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発展と鍛錬
PHASE-1267【大炎上】
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「それで、兄ちゃんはオイラに何を望むんだい?」
「見通す力――千里眼の小悪魔ミルモンの力を貸してほしい」
「喚ぶだけあってオイラが見通す力を所有しているってのを理解してんだね」
まあ、うろ覚えで申し訳ないけどな。
さっきも謝ったけど、さわった程度だからな。
確か――キャラ説明のテキストには、一日一回の限定能力で、契約者が道を尋ねれば目的地を教えてくれるという能力を有していたよな。
――といってもこれはテキストに載っているだけの能力だったけど。
ミルモンの説明テキストには、契約者に目的地を教えてくれるとは書いてはあるが、そういった能力は序盤だけのプレイだったけど、ゲーム進行時に発揮されるというイベントなんかは発生しなかった。
結局は村や町のNPCに会話を行い、その部分から進行のヒントを得て、物語を進めていくという典型的なRPGだからな。
推測の域だが、これは小悪魔の設定を制作するための制作側が、適当につけた能力なんだろう。
だってこのゲームは人気ゲームをパクって作られたゲームだからな。適当になっているのも理解できる。
ミルモンが登場するゲーム――デーモン・モンスターズ――略してモンモン。
このモンモンは問題作として名を広めたゲームだった。
主人公は最初に三体の小悪魔の中から一体を召喚し、一緒に冒険をするというところから始まる。
冒険の中、フィールドでエンカウントする小悪魔たちと自身の小悪魔を戦わせ、勝利する事で従わせるチャンスを得るというシステムで、使役する小悪魔を増やしていくという内容。
プレイギア同士によるPVPも可能としている作品でもある。
結果、この作品を知った者達は声を揃えて、コレは世界的人気RPGである、スーパーマサラ人と電気ネズミが活躍する作品をパクったゲームであると判断。
これに加えて悪魔を題材にしていることから、女神で転生なゲームもパクっているとなり、二大RPGとそのファンを敵に回したということからネット上では大炎上。
これにより制作会社には大量の苦情電話と、お祭り大好きF5キー連打職人たちの砲撃によって会社のサーバーがダウンするという状態へと発展したのは、その当時のニュースで目にした。
大炎上が原因で制作会社は雲隠れ。
大炎上しすぎて灰燼となったわけだ。
雲隠れする前に報道各社に送られた、なんの味毛も無い定型文からなる謝罪文だけが報道されただけで、その後すぐにゲームなどに興味のない層からは忘れ去られた。
世間では騒動は沈静化するも、最後まで制作陣が表に出ることがなかったことで、ゲームプレイヤー層は悶々とした感情に支配された。
こういった経緯もあって、デーモン・モンスターズはタイトル名と悶々とした感情から、侮蔑を込めてモンモンと略され呼称されるようになったのは、俺が中二の頃。
こんなパクリゲーではあったのだが、一部では評価が高かったりもした。
テキストなどは適当ではあったが、ストーリーなどの中身は意外としっかりとしていたというレビューは見たことがある。
またダウンロードコンテンツでの販売がなく、パッケージ版のみの販売だったことと、世間を騒がせたことで回収もあったことから、希少なクソゲーとしてマニアの間では高値で取引されていたりする。
当時の俺はそんな偽者ゲームのなにがいいのかと、中二らしい反骨心と狭い器量でマニア達を敵視していたし、同時にモンモンも敵視していた。
そもそもRPGは据え置きでしかやらないスタイルは昔から今でも変わらない……のだったが……。
――……そんな俺のプレイギアにはモンモンのストレージデータが入っている……。
本来RPGは据え置きでしかやらない俺のプレイギアにこのRPGのデータが入っている理由は、中二の誕生日、田舎から爺ちゃんが遊びに来てくれた時のことだ。
俺がゲーム好きである事に加えて、人気ゲームの続編が出ていると知った爺ちゃんは、孫が喜ぶだろうということで、このゲーム……モンモンを買ってきてくれた……。
俺の親父殿は子供の時に機動戦士のプラモを買ってもらったが全くの別物であるパチモンを作るはめになったり。
ミニ四駆動のモノだと思ったら、海外の人形劇の中に登場する2号機のボディからなるパチ四駆。
と、爺ちゃんが買ってくるものは悉くパチモンだったそうな……。
そんなパチモン発掘の匠である爺ちゃんに対し、モンモンを手渡された俺は作り笑いを顔に貼り付けて喜んでいた。
で、そんな俺の貼り付けた笑顔を目にした親父殿は、自分の子供時代と俺の笑顔がダブったそうな……。
「――うんうん。懐かしい思い出だ――」
「もの凄く長い間、物思いに耽っていたね……」
「気にしないでください小悪魔よ。トールは時々、意識を別のところへ飛ばすという残念な妄想世界の住人なので」
「そこは反省するけども、妄想世界の住人ってはやめていただきたいよコクリコさん」
なんて返しつつも、中二の誕生日の思い出にはまだ耽ったまま。
受け取った時の爺ちゃんの笑顔に罪悪感を覚えた俺は、一応モンモンの冒頭だけはプレイした。
だからさわり程度の知識しかないんだよね。
「ん? なんだい?」
プレイギアをミルモンへと向ける。
ステータスを見させてもらう。
武力52
知力74
統率14
魅力62
忠誠10
――と、やはりステータス表記は俺が召喚した人物たちと同じだな。
レベルが表記されない時点でモンモンのテキストとは全くの別物だ。
さわり程度でレベル上げもしていないから、正直、大した力は持ってないとは思っていたけども、武力だけなら先生と荀攸さんよりも上だったのには驚きだ。
こんなに小っこいのに52とはね。
アレか? ゲーム内で最初に覚えている技とかが加味されたって事かな?
――……技名とかは忘れてしまったけど、確か二つか三つほど習得していたような記憶はある。
忠誠は10ってことからして、俺が指示を出したところで素直に聞くって事は無いだろう。
だがこれはベルやゲッコーさんと同じで、指示ではなく仲間として頼めば問題ない――と思う。
「いや、本当に兄ちゃんは変わり者だね。へんてこな物をこっちに向けてまた考え事なんだからね。全然、反省できてないじゃないか」
「すまないミルモン。反省しよう」
「お前は口だけだな。トール」
――……なぜにベルが怒るんだよ……。
ゴロ太の時と同じだよ。初対面でミルモンに好印象を与えたいというのがあけすけですわ……。
――そんな残念な最強さんをスルーしつつ、
「ミルモン」
「ようやく本題のようだね」
「ああ、千里眼の小悪魔ミルモンにお願いがある」
「悪魔にお願いをするってなると、どういった代償を支払うか理解しているのかな?」
500㎖のペットボトルよりも小さい二頭身が悪そうな笑みを俺に見せてくるけども、まったくもって怖くない。
「可愛い……」
って、背後でベルが喜ぶくらいだった……。
「何となく悪魔との取引ってのは理解はしてるんだけどさ。まだまだ俺も活動しないといけないからな。魂やら命の一部を与えるなんて事は出来ないよ」
「へ~、だったら後ろに並んでいる連中の中から、兄ちゃんの代わりの生贄を出すのかな?」
「そんな事をするわけがない」
「まさかオイラにタダで願い事をと考えてないだろうね?」
「そんな事はしないさ」
「じゃあ何をオイラに与えてくれるんだろうね」
更に口角を上げて意地悪そうにこっちを見てくるけども、やはり――、
「可愛い」
といった発言を背中に受けるだけだったよ……。
「さあ、兄ちゃん」
ソファに腰を下ろすミニマムサイズが上半身を前のめりにして言う姿は、威圧感を出したいんだろうがまったく伝わってこないんだよね。
可愛い威圧感を受け止めつつ、俺は笑顔で発する。
「ミルモン――俺と冒険に出ようぜ」
「見通す力――千里眼の小悪魔ミルモンの力を貸してほしい」
「喚ぶだけあってオイラが見通す力を所有しているってのを理解してんだね」
まあ、うろ覚えで申し訳ないけどな。
さっきも謝ったけど、さわった程度だからな。
確か――キャラ説明のテキストには、一日一回の限定能力で、契約者が道を尋ねれば目的地を教えてくれるという能力を有していたよな。
――といってもこれはテキストに載っているだけの能力だったけど。
ミルモンの説明テキストには、契約者に目的地を教えてくれるとは書いてはあるが、そういった能力は序盤だけのプレイだったけど、ゲーム進行時に発揮されるというイベントなんかは発生しなかった。
結局は村や町のNPCに会話を行い、その部分から進行のヒントを得て、物語を進めていくという典型的なRPGだからな。
推測の域だが、これは小悪魔の設定を制作するための制作側が、適当につけた能力なんだろう。
だってこのゲームは人気ゲームをパクって作られたゲームだからな。適当になっているのも理解できる。
ミルモンが登場するゲーム――デーモン・モンスターズ――略してモンモン。
このモンモンは問題作として名を広めたゲームだった。
主人公は最初に三体の小悪魔の中から一体を召喚し、一緒に冒険をするというところから始まる。
冒険の中、フィールドでエンカウントする小悪魔たちと自身の小悪魔を戦わせ、勝利する事で従わせるチャンスを得るというシステムで、使役する小悪魔を増やしていくという内容。
プレイギア同士によるPVPも可能としている作品でもある。
結果、この作品を知った者達は声を揃えて、コレは世界的人気RPGである、スーパーマサラ人と電気ネズミが活躍する作品をパクったゲームであると判断。
これに加えて悪魔を題材にしていることから、女神で転生なゲームもパクっているとなり、二大RPGとそのファンを敵に回したということからネット上では大炎上。
これにより制作会社には大量の苦情電話と、お祭り大好きF5キー連打職人たちの砲撃によって会社のサーバーがダウンするという状態へと発展したのは、その当時のニュースで目にした。
大炎上が原因で制作会社は雲隠れ。
大炎上しすぎて灰燼となったわけだ。
雲隠れする前に報道各社に送られた、なんの味毛も無い定型文からなる謝罪文だけが報道されただけで、その後すぐにゲームなどに興味のない層からは忘れ去られた。
世間では騒動は沈静化するも、最後まで制作陣が表に出ることがなかったことで、ゲームプレイヤー層は悶々とした感情に支配された。
こういった経緯もあって、デーモン・モンスターズはタイトル名と悶々とした感情から、侮蔑を込めてモンモンと略され呼称されるようになったのは、俺が中二の頃。
こんなパクリゲーではあったのだが、一部では評価が高かったりもした。
テキストなどは適当ではあったが、ストーリーなどの中身は意外としっかりとしていたというレビューは見たことがある。
またダウンロードコンテンツでの販売がなく、パッケージ版のみの販売だったことと、世間を騒がせたことで回収もあったことから、希少なクソゲーとしてマニアの間では高値で取引されていたりする。
当時の俺はそんな偽者ゲームのなにがいいのかと、中二らしい反骨心と狭い器量でマニア達を敵視していたし、同時にモンモンも敵視していた。
そもそもRPGは据え置きでしかやらないスタイルは昔から今でも変わらない……のだったが……。
――……そんな俺のプレイギアにはモンモンのストレージデータが入っている……。
本来RPGは据え置きでしかやらない俺のプレイギアにこのRPGのデータが入っている理由は、中二の誕生日、田舎から爺ちゃんが遊びに来てくれた時のことだ。
俺がゲーム好きである事に加えて、人気ゲームの続編が出ていると知った爺ちゃんは、孫が喜ぶだろうということで、このゲーム……モンモンを買ってきてくれた……。
俺の親父殿は子供の時に機動戦士のプラモを買ってもらったが全くの別物であるパチモンを作るはめになったり。
ミニ四駆動のモノだと思ったら、海外の人形劇の中に登場する2号機のボディからなるパチ四駆。
と、爺ちゃんが買ってくるものは悉くパチモンだったそうな……。
そんなパチモン発掘の匠である爺ちゃんに対し、モンモンを手渡された俺は作り笑いを顔に貼り付けて喜んでいた。
で、そんな俺の貼り付けた笑顔を目にした親父殿は、自分の子供時代と俺の笑顔がダブったそうな……。
「――うんうん。懐かしい思い出だ――」
「もの凄く長い間、物思いに耽っていたね……」
「気にしないでください小悪魔よ。トールは時々、意識を別のところへ飛ばすという残念な妄想世界の住人なので」
「そこは反省するけども、妄想世界の住人ってはやめていただきたいよコクリコさん」
なんて返しつつも、中二の誕生日の思い出にはまだ耽ったまま。
受け取った時の爺ちゃんの笑顔に罪悪感を覚えた俺は、一応モンモンの冒頭だけはプレイした。
だからさわり程度の知識しかないんだよね。
「ん? なんだい?」
プレイギアをミルモンへと向ける。
ステータスを見させてもらう。
武力52
知力74
統率14
魅力62
忠誠10
――と、やはりステータス表記は俺が召喚した人物たちと同じだな。
レベルが表記されない時点でモンモンのテキストとは全くの別物だ。
さわり程度でレベル上げもしていないから、正直、大した力は持ってないとは思っていたけども、武力だけなら先生と荀攸さんよりも上だったのには驚きだ。
こんなに小っこいのに52とはね。
アレか? ゲーム内で最初に覚えている技とかが加味されたって事かな?
――……技名とかは忘れてしまったけど、確か二つか三つほど習得していたような記憶はある。
忠誠は10ってことからして、俺が指示を出したところで素直に聞くって事は無いだろう。
だがこれはベルやゲッコーさんと同じで、指示ではなく仲間として頼めば問題ない――と思う。
「いや、本当に兄ちゃんは変わり者だね。へんてこな物をこっちに向けてまた考え事なんだからね。全然、反省できてないじゃないか」
「すまないミルモン。反省しよう」
「お前は口だけだな。トール」
――……なぜにベルが怒るんだよ……。
ゴロ太の時と同じだよ。初対面でミルモンに好印象を与えたいというのがあけすけですわ……。
――そんな残念な最強さんをスルーしつつ、
「ミルモン」
「ようやく本題のようだね」
「ああ、千里眼の小悪魔ミルモンにお願いがある」
「悪魔にお願いをするってなると、どういった代償を支払うか理解しているのかな?」
500㎖のペットボトルよりも小さい二頭身が悪そうな笑みを俺に見せてくるけども、まったくもって怖くない。
「可愛い……」
って、背後でベルが喜ぶくらいだった……。
「何となく悪魔との取引ってのは理解はしてるんだけどさ。まだまだ俺も活動しないといけないからな。魂やら命の一部を与えるなんて事は出来ないよ」
「へ~、だったら後ろに並んでいる連中の中から、兄ちゃんの代わりの生贄を出すのかな?」
「そんな事をするわけがない」
「まさかオイラにタダで願い事をと考えてないだろうね?」
「そんな事はしないさ」
「じゃあ何をオイラに与えてくれるんだろうね」
更に口角を上げて意地悪そうにこっちを見てくるけども、やはり――、
「可愛い」
といった発言を背中に受けるだけだったよ……。
「さあ、兄ちゃん」
ソファに腰を下ろすミニマムサイズが上半身を前のめりにして言う姿は、威圧感を出したいんだろうがまったく伝わってこないんだよね。
可愛い威圧感を受け止めつつ、俺は笑顔で発する。
「ミルモン――俺と冒険に出ようぜ」
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