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天空要塞
PHASE-1520【速戦即決】
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「何よりも仲間が囚われているというのに、落ち着いてこちらと言葉を交わすことが出来るのは、今までの経験で培った胆力からかな?」
「そうだと思います。当然ながら俺だけでなく拘束されているコクリコも胆力は凄いですよ。そこだけなら俺は太刀打ち出来ません」
「そうだね。アンデッドは言わずもがな、ウィザードの少女も胆力がある。捕らえられていても恐怖という感情を表に出さないからね」
「当然でしょう。私はこんなところで終わるなどと思っていませんからね! 恐怖を抱く意味が無い」
「勇者を信頼しているようだ」
「それもありますが、私という存在がこんなところで終わるような存在ではないですからね! コクリコ・シュレンテッドですよ。私は!」
「堂々と言い切る……。大物だね……」
「なにを当然なことを言いますかね」
「本当に大物だ。我々の同胞に迎え入れたいくらいだ」
縛られていてもぶれない強気にアル氏も感心。
「だが交渉が決裂となれば、勇者は少女の死を目にしなければならないだろうね。残念だよ」
「だから、そうはなりませんよ!」
「最悪の結末をその身で経験してもらうしかないね」
拳から掌へと変わる右手から顕現するのは風の刃。
徐々に大きくなり槍の形状とすれば――、
「このウインドランスで串刺しとしよう」
「そうはならないさ!」
「会話をしたのは今日が初めて。短いやり取りからも勇者の人柄に好感は持てたよ。――が、現状を理解できていないのは残念だった。こちらの有利を理解できない。勝ち続けたことで危機感を失っているようだね。慢心による交渉は、勇者とウィザードの少女にとって最悪の結果となるわけだ」
喋々と述べながらウンドランスの穂先がコクリコに向けられる。
「いや、慢心はしていないですね。そうはならないと言う以上、そうはならないんですよ!」
俺の自信に満ちた言い様に、アル氏は怪訝な表情。
堂々とした俺に警戒感を抱いたのか、俺が動くと読んでこちらに意識を向けてくる。
有り難いね。
別段、アル氏の意識を俺へと集中させなくても問題はないだろうけども、タゲ取りは連携の中では大事な仕事だからな。
で、俺に動く気がないことを確認すれば、
「仲間の死にて後悔するんだね!」
と、発する。
「そうはならないと、こちらは言い続けている」
「はぁ!?」
嘴を大きく開いて驚くアル氏。
驚くのは初めて耳にする声だったからなのか。
それとも――、
「なんだぁ!?」
突如として甲高い声を発しながら、地面へとうつ伏せに倒れ込む自分自身の現状にか。
床へとうつ伏せに倒れた衝撃が原因なのか、顕現させたウインドランスは消滅。
「なんなんだ! 体が動かない!? バインド!? いや違う。この感覚は……他者による拘束!?」
よし! お見事としか言いようがないね。
「抜け出せない! この力……。いや、力と言うよりは、こちらが力を入れることが出来ないように押さえつけられている。面妖な! これは! 明らかに何者かが拘束している。――!? アンデッドと共に行動する勇者。ゴースト系も伴っていたようだね!」
いい推理だな。
事実ゴースト系であるドッペルガンガーのオムニガルも天空要塞には参加しているからな。
だけども――、
「そうじゃない」
と、俺の代わりに口を開いてくれるのはアル氏の直ぐ側から。
「あれ!?」
と、ここで縛られたコクリコ。
「先ほどもそうでしたが、やはりゲッコーの声じゃないですね」
と、継ぐ。
「おう、ゲッコーさんと似た力を持った人物だ」
「――なるほど。喚んだのですね」
「理解が早くて助かる」
俺とコクリコのやり取りが一通り終えたところで、
「勝負有りだ。ガーゴイルのアルとやら。こうやって間近で、しかも触れると本当に自分がファンタジーの世界に来たというの痛感させられる。今までも見てはきているが」
アル氏の方向から聞こえてくる声。
でもアル氏ではない。
「一体、誰なんだ!」
なんとかうつ伏せの状態から首を動かして後方を見ながら発せば、ようやくとばかりに、
「人間だよ。ただの兵士だ」
黒色の目出し帽――バラクラバを被ったモスグリーンの軍服姿の人物が突如として眼界に現れる。
――頼りになるS級さんの一人をこの地へと喚ばせてもらった。
「彼の者達の一人か。王都でも目にしたことがある」
ロマンドさんが俺の横に立つ。
「で、いつここへと喚んだのだ?」
「腹痛に苦しんだ時ですよ」
「やはりそうか。なんとも嘘くさかったからな」
「当然でしょう。勇者が腹痛など起こしませんよ」
――……以前、森の中で生水をがぶ飲みして苦しみまくった事は、ここで口にはするまい。
ベルとゲッコーさんだけしか知らないことだからな。
「おのれ! ただの兵が自分を拘束できるものか!」
「少なくとも俺を除けば後百人はいるがな」
ゲッコーさんと残り九十九人のS級さんのことを誇らしく言っている。
まあ、実際はエンジニアなんかに特化したS級さんもいるけどね。
必ずしも戦闘特化ばかりという訳ではないけども、それでも並の相手では勝てないのも確かだな。
今回ここに来てくれた人物のステータスは、近接と尋問がSランク、射撃はAランク。
戦闘能力が高いゲッコーさんと同様のオールラウンダータイプ。
なのでゲッコーさんが目の前にいるかのような安心感である。
しかも拘束術においてはゲッコーさんを上回る人物だ。
デスベアラーに関節を極めて動きを封じたゲッコーさん。
アル氏がデスベアラーと同程度のクラスなら、まず抜け出すことは不可能。
現に拘束されている本人もそう言っているしね。
「くそっ! さぞ名のある者なのだろうね! せめて名を聞いて死にたいものだよ」
「ユーリ・エリュアール。得意としているのは近接戦闘と尋問――拷問だ」
「拷問官か。すっぱりと命を奪ってほしいものだな……。拷問をしたところで主の場所は教えない!」
「潔し」
の一言を返せば、首に巻き付けた腕を締め上げると同時に「くぁ……」と、短く力ない声がアル氏から漏れた。
「そうだと思います。当然ながら俺だけでなく拘束されているコクリコも胆力は凄いですよ。そこだけなら俺は太刀打ち出来ません」
「そうだね。アンデッドは言わずもがな、ウィザードの少女も胆力がある。捕らえられていても恐怖という感情を表に出さないからね」
「当然でしょう。私はこんなところで終わるなどと思っていませんからね! 恐怖を抱く意味が無い」
「勇者を信頼しているようだ」
「それもありますが、私という存在がこんなところで終わるような存在ではないですからね! コクリコ・シュレンテッドですよ。私は!」
「堂々と言い切る……。大物だね……」
「なにを当然なことを言いますかね」
「本当に大物だ。我々の同胞に迎え入れたいくらいだ」
縛られていてもぶれない強気にアル氏も感心。
「だが交渉が決裂となれば、勇者は少女の死を目にしなければならないだろうね。残念だよ」
「だから、そうはなりませんよ!」
「最悪の結末をその身で経験してもらうしかないね」
拳から掌へと変わる右手から顕現するのは風の刃。
徐々に大きくなり槍の形状とすれば――、
「このウインドランスで串刺しとしよう」
「そうはならないさ!」
「会話をしたのは今日が初めて。短いやり取りからも勇者の人柄に好感は持てたよ。――が、現状を理解できていないのは残念だった。こちらの有利を理解できない。勝ち続けたことで危機感を失っているようだね。慢心による交渉は、勇者とウィザードの少女にとって最悪の結果となるわけだ」
喋々と述べながらウンドランスの穂先がコクリコに向けられる。
「いや、慢心はしていないですね。そうはならないと言う以上、そうはならないんですよ!」
俺の自信に満ちた言い様に、アル氏は怪訝な表情。
堂々とした俺に警戒感を抱いたのか、俺が動くと読んでこちらに意識を向けてくる。
有り難いね。
別段、アル氏の意識を俺へと集中させなくても問題はないだろうけども、タゲ取りは連携の中では大事な仕事だからな。
で、俺に動く気がないことを確認すれば、
「仲間の死にて後悔するんだね!」
と、発する。
「そうはならないと、こちらは言い続けている」
「はぁ!?」
嘴を大きく開いて驚くアル氏。
驚くのは初めて耳にする声だったからなのか。
それとも――、
「なんだぁ!?」
突如として甲高い声を発しながら、地面へとうつ伏せに倒れ込む自分自身の現状にか。
床へとうつ伏せに倒れた衝撃が原因なのか、顕現させたウインドランスは消滅。
「なんなんだ! 体が動かない!? バインド!? いや違う。この感覚は……他者による拘束!?」
よし! お見事としか言いようがないね。
「抜け出せない! この力……。いや、力と言うよりは、こちらが力を入れることが出来ないように押さえつけられている。面妖な! これは! 明らかに何者かが拘束している。――!? アンデッドと共に行動する勇者。ゴースト系も伴っていたようだね!」
いい推理だな。
事実ゴースト系であるドッペルガンガーのオムニガルも天空要塞には参加しているからな。
だけども――、
「そうじゃない」
と、俺の代わりに口を開いてくれるのはアル氏の直ぐ側から。
「あれ!?」
と、ここで縛られたコクリコ。
「先ほどもそうでしたが、やはりゲッコーの声じゃないですね」
と、継ぐ。
「おう、ゲッコーさんと似た力を持った人物だ」
「――なるほど。喚んだのですね」
「理解が早くて助かる」
俺とコクリコのやり取りが一通り終えたところで、
「勝負有りだ。ガーゴイルのアルとやら。こうやって間近で、しかも触れると本当に自分がファンタジーの世界に来たというの痛感させられる。今までも見てはきているが」
アル氏の方向から聞こえてくる声。
でもアル氏ではない。
「一体、誰なんだ!」
なんとかうつ伏せの状態から首を動かして後方を見ながら発せば、ようやくとばかりに、
「人間だよ。ただの兵士だ」
黒色の目出し帽――バラクラバを被ったモスグリーンの軍服姿の人物が突如として眼界に現れる。
――頼りになるS級さんの一人をこの地へと喚ばせてもらった。
「彼の者達の一人か。王都でも目にしたことがある」
ロマンドさんが俺の横に立つ。
「で、いつここへと喚んだのだ?」
「腹痛に苦しんだ時ですよ」
「やはりそうか。なんとも嘘くさかったからな」
「当然でしょう。勇者が腹痛など起こしませんよ」
――……以前、森の中で生水をがぶ飲みして苦しみまくった事は、ここで口にはするまい。
ベルとゲッコーさんだけしか知らないことだからな。
「おのれ! ただの兵が自分を拘束できるものか!」
「少なくとも俺を除けば後百人はいるがな」
ゲッコーさんと残り九十九人のS級さんのことを誇らしく言っている。
まあ、実際はエンジニアなんかに特化したS級さんもいるけどね。
必ずしも戦闘特化ばかりという訳ではないけども、それでも並の相手では勝てないのも確かだな。
今回ここに来てくれた人物のステータスは、近接と尋問がSランク、射撃はAランク。
戦闘能力が高いゲッコーさんと同様のオールラウンダータイプ。
なのでゲッコーさんが目の前にいるかのような安心感である。
しかも拘束術においてはゲッコーさんを上回る人物だ。
デスベアラーに関節を極めて動きを封じたゲッコーさん。
アル氏がデスベアラーと同程度のクラスなら、まず抜け出すことは不可能。
現に拘束されている本人もそう言っているしね。
「くそっ! さぞ名のある者なのだろうね! せめて名を聞いて死にたいものだよ」
「ユーリ・エリュアール。得意としているのは近接戦闘と尋問――拷問だ」
「拷問官か。すっぱりと命を奪ってほしいものだな……。拷問をしたところで主の場所は教えない!」
「潔し」
の一言を返せば、首に巻き付けた腕を締め上げると同時に「くぁ……」と、短く力ない声がアル氏から漏れた。
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