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天空要塞
PHASE-1481【黒い鳥】
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「再戦の権利も与えたからな。ジージーが極刑とならないように、トップと出会ったら交渉してみよう」
「問題ないですよ」
「コクリコの威光をこの要塞の主も直接に受ければ、ジージーが門を開いて俺達を潜らせたことも頷けるから。って事だな」
「トールの理解の早さには感心します」
「お前との付き合いも一年になるからな~」
俺が持ち合わせていない、溢れる出てくる自信と発言が羨ましいと毎回、思わされる。
「では、その威光によって次の相手も黙らせてもらおうか。コクリコ」
言いつつベルが上を見やる。
外殻に包まれた曇天の空。
「なんです?」
コクリコが目を細めてベルの視線を追い、コクリコの視線を俺が追う。
「なんか、外殻の近くをゆっくりと飛んでるのがいるな」
「飛んでますね」
「真っ黒だな」
「真っ黒ですね」
「鳥だな」
「間違いなく鳥ですね。しかも――あの位置にいるのにビジョンを使用しなくてもはっきりと鳥だと分かるくらいに大きいですね」
コクリコと目を合わせないまま会話のキャッチボールを行いつつ、悠々と飛翔する黒い鳥を見やる。
この流れ――。
ゲッコーさんからの報告と照らし合わせれば、あの黒くてデカい鳥が――、
「フッケバインって生物と考えていいだろうな」
「来るようだ」
と、ベル。
外殻の近くを飛翔していた黒い鳥は、こちらが自分を見上げて足を止めているというのを察したのか、ゆっくりと円を描きながら俺達が立つ場所へと近づいてくる。
「本当にデカいな」
近づいてくればより大きさが分かるというもの。
ツッカーヴァッテより更に一回り大きい。
「ガァァァァァァァッ!」
「五月蠅いな……」
カラスの鳴き声の音量を上げて、濁らせたような鳴き声にて挨拶してくる。
加えて……、
「吹き飛ばされそうだよ!」
左肩の取っ手に必死に掴まるミルモン。
俺達も足を踏ん張って、羽ばたきが生み出す突風に耐える。
「動きを封じてくるね」
突風を生み出す羽ばたきと、バインドボイスを思わせる鳴き声。
風と声でこちらの動きを封じてくるのは中々にやっかい。
動きを封じたところで巨体を活かしての攻撃となれば、一般的な戦闘能力しかない面子ならひとたまりもない。
まあ――、
「俺達は並じゃないけどね」
「面倒な風にはプロテクション」
と、シャルナが前面に障壁を展開してくれれば、途端に風の脅威から解放される。
これにミルモンが安堵の息を一つ打つ。
「ガァ! ガァッ!!」
耳を塞ぎたくなる大きな鳴き声だけは防げないけども……。
鼓膜が痛い……。
巨大な翼を羽ばたかせながら空中に留まる黒い鳥。
鳴き声もそうだが、見た目もカラスそのもの。
カラスとの違いをあげるならば、猛禽類のような鋭い嘴と鉤爪を持っているところだろう。
突かれたり掴まるだけで体には大穴があき、潰され切り裂かれる。
直撃すれば全ての攻撃が即死につながると容易に想像できる。
「でも、思ったより脅威には感じないな」
「大きいだけならただの当てやすい的ね」
リンもそう思っているようで、
「さっさと終わらせましょう」
と、珍しく好戦的。
あれかな? ジージーに言われるだけ言われたから、ここいらで自分の実力を相手側に見せておこうってところかな。
だったらタネが割れた途端にやる気をなくさないで、俺がトラウマ発動中にジージーと戦ってほしかったよ……。
「ライトニングサーペント」
教本通りとばかりに、飛行タイプには雷。
お手軽に放っているけども、上位のライトニングボアよりも火力の高いのを簡単に発動できるのは流石である。
ボアを超える長大な大蛇からなる電撃が蛇行しながら空を駆け上っていき、
「直撃!」
と、俺が発せば、バチィィィィィィィン!! と、大気を激しく劈く巨大な電撃音。
「もう!」
と、続くのはリンの不愉快さを混じらせた声。
黒い鳥に直撃する前に、ライトニングサーペントは蜘蛛の巣のように放射状に広がってかき消された。
「目に見えない障壁に守られているようだな」
俺が発せば、
「天空要塞では良いところがないみたいだね」
小馬鹿にするようにシャルナが続く。
いつもならここで毒舌カウンターを喰らわせて、シャルナの顔を真っ赤にさせるんだけども、今回は悔しそうな表情で返すだけのリン。
城壁の時と違い、シャルナが茶化すことが出来ている事からして、リン本人も悔しくはあっても心の底から苛立っているってことはなさそう。
今のところは……。
「なんとも強烈な一撃による挨拶だ」
「おん?」
羽ばたきつつゆっくりと黒い鳥が着地。
巨大さとは裏腹に、地を揺らすことのないスマートなものだった。
そんな黒い鳥から聞こえてきた人語。
「なんだ。だみ声の鳴き声だけじゃなく、人語も話せるんだな」
「そんな芸当は持ち合わせていないさ」
と、返ってくる。
声音から伝わってくるのは軽さ。
チャラい感じの声。
俺が好きになれない声だ。
「姿を見せたらどうか」
側に立つベルが発せば、
「喜んで!」
ベルからの発言を待っていたとばかりに、黒い鳥の背中部分から陰が一つ上空へと飛ぶ。
跳躍からやおら翼を広げ、ベルへと目がけて降り立ってきたのは――男。
「美しき貴女の言葉に従い、登場させていただきました。まずは挨拶を――」
などと言いながら、無造作に――ベルへと更に接近。
「あ、ああ……」
クサい台詞と無防備な姿にベルはちょっと困っていた。
で、クサい台詞を吐く存在を目にする俺は舌打ち。
他者から見ればおもしろくないといった表情にもなっていたことだろう。
「問題ないですよ」
「コクリコの威光をこの要塞の主も直接に受ければ、ジージーが門を開いて俺達を潜らせたことも頷けるから。って事だな」
「トールの理解の早さには感心します」
「お前との付き合いも一年になるからな~」
俺が持ち合わせていない、溢れる出てくる自信と発言が羨ましいと毎回、思わされる。
「では、その威光によって次の相手も黙らせてもらおうか。コクリコ」
言いつつベルが上を見やる。
外殻に包まれた曇天の空。
「なんです?」
コクリコが目を細めてベルの視線を追い、コクリコの視線を俺が追う。
「なんか、外殻の近くをゆっくりと飛んでるのがいるな」
「飛んでますね」
「真っ黒だな」
「真っ黒ですね」
「鳥だな」
「間違いなく鳥ですね。しかも――あの位置にいるのにビジョンを使用しなくてもはっきりと鳥だと分かるくらいに大きいですね」
コクリコと目を合わせないまま会話のキャッチボールを行いつつ、悠々と飛翔する黒い鳥を見やる。
この流れ――。
ゲッコーさんからの報告と照らし合わせれば、あの黒くてデカい鳥が――、
「フッケバインって生物と考えていいだろうな」
「来るようだ」
と、ベル。
外殻の近くを飛翔していた黒い鳥は、こちらが自分を見上げて足を止めているというのを察したのか、ゆっくりと円を描きながら俺達が立つ場所へと近づいてくる。
「本当にデカいな」
近づいてくればより大きさが分かるというもの。
ツッカーヴァッテより更に一回り大きい。
「ガァァァァァァァッ!」
「五月蠅いな……」
カラスの鳴き声の音量を上げて、濁らせたような鳴き声にて挨拶してくる。
加えて……、
「吹き飛ばされそうだよ!」
左肩の取っ手に必死に掴まるミルモン。
俺達も足を踏ん張って、羽ばたきが生み出す突風に耐える。
「動きを封じてくるね」
突風を生み出す羽ばたきと、バインドボイスを思わせる鳴き声。
風と声でこちらの動きを封じてくるのは中々にやっかい。
動きを封じたところで巨体を活かしての攻撃となれば、一般的な戦闘能力しかない面子ならひとたまりもない。
まあ――、
「俺達は並じゃないけどね」
「面倒な風にはプロテクション」
と、シャルナが前面に障壁を展開してくれれば、途端に風の脅威から解放される。
これにミルモンが安堵の息を一つ打つ。
「ガァ! ガァッ!!」
耳を塞ぎたくなる大きな鳴き声だけは防げないけども……。
鼓膜が痛い……。
巨大な翼を羽ばたかせながら空中に留まる黒い鳥。
鳴き声もそうだが、見た目もカラスそのもの。
カラスとの違いをあげるならば、猛禽類のような鋭い嘴と鉤爪を持っているところだろう。
突かれたり掴まるだけで体には大穴があき、潰され切り裂かれる。
直撃すれば全ての攻撃が即死につながると容易に想像できる。
「でも、思ったより脅威には感じないな」
「大きいだけならただの当てやすい的ね」
リンもそう思っているようで、
「さっさと終わらせましょう」
と、珍しく好戦的。
あれかな? ジージーに言われるだけ言われたから、ここいらで自分の実力を相手側に見せておこうってところかな。
だったらタネが割れた途端にやる気をなくさないで、俺がトラウマ発動中にジージーと戦ってほしかったよ……。
「ライトニングサーペント」
教本通りとばかりに、飛行タイプには雷。
お手軽に放っているけども、上位のライトニングボアよりも火力の高いのを簡単に発動できるのは流石である。
ボアを超える長大な大蛇からなる電撃が蛇行しながら空を駆け上っていき、
「直撃!」
と、俺が発せば、バチィィィィィィィン!! と、大気を激しく劈く巨大な電撃音。
「もう!」
と、続くのはリンの不愉快さを混じらせた声。
黒い鳥に直撃する前に、ライトニングサーペントは蜘蛛の巣のように放射状に広がってかき消された。
「目に見えない障壁に守られているようだな」
俺が発せば、
「天空要塞では良いところがないみたいだね」
小馬鹿にするようにシャルナが続く。
いつもならここで毒舌カウンターを喰らわせて、シャルナの顔を真っ赤にさせるんだけども、今回は悔しそうな表情で返すだけのリン。
城壁の時と違い、シャルナが茶化すことが出来ている事からして、リン本人も悔しくはあっても心の底から苛立っているってことはなさそう。
今のところは……。
「なんとも強烈な一撃による挨拶だ」
「おん?」
羽ばたきつつゆっくりと黒い鳥が着地。
巨大さとは裏腹に、地を揺らすことのないスマートなものだった。
そんな黒い鳥から聞こえてきた人語。
「なんだ。だみ声の鳴き声だけじゃなく、人語も話せるんだな」
「そんな芸当は持ち合わせていないさ」
と、返ってくる。
声音から伝わってくるのは軽さ。
チャラい感じの声。
俺が好きになれない声だ。
「姿を見せたらどうか」
側に立つベルが発せば、
「喜んで!」
ベルからの発言を待っていたとばかりに、黒い鳥の背中部分から陰が一つ上空へと飛ぶ。
跳躍からやおら翼を広げ、ベルへと目がけて降り立ってきたのは――男。
「美しき貴女の言葉に従い、登場させていただきました。まずは挨拶を――」
などと言いながら、無造作に――ベルへと更に接近。
「あ、ああ……」
クサい台詞と無防備な姿にベルはちょっと困っていた。
で、クサい台詞を吐く存在を目にする俺は舌打ち。
他者から見ればおもしろくないといった表情にもなっていたことだろう。
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