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天空要塞
PHASE-1507【逃げも大事】
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――……ベルの攻撃を以てしても……減らないとはな……。
信じられねえよ……。
「もしかして、攻撃すればするほど増えていくタイプとかじゃねえよな?」
「違う。ひたすらに数が多いだけだ」
だよな。ベルの炎を受ければ消滅は必至。分裂なんて芸当があったとしても、その能力を発揮することが出来ないままに消え失せるもんな。
シンプルに多いだけか……。
「養殖するにしてもちゃんと経済的にやってくれよ。餌代とかどうすんだよ」
「そんな冗談が言えるだけの余裕があるのは、いくつもの修羅場と死線をくぐり抜けて来た勇者様だからか?」
「余裕ある振る舞いを見せなきゃいけない立場だからだよ。内心は震えてるっての! ギヤマンハートだぞ。なめんな!」
「誇ってんじゃねえよ! というか、それを全員が耳にする中で言えるのが余裕ある証拠だよ」
「んなこたいいからさっさと攻略法を出しなさい。大火力以外でな」
「なんでだよ? 一気に大魔法の連続使用で殲滅すればいいだろうが」
「お前は自分の主の根城が破壊されてもいいのかよ」
「ああ……確かに」
こいつもこいつで今の状況に内心パニックなんだな。
こっちとしては天井に向けて大火力からなる大魔法を使用したら、天井が崩落する可能性が大だからな。
押しつぶされたらかなわんし、何よりも進行ルートがそれでなくなる可能性も出てくるからな。
「だったら一つだな」
「おう、効率の良い攻略を頼む」
「逃げる事だ」
「お、そうか。それはベストだな」
「なんだ。もっと具体的な攻略を! とか言わないんだな」
「ここで活動しているヤツがそう言うんなら、それがベストって事だろうからな」
「柔軟性はあるな。アイルもそのくらいあればな」
「生徒会長は生徒会長で、お前にはもう少し下半身以外で物事を考えてほしいと思っていることだろうよ」
「うるせえよ!」
「それだけ喋れる元気があるのだからな。拘束されたままでも健脚を見せてくれることだろう」
俺達のやり取りを締めるようにルインが言えば、
「見せてやるよアンデッド。そのぽっかりと空いた眼窩に灯る光で見ておけ! 全員! 俺に続け!」
ルインへと返しつつ、マッドバインドに拘束された体にて前傾姿勢になりながら走り出すラズヴァート。
「ちょっと! 急に走らないでくれる!」
拘束しているリンとしては、勝手に走り出されて迷惑。
さながら散歩でテンションが上がり、飼い主の言うことを聞かなくなる残念系な犬のようであった。
「代わろう」
ここでリーダー格のルインがリンが手にするマッドバインドを自らが握り。
「歩調は皆と合わせよ」
と、言いつ泥の縄を引っ張れば、
「だっ!? なにすんだよ!」
尻餅をついてからの怒号。
「このまま逃げられるのは困るのでな」
「言ってる場合かよ!」
ラズヴァートの言は正しい。
こんなやり取りをしている中でも全く減ることのない群れが俺達へと一斉に迫ってくる。
「面倒な」
頼りになるベルの浄化の炎。
消滅させる威力は絶大なんだけども……、
「やはり埒が明かない」
と、吐露する。
でもってちょっとお疲れ気味でもある。
やはり赤髪の時とは違い、火力だけでなく、連続使用もかなり低下しているようだな。
最強さんであっても、弱体化状態なんだから無理はさせられない。
「さっさとこの広間からずらかろう」
「走れ!」
俺に続くラズヴァートの声に皆で呼応する。
目指すは、走れと発した人物が向かう方向にある通路。
走る間も天井方向から迫ってくるスカイフィッシュの群れをコクリコやシャルナが迎撃してくれる。
両手が自由になったリンも本腰入れての高火力からなる魔法にて迎撃。
ベルの一振りでも対処が難しいこともあり、効果はあっても物量の前には時間稼ぎが関の山。
まあ――、
「その時間稼ぎのお陰で、皆して通路に滑り込めるわけだけど!」
言いつつ足を止めれば、
「どうした勇者?」
ルインのリーダー格も足を止める。
なので強制的に拘束されているラズヴァートも止まる。
「何してんだよ! 足を止めんな!」
と、お怒りだが、
「色男。まずは女性優先だろう?」
言ってやれば、
「それは当然だ!」
素直に返してくる。
敵対関係であれ、女性陣を優先するところは立派だし、好感も持てる。
「いずれは俺の女たちになるんだから大事にしないとな」
「それはない」
きっぱりと断りを俺が入れている中で、女性陣たちが通路へと入っていく。
「よし! では我々も」
「いえ、俺は殿です。まだルイン、エルダーとピルグリムによる部隊が残っていますからね」
「ほう。自らを殿としてアンデッドを進ませるか」
大層に感心したような声音のルインリーダー。
「馬鹿じゃねえの」
反面、ラズヴァートは怒号を通り越して呆れ口調。
「馬鹿ではない。一緒に行動する中で、種族がどうとか言ってたら連携なんか出来ないっての。戦場でそんな考えでいれば死に直結だからな。垣根を越えて行動することが大切と理解しているから、俺は今も生きている!」
「……ちっ」
言い返せないでいたのか、舌打ちだけで返してくる。
論破できるほどの発言が頭の中で湧き出なかったようだな。
そんなんだからストームトルーバーの中でも浮いてるんじゃないの?
だから単独行動なんじゃないの?
信じられねえよ……。
「もしかして、攻撃すればするほど増えていくタイプとかじゃねえよな?」
「違う。ひたすらに数が多いだけだ」
だよな。ベルの炎を受ければ消滅は必至。分裂なんて芸当があったとしても、その能力を発揮することが出来ないままに消え失せるもんな。
シンプルに多いだけか……。
「養殖するにしてもちゃんと経済的にやってくれよ。餌代とかどうすんだよ」
「そんな冗談が言えるだけの余裕があるのは、いくつもの修羅場と死線をくぐり抜けて来た勇者様だからか?」
「余裕ある振る舞いを見せなきゃいけない立場だからだよ。内心は震えてるっての! ギヤマンハートだぞ。なめんな!」
「誇ってんじゃねえよ! というか、それを全員が耳にする中で言えるのが余裕ある証拠だよ」
「んなこたいいからさっさと攻略法を出しなさい。大火力以外でな」
「なんでだよ? 一気に大魔法の連続使用で殲滅すればいいだろうが」
「お前は自分の主の根城が破壊されてもいいのかよ」
「ああ……確かに」
こいつもこいつで今の状況に内心パニックなんだな。
こっちとしては天井に向けて大火力からなる大魔法を使用したら、天井が崩落する可能性が大だからな。
押しつぶされたらかなわんし、何よりも進行ルートがそれでなくなる可能性も出てくるからな。
「だったら一つだな」
「おう、効率の良い攻略を頼む」
「逃げる事だ」
「お、そうか。それはベストだな」
「なんだ。もっと具体的な攻略を! とか言わないんだな」
「ここで活動しているヤツがそう言うんなら、それがベストって事だろうからな」
「柔軟性はあるな。アイルもそのくらいあればな」
「生徒会長は生徒会長で、お前にはもう少し下半身以外で物事を考えてほしいと思っていることだろうよ」
「うるせえよ!」
「それだけ喋れる元気があるのだからな。拘束されたままでも健脚を見せてくれることだろう」
俺達のやり取りを締めるようにルインが言えば、
「見せてやるよアンデッド。そのぽっかりと空いた眼窩に灯る光で見ておけ! 全員! 俺に続け!」
ルインへと返しつつ、マッドバインドに拘束された体にて前傾姿勢になりながら走り出すラズヴァート。
「ちょっと! 急に走らないでくれる!」
拘束しているリンとしては、勝手に走り出されて迷惑。
さながら散歩でテンションが上がり、飼い主の言うことを聞かなくなる残念系な犬のようであった。
「代わろう」
ここでリーダー格のルインがリンが手にするマッドバインドを自らが握り。
「歩調は皆と合わせよ」
と、言いつ泥の縄を引っ張れば、
「だっ!? なにすんだよ!」
尻餅をついてからの怒号。
「このまま逃げられるのは困るのでな」
「言ってる場合かよ!」
ラズヴァートの言は正しい。
こんなやり取りをしている中でも全く減ることのない群れが俺達へと一斉に迫ってくる。
「面倒な」
頼りになるベルの浄化の炎。
消滅させる威力は絶大なんだけども……、
「やはり埒が明かない」
と、吐露する。
でもってちょっとお疲れ気味でもある。
やはり赤髪の時とは違い、火力だけでなく、連続使用もかなり低下しているようだな。
最強さんであっても、弱体化状態なんだから無理はさせられない。
「さっさとこの広間からずらかろう」
「走れ!」
俺に続くラズヴァートの声に皆で呼応する。
目指すは、走れと発した人物が向かう方向にある通路。
走る間も天井方向から迫ってくるスカイフィッシュの群れをコクリコやシャルナが迎撃してくれる。
両手が自由になったリンも本腰入れての高火力からなる魔法にて迎撃。
ベルの一振りでも対処が難しいこともあり、効果はあっても物量の前には時間稼ぎが関の山。
まあ――、
「その時間稼ぎのお陰で、皆して通路に滑り込めるわけだけど!」
言いつつ足を止めれば、
「どうした勇者?」
ルインのリーダー格も足を止める。
なので強制的に拘束されているラズヴァートも止まる。
「何してんだよ! 足を止めんな!」
と、お怒りだが、
「色男。まずは女性優先だろう?」
言ってやれば、
「それは当然だ!」
素直に返してくる。
敵対関係であれ、女性陣を優先するところは立派だし、好感も持てる。
「いずれは俺の女たちになるんだから大事にしないとな」
「それはない」
きっぱりと断りを俺が入れている中で、女性陣たちが通路へと入っていく。
「よし! では我々も」
「いえ、俺は殿です。まだルイン、エルダーとピルグリムによる部隊が残っていますからね」
「ほう。自らを殿としてアンデッドを進ませるか」
大層に感心したような声音のルインリーダー。
「馬鹿じゃねえの」
反面、ラズヴァートは怒号を通り越して呆れ口調。
「馬鹿ではない。一緒に行動する中で、種族がどうとか言ってたら連携なんか出来ないっての。戦場でそんな考えでいれば死に直結だからな。垣根を越えて行動することが大切と理解しているから、俺は今も生きている!」
「……ちっ」
言い返せないでいたのか、舌打ちだけで返してくる。
論破できるほどの発言が頭の中で湧き出なかったようだな。
そんなんだからストームトルーバーの中でも浮いてるんじゃないの?
だから単独行動なんじゃないの?
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