が回復をしないなら自分も意地でもしないってのが伝わってくる。
ポームスもゲッコーさんのアドバイスを受けて寝なかったみたいだし。
腫れや痛みが理由でもあるのだろうけど、戦いの興奮で眠れなかったってのもあるんだろうな。
「次に会った時は完勝させてもらうよ」
「は! 言ってなよ。側付きなんかじゃ夢のまた夢だけどね。最前線で活動するオイラは今以上になるからね。次に会う時は天壌の差ってやつさ」
「はいはい。二人ともそこまで。俺と翼幻王殿との話が進まないからね」
「では話を戻して。お互いが協力関係となるわけだから、こちらからも助力をしたい」
「助力ですか?」
弁償もしなくていいし、コクリコには高価な魔道具を賜った。
十分なんだけどね。
「こちらから二名を同行者として出したいと思うのだけれど」
「二人の同行者ですか?」
「ええ、少なすぎて申し訳ないけどね」
本来なら大隊規模の兵員を動かしてやりたいが、現状は秘密協定みたいなもの。当然ながら大げさには動かせない。
なので二人。
この二人ってのは、こっちサイドとベスティリスサイドとの関係性を維持するための役割なんだろうね。
「それで、その二人というのは?」
「まずは――」
チラッと横を見るベスティリス。
昨日と一緒の定位置に立つのは、盆を持っていた美人ストームトルーバー。
「ミルディ」
「はい」
ベスティリスがそう呼べば、俺の方へと近づき典雅な一礼。
「そのミルディを王都に派遣させてもらいたいのよ。妾の最も側にいる者だから実力は確かよ。戦闘もだけど、それ以上に内務に長けている優秀な子よ。急な申し出だから、そちらの王も間者と疑うかもしれないけど、そこは勇者が取り成してくれれば助かるわね」
と、ここでも羊皮紙。
ミルディという名のフェイレンの才が書かれたものらしい。
推薦状や履歴書みたいなもんだな。
「分かりました。もし宜しければ、内のギルド預かりという体でいいでしょうか。城勤めよりも自由だと思います。なにより様々な種族が活動していますからね」
「それは願ってもないわね。様々な種族というのも好感が持てるし」
「今までとは違いますよ」
驕り高ぶった人間により、亜人達が苦しめられた時代もあったというのは知っている。
俺達のギルドは、そんな壁を取っ払っていくからね。
「唯才是挙が第一なので」
「素晴らしい。才なら妾が保証する。その子のことを宜しくお願い」
「はい」
横に立つミルディさんに軽く会釈をすれば、
「ミルディ・ホーネスです。お気軽にミルディとお呼びください。ベスティリス様と勇者殿との関係性を更に強固なものとするため励む所存でございます」
「よろしくお願いします。内務に秀でているとなれば、先生――ギルド副会頭も喜ぶことでしょう」
「敬語も結構です」
「ああ、はい。あ、うん。分かった。よろしくミルディ」
「はい」
微笑みが返ってくる。
ライトグリーンの艶やかな髪は、お団子タイプのアップヘア。
碧眼で切れ長の瞳。
微笑みの中に見える強者としての風格も感じ取れるフェイレン。
うむ。美しい。
戦闘だけでなく内務にも長けているのなら、先生の近くで活躍してもらうのがいいだろう。
適材適所の神であり、人物の内面も見極めることが可能な先生なら、ミルディを上手く起用してくれることだろう。
念のため、監視することも考えておかないとな。
信じてはいるけど、一応、魔王軍でもあるからな。
先生の護衛メンバーには、その辺のこともお願いしとかないとな。
「念のために監視はつけたほうがいいと思うの」
「は!? へっ!?」
俺の考えは筒抜けか!? まさかベスティリスから言ってくるなんてね。
「妾たちはまだ魔王軍に席を置いているわけだし、監視は必要。そっちのほうがお互いに気を遣わなくていいでしょうからね」
腹の探り合いから疑心暗鬼になるよりは、最初から監視対象としておいたほうが良いという提案は有り難いね。
「お互い波風が立たないように、その提案に賛同させていただきます」
同様の考えで助かったよ。
ミルディも了承してくれる。
お互いが信頼しあうためには、まずはその土台作りが大事だからな。
付き合いの中で生まれる絆が信頼へと繋がっていくことで、監視対象という立場も自然と無くなるってもんだ。
――皆して広間から移動しての――、
「帰ります」
「次に出会う時は、互いに背中を預けながらの戦場ということで」
「喜んで委ねますね」
「いいわよ」
と、クロウス氏と戦った謁見の間にてベスティリスに別れの挨拶。
いいわよ――の妖艶な言い様に、朝っぱらから俺のERO値が上がる上がる。
「勇者としての顔で対応してもらいたいですね」
「本当だよ!」
はいはい、反省しますよ。いつもの如く二人して怒らないでいただきたい。
「男前が上がったね。ケサランパサラン」
「そっちこそ。コウモリ」
相対する方では、ポームスがベスティリスの側でちびっ子ワイバーンに騎乗して待機。
俺の左肩に座るミルモンと棘のある声音でやり取り。
そうなればベスティリスは第二ラウンドが始まるのかと不安げ。
でも、昨日よりはまだ穏やかな感じだ。
二人揃って腫れ上がった顔。ライバル関係だからだろう。相手が回復をしないなら自分も意地でもしないってのが伝わってくる。
ポームスもゲッコーさんのアドバイスを受けて寝なかったみたいだし。
腫れや痛みが理由でもあるのだろうけど、戦いの興奮で眠れなかったってのもあるんだろうな。
「次に会った時は完勝させてもらうよ」
「は! 言ってなよ。側付きなんかじゃ夢のまた夢だけどね。最前線で活動するオイラは今以上になるからね。次に会う時は天壌の差ってやつさ」
「はいはい。二人ともそこまで。俺と翼幻王殿との話が進まないからね」
「では話を戻して。お互いが協力関係となるわけだから、こちらからも助力をしたい」
「助力ですか?」
弁償もしなくていいし、コクリコには高価な魔道具を賜った。
十分なんだけどね。
「こちらから二名を同行者として出したいと思うのだけれど」
「二人の同行者ですか?」
「ええ、少なすぎて申し訳ないけどね」
本来なら大隊規模の兵員を動かしてやりたいが、現状は秘密協定みたいなもの。当然ながら大げさには動かせない。
なので二人。
この二人ってのは、こっちサイドとベスティリスサイドとの関係性を維持するための役割なんだろうね。
「それで、その二人というのは?」
「まずは――」
チラッと横を見るベスティリス。
昨日と一緒の定位置に立つのは、盆を持っていた美人ストームトルーバー。
「ミルディ」
「はい」
ベスティリスがそう呼べば、俺の方へと近づき典雅な一礼。
「そのミルディを王都に派遣させてもらいたいのよ。妾の最も側にいる者だから実力は確かよ。戦闘もだけど、それ以上に内務に長けている優秀な子よ。急な申し出だから、そちらの王も間者と疑うかもしれないけど、そこは勇者が取り成してくれれば助かるわね」
と、ここでも羊皮紙。
ミルディという名のフェイレンの才が書かれたものらしい。
推薦状や履歴書みたいなもんだな。
「分かりました。もし宜しければ、内のギルド預かりという体でいいでしょうか。城勤めよりも自由だと思います。なにより様々な種族が活動していますからね」
「それは願ってもないわね。様々な種族というのも好感が持てるし」
「今までとは違いますよ」
驕り高ぶった人間により、亜人達が苦しめられた時代もあったというのは知っている。
俺達のギルドは、そんな壁を取っ払っていくからね。
「唯才是挙が第一なので」
「素晴らしい。才なら妾が保証する。その子のことを宜しくお願い」
「はい」
横に立つミルディさんに軽く会釈をすれば、
「ミルディ・ホーネスです。お気軽にミルディとお呼びください。ベスティリス様と勇者殿との関係性を更に強固なものとするため励む所存でございます」
「よろしくお願いします。内務に秀でているとなれば、先生――ギルド副会頭も喜ぶことでしょう」
「敬語も結構です」
「ああ、はい。あ、うん。分かった。よろしくミルディ」
「はい」
微笑みが返ってくる。
ライトグリーンの艶やかな髪は、お団子タイプのアップヘア。
碧眼で切れ長の瞳。
微笑みの中に見える強者としての風格も感じ取れるフェイレン。
うむ。美しい。
戦闘だけでなく内務にも長けているのなら、先生の近くで活躍してもらうのがいいだろう。
適材適所の神であり、人物の内面も見極めることが可能な先生なら、ミルディを上手く起用してくれることだろう。
念のため、監視することも考えておかないとな。
信じてはいるけど、一応、魔王軍でもあるからな。
先生の護衛メンバーには、その辺のこともお願いしとかないとな。
「念のために監視はつけたほうがいいと思うの」
「は!? へっ!?」
俺の考えは筒抜けか!? まさかベスティリスから言ってくるなんてね。
「妾たちはまだ魔王軍に席を置いているわけだし、監視は必要。そっちのほうがお互いに気を遣わなくていいでしょうからね」
腹の探り合いから疑心暗鬼になるよりは、最初から監視対象としておいたほうが良いという提案は有り難いね。
「お互い波風が立たないように、その提案に賛同させていただきます」
同様の考えで助かったよ。
ミルディも了承してくれる。
お互いが信頼しあうためには、まずはその土台作りが大事だからな。
付き合いの中で生まれる絆が信頼へと繋がっていくことで、監視対象という立場も自然と無くなるってもんだ。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる