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発展と鍛錬
PHASE-1248【再会が楽しみな三人】
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――――開かれた扉から中へとお邪魔し、直ぐさま新築の良き香りをと胸一杯になるように深呼吸を……、
「…………なんかくそおますな……」
「お、佐賀県民によるエセ関西弁か」
「なんですか……。この卵の腐ったようなニオイは……。まるで温泉街を歩いているような」
「そらそうだ。同様の物があるからな」
言いつつ左手にグラスを持ち替え、右手で木箱から取り出したモノを俺へと見せてくれるゲッコーさん。
――目にするのは黄色い綺麗な結晶。
色味からして、ランシェルの瞳のようなシトリンを思わせるカラー。
「これがニオイの元ですか?」
くんくんとするも結晶からはニオイはしない。
「鉱物自体は無臭だからな。ここではコイツを使用して色々とやっている。それが原因でニオイが出ているんだ」
「で、これは?」
「なんだ見たことないのか? 教科書や社会科見学なんかで目にしたりする経験があるかと思ったんだがな」
「そういった学習からは自然と目が離れていく性格でして」
「そうか……」
おっと、俺がさっき残念な目を向けてきたからって、お返しとばかりにこっちに同様の目を向けないでほしいですね。
「答えを教えてください」
「これは硫黄だ。自然硫黄」
「だからこの室内からは温泉みたいなニオイがするんですね。シャルナと初めて出会ったクレトス村から硫黄を調達しているって、押印作業時に目にしたな」
「トールがシャルナから股間を殴られた――思い出のある場所だ」
「ゲッコーさんがベルに思い切り殴られた――思い出のある場所ですね」
「言うじゃないか……」
速攻の切り返しを見舞ってやった。
で、俺の横ではシャルナがあの時はゴメンと謝ってくる。
気にしないと返しつつも、あの時のことを思い出せば、股間にズンガズンガとした痛みが甦ってきて、俺の足は自然と内股になっていた……。
しかしなぜに硫黄を調達?
「――黒色火薬の制作――とか?」
「お! ルネサンス三大発明はちゃんと学んだようだな」
流石にその辺は普通に授業を受けていたら頭に入ってくるレベルですからね。
「じゃあ、ここは火薬制作の拠点ですかね?」
「作ろうと思えば作れるけどな」
硫黄、木炭、硝石。この三つが揃えば作れるという。
硫黄はゲットしている。木炭も簡単に手に入る。
硝石ってのはトイレの土なんかを元にしてゲット可能とか……。
王都に戻ってからというもの、そっち方向のネタに困らねえな……。
なんて事も思っているけども、
「素材が揃っているなら作ってもいいですよね」
といった答えも生まれる。
「そうだな。目的のモノとは違うが、火薬を作っていくのもいいかもな」
先ほどからの返し方からするに、火薬制作が目的ではないようだな。
「何を作るつもりなんです?」
「全てが揃ったら教えてやるさ」
なんとも先延ばしにしてくるね。
これで大したことのないモノならどうしてくれようかね。
――どうもしないけども。
「で、どれだけ素材は揃っているんです?」
「一つ以外は揃っている」
「後一つを揃えるのに手を焼いているって感じですか?」
「まあな。硫黄、酸、鉛白は手に入った。後はコルレオンが腰にぶら下げている物が手に入れば制作できる」
腰にぶら下げている物となると――スリングショット。
つまりは――、
「ゴムですかね?」
「そうだ。だが南まで足を進めないとソレは手に入らないみたいだからな。それまでは他の素材の生産を進めていく」
「それが硫黄。酸。――えんぱくってやつですね」
――硫黄は先ほど同様にクレトス村。
酸は蟻が有している蟻酸なる毒腺から得ることが出来るそうだ。
この蟻酸はタイラントアントなる大型の蟻からゲットするという。
北伐時にブルホーン要塞にて、カリオネルの馬鹿が要塞内のコロッセオで俺に投入してきた合成獣の中に、蟻とは思えないほど馬鹿デカいフェザーアントって合成獣がいたが、その元となった蟻の部分がタイラントアント。
新人冒険者レベルだと群れを形成した大型のタイラントアント退治は難しいそうで、ギルド、野良を問わず、中堅レベル以上の冒険者を限定として酒蔵から蟻酸採取のクエスト依頼を出しているとの事だった。
――俺が相手をしたのは合成獣として強化された相手だったが、手こずるほどの相手ではないのは記憶している。
通常のタイラントアントとなればもっと容易い相手なんだろうが、それでも新人さん達だと難しいんだな。
今まで戦ってきた大型の相手と脅威レベルを照らし合わせると、蟻はトロールなどと比べると容易かった。
でも新人では難しい。
そうなるとタチアナ、ライ、クオンの駆け出し三人はやはり優秀だったようだ。
リオス村付近の洞窟でのトロール戦では大活躍だったからな。
駆け出しではあるが、この三人が他よりも図抜けた才能を有していたのが分かるってもんだ。
タチアナは白色級になっていたけど、残りの二人はどうなんだろうな。
実力からして、間違いなく昇級はしていることだろう。
タチアナもコクリコと同じで黄色級になってたりして。
王都にはまだいるつもりだからな。三人に会える機会があるなら、再開を兼ねて食事をご馳走して上げよう。
――……ご馳走して上げよう……。って、まるで不吉なフラグをおっ立ててしまったような……。
タチアナ達は元気か? と、この木造平屋で作業している何人かに問えば、問題なく元気に活動しています。と、一人が返してくれて胸をなで下ろす俺氏。
俺が勝手にフラグだと思い込んで、一人、心の中で焦っただけのアホムーブをかましただけだった……。
「…………なんかくそおますな……」
「お、佐賀県民によるエセ関西弁か」
「なんですか……。この卵の腐ったようなニオイは……。まるで温泉街を歩いているような」
「そらそうだ。同様の物があるからな」
言いつつ左手にグラスを持ち替え、右手で木箱から取り出したモノを俺へと見せてくれるゲッコーさん。
――目にするのは黄色い綺麗な結晶。
色味からして、ランシェルの瞳のようなシトリンを思わせるカラー。
「これがニオイの元ですか?」
くんくんとするも結晶からはニオイはしない。
「鉱物自体は無臭だからな。ここではコイツを使用して色々とやっている。それが原因でニオイが出ているんだ」
「で、これは?」
「なんだ見たことないのか? 教科書や社会科見学なんかで目にしたりする経験があるかと思ったんだがな」
「そういった学習からは自然と目が離れていく性格でして」
「そうか……」
おっと、俺がさっき残念な目を向けてきたからって、お返しとばかりにこっちに同様の目を向けないでほしいですね。
「答えを教えてください」
「これは硫黄だ。自然硫黄」
「だからこの室内からは温泉みたいなニオイがするんですね。シャルナと初めて出会ったクレトス村から硫黄を調達しているって、押印作業時に目にしたな」
「トールがシャルナから股間を殴られた――思い出のある場所だ」
「ゲッコーさんがベルに思い切り殴られた――思い出のある場所ですね」
「言うじゃないか……」
速攻の切り返しを見舞ってやった。
で、俺の横ではシャルナがあの時はゴメンと謝ってくる。
気にしないと返しつつも、あの時のことを思い出せば、股間にズンガズンガとした痛みが甦ってきて、俺の足は自然と内股になっていた……。
しかしなぜに硫黄を調達?
「――黒色火薬の制作――とか?」
「お! ルネサンス三大発明はちゃんと学んだようだな」
流石にその辺は普通に授業を受けていたら頭に入ってくるレベルですからね。
「じゃあ、ここは火薬制作の拠点ですかね?」
「作ろうと思えば作れるけどな」
硫黄、木炭、硝石。この三つが揃えば作れるという。
硫黄はゲットしている。木炭も簡単に手に入る。
硝石ってのはトイレの土なんかを元にしてゲット可能とか……。
王都に戻ってからというもの、そっち方向のネタに困らねえな……。
なんて事も思っているけども、
「素材が揃っているなら作ってもいいですよね」
といった答えも生まれる。
「そうだな。目的のモノとは違うが、火薬を作っていくのもいいかもな」
先ほどからの返し方からするに、火薬制作が目的ではないようだな。
「何を作るつもりなんです?」
「全てが揃ったら教えてやるさ」
なんとも先延ばしにしてくるね。
これで大したことのないモノならどうしてくれようかね。
――どうもしないけども。
「で、どれだけ素材は揃っているんです?」
「一つ以外は揃っている」
「後一つを揃えるのに手を焼いているって感じですか?」
「まあな。硫黄、酸、鉛白は手に入った。後はコルレオンが腰にぶら下げている物が手に入れば制作できる」
腰にぶら下げている物となると――スリングショット。
つまりは――、
「ゴムですかね?」
「そうだ。だが南まで足を進めないとソレは手に入らないみたいだからな。それまでは他の素材の生産を進めていく」
「それが硫黄。酸。――えんぱくってやつですね」
――硫黄は先ほど同様にクレトス村。
酸は蟻が有している蟻酸なる毒腺から得ることが出来るそうだ。
この蟻酸はタイラントアントなる大型の蟻からゲットするという。
北伐時にブルホーン要塞にて、カリオネルの馬鹿が要塞内のコロッセオで俺に投入してきた合成獣の中に、蟻とは思えないほど馬鹿デカいフェザーアントって合成獣がいたが、その元となった蟻の部分がタイラントアント。
新人冒険者レベルだと群れを形成した大型のタイラントアント退治は難しいそうで、ギルド、野良を問わず、中堅レベル以上の冒険者を限定として酒蔵から蟻酸採取のクエスト依頼を出しているとの事だった。
――俺が相手をしたのは合成獣として強化された相手だったが、手こずるほどの相手ではないのは記憶している。
通常のタイラントアントとなればもっと容易い相手なんだろうが、それでも新人さん達だと難しいんだな。
今まで戦ってきた大型の相手と脅威レベルを照らし合わせると、蟻はトロールなどと比べると容易かった。
でも新人では難しい。
そうなるとタチアナ、ライ、クオンの駆け出し三人はやはり優秀だったようだ。
リオス村付近の洞窟でのトロール戦では大活躍だったからな。
駆け出しではあるが、この三人が他よりも図抜けた才能を有していたのが分かるってもんだ。
タチアナは白色級になっていたけど、残りの二人はどうなんだろうな。
実力からして、間違いなく昇級はしていることだろう。
タチアナもコクリコと同じで黄色級になってたりして。
王都にはまだいるつもりだからな。三人に会える機会があるなら、再開を兼ねて食事をご馳走して上げよう。
――……ご馳走して上げよう……。って、まるで不吉なフラグをおっ立ててしまったような……。
タチアナ達は元気か? と、この木造平屋で作業している何人かに問えば、問題なく元気に活動しています。と、一人が返してくれて胸をなで下ろす俺氏。
俺が勝手にフラグだと思い込んで、一人、心の中で焦っただけのアホムーブをかましただけだった……。
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