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天空要塞
PHASE-1561【認めるまで示しましょう】
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ドッベルゲンガーは体内マナであるピリアを放出し、使用者の姿を象り戦わせるという能力だというのは、ゼノの時に得た知識。
よくよく考えたらオーラアーマーを切り離して戦わせるという離れ業って感じだよな。
ドッペルゲンガーってのは、ガルム氏やガリオンが扱う能力の上位系だったりするのかな?
それはともかく。
体内マナのピリアで顕現しているからであろう。
使用者が深手を負っているからこそ、ピリアで顕現しているドッペルガンガーもそれに合わせて弱体化していると思われる。
だからこそ目で追えるし、反撃の機を窺える状況になっている。
よし、これなら!
「俺でもなんとかなる!」
貫手を躱し、残火を一振り。
バックステップで躱されるも、更に一歩踏み込んでからのマラ・ケニタルでの横一文字。
感触が柄から伝わってくる。
質量を持った分身だからこそ、手に伝わってくる斬ったという感触。
「でも、浅い」
斬ったところで痛覚を有している訳じゃない。
痛みを発する事無くカウンターの蹴撃は一枚刃の高下駄の影。
「本人から喰らってるからそれ以上は御免こうむる」
迫る前蹴りを右に重心を傾けて躱しつつ接近。
蹴撃が外れれば、影は翼を動かして強制的に後方へと下がり、俺から距離を取る。
逃がすまいと突撃と同時にマスリリースを二刀から放つ。
黄色い三日月状の斬撃が飛び、黄色い燐光が軌跡を描く。
その軌跡を道しるべとするかのように俺は驀地。
放った光斬を影は両手で難なく叩き払う。
「すげっ」
流石はこの地を統べる者の分身。弱ってはいても凄い技巧を見せてくる。
「まあ、牽制だけどね」
叩き払う事で動きが止まる。
ここでブーステッドを発動。
突撃の勢いを活かしたままに二振りの得物の切っ先を胸部へと目がけて、
「抉る!」
気概と共に突き刺す。
成功!
継いで、
「ブレイズ! ウインドスラッシュ!」
突き刺したまま二振りの刀身に力を宿せば、
「おふぅん!?」
炎と風が合わさって生じるのは――爆発。
格好悪い声を発しつつ、格好のつかない姿勢で吹き飛ぶ。
ゴロゴロと床を転がりつつ立ち上がり、
「おお……。ミルモン無事か?」
「こほっ……。うん。でも驚いたよ……」
咳き込むも、ミルモンが無事で良かった。
でもって、
「よっし!」
眼前にいたドッペルゲンガーは俺の視界から消え去っていた。
倒したよ。
まさかこうも簡単に届くとは思わなかった。
やはり――、
「表情に曇ったものは見せなくても、強がりなのは分かるってもんだ」
ベスティリスは確実に弱っている。
じゃないと、俺単身でベスティリスが生み出したドッペルゲンガーに対抗するのは難しかった。
俺が勝ちを得たのだから――。
瞥見すればゲッコーさんとユーリさんも既に影を霧散させていた。
「やれやれ、私達にも良い見せ場を与えてほしかったのですがね」
「おう、コクリコ」
「強者が生み出した影。私も戦って見たかったですよ」
「俺が勝てたのは十全の状態じゃなかったからだ。十全なら後衛にがっつり頼っていたさ」
「確かに、ベルの一刺しから明らかに影達の動きが悪くなってましたからね。ゲッコー達も直ぐさま倒してましたよ」
離れた位置から全体を見ていたコクリコ。
ゲッコーさんとユーリさんは弱体後、瞬く間に影を倒したと手短に説明してくれた。
「さあ、次の幕は開くことなく、この幕で閉じることになるかな?」
俺が影を倒した事を確認したゲッコーさんがベスティリスに問えば、
「あら、滑稽なことを言うわね。おヒゲの中高さん」
「嬉しいね。美人に中高と判定してもらえるなんて」
笑みを崩さないベスティリスにゲッコーさんも微笑みで返す。
完全に勝負ありの状況ではあるが、大幹部の一角はまだ戦いを止めることはない。
「決着をつけないとですね」
「トールならここで止めるべき。と、相手に言うのかと思いましたよ」
そうしたいんだけどね。コクリコ。
「相手が止める気がさらさらないからな」
大幹部の一角。
当然、それに見合ったプライドもある。
「ノブレス・オブリージュってやつだ」
「トップだからこその責任とけじめってのがあるからな。ならばこちらも相手が満足するまで付き合わないとな」
「と、ゲッコーさんが言うように、俺達は相手が降参と口にするまでは挑まないといけない」
口にそれを出さない時点でベスティリスはやめないし、停戦を提案しても相手は決して首を縦に振らないだろうし、下手したら意固地になることも考えられる。
戦いが始まる前、そして戦闘中にもベスティリスが言っていたように、こちらは力を示すだけ。
示して、認めさせるだけ。
「理解してもらえて助かるわね。でも理解をしていないこともある」
「それは?」
「この幕はまだ閉じないってこと」
「仕切り直しもないなら、このまま幕間劇となるか」
「いえいえ、おヒゲの中高。幕間劇でもないわね」
「じゃあ、ここが終幕?」
「いえいえ、幕を閉じなくても次には進む」
「暗転とでも?」
「その通り。この状況のまま次へと移行しましょう」
不敵な笑みはブラフじゃない。
暗転と言う割に舞台となっているこの闘技場が暗くなるなんてことはないじゃないですか。といったツッコミを入れるのはやめとくけど。
そもそも次の幕って言い出しっぺは俺だからな。それにゲッコーさんとベスティリスが乗っかってくれているだけ。
ツッコまないで乗っかっておくのが言い出しっぺとしての礼儀。
「さて、この状況からどういった手段に打って出るので?」
「何かいい案はないかしら――美姫」
「そういった余裕ある発言が出来るのですから、もう一刺ししても耐えてくれそうですね」
「怖いことを言うわね。美姫」
「その美姫という言い様――いい加減やめていただきたい」
好きな呼ばれ方ではないと、些かご立腹。
表情を読み取ってなのか、ベスティリスもこれ以上は美姫とは言うまいと思ったようで、なにか継ごうとしたようだが無理矢理に言葉を呑み込んでいた。
よくよく考えたらオーラアーマーを切り離して戦わせるという離れ業って感じだよな。
ドッペルゲンガーってのは、ガルム氏やガリオンが扱う能力の上位系だったりするのかな?
それはともかく。
体内マナのピリアで顕現しているからであろう。
使用者が深手を負っているからこそ、ピリアで顕現しているドッペルガンガーもそれに合わせて弱体化していると思われる。
だからこそ目で追えるし、反撃の機を窺える状況になっている。
よし、これなら!
「俺でもなんとかなる!」
貫手を躱し、残火を一振り。
バックステップで躱されるも、更に一歩踏み込んでからのマラ・ケニタルでの横一文字。
感触が柄から伝わってくる。
質量を持った分身だからこそ、手に伝わってくる斬ったという感触。
「でも、浅い」
斬ったところで痛覚を有している訳じゃない。
痛みを発する事無くカウンターの蹴撃は一枚刃の高下駄の影。
「本人から喰らってるからそれ以上は御免こうむる」
迫る前蹴りを右に重心を傾けて躱しつつ接近。
蹴撃が外れれば、影は翼を動かして強制的に後方へと下がり、俺から距離を取る。
逃がすまいと突撃と同時にマスリリースを二刀から放つ。
黄色い三日月状の斬撃が飛び、黄色い燐光が軌跡を描く。
その軌跡を道しるべとするかのように俺は驀地。
放った光斬を影は両手で難なく叩き払う。
「すげっ」
流石はこの地を統べる者の分身。弱ってはいても凄い技巧を見せてくる。
「まあ、牽制だけどね」
叩き払う事で動きが止まる。
ここでブーステッドを発動。
突撃の勢いを活かしたままに二振りの得物の切っ先を胸部へと目がけて、
「抉る!」
気概と共に突き刺す。
成功!
継いで、
「ブレイズ! ウインドスラッシュ!」
突き刺したまま二振りの刀身に力を宿せば、
「おふぅん!?」
炎と風が合わさって生じるのは――爆発。
格好悪い声を発しつつ、格好のつかない姿勢で吹き飛ぶ。
ゴロゴロと床を転がりつつ立ち上がり、
「おお……。ミルモン無事か?」
「こほっ……。うん。でも驚いたよ……」
咳き込むも、ミルモンが無事で良かった。
でもって、
「よっし!」
眼前にいたドッペルゲンガーは俺の視界から消え去っていた。
倒したよ。
まさかこうも簡単に届くとは思わなかった。
やはり――、
「表情に曇ったものは見せなくても、強がりなのは分かるってもんだ」
ベスティリスは確実に弱っている。
じゃないと、俺単身でベスティリスが生み出したドッペルゲンガーに対抗するのは難しかった。
俺が勝ちを得たのだから――。
瞥見すればゲッコーさんとユーリさんも既に影を霧散させていた。
「やれやれ、私達にも良い見せ場を与えてほしかったのですがね」
「おう、コクリコ」
「強者が生み出した影。私も戦って見たかったですよ」
「俺が勝てたのは十全の状態じゃなかったからだ。十全なら後衛にがっつり頼っていたさ」
「確かに、ベルの一刺しから明らかに影達の動きが悪くなってましたからね。ゲッコー達も直ぐさま倒してましたよ」
離れた位置から全体を見ていたコクリコ。
ゲッコーさんとユーリさんは弱体後、瞬く間に影を倒したと手短に説明してくれた。
「さあ、次の幕は開くことなく、この幕で閉じることになるかな?」
俺が影を倒した事を確認したゲッコーさんがベスティリスに問えば、
「あら、滑稽なことを言うわね。おヒゲの中高さん」
「嬉しいね。美人に中高と判定してもらえるなんて」
笑みを崩さないベスティリスにゲッコーさんも微笑みで返す。
完全に勝負ありの状況ではあるが、大幹部の一角はまだ戦いを止めることはない。
「決着をつけないとですね」
「トールならここで止めるべき。と、相手に言うのかと思いましたよ」
そうしたいんだけどね。コクリコ。
「相手が止める気がさらさらないからな」
大幹部の一角。
当然、それに見合ったプライドもある。
「ノブレス・オブリージュってやつだ」
「トップだからこその責任とけじめってのがあるからな。ならばこちらも相手が満足するまで付き合わないとな」
「と、ゲッコーさんが言うように、俺達は相手が降参と口にするまでは挑まないといけない」
口にそれを出さない時点でベスティリスはやめないし、停戦を提案しても相手は決して首を縦に振らないだろうし、下手したら意固地になることも考えられる。
戦いが始まる前、そして戦闘中にもベスティリスが言っていたように、こちらは力を示すだけ。
示して、認めさせるだけ。
「理解してもらえて助かるわね。でも理解をしていないこともある」
「それは?」
「この幕はまだ閉じないってこと」
「仕切り直しもないなら、このまま幕間劇となるか」
「いえいえ、おヒゲの中高。幕間劇でもないわね」
「じゃあ、ここが終幕?」
「いえいえ、幕を閉じなくても次には進む」
「暗転とでも?」
「その通り。この状況のまま次へと移行しましょう」
不敵な笑みはブラフじゃない。
暗転と言う割に舞台となっているこの闘技場が暗くなるなんてことはないじゃないですか。といったツッコミを入れるのはやめとくけど。
そもそも次の幕って言い出しっぺは俺だからな。それにゲッコーさんとベスティリスが乗っかってくれているだけ。
ツッコまないで乗っかっておくのが言い出しっぺとしての礼儀。
「さて、この状況からどういった手段に打って出るので?」
「何かいい案はないかしら――美姫」
「そういった余裕ある発言が出来るのですから、もう一刺ししても耐えてくれそうですね」
「怖いことを言うわね。美姫」
「その美姫という言い様――いい加減やめていただきたい」
好きな呼ばれ方ではないと、些かご立腹。
表情を読み取ってなのか、ベスティリスもこれ以上は美姫とは言うまいと思ったようで、なにか継ごうとしたようだが無理矢理に言葉を呑み込んでいた。
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