1,504 / 1,668
天空要塞
PHASE-1504【ワシャワシャ】
しおりを挟む
――入り口を強制的に作り、尚且つ中から敵勢力が現れないことを確認したところで降車し、ティーガー1をプレイギアへと戻す。
で、
「言われたとおり自分たちで開けてやったぞ」
と、ラズヴァートに得意げに言ってやる。
悔しがる表情を浮かべるかと思いきや、
「大したもんだ。それと同時に、お前のおマヌケ剣舞がなんの力も有していないってのも分かった」
「な、なんでだよ?」
「声が上擦ってるぜ」
ニヤリと笑ってくる。
「剣舞で爆発させる力があるなら、ここでソレを使用すればよかっただけだろ。なのにそれをせずに、見たこともない召喚で鉄の象をわざわざ喚び出した。剣舞による爆発がはったりだったという証拠としては十分じゃねえか?」
女好きの下半身思考のヤツかと思っていたけど、知恵は回るようだな。
「どうなんだよ?」
「ご想像にお任せします」
「正解だと受け取らせてもらうぜ」
「ご自由に」
余裕を見せた返しをしたつもりだったが、ラズヴァートが小馬鹿にした笑みでこっちを見てくる辺り、俺の表情はポーカーフェイスとはいかなかったようだ。
まあいい。バレたところで拘束している時点で相手に伝わることはない。
「勇者よ」
「はいはい」
問答を行ったルインが俺を呼べば、
「部隊を突入させたが、門から続く広間に敵の気配はないようだ。だからこそ勇者も鉄の象から降りたのだろうが。無駄な事をしたかな?」
「いえいえ、お仕事が速くて助かりますよ」
「トールが遅いだけだ」
と、いつの間にか突入していたベル。
ミルモンを左肩に乗せているから本日はやる気に漲っておられる。
今回はそのやる気が最後まで持続してくれれば有り難い。
ミルモンには悪いけども、ベルの左肩に座っていてもらおう。
アイコンタクトで伝えてみれば、むぅぅぅ……っと、困った表情になるも、ベルの戦力を考えれば、自分がここに留まることでやる気になるなら仕方なし。と、判断してくれたようで、苦笑いを俺に見せつつベルの左肩に留まってくれる。
目と目だけで意思疎通が出来る。
付き合いはメインメンバーだと一番短いけど、俺の使い魔という事もあって、長い年月を共に過ごしたかのような連携が可能になっているのは喜ばしい。
――。
「お邪魔しますよ~。門を破壊してごめんなさいね。弁償は出世払いでお願いします!」
なんて言いつつ、要塞内へと進入。
足を踏み入れた事を大音声で伝えてみるも――、
「反応は――なし」
先ほどまで城壁で戦闘をしていたのに、この静けさよ。
アハト・アハトで鉄門を豪快に破壊してお邪魔しているというのに即応することもなく、ただ静けさだけが支配する広間。
こうなると、
「不気味だな」
ポツリと漏らせば、
「確かに不気味である」
「然り」
と、俺の側に立つルインが続き、エルダーが相槌。
スケルトン達による不気味発言ってのもやはりツッコミを入れたくなるけども、ぐっと堪えつつ、
「道案内を頼むよ」
ラズヴァートに言えば、
「どうしようかな~」
軽い口調で返してくる。
「えらく余裕だな」
「お前等、要塞に入ったんだからな。しかも門を破壊して。ここからはストームトルーバーだけでなく、大立者を中心とした幹部連中も出張ってくるぞ」
大立者――か。
「さしずめタンガタ・マヌのクロウスか」
「馴れ馴れしいな!」
呼び捨てにて名を出せばラズヴァートは怒ってくる。
「尊敬してんだな」
「当たり前だ!」
おう、素直だね。
敬慕の念を抱くってやつだ。
「以前に挨拶は受けた。でもって強いってのも理解している。取り巻きのガーゴイル達もね」
「へぇ。勇者に挨拶はしたとは聞いていたけども、力比べもしたのか?」
「しなくても強さは分かるってもんだ」
「確かに佇まいからでも伝わってくるだろうからな。大立者と幹部は別格だからよ」
まるで自分の事のように誇ってくるね。
それほどまでに上位陣の連中を尊敬しているってことなんだろう。
クロウスたちの実力はプレイギアで調べたから分かっている――というのは当然、黙っておく。
連中のレベルは90超えと80超えだったからな。
大立者ってポジションがクロウスなら、ガーゴイル達が幹部となるんだろう。
幹部連中が他にもいるとなれば、ガーゴイルたち同様にレベルは80超えと考えていいだろうな。
「ふむん――」
「なんだよ」
ジッとラズヴァートを見る。
こいつのレベルは72だった。
強くはあったが苦戦というほどの苦戦はなく、勝つ事が出来た。
今の俺なら、80レベルの奴等とも戦いようによっては勝つ事も出来るかもしれないな。
「ふふん♪」
「なに笑ってんだよ」
自身の成長が嬉しくて笑いを漏らせば、ラズヴァートが怪訝な表情を向けてくる。
ジッと見ながらの笑いだったからか、
「ま、まさか……。本当に男色なのか……」
倒した時の俺の姿と、今の俺の所作で自分が本当に狙われているのではと考えているようだ。
「んなわけあるか」
素っ気なく返しながらも要塞内を見渡す。
門から続く広間。
虎口のような造りではなく、だだっ広いエントランスといった感じである。
乳白色からなる壁と床。そして柱。
「こういった色味は神聖さがあるな」
「そんな場所に無理矢理に入り込んだ気分はどうだよ?」
「警告をしてからの立ち入りだから許してほしいね。出世払いとも伝えたしな」
「うだつの上がらねえ顔だから出世するにはそれこそアンデッドになって、永遠に働かないと返済は無理そうだな」
「うるせえな。こちとら公爵だって言ってんだろうが。ここでの悶着に一段落ついたら、ちゃんと弁償させてもらうっての!」
「無事にここを抜け出せればの話だけどな」
「おん?」
「返すには骨が折れそうだな――勇者!」
「おんおん!?」
一段階、強い声になるラズヴァート。
強い声の中には心なしか焦りも潜んでいる。
そんなラズヴァートの発言を待っていたとばかりに、今まで静寂に包まれていた広間にワシャワシャといった音が響いてくる。
で、
「言われたとおり自分たちで開けてやったぞ」
と、ラズヴァートに得意げに言ってやる。
悔しがる表情を浮かべるかと思いきや、
「大したもんだ。それと同時に、お前のおマヌケ剣舞がなんの力も有していないってのも分かった」
「な、なんでだよ?」
「声が上擦ってるぜ」
ニヤリと笑ってくる。
「剣舞で爆発させる力があるなら、ここでソレを使用すればよかっただけだろ。なのにそれをせずに、見たこともない召喚で鉄の象をわざわざ喚び出した。剣舞による爆発がはったりだったという証拠としては十分じゃねえか?」
女好きの下半身思考のヤツかと思っていたけど、知恵は回るようだな。
「どうなんだよ?」
「ご想像にお任せします」
「正解だと受け取らせてもらうぜ」
「ご自由に」
余裕を見せた返しをしたつもりだったが、ラズヴァートが小馬鹿にした笑みでこっちを見てくる辺り、俺の表情はポーカーフェイスとはいかなかったようだ。
まあいい。バレたところで拘束している時点で相手に伝わることはない。
「勇者よ」
「はいはい」
問答を行ったルインが俺を呼べば、
「部隊を突入させたが、門から続く広間に敵の気配はないようだ。だからこそ勇者も鉄の象から降りたのだろうが。無駄な事をしたかな?」
「いえいえ、お仕事が速くて助かりますよ」
「トールが遅いだけだ」
と、いつの間にか突入していたベル。
ミルモンを左肩に乗せているから本日はやる気に漲っておられる。
今回はそのやる気が最後まで持続してくれれば有り難い。
ミルモンには悪いけども、ベルの左肩に座っていてもらおう。
アイコンタクトで伝えてみれば、むぅぅぅ……っと、困った表情になるも、ベルの戦力を考えれば、自分がここに留まることでやる気になるなら仕方なし。と、判断してくれたようで、苦笑いを俺に見せつつベルの左肩に留まってくれる。
目と目だけで意思疎通が出来る。
付き合いはメインメンバーだと一番短いけど、俺の使い魔という事もあって、長い年月を共に過ごしたかのような連携が可能になっているのは喜ばしい。
――。
「お邪魔しますよ~。門を破壊してごめんなさいね。弁償は出世払いでお願いします!」
なんて言いつつ、要塞内へと進入。
足を踏み入れた事を大音声で伝えてみるも――、
「反応は――なし」
先ほどまで城壁で戦闘をしていたのに、この静けさよ。
アハト・アハトで鉄門を豪快に破壊してお邪魔しているというのに即応することもなく、ただ静けさだけが支配する広間。
こうなると、
「不気味だな」
ポツリと漏らせば、
「確かに不気味である」
「然り」
と、俺の側に立つルインが続き、エルダーが相槌。
スケルトン達による不気味発言ってのもやはりツッコミを入れたくなるけども、ぐっと堪えつつ、
「道案内を頼むよ」
ラズヴァートに言えば、
「どうしようかな~」
軽い口調で返してくる。
「えらく余裕だな」
「お前等、要塞に入ったんだからな。しかも門を破壊して。ここからはストームトルーバーだけでなく、大立者を中心とした幹部連中も出張ってくるぞ」
大立者――か。
「さしずめタンガタ・マヌのクロウスか」
「馴れ馴れしいな!」
呼び捨てにて名を出せばラズヴァートは怒ってくる。
「尊敬してんだな」
「当たり前だ!」
おう、素直だね。
敬慕の念を抱くってやつだ。
「以前に挨拶は受けた。でもって強いってのも理解している。取り巻きのガーゴイル達もね」
「へぇ。勇者に挨拶はしたとは聞いていたけども、力比べもしたのか?」
「しなくても強さは分かるってもんだ」
「確かに佇まいからでも伝わってくるだろうからな。大立者と幹部は別格だからよ」
まるで自分の事のように誇ってくるね。
それほどまでに上位陣の連中を尊敬しているってことなんだろう。
クロウスたちの実力はプレイギアで調べたから分かっている――というのは当然、黙っておく。
連中のレベルは90超えと80超えだったからな。
大立者ってポジションがクロウスなら、ガーゴイル達が幹部となるんだろう。
幹部連中が他にもいるとなれば、ガーゴイルたち同様にレベルは80超えと考えていいだろうな。
「ふむん――」
「なんだよ」
ジッとラズヴァートを見る。
こいつのレベルは72だった。
強くはあったが苦戦というほどの苦戦はなく、勝つ事が出来た。
今の俺なら、80レベルの奴等とも戦いようによっては勝つ事も出来るかもしれないな。
「ふふん♪」
「なに笑ってんだよ」
自身の成長が嬉しくて笑いを漏らせば、ラズヴァートが怪訝な表情を向けてくる。
ジッと見ながらの笑いだったからか、
「ま、まさか……。本当に男色なのか……」
倒した時の俺の姿と、今の俺の所作で自分が本当に狙われているのではと考えているようだ。
「んなわけあるか」
素っ気なく返しながらも要塞内を見渡す。
門から続く広間。
虎口のような造りではなく、だだっ広いエントランスといった感じである。
乳白色からなる壁と床。そして柱。
「こういった色味は神聖さがあるな」
「そんな場所に無理矢理に入り込んだ気分はどうだよ?」
「警告をしてからの立ち入りだから許してほしいね。出世払いとも伝えたしな」
「うだつの上がらねえ顔だから出世するにはそれこそアンデッドになって、永遠に働かないと返済は無理そうだな」
「うるせえな。こちとら公爵だって言ってんだろうが。ここでの悶着に一段落ついたら、ちゃんと弁償させてもらうっての!」
「無事にここを抜け出せればの話だけどな」
「おん?」
「返すには骨が折れそうだな――勇者!」
「おんおん!?」
一段階、強い声になるラズヴァート。
強い声の中には心なしか焦りも潜んでいる。
そんなラズヴァートの発言を待っていたとばかりに、今まで静寂に包まれていた広間にワシャワシャといった音が響いてくる。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる