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PHASE-1403【酒臭くない!?】
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「なにやってんだゴラッ!」
ギルドハウスのスイングドアが勢いよく可動。
ハウスから恫喝に近い声を発して出てきたのは、ドッセン・バーグ。
「ギルドの方々! 我々にご助力を!」
「するわけねえだろうが馬鹿野郎!」
「は?」
「その方々に不遜を働けば、このギルドだけでなく、周辺の王都兵や協力者たちを敵に回すぞ」
「まったくだ」
お、なんとも久しぶりの顔じゃないか。
「久しぶりだな。クラックリック」
「本当にお久しぶりです会頭。クラックリック・エルドシュリンガー、会頭の見えない所で励んでおります」
相も変わらず必殺技みたいなクセがすげぇ姓だよ。
「会頭?」
「そうだ。この方はこのギルド――雷霆の戦槌の最高責任者だ。その方に対して鞘から白刃をちらつかせてみろ。その瞬間にテメー等の頭蓋を俺のメイスで砕く」
「ならば俺は自慢の矢で眼窩を射抜いてやろう」
厳つい二人が護衛兵の面々を睨みで黙らせていく。
息巻く二人に呼応するように、ギルドハウスからゾロゾロと統一性のない装備の面々が出てくれば、二人の横に並んでいく。
修羅場を潜ってますといった鋭い眼光の持ち主たちに睨まれれば、胆力ある護衛兵たちもたじろいでしまう。
「皆、落ち着こうか。とりあえず睨むのをやめよう」
言えばすんなりと従ってくれるのはありがたい。
俺を信頼してくれている証拠でもあるので嬉しくもある。
「知らぬ事とはいえ、ご無礼を!」
一人が必死になって頭を下げれば、残りの面々が片膝をついて謝罪してくる。
「別に良いですよ」
こっちも馬上のままの対応で申し訳ないと伝えれば、ギルド会頭ということは、勇者であり公爵様。そのような方に対しての無礼は斬首にも値しますと返してくるところからして、この護衛兵たちは生真面目な方々だというのが分かる。
背後に巨人と大型生物を連れて行動していたら誰だって警戒するからね。ぴりつくのは仕方がないこと。
ギルドハウスに守るべき存在がいるなら尚のことだろう。
「忠節大儀である」
「「「「ハッ!!!!」」」」
――……いや毎度の事だけども、それは俺が言いたかったよコクリコさん……。
護衛兵も皆して馬車の屋根に立つコクリコに恭しい態度で返してるし。
馬車に刻印された公爵家の家紋にようやく気付き、その馬車に乗っていたコクリコを自分たちよりも上の立場の人物と認識したようだ。
完全なる勘違いだけども。
まあいいけど。
「それよりも中に入らせてもらいますね」
「む、むむ無論です!」
自分の家でもある場所に入らせてもらうって発言は行き過ぎたな。
俺としては謙虚のつもりだったけど、相手側は皮肉と捉えたようで、護衛兵の方々が大急ぎでスイングドアに続く道を開いてくれる。
下馬してダイフクをドッセン・バーグに頼み、モーセムーブにてギルドハウスへと入れば、
「あらら、ここにも護衛兵がいるんだな」
どんだけ連れてきてんだよ……。
臆病なのか、数を従えての高圧的交渉が目的か。
もし後者だとするならまったくもって意味はないけどな。
如何に精兵であっても、ここの面子に軽く睨みを利かされれば、居心地が悪くなるくらいには気圧されるだろうからな。
「会頭のお帰りだ」
ドッセン・バーグとは違い、クラックリックは俺の側にいたまま。
でもって誘導してくれる。
そんなクラックリックの発言に皆して帰還の喜びと労いの言葉をかけてくれる。
「おう会頭!」
「おうギムロン!」
「鍛冶場の方から覗かせてもらってたぞ。まさかドワーフの好敵手をつれての帰還とは驚かせてくれるわい!」
相も変わらず酒気を――、
「纏っていない……だとぉ!?」
「纏ってないって酒のニオイをか? これでも青色級だからの」
「ああ。そうだったな」
青色級になってから責任感が芽生えてたみたいだったもんな。
食事以外では酒を控えるようになったみたいだ。
酒気を纏ってないことが新鮮だし驚き。とういか、俺達がエルウルドの森に行く時からそうしてるなら、酒に対する欲望を抑えていることは称賛に値するね。
「パロンズも無事か!」
「はい!」
「おう、自信ある返事だの」
自信を持てず、うじうじとしていたのが嘘みたいだとギムロンはドワーフの先達として、一度の冒険で十分に成長して戻ってきた後輩の姿に呵々大笑で喜ぶ。
――笑っていたかと思えば直ぐに真顔になり、ツツツ――っと滑るような足取りで俺へと近づくと、
「女たちは――」
小声で問うてくる。
「何事もなくだよ。森の猿なんかに好きに出来るような連中じゃないのはギムロンも分かってるだろ」
「万が一もあるからの。だが何事もなく良かった」
と、胸をなで下ろす姿からして、本当に女性陣を心配してくれていたご様子。
「ぬぅぅぅぅう」
「どうしたい? クラックリック」
「俺がいない間にギムロンが青色級になっているのだからな。負けてられん!」
以前は俺と一緒にリオスの洞窟――現、要塞となった場所で魔王軍と激しい戦いを経験したクラックリック。
共に行動したギムロンが一つ上に昇進したことに対抗心を抱いているようで、もっとクエストをこなさなければ! と、奮起。
クラックリックの主なクエストは、王都と港町レゾンを往来する商人の護衛だそうで、大層な活躍をしてくれているという。
ハンター職でもあるクラックリックの蚤取り眼による監視もあって、賊に襲われる事が無いからと商人さん達からは好評のようで、依頼の時はご指名をいただくことも多いそうだ。
――一階にいるメンバーへと挨拶を返しつつ先へと進めば、
「会頭。無事の帰還、お喜び申し上げます」
「堅苦しいよ……」
階段の踊り場の所でロイドルが俺達を出迎えてくれる。
普段は査定や地方調査に励むロイドルがお出迎えか。
挨拶で下げていた頭を起こすロイドルの顔は渋いものだった。
その表情で現状が理解できるというものだ。
ギルドハウスのスイングドアが勢いよく可動。
ハウスから恫喝に近い声を発して出てきたのは、ドッセン・バーグ。
「ギルドの方々! 我々にご助力を!」
「するわけねえだろうが馬鹿野郎!」
「は?」
「その方々に不遜を働けば、このギルドだけでなく、周辺の王都兵や協力者たちを敵に回すぞ」
「まったくだ」
お、なんとも久しぶりの顔じゃないか。
「久しぶりだな。クラックリック」
「本当にお久しぶりです会頭。クラックリック・エルドシュリンガー、会頭の見えない所で励んでおります」
相も変わらず必殺技みたいなクセがすげぇ姓だよ。
「会頭?」
「そうだ。この方はこのギルド――雷霆の戦槌の最高責任者だ。その方に対して鞘から白刃をちらつかせてみろ。その瞬間にテメー等の頭蓋を俺のメイスで砕く」
「ならば俺は自慢の矢で眼窩を射抜いてやろう」
厳つい二人が護衛兵の面々を睨みで黙らせていく。
息巻く二人に呼応するように、ギルドハウスからゾロゾロと統一性のない装備の面々が出てくれば、二人の横に並んでいく。
修羅場を潜ってますといった鋭い眼光の持ち主たちに睨まれれば、胆力ある護衛兵たちもたじろいでしまう。
「皆、落ち着こうか。とりあえず睨むのをやめよう」
言えばすんなりと従ってくれるのはありがたい。
俺を信頼してくれている証拠でもあるので嬉しくもある。
「知らぬ事とはいえ、ご無礼を!」
一人が必死になって頭を下げれば、残りの面々が片膝をついて謝罪してくる。
「別に良いですよ」
こっちも馬上のままの対応で申し訳ないと伝えれば、ギルド会頭ということは、勇者であり公爵様。そのような方に対しての無礼は斬首にも値しますと返してくるところからして、この護衛兵たちは生真面目な方々だというのが分かる。
背後に巨人と大型生物を連れて行動していたら誰だって警戒するからね。ぴりつくのは仕方がないこと。
ギルドハウスに守るべき存在がいるなら尚のことだろう。
「忠節大儀である」
「「「「ハッ!!!!」」」」
――……いや毎度の事だけども、それは俺が言いたかったよコクリコさん……。
護衛兵も皆して馬車の屋根に立つコクリコに恭しい態度で返してるし。
馬車に刻印された公爵家の家紋にようやく気付き、その馬車に乗っていたコクリコを自分たちよりも上の立場の人物と認識したようだ。
完全なる勘違いだけども。
まあいいけど。
「それよりも中に入らせてもらいますね」
「む、むむ無論です!」
自分の家でもある場所に入らせてもらうって発言は行き過ぎたな。
俺としては謙虚のつもりだったけど、相手側は皮肉と捉えたようで、護衛兵の方々が大急ぎでスイングドアに続く道を開いてくれる。
下馬してダイフクをドッセン・バーグに頼み、モーセムーブにてギルドハウスへと入れば、
「あらら、ここにも護衛兵がいるんだな」
どんだけ連れてきてんだよ……。
臆病なのか、数を従えての高圧的交渉が目的か。
もし後者だとするならまったくもって意味はないけどな。
如何に精兵であっても、ここの面子に軽く睨みを利かされれば、居心地が悪くなるくらいには気圧されるだろうからな。
「会頭のお帰りだ」
ドッセン・バーグとは違い、クラックリックは俺の側にいたまま。
でもって誘導してくれる。
そんなクラックリックの発言に皆して帰還の喜びと労いの言葉をかけてくれる。
「おう会頭!」
「おうギムロン!」
「鍛冶場の方から覗かせてもらってたぞ。まさかドワーフの好敵手をつれての帰還とは驚かせてくれるわい!」
相も変わらず酒気を――、
「纏っていない……だとぉ!?」
「纏ってないって酒のニオイをか? これでも青色級だからの」
「ああ。そうだったな」
青色級になってから責任感が芽生えてたみたいだったもんな。
食事以外では酒を控えるようになったみたいだ。
酒気を纏ってないことが新鮮だし驚き。とういか、俺達がエルウルドの森に行く時からそうしてるなら、酒に対する欲望を抑えていることは称賛に値するね。
「パロンズも無事か!」
「はい!」
「おう、自信ある返事だの」
自信を持てず、うじうじとしていたのが嘘みたいだとギムロンはドワーフの先達として、一度の冒険で十分に成長して戻ってきた後輩の姿に呵々大笑で喜ぶ。
――笑っていたかと思えば直ぐに真顔になり、ツツツ――っと滑るような足取りで俺へと近づくと、
「女たちは――」
小声で問うてくる。
「何事もなくだよ。森の猿なんかに好きに出来るような連中じゃないのはギムロンも分かってるだろ」
「万が一もあるからの。だが何事もなく良かった」
と、胸をなで下ろす姿からして、本当に女性陣を心配してくれていたご様子。
「ぬぅぅぅぅう」
「どうしたい? クラックリック」
「俺がいない間にギムロンが青色級になっているのだからな。負けてられん!」
以前は俺と一緒にリオスの洞窟――現、要塞となった場所で魔王軍と激しい戦いを経験したクラックリック。
共に行動したギムロンが一つ上に昇進したことに対抗心を抱いているようで、もっとクエストをこなさなければ! と、奮起。
クラックリックの主なクエストは、王都と港町レゾンを往来する商人の護衛だそうで、大層な活躍をしてくれているという。
ハンター職でもあるクラックリックの蚤取り眼による監視もあって、賊に襲われる事が無いからと商人さん達からは好評のようで、依頼の時はご指名をいただくことも多いそうだ。
――一階にいるメンバーへと挨拶を返しつつ先へと進めば、
「会頭。無事の帰還、お喜び申し上げます」
「堅苦しいよ……」
階段の踊り場の所でロイドルが俺達を出迎えてくれる。
普段は査定や地方調査に励むロイドルがお出迎えか。
挨拶で下げていた頭を起こすロイドルの顔は渋いものだった。
その表情で現状が理解できるというものだ。
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