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天空要塞
PHASE-1559【同じ構え】
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柄から顕現したエアリアルスライス。
そして、それが剣の形状となるのだから――、
「魔法剣か」
「ご名答」
俺の発言に笑みを湛えて返してくれるベスティリス。
以前、エンドリュー候の精鋭である、征東騎士団団長のイリーが使用したのを覚えている。
剣に魔法の力を付与する。
俺の残火も似たようなものだけど、残火の場合は刀に封じられている火龍の力を引き出すもの。
対して魔法剣は剣の力ではなく、使用者の魔法練度に左右されるもの。
いま目の前で顕現しているのは、刀剣に魔法を纏わせる――のではなく、羽扇の柄の部分から剣の形状をした魔法を生み出すという芸当。
通常の魔法剣よりも更に練度の高いものと思われる。
「濃密に――剣の形状へと姿を変えたエアリアルスライスがどの程度やれるのか、試させてもらうわよ」
「試す。と発言する辺り、またまだ余裕があるようで」
「余裕があるならとっくに貴女を倒していてもいいのだけれど。倒すためには、まずはこの世界の理を拒絶するかのような体に纏ったその炎をどうにかしないとね。でないと、こちらはジリ貧に追い込まれることでしょう。妾にここまでの事を言わせることを誇るといいわ。後で褒美を与えましょう。もしかしたら墓前へ与える事になるかもしれないけど」
「誇らせていただきましょう。喋々と語る辺り、こちらが纏う炎がいずれは消えるという消費切れを狙っているのでしょうが、ご安心をこの戦いの間は問題なく持続します」
「そう――それは聞きたくなかったわね! そして、まったく安心ではない!」
先に仕掛けるのはベスティリス。
ベルに対して今までは攻撃よりも防御に重きを置いていたが、魔法剣の発動をきっかけに、イニシアチブは我がものとばかりに先に動く。
床をすれすれに飛行するという移動。
牽制とばかりにベルが炎を飛ばすが、それを最小限の動きで躱しながら迫り、
「どうかしら!」
「良い剣筋かと」
床すれすれを飛翔し、上体を反らすようにして上昇。
勢いのある下方からの斬り上げ。
ベルが言うように美しい斬撃。
膂力。徒手空拳。ネイコスにピリアの両マナの実力。
これに加えて剣術も抜群。
大幹部の一角ともなれば、全てのステータスが高水準なのは当然とばかりの綺麗な姿勢からの斬り上げ。
そして斬り下ろし。
二連撃に対し、ベルも張り合うように最小限の動きだけで躱してみせる。
飛行から着地し、高下駄にて床を強く踏み、腰の回転を活用した美しくも高速の三回目の斬撃は、俺が得意とする上段から。
お手本にしないといけない美しい姿勢。
対して、
「ほう」
と、今度は回避ではなくレイピアで受けると、ベルからわずかに驚きのある声が上がる。
そりゃそうだよな。
「受け止めたよ……」
この場にいるベルとの付き合いがある者達が頭内で思っているであろう事を俺が代表して口に出す。
この光景に二人以外の動きが止まる。
俺に次いで付き合いが長いゲッコーさんもその光景には驚き。
ベルの浄化の炎が対象を消滅させずに受け止めるなんてな……。
ベスティリスの魔法剣は消えることなく健在。
しかも……、
「よいっしょ!」
小気味のよい声。
綺麗な姿勢の中に力強さもあり、そのままベルのレイピアを払いのければ手首を返しての逆袈裟。
ベルが背を反らしながら一歩後退……させられる。
自発的ではなく強制的に後退……。
「どうかしら?」
計四連撃を放ち、嬉々とした声でベルへと問う。
「素晴らしいかと」
「体勢をわずかに崩すことは出来たけど、余裕までは崩せないわね!」
魔法剣による攻撃が効果ありという事から、勢いづくベスティリスは果敢に攻め立てる。
――斬撃に刺突――。
振って突いてに意識を向けさせたタイミングで、高下駄による前蹴りを組み込んでくる。
「ふっ!」
と、ベルもヒールの高いブーツでの前蹴りで受けて立つ。
長い足にフィットしたタイトな白地の軍服。
双方の美しい前蹴りがぶつかり合えば、前蹴りの姿勢のまま互いに力比べとばかりに、靴底と一枚刃による押し合い。
「力は妾の方が上のようね」
「――そのようで」
ここでベスティリスの高下駄が押し切れば、ベルが後退。
これも自発的ではなく強制的……。
「お、おお……」
信じられない光景が続く。
こっちがそういった顔を見せるものだからか、ドッペルゲンガーの動きも止まる。
まるでベスティリスが現状を見せつける事で、こちらの戦意を削がせようと画策しているようだ。
「よく耐えること」
「こちらを後退させただけで嬉々とした顔になるのはどうかと」
「そうね。ここで調子に乗れば足を掬われるかもしれないわね」
「転倒しやすそうな履き物ですからね」
「それは妾だけではないわよ。貴女のヒールも大概でしょう」
「ですね。ですがバランス感覚は抜群ですので」
「あら。それはこっちもなんだけど」
視線を逸らすことなく見合う二人。
冷静と余裕からなる微笑みを顔に貼り付けてはいるが、二人の間にはバチバチとした電撃がぶつかり合うような幻視。
「では続けましょうか――美姫」
「いいでしょう」
同時に構える。
奇しくも、
「双方、平突きか」
右手に得物を握り、左前腕に剣の腹を乗せた構え。
二人同時にやおら腰を落とす。
足のバネを利用しての突撃から刺突を打ち込む。――それしか考えていないという意思が、二人の構えから伝わってくる。
そして、それが剣の形状となるのだから――、
「魔法剣か」
「ご名答」
俺の発言に笑みを湛えて返してくれるベスティリス。
以前、エンドリュー候の精鋭である、征東騎士団団長のイリーが使用したのを覚えている。
剣に魔法の力を付与する。
俺の残火も似たようなものだけど、残火の場合は刀に封じられている火龍の力を引き出すもの。
対して魔法剣は剣の力ではなく、使用者の魔法練度に左右されるもの。
いま目の前で顕現しているのは、刀剣に魔法を纏わせる――のではなく、羽扇の柄の部分から剣の形状をした魔法を生み出すという芸当。
通常の魔法剣よりも更に練度の高いものと思われる。
「濃密に――剣の形状へと姿を変えたエアリアルスライスがどの程度やれるのか、試させてもらうわよ」
「試す。と発言する辺り、またまだ余裕があるようで」
「余裕があるならとっくに貴女を倒していてもいいのだけれど。倒すためには、まずはこの世界の理を拒絶するかのような体に纏ったその炎をどうにかしないとね。でないと、こちらはジリ貧に追い込まれることでしょう。妾にここまでの事を言わせることを誇るといいわ。後で褒美を与えましょう。もしかしたら墓前へ与える事になるかもしれないけど」
「誇らせていただきましょう。喋々と語る辺り、こちらが纏う炎がいずれは消えるという消費切れを狙っているのでしょうが、ご安心をこの戦いの間は問題なく持続します」
「そう――それは聞きたくなかったわね! そして、まったく安心ではない!」
先に仕掛けるのはベスティリス。
ベルに対して今までは攻撃よりも防御に重きを置いていたが、魔法剣の発動をきっかけに、イニシアチブは我がものとばかりに先に動く。
床をすれすれに飛行するという移動。
牽制とばかりにベルが炎を飛ばすが、それを最小限の動きで躱しながら迫り、
「どうかしら!」
「良い剣筋かと」
床すれすれを飛翔し、上体を反らすようにして上昇。
勢いのある下方からの斬り上げ。
ベルが言うように美しい斬撃。
膂力。徒手空拳。ネイコスにピリアの両マナの実力。
これに加えて剣術も抜群。
大幹部の一角ともなれば、全てのステータスが高水準なのは当然とばかりの綺麗な姿勢からの斬り上げ。
そして斬り下ろし。
二連撃に対し、ベルも張り合うように最小限の動きだけで躱してみせる。
飛行から着地し、高下駄にて床を強く踏み、腰の回転を活用した美しくも高速の三回目の斬撃は、俺が得意とする上段から。
お手本にしないといけない美しい姿勢。
対して、
「ほう」
と、今度は回避ではなくレイピアで受けると、ベルからわずかに驚きのある声が上がる。
そりゃそうだよな。
「受け止めたよ……」
この場にいるベルとの付き合いがある者達が頭内で思っているであろう事を俺が代表して口に出す。
この光景に二人以外の動きが止まる。
俺に次いで付き合いが長いゲッコーさんもその光景には驚き。
ベルの浄化の炎が対象を消滅させずに受け止めるなんてな……。
ベスティリスの魔法剣は消えることなく健在。
しかも……、
「よいっしょ!」
小気味のよい声。
綺麗な姿勢の中に力強さもあり、そのままベルのレイピアを払いのければ手首を返しての逆袈裟。
ベルが背を反らしながら一歩後退……させられる。
自発的ではなく強制的に後退……。
「どうかしら?」
計四連撃を放ち、嬉々とした声でベルへと問う。
「素晴らしいかと」
「体勢をわずかに崩すことは出来たけど、余裕までは崩せないわね!」
魔法剣による攻撃が効果ありという事から、勢いづくベスティリスは果敢に攻め立てる。
――斬撃に刺突――。
振って突いてに意識を向けさせたタイミングで、高下駄による前蹴りを組み込んでくる。
「ふっ!」
と、ベルもヒールの高いブーツでの前蹴りで受けて立つ。
長い足にフィットしたタイトな白地の軍服。
双方の美しい前蹴りがぶつかり合えば、前蹴りの姿勢のまま互いに力比べとばかりに、靴底と一枚刃による押し合い。
「力は妾の方が上のようね」
「――そのようで」
ここでベスティリスの高下駄が押し切れば、ベルが後退。
これも自発的ではなく強制的……。
「お、おお……」
信じられない光景が続く。
こっちがそういった顔を見せるものだからか、ドッペルゲンガーの動きも止まる。
まるでベスティリスが現状を見せつける事で、こちらの戦意を削がせようと画策しているようだ。
「よく耐えること」
「こちらを後退させただけで嬉々とした顔になるのはどうかと」
「そうね。ここで調子に乗れば足を掬われるかもしれないわね」
「転倒しやすそうな履き物ですからね」
「それは妾だけではないわよ。貴女のヒールも大概でしょう」
「ですね。ですがバランス感覚は抜群ですので」
「あら。それはこっちもなんだけど」
視線を逸らすことなく見合う二人。
冷静と余裕からなる微笑みを顔に貼り付けてはいるが、二人の間にはバチバチとした電撃がぶつかり合うような幻視。
「では続けましょうか――美姫」
「いいでしょう」
同時に構える。
奇しくも、
「双方、平突きか」
右手に得物を握り、左前腕に剣の腹を乗せた構え。
二人同時にやおら腰を落とす。
足のバネを利用しての突撃から刺突を打ち込む。――それしか考えていないという意思が、二人の構えから伝わってくる。
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