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PHASE-1411【念じれば叶うそうな】

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「羽化する時は皆で生まれてくる姿を目にしような」
 ご立腹で俺を睨んでくる二人をなだめるように発しつつ、

「それでアルゲース氏」
 に、素早く視線を移動。

「なんでしょうか?」

「エビルレイダーに力を注ぐってことをしなくていいんですかね?」
 ヤヤラッタ達が行ったことを俺達も行わないといけないのかを質問。

「以前に済ませておりますが、必要ならばマナによる干渉で可能になります」
 マナによる干渉か――。
 難しいのかと問えば、ただ繭に触れて念じればいいだけとのこと。
 マナを使用できる事が可能なら、それだけで繭の内部に繋がるらしい。
 もしマナをコントロール出来ないのであれば、使用できる者が中継すれば思いは伝わるという。
 
「ならば性格を変えなければなりませんね」
 と、コクリコ。
 今のままでは臆病な性格の状態で成虫になる。とてもじゃないが天空要塞の周囲にあるという雲の外殻へと突入するだけの、勇気も根性も持ち合わせていないと続ける。
 この発言に、三兄弟は自分たちの性格が反映されてしまったと、謝罪を口にする。
 コクリコの歯に衣着せぬ物言いに申し訳ないと思う反面、言っている事は至極当然なので、性格を強気に変更できるのならばそれは実行したい。

「よし! 強気で賢く優しい子に育ってもらおうじゃないか!」

「いいね。私も注がせてもらうよ」

「シャルナのようなマナの使い手なら立派な子になってくれるだろうな」

「でしょ!」

「いやいや、この私の勇敢さと強力無比な魔力を受け継いでもらいたいですね」

「コクリコからは全身肝なり! って精神面だけを反映させてもらえるといいな」

「それはどういう意味ですかトール。まるで私の魔法はしょっぱいと言いたげですね!」
 今回の冒険での我が大車輪の活躍を忘れたのかと問われれば、否定は出来ない。
 でもコクリコの場合、装身具とサーバントストーンがあるからこそなんだよな。

「個人での魔力がもっと高いと説得力が――」

「ぐぬぅ……」
 そこは理解しているからか、反論しなかっただけ立派である。

「では、実行しますか?」
 俺達のやり取りが一区切りしたと判断したアルゲース氏が問うてくる。

「待ってください」
 どうせなら――――、

「私達も参加ですか?」

「はい」
 先生とベル、ゲッコーさんとリンにも来てもらう。
 当然ながら今回、一緒に旅をしたコルレオン、パロンズ氏、タチアナにも来てもらう。
 案の定、コルレオンは修練場でドッセン・バーグに扱かれていたから合流は誰よりも早かった。
 
 ――揃った面子を見渡す。
 
 エビルレイダーを仲間に入れた時のメンバーと、そのエビルレイダーに乗って次へと進むメンバー。
 この面子の念を送ってやらないとな!
 集まってもらった面子の精神と叡智の一部でもいいから、繭の中の存在に受け取ってもらいたい。
 先生は前日の精神的疲労もあるから、気分転換してもらいたいという理由もあるけど。

「面倒ね。私以外の面子でやってくれればいいのに」

「素っ気ないことを言うなよ。大体、俺達が無事に戻っても、出迎えてもくれなかったよな」

「あ~お帰りなさい」

「昨日、言ってほしかったよ……」
 本当にリンはリンだな……。
 自由奔放なアルトラリッチ様にも足を運んでもらったことだし。

「この面子でお願いします」

「分かりました」
 アルゲース氏に揃ったことを伝えたところで、

「アルゲース殿、質問があります」

「な、なんでしょうか」
 ここでベルが一歩前に出れば、

「羽化した時の姿というのは……」
 継いで出て来る発言は不安を混じらせた声音によるもの。
 この発言に俺達からは溜め息が漏れる。
 その溜め息が自分に向けられたものであり、軍人なのに流石に情けないというのも伝わったのか、「うぅ……」と弱々しく声を漏らす。
 その姿がメチャクチャ可愛かったので俺としてはオッケー!
 もっと見てみたいのでいじりたいけども、怒りに変わると怖いので、これ以上、攻めるということはしない。

「幼虫の姿に近いものになるかと」
 と、アルゲース氏の発言を耳にし、

「あ、あぁぁ……」
 ここでも弱々しい声を漏らす。
 禍々しい姿の成虫の背に乗り、天空要塞を目指すという事を想像したのだろう。
 両上腕を擦るベル。
 腕と腕に挟まれたけしからん胸が更にけしからんですな! 眼福! 眼福!

「ですが念じる事で皆さんが思い描いた姿として生まれるという可能性も――」

「あるのか!」

「は、はいぃぃぃぃぃい!」
 希望が見えたのか、ベルがくわりと目を見開き、興奮した語気で問えば、八メートルサイズの巨人さんは、最強さんの圧で及び腰になりながらも懸命に返す。
 
「よし! 皆で愛らしい姿を念じよう!」
 気合い漲るベルのエメラルドグリーンからなる瞳が俺達を見渡す。
 幼虫の姿に似た成虫がよっぽど嫌なようで、本気で何とかするぞ! と、俺達に威圧に近い眼力を向けてくる。
 最強さんから炯眼を向けられれば、皆、素直に従うことしか出来ない。

「マナを使用できないなら中継とのことだから、この中で最も秀でているのは――」
 ベルの発言にて衆目が一箇所に集まる。
 悔しそうにしながらもそこは認めているのか、シャルナも俺達と同じ人物へと視線を向けていた。

「やはりリンになるか」

「これは……光栄と思うべきなのかしら……」

「リン。私はお前に期待――している」

「お、仰せのままに……」
 古の大英雄という存在ゆえに、王侯貴族が敬称として様をつける存在であるリン。
 性格は自由奔放で傲慢そのものなんだが、最強さんの前では恐れからとても素直な性格になる。

「リンに触れればいいのですね?」
 
「あ、はい。マナが使用できない場合は、マナを使用できる御方に触れてから念じてください」
 ベルの質問にアルゲース氏が返せば、

「リン――頼むぞ。再度だが、私はお前に非常に期待――している」
 と、重い声音での一言。

「お、仰せのままに……」
 同様の返ししか出来ないでいる……。
 アンデッドの主である高位の存在が嘘のようだよ……。リン……。
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