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矮人と巨人
PHASE-1297【トーンダウン】
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――しっかし、よくもまあ走り続ける事ができるもんだよ……。
「まるでラグビーを見せられている気分だ」
「らぐびぃ?」
「あんな感じで追いかけて、逃げてる相手の物を奪い取るって競技だと思えばいい」
「奪い合う競技ですか。戦いの訓練から派生したとみていいですね」
それは知りませんよコクリコさん。
「おい! 談笑してないでなんとかしてくれんかトールよ! ワシの近衛なのに本気度が凄いぞ!」
焦る親方様の発言。
その焦燥感から分かるのは、最初はわりかし本気だったようだけど、徐々にテンションが上がってきたのか、今の近衛さん達はガチで追いかけ回している。
「トールよ、これ以外に他に美味い酒はないのか!」
こちらへと驀地してくれば、直ぐさま俺の背後に隠れる親方様。
「有りますよ」
「喜べ皆の衆! 有るそうだぞ!」
と、俺の後ろで頭だけを出して伝えれば、歓声と共にピタリと動きを止める面々。
この種族と+αは、どれほどまでに酒が好きなのか……。
面々の肝臓を心配しつつ、石庭に召喚しているトラックを指さす。
「皆さんの分は荷台に沢山つんでありますから」
「「「「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」」」」
喜びの咆哮を上げてハイタッチ。
「すみません。こちらの手土産が原因で、庭が大いに荒れてしまいましたね」
「か、かまわん……。そもそもが、主の酒を奪おうとする……あ、あいつ等が悪い」
と、息も絶え絶えに親方様が返してくれる。
本気で逃げていたし、本気で追いかけているんだもんな……。この主従……。
本来なら俺が中心となって荷台からおろすべきなんだろうけど、親方様が俺の背後から動かないので、それを見たパロンズ氏が近衛の皆さんを誘導。
「再度の称賛となるが、便利な鉄の箱だ。大量の荷を積めて、好きな場所に出せるのだからな」
「親方様。この程度で驚いてはいけませんよ」
地底湖でミズーリを直接その目で見ているし、乗艦もしているからか、トラックくらいで驚いていては駄目だ。と、ダダイル氏は得意げに語る。
「皆さんで荷台からおろしましょう。要塞からこの窟の方々のために、大量の酒樽を積んでおりますので」
俺に代わってトラックの前でパロンズ氏がそう伝えれば、
「「「「フォォォォォォォォォォォオ!!!!」」」」
ここでも胴間声による喜びの雄叫びを上げる皆さん。
さっきからこの館では何が起こっているのだろうか? と、目抜き通りで酒を楽しんでいるドワーフさん達は思っていることだろう。
というか、五月蠅いというクレームが来そうでもある。
――ホクホクの笑顔で荷台から酒樽を下ろしていく酒樽体系のドワーフさん達。
近衛だけでなく、館で働く他のドワーフさん達も連絡を聞きつけて参加。
もちろんタンカードを持参で……。
ゲノーモス達は酒樽をおろしていく面々を応援するというポジション。
「最高の土産。感謝するぞ」
「いえいえ喜んでもらえてなによりです。訪れたその日にご挨拶できたことで、こちらの顔も覚えていただきましたし」
これで名刺も携帯して手渡せていたなら、将来、元の世界に帰ることが出来れば立派な営業マンとして頑張れそうである。
「挨拶を済ませる事も出来ましたし、しばらくの談笑の後、自分たちはこの先へと進ませていただきますね。この先の森には、翼幻王の拠点へと行く事が出来る手がかりがあるようですから」
「う、む……」
おや? 急にトーンダウンだな。
さっきまでの快活さは何処へ?
まさか俺達との別れを寂しがっているということなのかな?
「どうされました?」
うつむく親方様に問う。
身長差もあるから下から覗き込むとなると、こっちは膝をついて見ないといけない。
傍から見たら相手を馬鹿にしているような所作にも見えてしまうだろうから、ここは口頭のみにしておく。
「いや、すまんな……」
力ない謝罪。
――なるほど。
「お気になさらず」
逆に俺は笑顔で快活よく短く返す。
トーンダウンの理由が何となく分かったからな。
俺の発言が原因なんだろうからね。
――以前の戦いで消耗している窟の戦力。
各地の窟から現在ここへと集まってはきているようだけど、十全には至らない。
そもそもここはドワーフ達にとって中心国なのだが、それを思わせるような広大さを感じさせない。
とにかく狭い。
道案内がいないと間違いなく迷ってしまうけど、道案内がいればこの国の中心部まで徒歩で半日もかからずに到着できる。
途中、地底湖に寄っても半日程度。
公都ラングリスなんて、外周の防御壁から公爵邸があるセントラルまで馬を使って二日はかかるからな。
ドワーフの中心窟でこの規模だとすると、各地の窟はここ以下と考えていいだろう。
――俺の推測の答え合わせのために、親方様に現在のアラムロス窟の人口を聞けば、二千ほどと返ってくる。
これでも以前より倍以上は増加したという。
ドワーフが二千って考えればかなりの戦力になると思えるけど、兵として動かせるのは三百ほどだそうだ。
青年と壮年による三百。
無理をして子供、女性や老人を集めれば、人口の半分は兵力として投入することは可能。
内情を聞いて思うことは、とてもじゃないが現状、無理をさせることは出来ない。
そら専守防衛を優先するってもんだ。
トールハンマーも人数が増えて今では三万を優に超えるけど、戦闘員は七千程度だからな。
まあ以前からすればかなりの増員ではあるけど、対する魔王軍は蹂躙王の軍勢だけで三百万という馬鹿げた数字だからな。
この窟の面々が俺達に協力したいと思っていても、今はここだけを守るだけで手一杯。
こちらに協力できない事に罪悪感を抱いたからこそ、親方様の声はトーンダウンしたんだろう。
「まるでラグビーを見せられている気分だ」
「らぐびぃ?」
「あんな感じで追いかけて、逃げてる相手の物を奪い取るって競技だと思えばいい」
「奪い合う競技ですか。戦いの訓練から派生したとみていいですね」
それは知りませんよコクリコさん。
「おい! 談笑してないでなんとかしてくれんかトールよ! ワシの近衛なのに本気度が凄いぞ!」
焦る親方様の発言。
その焦燥感から分かるのは、最初はわりかし本気だったようだけど、徐々にテンションが上がってきたのか、今の近衛さん達はガチで追いかけ回している。
「トールよ、これ以外に他に美味い酒はないのか!」
こちらへと驀地してくれば、直ぐさま俺の背後に隠れる親方様。
「有りますよ」
「喜べ皆の衆! 有るそうだぞ!」
と、俺の後ろで頭だけを出して伝えれば、歓声と共にピタリと動きを止める面々。
この種族と+αは、どれほどまでに酒が好きなのか……。
面々の肝臓を心配しつつ、石庭に召喚しているトラックを指さす。
「皆さんの分は荷台に沢山つんでありますから」
「「「「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」」」」
喜びの咆哮を上げてハイタッチ。
「すみません。こちらの手土産が原因で、庭が大いに荒れてしまいましたね」
「か、かまわん……。そもそもが、主の酒を奪おうとする……あ、あいつ等が悪い」
と、息も絶え絶えに親方様が返してくれる。
本気で逃げていたし、本気で追いかけているんだもんな……。この主従……。
本来なら俺が中心となって荷台からおろすべきなんだろうけど、親方様が俺の背後から動かないので、それを見たパロンズ氏が近衛の皆さんを誘導。
「再度の称賛となるが、便利な鉄の箱だ。大量の荷を積めて、好きな場所に出せるのだからな」
「親方様。この程度で驚いてはいけませんよ」
地底湖でミズーリを直接その目で見ているし、乗艦もしているからか、トラックくらいで驚いていては駄目だ。と、ダダイル氏は得意げに語る。
「皆さんで荷台からおろしましょう。要塞からこの窟の方々のために、大量の酒樽を積んでおりますので」
俺に代わってトラックの前でパロンズ氏がそう伝えれば、
「「「「フォォォォォォォォォォォオ!!!!」」」」
ここでも胴間声による喜びの雄叫びを上げる皆さん。
さっきからこの館では何が起こっているのだろうか? と、目抜き通りで酒を楽しんでいるドワーフさん達は思っていることだろう。
というか、五月蠅いというクレームが来そうでもある。
――ホクホクの笑顔で荷台から酒樽を下ろしていく酒樽体系のドワーフさん達。
近衛だけでなく、館で働く他のドワーフさん達も連絡を聞きつけて参加。
もちろんタンカードを持参で……。
ゲノーモス達は酒樽をおろしていく面々を応援するというポジション。
「最高の土産。感謝するぞ」
「いえいえ喜んでもらえてなによりです。訪れたその日にご挨拶できたことで、こちらの顔も覚えていただきましたし」
これで名刺も携帯して手渡せていたなら、将来、元の世界に帰ることが出来れば立派な営業マンとして頑張れそうである。
「挨拶を済ませる事も出来ましたし、しばらくの談笑の後、自分たちはこの先へと進ませていただきますね。この先の森には、翼幻王の拠点へと行く事が出来る手がかりがあるようですから」
「う、む……」
おや? 急にトーンダウンだな。
さっきまでの快活さは何処へ?
まさか俺達との別れを寂しがっているということなのかな?
「どうされました?」
うつむく親方様に問う。
身長差もあるから下から覗き込むとなると、こっちは膝をついて見ないといけない。
傍から見たら相手を馬鹿にしているような所作にも見えてしまうだろうから、ここは口頭のみにしておく。
「いや、すまんな……」
力ない謝罪。
――なるほど。
「お気になさらず」
逆に俺は笑顔で快活よく短く返す。
トーンダウンの理由が何となく分かったからな。
俺の発言が原因なんだろうからね。
――以前の戦いで消耗している窟の戦力。
各地の窟から現在ここへと集まってはきているようだけど、十全には至らない。
そもそもここはドワーフ達にとって中心国なのだが、それを思わせるような広大さを感じさせない。
とにかく狭い。
道案内がいないと間違いなく迷ってしまうけど、道案内がいればこの国の中心部まで徒歩で半日もかからずに到着できる。
途中、地底湖に寄っても半日程度。
公都ラングリスなんて、外周の防御壁から公爵邸があるセントラルまで馬を使って二日はかかるからな。
ドワーフの中心窟でこの規模だとすると、各地の窟はここ以下と考えていいだろう。
――俺の推測の答え合わせのために、親方様に現在のアラムロス窟の人口を聞けば、二千ほどと返ってくる。
これでも以前より倍以上は増加したという。
ドワーフが二千って考えればかなりの戦力になると思えるけど、兵として動かせるのは三百ほどだそうだ。
青年と壮年による三百。
無理をして子供、女性や老人を集めれば、人口の半分は兵力として投入することは可能。
内情を聞いて思うことは、とてもじゃないが現状、無理をさせることは出来ない。
そら専守防衛を優先するってもんだ。
トールハンマーも人数が増えて今では三万を優に超えるけど、戦闘員は七千程度だからな。
まあ以前からすればかなりの増員ではあるけど、対する魔王軍は蹂躙王の軍勢だけで三百万という馬鹿げた数字だからな。
この窟の面々が俺達に協力したいと思っていても、今はここだけを守るだけで手一杯。
こちらに協力できない事に罪悪感を抱いたからこそ、親方様の声はトーンダウンしたんだろう。
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