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天空要塞

PHASE-1463【天空庭園】

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 ――ふむん。
 フッケバイン――か。
 名前から想像するのは――、

「やっぱりデカいんですかね?」

『どうだろうな。連中の会話だけでは全容の把握は出来なかったが、凶鳥を冠する存在だからな。この要塞の重要な戦力であることは間違いないだろう』
 重要な戦力か。

「一般兵の会話ですよね?」

『ああ』
 だとすれば、

「推測だと、こっちのツッカーヴァッテみたいな戦略生物かもしれませんね」

『その根拠は?』

「一般の兵士が敬称もつけずに会話をする時点で上役ではないでしょうからね。戦略生物みたいな立ち位置だと思ったんです」
 ――。
 なにこの間……。

『いいな。実にいい推測だな。切れ者じゃないかトール。荀彧殿が今の内容を耳にすれば大喜びだぞ』
 耳朶に直接とどく声は嬉々としたも。
 絶賛してくれる。

「ど、どうも」
 最強の二枚看板の片方から絶賛されれば、照れくさくて背中辺りがむず痒くなってくる。
 嫌な感覚はないけども。

『これはトールの推測が当たっていることを祈りたいな。答え通りならトールの冴え渡る頭脳は戦法だけでなく、戦術、果ては戦略でも活躍できる可能性が出て来るからな』
 ゲッコーさんにここまで絶賛されると嬉しくはあるんだけども……、

「俺の推測通りなら、当たってほしくはないですね……」
 戦略生物なんかと戦いたくないからな。
 もしフッケバインが俺の想像通りで、且つツッカーヴァッテとの戦闘が発生する事になればとんでもない被害が出るだろうな。
【大怪獣天空大決戦】って銘打って映画でも撮ろうかな。
 エキストラ・逃げ惑う人間――俺。

『さて、トールが物思いに耽っているようだし、更に奥へと進んでみるか。目標を発見したら連絡する』

「――あ。お願いします。後、保険の方も」

『問題ない』
 そういって通信を終える。
 なんかあったらいつもの破壊活動。
 C-4 設置も抜かりないようで助かる。
 勇者の選択としては問題あるだろうが、C-4ソレ を交渉材料として使用できれば、話し合いで有利に立てることもあるかもしれない。
 話し合いが再開できれば――だけど。

 ――。

 ――……ふむん……。

 やっぱり再開は難しいかな……。

「殺意増し増しだな。そんなトッピングはいらないんだけどな~」

「じゃあ私はこれで」

「おう……」
 道案内をするだけして、オムニガルはスゥゥゥッと消える。
 後は自分たちで解決してくれということだろう。

「歓迎するぞ勇者!」
 歓迎するような声音じゃないよね……。
 グレートヘルムのスリット部分からわずかに見える瞳は血走っている。

 俺達が戦闘を行ってここまで来たからか、大人数で迎撃態勢を整えた翼幻王ジズの兵達は、手にする利器の全てを俺達へと向けてくる。

 屋根のない不安な通路から屋根付きの通路へと辿り着き、オムニガルの誘導で階段をあがり、回廊から中心部へと続く通路を相手とエンカウントすることなく進むことが出来た。
 で、到着したのは空を拝める広場。
 安定した大地に目を落とせば、芝刈りの行き届いた芝生。
 少し視界を横へとずらせば、ガボゼもあれば木々や花々が植栽されている。
 見た感じ、十中八九――中庭だな。天空庭園ってやつだ。

「こんな場所で歓迎とか言われると、良い意味で受け取りたいんですけど。出来れば向けているモノを収めて宴会でもしませんか」

「そのふざけた言い様が許せん! 同胞たちの命を奪っておいてのその発言。頭と心が病んでいる証拠だな」
 人をサイコパスみたいに言わないように……。
 指摘されれば、俺もサイコバスみたいな発言だったと思ったけども……。

「報いはその安い命で支払ってもらう!」
 継いで一人が発せば、数人がそれに続き――唱和となる。

「宜しい! ひらひらと飛ぶことしか能の無い連中を片っ端から叩き落としてやりましょう!」
 隊伍から一歩前に出てそう言うのはもちろんコクリコ。
 圧倒的な数の差なんだけど、それを意にも介さないコクリコの姿に対し、相手からは――、

「おお! よう吐いたな小娘! その気概だけは褒めてやる!」

「私を見て逃げ出さない貴方方の勇猛さに、こちらかも称賛を送ってやりましょう!」
 毒が抜けきっての全力ガイナ立ちと、大胆不敵な笑みを見せつつ見上げて発せば、

「その放胆な言動に免じて、苦しまずに殺してやろう!」
 と、返ってくる。
 ふむ。殺すという発言は嫌だけど、敵対する者に対して言うなら当然の発言。
 そんな発言を耳にして、好感を抱いてしまう俺。
 カクエンや他の魔王軍は、女とみれば直ぐに犯すという下卑た発言をするが、それがないからな。
 兵として純粋に戦おうとする姿勢はいいよね。
 翼幻王ジズの支配が下の方にも行き届いている証拠だな。
 お膝元ってのもあるから、規律ある兵達が多いって事でもあるんだろう。

「死ねぃ!」
 まあ、殺す気は満々なんだけどね……。
 コクリコと話を交わしていた者が、まずは挨拶代わりとばかりに先駆けとなって上空から仕掛けてくる。
 鳥のように翼を折り曲げて空気抵抗を極力減らし、直線を描いての急降下。
 手にした槍の穂先をコクリコへと向けての急降下。

「まるでカツオドリのダイブみたいだな」
 違うのはここが海じゃなくて地面だということ。
 あの急降下は失敗したら死ぬね。
 
 なんて心配はいらなかったようで、

「他愛なし」
 コクリコが華麗なステップで躱せば「チッ」と、舌打ちをして翼を広げて急上昇。

「おお!」
 あの状態から地面にぶつからずに上昇できる飛行能力の高さに感心してしまう。

「お返しです!」
 上昇するところに向け、間髪入れずにコクリコがライトニングスネークを放てば、別のヤツが間に入ってシールドで防ぎきる。

「連携はいいんだよな。連携は――」
 うん。連携はな。
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