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矮人と巨人
PHASE-1382【完全耐性】
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――荼毘に付して見送りを終え、地下施設から出ようとしたところで、
「先ほど、その小悪魔殿が仰っていた事ですが――」
「なんだい?」
ブロンテース氏の発言にミルモンが応じれば、
「ハルダーム様の得物を手に入れたような内容だったようですが」
「あんなのに様なんてつけなくていいと思うけど。兄ちゃんがパルチザンをゲットしたのは本当だよ」
「そうですか」
「なにか問題でもありましたか?」
問う相手の表情は和らいだものに変わったから、問題はないと感じ取ることは出来るけども――、
「いえ、アレは我々兄弟が作ったモノでして。勇者殿のような方に使用してもらえるならプロトスも喜ぶと思いまして」
「まあ、俺ではサイズ的に無理ですけどね。それよりも――あのパルチザンの製作者はお三方なんですね!」
俺が装備とか云々よりも、後半に口にした内容の方に完全に意識を持って行かれている。
語気に興奮が混ざっていたのだろう、八メートルはある三人の巨人が、170㎝代の身長の俺に気圧されるように後退りしていた。
「本当に本当なのですね?」
【しかしまわりこまれてしまった!】といったシチュエーションが似合うように、コクリコとシャルナがキュクロプス三人の後方に回り込んでくれている。
圧による挟撃。何かされると不安になっているようだけども――、
「雷系の魔法を封じれるということは、他の武器にもそういったことが出来るって事ですよね?」
「か、可能です。もちろん時間と素材などは必要になりますけども」
「ほうほう!」
素材さえあれば作れるか。
ハルダームが使用したパルチザン・プロトス。
使用者の実力を底上げしていたのは相対していたから分かる。
ならば、こちらの冒険者や腕の立つ兵士たちにも雷系の魔法を宿した装備を渡せば、戦力の底上げになる。
「他にもそういった製作が出来るんですか!」
興奮が続く俺の語気にお三方が気圧されるも、後方に二人の女性が留まっていることで下がれないからか、お三方はヘドバンを思わせる首肯で返してきてくれる。
で――、
「エビルレイダーと名付けられた生物にも我々の力が注がれています!」
ツインテールがまったく似合わない次男のステロペース氏が応じる。
この力が注がれているというのは、生み出された時に――という意味合いではないだろう。
性格が臆病になったという意味合いじゃない。
雷系の力を宿したプロトスの話からの繋がりなのだから――、
「まさか……生物にも雷の力を宿せると……」
「は、はい」
「つまりはあの黄金に輝く角から放たれるやっかいな電撃は……」
興奮しすぎると人間は存外、冷静な語り方になるんだな。と、自分自身で理解したよ。
急な俺の静かな語り口に、お三方は恐怖を感じてしまったようで、大きな一つ目が今にも涙目に変わりそうだった。
どんだけメンタルが弱いんだよ……。
ともかく――だ!
「生物にもそういった力を与えることが出来るって事ですね?」
「は、はい」
恐怖を抱く中でなんとか自分が対応しようとばかりに、長男としての責任感から答えてくれるアルゲース氏。
三人の奥側ではシャルナが俺に対して不安げな目を向けてくる。
俺の発言内容が嫌だったご様子。
「別に俺達が生物の体をいじくるとかそんな事じゃないからな」
返してあげれば、不安な表情が直ぐに安堵へと変わった。
野生生物の保護もしているシャルナの好感度を下げるような事を俺はしませんよ。
宿せるという技術力に驚嘆しただけだからね。
「ですが、宿しておいても自分にもダメージを受けてしまうという恐れから、接近されたら使用できないという弱点はどうにかならなかったのですか?」
コクリコの当然と言える質問。
今回に限っては俺達はそれで救われたけどね。
「それには理由がありまして」
肩越しにコクリコを見つつ、末弟のブロンテース氏が応じる中で、
「先ほども話に上がりましたが、不完全体で生まれてしまったことが理由ですか?」
と、俺が口を開けば、正面をむき直して、
「そうです」
と、返してくれる。
「では完全体の成虫として生まれれば、電撃に完全耐性が出来るってことですかね?」
「そうです」
続けて肯定で返してくる。
「――なるほど」
返しに対して俺も短く返す中で、すでに別の事を考えていた。
――つまりは、雷に完全耐性を有した飛行の出来る大型生物としてエビルレイダーを新たに成長させれば――、
「なんだい?」
左肩のミルモンを見る。
「ミルモンの見通す力は偉大だと思ったんだよ」
「そうかい!」
嬉しそうに羽と尻尾を動かしながら照れてくれる姿は愛らしい。
――見通す力は間違っていなかった。
「電撃に対しての完全耐性と飛行」
ポツリと口から漏らした俺の発言に、
「乱気流と雷に守られたフロトレムリへと行く為の手段が、エビルレイダーで確定したようですね」
コクリコが続く。
「だな!」
飛行能力で乱気流をどうにか出来るにしても、雷を纏っている積乱雲の中へと突入するとなれば雷が脅威となる。
だが完全体が有する雷への完全耐性で、それも杞憂に終わりそうだな。
球体と巨人というはっきりとした見え方ではなくても、ミルモンの見通す力はちゃんと行き先までの手段を見通してくれているんだな。
「ミルモンの見通す力は偉大だ!」
同じ内容をさっきよりも力強く発せば、嬉しさでミルモンは俺から離れて宙を舞う。
有頂天になりながらも、今後も大活躍すると破顔にて伝えてくれる。
ベルが見たら大興奮の可愛さだった。
「――よし! この森での目的は達成した。王都に帰ろう」
窟で親方様たちにも報告をしないといけないし、トールハンマーの高順氏たちにも挨拶をしないとな。
「先ほど、その小悪魔殿が仰っていた事ですが――」
「なんだい?」
ブロンテース氏の発言にミルモンが応じれば、
「ハルダーム様の得物を手に入れたような内容だったようですが」
「あんなのに様なんてつけなくていいと思うけど。兄ちゃんがパルチザンをゲットしたのは本当だよ」
「そうですか」
「なにか問題でもありましたか?」
問う相手の表情は和らいだものに変わったから、問題はないと感じ取ることは出来るけども――、
「いえ、アレは我々兄弟が作ったモノでして。勇者殿のような方に使用してもらえるならプロトスも喜ぶと思いまして」
「まあ、俺ではサイズ的に無理ですけどね。それよりも――あのパルチザンの製作者はお三方なんですね!」
俺が装備とか云々よりも、後半に口にした内容の方に完全に意識を持って行かれている。
語気に興奮が混ざっていたのだろう、八メートルはある三人の巨人が、170㎝代の身長の俺に気圧されるように後退りしていた。
「本当に本当なのですね?」
【しかしまわりこまれてしまった!】といったシチュエーションが似合うように、コクリコとシャルナがキュクロプス三人の後方に回り込んでくれている。
圧による挟撃。何かされると不安になっているようだけども――、
「雷系の魔法を封じれるということは、他の武器にもそういったことが出来るって事ですよね?」
「か、可能です。もちろん時間と素材などは必要になりますけども」
「ほうほう!」
素材さえあれば作れるか。
ハルダームが使用したパルチザン・プロトス。
使用者の実力を底上げしていたのは相対していたから分かる。
ならば、こちらの冒険者や腕の立つ兵士たちにも雷系の魔法を宿した装備を渡せば、戦力の底上げになる。
「他にもそういった製作が出来るんですか!」
興奮が続く俺の語気にお三方が気圧されるも、後方に二人の女性が留まっていることで下がれないからか、お三方はヘドバンを思わせる首肯で返してきてくれる。
で――、
「エビルレイダーと名付けられた生物にも我々の力が注がれています!」
ツインテールがまったく似合わない次男のステロペース氏が応じる。
この力が注がれているというのは、生み出された時に――という意味合いではないだろう。
性格が臆病になったという意味合いじゃない。
雷系の力を宿したプロトスの話からの繋がりなのだから――、
「まさか……生物にも雷の力を宿せると……」
「は、はい」
「つまりはあの黄金に輝く角から放たれるやっかいな電撃は……」
興奮しすぎると人間は存外、冷静な語り方になるんだな。と、自分自身で理解したよ。
急な俺の静かな語り口に、お三方は恐怖を感じてしまったようで、大きな一つ目が今にも涙目に変わりそうだった。
どんだけメンタルが弱いんだよ……。
ともかく――だ!
「生物にもそういった力を与えることが出来るって事ですね?」
「は、はい」
恐怖を抱く中でなんとか自分が対応しようとばかりに、長男としての責任感から答えてくれるアルゲース氏。
三人の奥側ではシャルナが俺に対して不安げな目を向けてくる。
俺の発言内容が嫌だったご様子。
「別に俺達が生物の体をいじくるとかそんな事じゃないからな」
返してあげれば、不安な表情が直ぐに安堵へと変わった。
野生生物の保護もしているシャルナの好感度を下げるような事を俺はしませんよ。
宿せるという技術力に驚嘆しただけだからね。
「ですが、宿しておいても自分にもダメージを受けてしまうという恐れから、接近されたら使用できないという弱点はどうにかならなかったのですか?」
コクリコの当然と言える質問。
今回に限っては俺達はそれで救われたけどね。
「それには理由がありまして」
肩越しにコクリコを見つつ、末弟のブロンテース氏が応じる中で、
「先ほども話に上がりましたが、不完全体で生まれてしまったことが理由ですか?」
と、俺が口を開けば、正面をむき直して、
「そうです」
と、返してくれる。
「では完全体の成虫として生まれれば、電撃に完全耐性が出来るってことですかね?」
「そうです」
続けて肯定で返してくる。
「――なるほど」
返しに対して俺も短く返す中で、すでに別の事を考えていた。
――つまりは、雷に完全耐性を有した飛行の出来る大型生物としてエビルレイダーを新たに成長させれば――、
「なんだい?」
左肩のミルモンを見る。
「ミルモンの見通す力は偉大だと思ったんだよ」
「そうかい!」
嬉しそうに羽と尻尾を動かしながら照れてくれる姿は愛らしい。
――見通す力は間違っていなかった。
「電撃に対しての完全耐性と飛行」
ポツリと口から漏らした俺の発言に、
「乱気流と雷に守られたフロトレムリへと行く為の手段が、エビルレイダーで確定したようですね」
コクリコが続く。
「だな!」
飛行能力で乱気流をどうにか出来るにしても、雷を纏っている積乱雲の中へと突入するとなれば雷が脅威となる。
だが完全体が有する雷への完全耐性で、それも杞憂に終わりそうだな。
球体と巨人というはっきりとした見え方ではなくても、ミルモンの見通す力はちゃんと行き先までの手段を見通してくれているんだな。
「ミルモンの見通す力は偉大だ!」
同じ内容をさっきよりも力強く発せば、嬉しさでミルモンは俺から離れて宙を舞う。
有頂天になりながらも、今後も大活躍すると破顔にて伝えてくれる。
ベルが見たら大興奮の可愛さだった。
「――よし! この森での目的は達成した。王都に帰ろう」
窟で親方様たちにも報告をしないといけないし、トールハンマーの高順氏たちにも挨拶をしないとな。
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