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天空要塞
PHASE-1584【新たな魔道具】
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「それで――」
ここでコクリコがズイッと一歩前に出れば、
「それで?」
「オウム返しはいいです。この地の主よ」
更に一歩前に踏み出し、
「私に便利なアイテムをくれると言いましたよね」
「確かに言ったわね」
「では、ください」
「その無遠慮さ――いいわね。清々しい」
「有り難うございます」
「無遠慮でありながら常に敬語なのも面白いし」
「有り難うございます。ください。そして私を次なる力の高みへと立たせてください」
「あ、はい……」
ベスティリスの困惑顔。
こういう時のコクリコの肝の太さ――あやかりてえよ。
「貴女の戦い方から必要とされるのは――」
言いつつ右手から食指だけを伸ばし、指揮棒を振るように動かしてみせると、その動きに合わせるように盆を覆っていた光沢ある藍色の布がシュルシュルと動き出す。
羊皮紙をのせる以外の用途もあったようだ。
折りたたまれた藍色の布は帯状のものであり、それがコクリコの首元にまで移動。
これは――、
「トヨウケビメ――でしたっけ?」
「そう、妾のお気に入り。その色違いね。それをロードウィザードに与えましょう」
ベスティリスの発言に周囲が一斉にざわつく。
見渡せば、皆して信じられないといった顔になっていた。
羽扇もだったが、この羽衣はそれ以上に高価な魔道具みたいだからな。
ポンッと渡す代物じゃないような物であっても、ポンッと渡せるベスティリスの太っ腹さよ。
コクリコの肝の太さと良い勝負だ。
どよめきが大きくなるところで、場を締めるようにクロウス氏が手を一度叩けば、瞬時に静まる。
「サーバントストーンが使用できるのだから、それも問題なく使用できるでしょう」
「これほどの物をいただけるとは、有り難き幸せ」
「本当、無遠慮だけど敬語と節度ある作法は出来るのよね」
深々とした最敬礼にて敬意を払うコクリコのギャップに苦笑いのベスティリス。
――後衛担当でありながら、接近戦を好むのがコクリコ。
先ほどの戦いでそれを理解してくれたからこそのチョイスだろう。
魔法を放ちつつ接近もこなす。
接近すればそれだけ危険性も上がる。それを緩和してくれる為のトヨウケビメだという。
ヒラヒラとした薄地ではあるが、強度は経験済み。
残火による攻撃を受け止めるだけの頑丈さ。
防御だけでなく、絡みついての投げなども可能。
コクリコの接近戦のバリエーションが増えるということは、ますます前衛で輝くってことだ。
喜ぶべきなのか――な……。
「素晴らしい物を賜りました」
当の本人が喜んでいるから良しとしよう。
「大事に扱うんだぞ」
「まずは慣れですね。ですので、王都に戻ったら私と手合わせ願います」
「次の手合わせも勝たせてもらおう」
コクリコとの試し合いももう何度目か。
負けるつもりはないが、コイツの成長速度は凄いからな。加えて魔道具による強化。
油断していると足を掬われることにもなる。
「勇者とロードウィザードの戦い。妾も見たいわね。なんならここで戦ってくれてもよいのだけれど」
「余興としてはありかもしれませんが、試し合いであっても流石に今は厭戦気分が強いのでお断りを」
「あら残念。ならロードウィザードがトヨウケビメの扱いに慣れた時にでも見せてもらいましょうか」
「その時は風龍がこの地へと戻ってきていることでしょう」
と、言えば、
「それは最高の催しになりそうね」
発言が嬉しかったようで柔和な笑みを向けてくれる。
「親睦を深めるにはまだ軋轢があるようだけど、少しは緩和することを願いたいわね」
と、俺達に言うのではなく、整列しているストームトルーパーの面々へと伝えれば、伸びきった背筋が更に伸びるのが見て取れた。
俺達と行動を共にすることに不快感を持っていた生徒会長。
そんな生徒会長に目を向ければ、俺の視線を感じ取ったのか、こちらを見て会釈をしてくる。
なんだろう。あれだけ言っていたのに主が言えば素直になるんだな。
ストームトルーパーの面々は絶対的な忠誠心を持っているようだが、生徒会長の場合、忠誠心以上に主に対して、秘めたる思いを抱いてたりして。
――フッ、高尚なようでいて、青春してんのかもな。
「アホみたいな顔で笑ってどうしたんですか?」
「別にどうもしないさ。でもってアホみたいな顔は余計だ」
軽くチョップでも見舞ってやろうとすれば、
「お!?」
早速とばかりにトヨウケビメによって俺のチョップを防いでくる。
「うん! 素晴らしい魔道具です!」
「でしょう。使用者が思えばその通りに動くし、ちょっとした攻撃なら勝手に判断して防いでくれるわよ」
「ですが自動で防御してくれると過信するよりは、自身で動かす方がいいかもですね」
「そうね。トヨウケビメの判断力よりもロードウィザードの判断速度が上回るならそうしたほうがいいわね」
「使用者の方が速さで勝るよう励みましょう」
「良い心がけ」
コクリコのヤツ、本当に良い物をもらったな。
そんなトヨウケビメをどう体に纏うかを思案していたが、ベスティリスの次の発言で意識はそっちに持って行かれる。
「じゃあ、会食と行きましょう。少しでもお互いを知るために語らいながら食事を楽しむのもいいでしょう。準備を」
号令にて忠誠心MAXな面々が動き出す。
素早い動作で長テーブルが運ばれてくると、その上に料理が次々と並んでいく。
それを目にすればコクリコのテンションは爆上がり。
ここでコクリコがズイッと一歩前に出れば、
「それで?」
「オウム返しはいいです。この地の主よ」
更に一歩前に踏み出し、
「私に便利なアイテムをくれると言いましたよね」
「確かに言ったわね」
「では、ください」
「その無遠慮さ――いいわね。清々しい」
「有り難うございます」
「無遠慮でありながら常に敬語なのも面白いし」
「有り難うございます。ください。そして私を次なる力の高みへと立たせてください」
「あ、はい……」
ベスティリスの困惑顔。
こういう時のコクリコの肝の太さ――あやかりてえよ。
「貴女の戦い方から必要とされるのは――」
言いつつ右手から食指だけを伸ばし、指揮棒を振るように動かしてみせると、その動きに合わせるように盆を覆っていた光沢ある藍色の布がシュルシュルと動き出す。
羊皮紙をのせる以外の用途もあったようだ。
折りたたまれた藍色の布は帯状のものであり、それがコクリコの首元にまで移動。
これは――、
「トヨウケビメ――でしたっけ?」
「そう、妾のお気に入り。その色違いね。それをロードウィザードに与えましょう」
ベスティリスの発言に周囲が一斉にざわつく。
見渡せば、皆して信じられないといった顔になっていた。
羽扇もだったが、この羽衣はそれ以上に高価な魔道具みたいだからな。
ポンッと渡す代物じゃないような物であっても、ポンッと渡せるベスティリスの太っ腹さよ。
コクリコの肝の太さと良い勝負だ。
どよめきが大きくなるところで、場を締めるようにクロウス氏が手を一度叩けば、瞬時に静まる。
「サーバントストーンが使用できるのだから、それも問題なく使用できるでしょう」
「これほどの物をいただけるとは、有り難き幸せ」
「本当、無遠慮だけど敬語と節度ある作法は出来るのよね」
深々とした最敬礼にて敬意を払うコクリコのギャップに苦笑いのベスティリス。
――後衛担当でありながら、接近戦を好むのがコクリコ。
先ほどの戦いでそれを理解してくれたからこそのチョイスだろう。
魔法を放ちつつ接近もこなす。
接近すればそれだけ危険性も上がる。それを緩和してくれる為のトヨウケビメだという。
ヒラヒラとした薄地ではあるが、強度は経験済み。
残火による攻撃を受け止めるだけの頑丈さ。
防御だけでなく、絡みついての投げなども可能。
コクリコの接近戦のバリエーションが増えるということは、ますます前衛で輝くってことだ。
喜ぶべきなのか――な……。
「素晴らしい物を賜りました」
当の本人が喜んでいるから良しとしよう。
「大事に扱うんだぞ」
「まずは慣れですね。ですので、王都に戻ったら私と手合わせ願います」
「次の手合わせも勝たせてもらおう」
コクリコとの試し合いももう何度目か。
負けるつもりはないが、コイツの成長速度は凄いからな。加えて魔道具による強化。
油断していると足を掬われることにもなる。
「勇者とロードウィザードの戦い。妾も見たいわね。なんならここで戦ってくれてもよいのだけれど」
「余興としてはありかもしれませんが、試し合いであっても流石に今は厭戦気分が強いのでお断りを」
「あら残念。ならロードウィザードがトヨウケビメの扱いに慣れた時にでも見せてもらいましょうか」
「その時は風龍がこの地へと戻ってきていることでしょう」
と、言えば、
「それは最高の催しになりそうね」
発言が嬉しかったようで柔和な笑みを向けてくれる。
「親睦を深めるにはまだ軋轢があるようだけど、少しは緩和することを願いたいわね」
と、俺達に言うのではなく、整列しているストームトルーパーの面々へと伝えれば、伸びきった背筋が更に伸びるのが見て取れた。
俺達と行動を共にすることに不快感を持っていた生徒会長。
そんな生徒会長に目を向ければ、俺の視線を感じ取ったのか、こちらを見て会釈をしてくる。
なんだろう。あれだけ言っていたのに主が言えば素直になるんだな。
ストームトルーパーの面々は絶対的な忠誠心を持っているようだが、生徒会長の場合、忠誠心以上に主に対して、秘めたる思いを抱いてたりして。
――フッ、高尚なようでいて、青春してんのかもな。
「アホみたいな顔で笑ってどうしたんですか?」
「別にどうもしないさ。でもってアホみたいな顔は余計だ」
軽くチョップでも見舞ってやろうとすれば、
「お!?」
早速とばかりにトヨウケビメによって俺のチョップを防いでくる。
「うん! 素晴らしい魔道具です!」
「でしょう。使用者が思えばその通りに動くし、ちょっとした攻撃なら勝手に判断して防いでくれるわよ」
「ですが自動で防御してくれると過信するよりは、自身で動かす方がいいかもですね」
「そうね。トヨウケビメの判断力よりもロードウィザードの判断速度が上回るならそうしたほうがいいわね」
「使用者の方が速さで勝るよう励みましょう」
「良い心がけ」
コクリコのヤツ、本当に良い物をもらったな。
そんなトヨウケビメをどう体に纏うかを思案していたが、ベスティリスの次の発言で意識はそっちに持って行かれる。
「じゃあ、会食と行きましょう。少しでもお互いを知るために語らいながら食事を楽しむのもいいでしょう。準備を」
号令にて忠誠心MAXな面々が動き出す。
素早い動作で長テーブルが運ばれてくると、その上に料理が次々と並んでいく。
それを目にすればコクリコのテンションは爆上がり。
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