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天空要塞

PHASE-1591【デコピン】

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 ベルと似たポンコツなこの要塞の主様。
 となれば、好みのタイプも似た感じだろうな。
 ベルが心を射抜かれたゴロ太と出会ったら、文字通り飛び上がって喜ぶことだろう。
 間違いなくゴロ太の虜になってしまうね。
 ポームスもモフモフだし。
 
 ゴロ太はこっちサイドとベスティリス達との間を取り持ってくれる友好の象徴となってくれるかもしれない。
 
 まあそれは追々、同盟が大々的に世間へと広がった時だな。
 
 いまは――、

「決着だからな。後腐れないように二人とも握手で終わろうか」
 提案すれば、唇を尖らせながらも、

「兄ちゃんが言うなら仕方ない」
 渋々とだが受け入れるミルモン。
 ポームスもベスティリスに促されて従う。
 やはり相性は良いようだな。二人揃って同じ顔なんだから。
 唇を尖らせ、そっぽを向きながらもお互いに近づき、さっと手を出して握手を交わす。

「相手の攻撃の良かったところをお互いに一言」
 ここでも提案すれば、もの凄く嫌な顔ではあるが、

「いいタックルだったと思うよ。次があれば二度と受けることなく圧勝するけどさ」

「回転蹴りは凄かったよ。次があれば足癖の悪さを出させることなく完勝するけどね」

「はあ!」

「なんだよ!」

「言い合いしない。お互いに称賛するところは称賛する。それが出来てこそ、強者への道を歩める」
 認めないといけないところは認めないとな。それを怠ればその部分で足を掬われる。
 俺も戒めとしている。

「高みを目指したいなら、心底に刻んでおくように」
 継げば、両名とも素直に返事をしてくれた。
 自分たちもそれは分かっているってことなんだろう。
 だからなのかな、回復をしようとするベスティリスの厚意を断った。
 理由は、この痛みを忘れず、次の成長の糧にしたいからだそうだ。  
 二人揃ってそう言うんだからね。
 背格好だけでなく性格も似ているようだ。

 そういった考え方は素晴らしいとしても――、

「「あいたっ!?」」
 悪い事もしたので折檻もしとかないとな。
 なにするのさ! と、俺を見上げてくる涙目の二人。

「食べ物を武器にするからだ」

「「あ、はい……」」
 
「本来なら拳骨だったけども、二人とも十分に痛い思いをしているからな。デコピンで勘弁してやる」
 ――……そんでもって……、

「これは必要な事だから!」
 振り向きと同時に美人二人に説明。
 やはりと言うべきか、俺のデコピン行為に対し、不服な顔になっていた。
 でも食べ物を使って攻撃したのは事実なので、必要な折檻だと美人二人は納得してくれた。
 良かった。ボコられなくて。

 ――愛らしい二名による天空要塞フロトレムリでの最終戦はドロー。
 要塞の主は敗北宣言をしたけども、初手からこちらの力を推し量るような戦い方しかしてこなかったしな。
 全力で来られていたら本当にやばかった。
 なので俺達の戦いはドローでもいいのかもしれない。
 ――台詞として口からは出しませんけども。
 出してしまえば、ストームトルーパーの面々を調子づかせてしまうからな。
 そこはクレバーにやらせてもらいます。

 ――。

 客室を借りての一泊。
 身の回りの世話はクロウス氏が担当してくれた。
 有りがたいが、ナンバーツーのポジションにそんなことをされると非常に緊張。
 緊張で疲れはとれないよ。と、思っていたが体は正直。
 擦り切れた精神の回復とばかりに、腹を満たして汗を洗い流せば、ベッドに入ったと同時に意識が飛び、あっという間に次の日となっていた。

「兄ちゃん、おはよう」

「おう、顔の腫れは少しは治って――ないな」

「大丈夫だよ。こんなの痛くないし! 疲れてもないよ!」
 そうは言うが、腫れた目にはクマができている。
 決闘後に再開された会食以降も、回復魔法やポーションに意地でも頼らなかったミルモンとポームスの男らしさよ。
 
 回復を断った二人に、今日は寝ないで起きておくことだ。と、ゲッコーさんからのアドバイス。
 ボクシングや格闘技の試合後、顔が腫れた時は寝ないで起きているそうだ。
 横になることで血の巡りが良くなり、急激な自然治癒に繋がるそうだ。
 この自然治癒が逆に体の負担になるそうで、腫れが余計にひどくなって熱も出るという。
 座って腫れた部分を冷やすのが効果的とのこと。

 素直にファンタジー世界の力の恩恵を受けとけば良かっただろうに。
 二人揃って意地を張ったもんだよ。

 目のクマからして、しばらくすれば寝ちゃうだろうから、その間にシャルナに回復してもらおう。
 
 ――着替えを済ませればノック音。
 まるでこっちの動きが筒抜けのようなタイミング。
 監視カメラ的な物でも仕掛けられているかと部屋全体を見渡してしまう。

「よろしいでしょうか」
 忙しなく頭を動かしている中でドア向こうからの声。
 声の主は昨晩から俺達の世話をしてくれているクロウス氏。

「どうぞ」
 許可を出せば、

「おはようございます」
 と、執事然とした典雅な一礼による朝の挨拶。
 オウム返しで挨拶をし、

「わざわざ起こしに来なくてもいいんですよ」

「これは申し訳ございません」
 しまった! なんか嫌味な言い方になってしまった……。
 クロウス氏の顔が曇ってしまう。

「違うんですよ。貴男ほどの御仁に起こされるほどの存在ではないんですよ。俺なんて庶民は」

「いえいえ、勇者殿であり公爵様ではありませんか」
 まあ、そうですけど。

「今後のお付き合い。それも物資の提供をしてくださる御方なのです。私がお世話をするのが当然です」
 そんなに胸を張られて言われれば、拒むことも出来ません。
 可能であったのなら、美人のメイドさんも一緒だったら凄く嬉しかったんですがね。

 ――昨日に続き、今朝も大立者が一人で俺の身の回りを世話してくれた。
 
 ――……で……、

「ぬぅぅぅ……なぜだ……」
 広間にて皆と合流。
 ――……なぜ皆には綺麗なメイドさんがついているんだ……。
 
 俺も美翼人メイドさんがよかった……。
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