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天空要塞
PHASE-1567【情緒不安定】
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「それで、どういった決着で?」
「貴方たちの中心である勇者が聞きたがっているわよ。最後の最後に完全に蚊帳の外に追いやられた、貴方たちの中心である勇者――が」
うん……。強調しなくていいです……。自分でも分かっているから……。
最後の最後で完全に部外者だったからな……。
勇者として凄く恥ずかしく思っております。
でもって、強者達の戦いの中に最後まで身を投じることが出来なかった事に、恥ずかしい以上に情けない気持ちで一杯だ……。
「まあトールの場合、今回はそっちの大立者に最後の一撃を見舞ったところで及第点だからな」
と、ゲッコーさんからはお褒めのお言葉。
で、
「だとしても、最後の風には耐えてほしかったのも事実です」
ベルからはちょっと苦言。
スパルタ二名からの評価は割れたものになってしまったが――、
「それでも今回はよくやったと評価しよう。いや、今回も――と訂正しよう」
最終的にはベルからもお褒めのお言葉を頂く。
「あざっす!」
二人に対して頭を下げる俺。
今回の戦いもしっかりと褒めてもらえた。
だがやはり……、この要塞の主に対して最後の最後まで対峙する事が出来なかった事が情けない……。
「切っ先を突きつけられたこの状況で、そっちの総括を聞かされることになるなんて、妾の人生において初の経験ね……」
「勇者の前です。今一度、貴女の口から伝えていただきたい」
「嫌な剣神ね。さっき言ったばかりなのに……。全く」
力なく首を左右に振れば、
「おっ!」
白い角膜で紫水晶のような瞳からなる左目と、黒い角膜に鮮やかな黄色い瞳からなる右目。
独特なオッドアイが俺を見てくれば――、
「魔王軍――三爪痕が一角。翼幻王ベスティリス・バルフレア・エアリアスは、自身が拠点としている天空要塞フロトレムリにて、勇者一行に敗北したことを宣言する。――これでいいかしら?」
――……。
「勇者?」
継いで俺を呼ぶ声に、皆して俺を見てくる。
――……お、おお!
「お、おお! おおっ!」
「どうしたのかしら。急にそっちの中心人物の知能が著しく低下したみたいだけど。お、おお! と返されても、妾ではその言葉を理解できないわね。翻訳をしてもらえるかしら」
興奮している俺の眼前では、俺を小馬鹿にした表情で見てくるベスティリス。
「お気になさらず。強者による敗北宣言。これを耳にしたことで心底、喜んでいるのです。トールだけでなく、我々も同様の感情です」
「だとしても剣神――。あの小躍りは頭が悪く見えるから止めさせたほうがいいと思うわよ」
「……確かに……」
二人して呆れつつ、俺を残念そうな目で見てくるけども、魔王軍の大幹部の一角に勝利したのだ。これほど嬉しいことはない。
今までで最高の戦績だ!
この勝報を耳にすれば、王様たちだって間違いなく俺以上にはしゃぐだろう。
小躍りどころか裸踊りするね! 基本、上半身裸だし。
あの面々なら間違いないね!
だが、やはり……。
ピタリと動きを止める俺……。
「冷静になったか?」
ゲッコーさんの問いかけに小さく頷き、
「やっぱり蚊帳の外での勝利は虚しいですね……」
「躁鬱が激しいわね……」
と、ベスティリスから呆れられる。
大立者であるクロウス氏に対してフィニッシャーになったのは確かだが、ここ一番ではまったくもってなんの役にも立てなかった……。
悲しいほどの実力差。
これを少しでも縮めるために努力はしているが、凡人が急成長など不可能なのも事実……。
故にこの最終戦では最後の最後で蚊帳の外……。
「か、悲しい……」
「兄ちゃん……」
俺の心を感じ取ったようで、本来は負の感情を喜ぶミルモンも、主である俺の負の感情は流石に受け入れられないといったところだった。
「落ち込むのは自ら何処が駄目だったのかを理解していることでもある。そこを研鑽することだな」
ベルからは厳しくも優しい激励。
でもね……。
どんなに励んでも超えられない壁ってのはあると思うのよ……。
それくらい、最後の最後でなんの役にも立てなかった。
ただ空中を舞って、外殻へと向かって落ちていくだけだったからな。
「いつものような前向きな態度に中々ならないな」
なるには時間を要しそうですゲッコーさん。
――…………。
――……。
「ふぃぃぃぃぃ~」
間延びした溜め息を吐きつつ、
「凡人には凡人の進み方ってのがあるんだよ! そこを受け入れろ! 俺!!」
自分自身に言い聞かせれば、俺の急な大声に皆して目を丸くする。
この要塞の主もその中の一人。
目を丸くした要塞の主の目を見つつ、
「たとえ埋まることのない差だったとしても、いずれは痛打を与えられるくらいの一撃を見舞ってやりますよ! 翼幻王ベスティリス!」
「いや、本当に……。情緒が不安定すぎるわよ……。勇者っていつもああなの?」
「今回は特に実力差を感じたからああなっているだけです。普段はもう少し大人しいです。頭が悪く見えるのはいつものことですが」
「言うじゃないのベル」
「だが、少なからずトールの戦いはこの要塞の主に届いていた。圧倒的な強者に煩わしい存在と思わせたことは、間違いなくトール自身が強くなっているからでもある」
「おう!」
「凄く嬉しそうな顔になったな。単純すぎるだろう」
やれやれとばかりにゲッコーさん。
ベスティリスが抵抗しないと判断したのか、距離を取って小太刀を宙空に仕舞えば、手に持つものを小太刀から煙草へと替え、口に咥えて勝利の一服を楽しみ始める。
以前の経験を活かし、煙の流れに気をつかい、皆の風下に立って吸うというマナーを守る喫煙者の鏡。
優良喫煙者が余裕を持って紫煙を燻らせるってことは、ベスティリスの敗北発言が本心だということ。
――この戦いの閉幕である。
「貴方たちの中心である勇者が聞きたがっているわよ。最後の最後に完全に蚊帳の外に追いやられた、貴方たちの中心である勇者――が」
うん……。強調しなくていいです……。自分でも分かっているから……。
最後の最後で完全に部外者だったからな……。
勇者として凄く恥ずかしく思っております。
でもって、強者達の戦いの中に最後まで身を投じることが出来なかった事に、恥ずかしい以上に情けない気持ちで一杯だ……。
「まあトールの場合、今回はそっちの大立者に最後の一撃を見舞ったところで及第点だからな」
と、ゲッコーさんからはお褒めのお言葉。
で、
「だとしても、最後の風には耐えてほしかったのも事実です」
ベルからはちょっと苦言。
スパルタ二名からの評価は割れたものになってしまったが――、
「それでも今回はよくやったと評価しよう。いや、今回も――と訂正しよう」
最終的にはベルからもお褒めのお言葉を頂く。
「あざっす!」
二人に対して頭を下げる俺。
今回の戦いもしっかりと褒めてもらえた。
だがやはり……、この要塞の主に対して最後の最後まで対峙する事が出来なかった事が情けない……。
「切っ先を突きつけられたこの状況で、そっちの総括を聞かされることになるなんて、妾の人生において初の経験ね……」
「勇者の前です。今一度、貴女の口から伝えていただきたい」
「嫌な剣神ね。さっき言ったばかりなのに……。全く」
力なく首を左右に振れば、
「おっ!」
白い角膜で紫水晶のような瞳からなる左目と、黒い角膜に鮮やかな黄色い瞳からなる右目。
独特なオッドアイが俺を見てくれば――、
「魔王軍――三爪痕が一角。翼幻王ベスティリス・バルフレア・エアリアスは、自身が拠点としている天空要塞フロトレムリにて、勇者一行に敗北したことを宣言する。――これでいいかしら?」
――……。
「勇者?」
継いで俺を呼ぶ声に、皆して俺を見てくる。
――……お、おお!
「お、おお! おおっ!」
「どうしたのかしら。急にそっちの中心人物の知能が著しく低下したみたいだけど。お、おお! と返されても、妾ではその言葉を理解できないわね。翻訳をしてもらえるかしら」
興奮している俺の眼前では、俺を小馬鹿にした表情で見てくるベスティリス。
「お気になさらず。強者による敗北宣言。これを耳にしたことで心底、喜んでいるのです。トールだけでなく、我々も同様の感情です」
「だとしても剣神――。あの小躍りは頭が悪く見えるから止めさせたほうがいいと思うわよ」
「……確かに……」
二人して呆れつつ、俺を残念そうな目で見てくるけども、魔王軍の大幹部の一角に勝利したのだ。これほど嬉しいことはない。
今までで最高の戦績だ!
この勝報を耳にすれば、王様たちだって間違いなく俺以上にはしゃぐだろう。
小躍りどころか裸踊りするね! 基本、上半身裸だし。
あの面々なら間違いないね!
だが、やはり……。
ピタリと動きを止める俺……。
「冷静になったか?」
ゲッコーさんの問いかけに小さく頷き、
「やっぱり蚊帳の外での勝利は虚しいですね……」
「躁鬱が激しいわね……」
と、ベスティリスから呆れられる。
大立者であるクロウス氏に対してフィニッシャーになったのは確かだが、ここ一番ではまったくもってなんの役にも立てなかった……。
悲しいほどの実力差。
これを少しでも縮めるために努力はしているが、凡人が急成長など不可能なのも事実……。
故にこの最終戦では最後の最後で蚊帳の外……。
「か、悲しい……」
「兄ちゃん……」
俺の心を感じ取ったようで、本来は負の感情を喜ぶミルモンも、主である俺の負の感情は流石に受け入れられないといったところだった。
「落ち込むのは自ら何処が駄目だったのかを理解していることでもある。そこを研鑽することだな」
ベルからは厳しくも優しい激励。
でもね……。
どんなに励んでも超えられない壁ってのはあると思うのよ……。
それくらい、最後の最後でなんの役にも立てなかった。
ただ空中を舞って、外殻へと向かって落ちていくだけだったからな。
「いつものような前向きな態度に中々ならないな」
なるには時間を要しそうですゲッコーさん。
――…………。
――……。
「ふぃぃぃぃぃ~」
間延びした溜め息を吐きつつ、
「凡人には凡人の進み方ってのがあるんだよ! そこを受け入れろ! 俺!!」
自分自身に言い聞かせれば、俺の急な大声に皆して目を丸くする。
この要塞の主もその中の一人。
目を丸くした要塞の主の目を見つつ、
「たとえ埋まることのない差だったとしても、いずれは痛打を与えられるくらいの一撃を見舞ってやりますよ! 翼幻王ベスティリス!」
「いや、本当に……。情緒が不安定すぎるわよ……。勇者っていつもああなの?」
「今回は特に実力差を感じたからああなっているだけです。普段はもう少し大人しいです。頭が悪く見えるのはいつものことですが」
「言うじゃないのベル」
「だが、少なからずトールの戦いはこの要塞の主に届いていた。圧倒的な強者に煩わしい存在と思わせたことは、間違いなくトール自身が強くなっているからでもある」
「おう!」
「凄く嬉しそうな顔になったな。単純すぎるだろう」
やれやれとばかりにゲッコーさん。
ベスティリスが抵抗しないと判断したのか、距離を取って小太刀を宙空に仕舞えば、手に持つものを小太刀から煙草へと替え、口に咥えて勝利の一服を楽しみ始める。
以前の経験を活かし、煙の流れに気をつかい、皆の風下に立って吸うというマナーを守る喫煙者の鏡。
優良喫煙者が余裕を持って紫煙を燻らせるってことは、ベスティリスの敗北発言が本心だということ。
――この戦いの閉幕である。
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