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天空要塞
PHASE-1484【苦戦するほどじゃない】
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俺を動かす原動力は残念なものだし、ミルモンは呆れ気味ではあるんだけども――、
「トールのやる気が凄いですね」
と、コクリコからは感心の声。
これに続くベルとシャルナも好印象だった。
ジージー戦での情けない姿と比べれば、アグレッシブに動けているだけで評価が高くなるようだな。
しかも巨体に対し、恐れることなく殴るという行為を実行したことがベルには雄々しく見えたようで、この部分でも評価が高かった。
「美人、美少女に褒めてもらえて羨ましい限りだ」
「お前を転がせば、もっと褒めてもらえるだろうさ!」
「やれやれ、どの程度の力量かを調べて立ち去るつもりだったが――」
「おん?」
「装備を」
ラズヴァートの発言に――、
「ガァ」
フッケバインが短く返せば、片羽を広げる。
広げた翼の付け根部分に隠されるように仕舞われていたのは――、
「長物――か」
それ以外にも矢筒らしきものも見て取れる。
ラズヴァートがその中から長物を手にすれば、
「手にする前に襲ってきても良かったんだけどな。千載一遇だったんだからさ」
「勇者がそんなことをするかよ。悪役だってヒーローが変身したり、ポーズきめてる時は空気を読んで待ってやってんだからな。一部例外はあるけども」
「何のことやら。ま、その厚意にはあまえよう。そしてその厚意が仇となることをその身に味わわせてやるさ!」
一々ときざったらしく言いやがって!
しかもまたしてもウインクつき。
女は喜んでも俺は嬉しくもない! 挑発として受け取らせてもらい、
「やってみんかいゴラッ!」
と、怒号で返す。
「……本当……君、勇者なの? 使い魔の発言どおり、ガラの悪い輩みたいだよ……」
こっちを可哀想なヤツを見るような目で見てきてんじゃねえ!
そんな不快になる視線を向けつつも、長柄からなる得物を軽く振り回してみせる。
幅広の槍鞘は革製。
あの形状――、
「十文字槍ってところか」
「ふ~ん。さっきまで殺気を迸らせていたけど、こちらが得物を手にすれば冷静に見てくるんだね」
「それはお宅にとって得意とするモノなのか? それともストームトルーパーってのに支給される統一された装備なのか?」
「どっちも正解」
翼幻王側近の選ばれし兵士たちの専用武器であり、得意と言えるまでの業前に昇華させているわけだ。
「じゃあ――まあ、いっちょ行きますか!」
「おっ!」
翼を一つ羽ばたかせただけで、一気にトップスピードとばかりの高速飛行。
明らかにジージーよりも速い。
「そい!」
が、
「捕捉は出来る」
「あら!?」
いまだ鞘に収まる穂先部分ではなく、挨拶代わりとばかりの石突きによる刺突は俺には当たらない。
横に半歩分動くだけで見切って躱し、そのまま柄を掴み、高速飛行からの刺突の勢いを利用させてもらって持ち主もろとも投げ飛ばしてやる。
「やるねっ!」
投げれば、片翼だけを勢いよく羽ばたかせてバレルロールを思わせる軌道で姿勢を整えると、そのまま宙空に留まってこちらを見下ろしてくる。
――うん。
今のがコイツの全力だと仮定すれば、大したことないな。
トップの側仕えってことだから、この程度じゃないとは思うけど。
「もう一度!」
留まっていたところから翼を動かして俺へと再度の接近。
今度は本気なのか、革鞘に収めていた穂先を露わにしてからの攻撃。
白銀に輝く穂先は予想したとおりの、
「十文字槍」
真っ直ぐと伸びた穂先の左右からも伸びる穂。
楓の葉を思わせる穂先が俺に向けられれば、
「今度はどうだ!」
気迫のこもった刺突は石突きとは違って攻撃範囲が広い。
枝分かれした左右対称からなる刃の部分にも気を付けないといけない。
半歩横移動だけですんだ先ほどと違って、一歩分横に移動してから回避。
で、
「そいや!」
「くそ!」
同様の投げで対処してやれば、悔しそうな声を上げるラズヴァート。
高速飛行からの刺突ってのは、ここの連中のバトルドクトリンなのかな。
使用者が違えば強力な刺突になるのは事実。
ジージーよりも明らかに速い動きだから、そこから見舞われる槍の刺突は強力なもの。
だが、ラズヴァートの動きは今の俺なら十分に対処できる程度の動き。
ジージーより速くても、ジージーの方が俺にとっては脅威だったな。
あの時はトラウマで弱体化してたってのがあるからな。
俺にとってジージーは存在自体に特攻が付与されていたから苦戦したけども、精神状態が平常な俺となれば、ジージーよりも速かろうがこの程度なら見切れる。
「どうした。まさか二度とも全力とは言わないよな――色男」
「まだまだ!」
って、ムキになって返してくる辺り――全力なんだな。
これで全力なら何とかなるな。
一対一なら苦戦はしない相手だ。
ストームトルーパーが翼幻王の側仕えであり、先遣隊としての意味合いを持つ部隊みたいだから、数による戦いが本来の戦闘スタイルなんだろう。
一人一人がラズヴァート並で、それが集団で迫ってくれば脅威だけども、今回はこっちの力量を調べるとか言ってたからな。
このクラスの増援はないと考えていいかな。
「隙だらけ」
こちらが物思いに耽っていると思って仕掛けてくるけども――耽れるだけの余裕があるんだよね。
「ちょいさ!」
「がっ!?」
刺突には十分に対応可能。躱してから長柄に沿うように大股で一歩前へと足を進めてから、拳によるカウンターを見舞うってのは難しくない。
腹に一撃くれてやれば、くの字となってそのまま地面へと両膝をつくイケメンと、それを見下ろす俺という構図の完成。
「トールのやる気が凄いですね」
と、コクリコからは感心の声。
これに続くベルとシャルナも好印象だった。
ジージー戦での情けない姿と比べれば、アグレッシブに動けているだけで評価が高くなるようだな。
しかも巨体に対し、恐れることなく殴るという行為を実行したことがベルには雄々しく見えたようで、この部分でも評価が高かった。
「美人、美少女に褒めてもらえて羨ましい限りだ」
「お前を転がせば、もっと褒めてもらえるだろうさ!」
「やれやれ、どの程度の力量かを調べて立ち去るつもりだったが――」
「おん?」
「装備を」
ラズヴァートの発言に――、
「ガァ」
フッケバインが短く返せば、片羽を広げる。
広げた翼の付け根部分に隠されるように仕舞われていたのは――、
「長物――か」
それ以外にも矢筒らしきものも見て取れる。
ラズヴァートがその中から長物を手にすれば、
「手にする前に襲ってきても良かったんだけどな。千載一遇だったんだからさ」
「勇者がそんなことをするかよ。悪役だってヒーローが変身したり、ポーズきめてる時は空気を読んで待ってやってんだからな。一部例外はあるけども」
「何のことやら。ま、その厚意にはあまえよう。そしてその厚意が仇となることをその身に味わわせてやるさ!」
一々ときざったらしく言いやがって!
しかもまたしてもウインクつき。
女は喜んでも俺は嬉しくもない! 挑発として受け取らせてもらい、
「やってみんかいゴラッ!」
と、怒号で返す。
「……本当……君、勇者なの? 使い魔の発言どおり、ガラの悪い輩みたいだよ……」
こっちを可哀想なヤツを見るような目で見てきてんじゃねえ!
そんな不快になる視線を向けつつも、長柄からなる得物を軽く振り回してみせる。
幅広の槍鞘は革製。
あの形状――、
「十文字槍ってところか」
「ふ~ん。さっきまで殺気を迸らせていたけど、こちらが得物を手にすれば冷静に見てくるんだね」
「それはお宅にとって得意とするモノなのか? それともストームトルーパーってのに支給される統一された装備なのか?」
「どっちも正解」
翼幻王側近の選ばれし兵士たちの専用武器であり、得意と言えるまでの業前に昇華させているわけだ。
「じゃあ――まあ、いっちょ行きますか!」
「おっ!」
翼を一つ羽ばたかせただけで、一気にトップスピードとばかりの高速飛行。
明らかにジージーよりも速い。
「そい!」
が、
「捕捉は出来る」
「あら!?」
いまだ鞘に収まる穂先部分ではなく、挨拶代わりとばかりの石突きによる刺突は俺には当たらない。
横に半歩分動くだけで見切って躱し、そのまま柄を掴み、高速飛行からの刺突の勢いを利用させてもらって持ち主もろとも投げ飛ばしてやる。
「やるねっ!」
投げれば、片翼だけを勢いよく羽ばたかせてバレルロールを思わせる軌道で姿勢を整えると、そのまま宙空に留まってこちらを見下ろしてくる。
――うん。
今のがコイツの全力だと仮定すれば、大したことないな。
トップの側仕えってことだから、この程度じゃないとは思うけど。
「もう一度!」
留まっていたところから翼を動かして俺へと再度の接近。
今度は本気なのか、革鞘に収めていた穂先を露わにしてからの攻撃。
白銀に輝く穂先は予想したとおりの、
「十文字槍」
真っ直ぐと伸びた穂先の左右からも伸びる穂。
楓の葉を思わせる穂先が俺に向けられれば、
「今度はどうだ!」
気迫のこもった刺突は石突きとは違って攻撃範囲が広い。
枝分かれした左右対称からなる刃の部分にも気を付けないといけない。
半歩横移動だけですんだ先ほどと違って、一歩分横に移動してから回避。
で、
「そいや!」
「くそ!」
同様の投げで対処してやれば、悔しそうな声を上げるラズヴァート。
高速飛行からの刺突ってのは、ここの連中のバトルドクトリンなのかな。
使用者が違えば強力な刺突になるのは事実。
ジージーよりも明らかに速い動きだから、そこから見舞われる槍の刺突は強力なもの。
だが、ラズヴァートの動きは今の俺なら十分に対処できる程度の動き。
ジージーより速くても、ジージーの方が俺にとっては脅威だったな。
あの時はトラウマで弱体化してたってのがあるからな。
俺にとってジージーは存在自体に特攻が付与されていたから苦戦したけども、精神状態が平常な俺となれば、ジージーよりも速かろうがこの程度なら見切れる。
「どうした。まさか二度とも全力とは言わないよな――色男」
「まだまだ!」
って、ムキになって返してくる辺り――全力なんだな。
これで全力なら何とかなるな。
一対一なら苦戦はしない相手だ。
ストームトルーパーが翼幻王の側仕えであり、先遣隊としての意味合いを持つ部隊みたいだから、数による戦いが本来の戦闘スタイルなんだろう。
一人一人がラズヴァート並で、それが集団で迫ってくれば脅威だけども、今回はこっちの力量を調べるとか言ってたからな。
このクラスの増援はないと考えていいかな。
「隙だらけ」
こちらが物思いに耽っていると思って仕掛けてくるけども――耽れるだけの余裕があるんだよね。
「ちょいさ!」
「がっ!?」
刺突には十分に対応可能。躱してから長柄に沿うように大股で一歩前へと足を進めてから、拳によるカウンターを見舞うってのは難しくない。
腹に一撃くれてやれば、くの字となってそのまま地面へと両膝をつくイケメンと、それを見下ろす俺という構図の完成。
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