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天空要塞
PHASE-1479【南門攻略】
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「で、これからどうするんだい?」
勝利の喜びで宙を舞っていたミルモンが左肩に戻って真顔になれば、視線をジージーへと向ける。
ピクリともしない南門守護統轄。
城壁サイドは静まり返っている状態が続いている。
「で、どうするの?」
再度のミルモンの問い。
「そうだな――」
静まり返った城壁に立つ面々をぐるりと見渡すも、やはり反応は薄い。
手にしている弓やクロスボウに番えた矢は俺達に向けられることはなく、鏃は自分たちの足元に向けられていた。
こちらに対して攻撃を仕掛けようという動きをする者もいるにはいるが、仕掛けようとする姿勢だけで、実行までの踏ん切りはつかないご様子。
静かなのは好都合。
「一騎討ちはこちらが勝利したので、開門してもらいたいんだけど」
静まり返っているから俺の声は普通の音量でも十分に届いていたはず。
――でも、返事はない。
結局は全てを倒さないといけないのかな。
「なんだもう終わってる~」
と、ここで城壁から上半身だけをニュッと出してくるのは――オムニガル。
話す表情は唇を尖らせてものだった。
継いで、
「やっとピラミディオンモドキを壊してあげたのに、終わってるんなら意味なかったよ~」
と、努力が無駄になったとぼやく。
「いやいや意味はあったよ。強化状態の相手を倒した事で俺の成長に繋がるからな。それに増進塔の効果がジージーだけに反映されていると考えるのはよくないしな」
城壁を守護する連中もその恩恵があると考えれば、それが破壊されるだけで弱体化するってことになるからな。
それだけでも相手の戦意を挫くことが出来る。
「こちらは数では劣るけど、強さは理解したはずだ。大人しく開門してくれよ。増援が来ないって事は、各部隊は各所で待ち受けてるって事だろう? だったらお宅等の役目は完了。後は――後の連中に丸投げすればいいんだよ」
「ぬかすな勇者!」
「お、やっと反応が返ってきた」
「ジージー殿は一騎討ちで敗れた。だが、その意趣返しという大義名分が我らには生まれた! 我らが統轄の仇討ちを実行させてもらう!」
「報仇雪恨ってか」
「そうだ!」
ボドキン、烈火のワンツーを見舞って倒したけども――、
「別に命を奪ったつもりはないけどな」
「虚言を!」
「きょ、虚言では……ない……な……」
かすれる声の中で必死に言葉を発するのは、地面で仰向けになって倒れていた存在。
倒れた姿勢からゆっくりと起き上がる。
――……うん。
グッバイ、トラウマ。って言ったけど、仰向けになったセミフェイスが起き上がる姿を見ると心拍数が高くなるね……。
ゆっくりと起き上がったからまだよかったけど、矢庭に跳び上がられていたらトラウマが再発したかもしれん……。
ともあれ、
「俺の勝ちだから」
「――敗北を受け入れよう」
大事な発言をする時は、弱っている状態であっても声を整える。戦う者としてのプライドを感じさせる。
「シャルナ。ヒールかけてあげて」
「いいよ」
シャルナが快諾してくれたところですかさず、
「いらん!」
敵からの情けは不要と両足に力を入れて立ち上がってみせる。
「ぬぅぅぅぐぅ……」
無理矢理の立ち上がりに、残火の傷口から透明な体液がドバッと出てくる。
「言わんこちゃない」
駆け寄ろうとしたけども、それよりも速く壁上から降り立った二人が肩を貸していた。
城壁を見れば、タレット、狭間から鏃が一斉に俺へと向けられる。
さっきまでとは打って変わってだな。
こういった時の連携は本当に素晴らしいよ。
「まったくやっかいな刀だな……」
治癒がままならないとジージーが傷口に触れれば、またも苦しそうな声を漏らす。
「しばらくは回復が阻害されるよ」
「先ほどの拳打――刀傷部分を避けたのは慈悲か? こちらとしては屈辱でしかない」
「見舞ってたら間違いなく死んでると思う」
「その手心が気に入らん!」
「元気な声」
「その飄々とした言い様も気に入らん! これなら我が顔を見た時の臆病な顔の方が可愛げがあったな」
「うるせえよ」
「全くもって気に入らんヤツだな。勇者! が――、負けは負けだ。この南門での戦いは我々の負けとしよう」
「ジージー殿!? なにを――」
肩を貸す一人からの驚きの声。
これに肩を借りたまま手を上げて言葉を制するジージー。
「ここで立ち向かっても我らでは勝てんのは分かっているだろう。我らが主は玉砕を由としない。勇者が言うように、この先で待機する同胞たちに仕留めてもらおうじゃないか」
「賢明な判断だね」
「そうだろう。だがお前たちはこの先も連戦となる。ここで踵を返し、この地から去るのが賢明な判断だ」
「そうはいかない。こちとら現魔王をぶっ転がすために色々とやらないといけないからな。その為の通過点でもあるここの攻略は大事。本当は攻略じゃなくて交渉したかったんだけどさ」
「となれば、お前たちは力でこちらを分からせるしかないな」
「おっと、問題発言だよ」
まるで分からせてやれとばかりの言い様だ。
「問題にはならん。勇者たちの快進撃も止まる」
「あ、そうですか」
俺達の勢いを止めてくるのは一体、誰になるのかな。
ゲッコーさんからの連絡で耳にしたフッケバインかな?
フッケバインがなんなのかと問おうとしたけども、急いで呑み込む。
危なかった……。
もし質問していたら、なぜその名を知っている! って怪しまれて、俺達とは別の侵入者がいるとバレてしまう。
隠密活動をしてくれているゲッコーさんの邪魔をするところだった。
勝利の喜びで宙を舞っていたミルモンが左肩に戻って真顔になれば、視線をジージーへと向ける。
ピクリともしない南門守護統轄。
城壁サイドは静まり返っている状態が続いている。
「で、どうするの?」
再度のミルモンの問い。
「そうだな――」
静まり返った城壁に立つ面々をぐるりと見渡すも、やはり反応は薄い。
手にしている弓やクロスボウに番えた矢は俺達に向けられることはなく、鏃は自分たちの足元に向けられていた。
こちらに対して攻撃を仕掛けようという動きをする者もいるにはいるが、仕掛けようとする姿勢だけで、実行までの踏ん切りはつかないご様子。
静かなのは好都合。
「一騎討ちはこちらが勝利したので、開門してもらいたいんだけど」
静まり返っているから俺の声は普通の音量でも十分に届いていたはず。
――でも、返事はない。
結局は全てを倒さないといけないのかな。
「なんだもう終わってる~」
と、ここで城壁から上半身だけをニュッと出してくるのは――オムニガル。
話す表情は唇を尖らせてものだった。
継いで、
「やっとピラミディオンモドキを壊してあげたのに、終わってるんなら意味なかったよ~」
と、努力が無駄になったとぼやく。
「いやいや意味はあったよ。強化状態の相手を倒した事で俺の成長に繋がるからな。それに増進塔の効果がジージーだけに反映されていると考えるのはよくないしな」
城壁を守護する連中もその恩恵があると考えれば、それが破壊されるだけで弱体化するってことになるからな。
それだけでも相手の戦意を挫くことが出来る。
「こちらは数では劣るけど、強さは理解したはずだ。大人しく開門してくれよ。増援が来ないって事は、各部隊は各所で待ち受けてるって事だろう? だったらお宅等の役目は完了。後は――後の連中に丸投げすればいいんだよ」
「ぬかすな勇者!」
「お、やっと反応が返ってきた」
「ジージー殿は一騎討ちで敗れた。だが、その意趣返しという大義名分が我らには生まれた! 我らが統轄の仇討ちを実行させてもらう!」
「報仇雪恨ってか」
「そうだ!」
ボドキン、烈火のワンツーを見舞って倒したけども――、
「別に命を奪ったつもりはないけどな」
「虚言を!」
「きょ、虚言では……ない……な……」
かすれる声の中で必死に言葉を発するのは、地面で仰向けになって倒れていた存在。
倒れた姿勢からゆっくりと起き上がる。
――……うん。
グッバイ、トラウマ。って言ったけど、仰向けになったセミフェイスが起き上がる姿を見ると心拍数が高くなるね……。
ゆっくりと起き上がったからまだよかったけど、矢庭に跳び上がられていたらトラウマが再発したかもしれん……。
ともあれ、
「俺の勝ちだから」
「――敗北を受け入れよう」
大事な発言をする時は、弱っている状態であっても声を整える。戦う者としてのプライドを感じさせる。
「シャルナ。ヒールかけてあげて」
「いいよ」
シャルナが快諾してくれたところですかさず、
「いらん!」
敵からの情けは不要と両足に力を入れて立ち上がってみせる。
「ぬぅぅぅぐぅ……」
無理矢理の立ち上がりに、残火の傷口から透明な体液がドバッと出てくる。
「言わんこちゃない」
駆け寄ろうとしたけども、それよりも速く壁上から降り立った二人が肩を貸していた。
城壁を見れば、タレット、狭間から鏃が一斉に俺へと向けられる。
さっきまでとは打って変わってだな。
こういった時の連携は本当に素晴らしいよ。
「まったくやっかいな刀だな……」
治癒がままならないとジージーが傷口に触れれば、またも苦しそうな声を漏らす。
「しばらくは回復が阻害されるよ」
「先ほどの拳打――刀傷部分を避けたのは慈悲か? こちらとしては屈辱でしかない」
「見舞ってたら間違いなく死んでると思う」
「その手心が気に入らん!」
「元気な声」
「その飄々とした言い様も気に入らん! これなら我が顔を見た時の臆病な顔の方が可愛げがあったな」
「うるせえよ」
「全くもって気に入らんヤツだな。勇者! が――、負けは負けだ。この南門での戦いは我々の負けとしよう」
「ジージー殿!? なにを――」
肩を貸す一人からの驚きの声。
これに肩を借りたまま手を上げて言葉を制するジージー。
「ここで立ち向かっても我らでは勝てんのは分かっているだろう。我らが主は玉砕を由としない。勇者が言うように、この先で待機する同胞たちに仕留めてもらおうじゃないか」
「賢明な判断だね」
「そうだろう。だがお前たちはこの先も連戦となる。ここで踵を返し、この地から去るのが賢明な判断だ」
「そうはいかない。こちとら現魔王をぶっ転がすために色々とやらないといけないからな。その為の通過点でもあるここの攻略は大事。本当は攻略じゃなくて交渉したかったんだけどさ」
「となれば、お前たちは力でこちらを分からせるしかないな」
「おっと、問題発言だよ」
まるで分からせてやれとばかりの言い様だ。
「問題にはならん。勇者たちの快進撃も止まる」
「あ、そうですか」
俺達の勢いを止めてくるのは一体、誰になるのかな。
ゲッコーさんからの連絡で耳にしたフッケバインかな?
フッケバインがなんなのかと問おうとしたけども、急いで呑み込む。
危なかった……。
もし質問していたら、なぜその名を知っている! って怪しまれて、俺達とは別の侵入者がいるとバレてしまう。
隠密活動をしてくれているゲッコーさんの邪魔をするところだった。
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