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発展と鍛錬

PHASE-1211【存外――柔らかいじゃないか】

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 憧憬の眼差しを向けてくる皆さんを端から端まで見渡したところで――、

「「「「長旅お疲れ様でした!!!!」」」」
 と、声を揃えて俺達を労ってくれる。
 戦いの時には揃った声のように、素晴らしい連携に期待したいところである。

「有り難う」
 馬上にて丁寧な挨拶でこちらも応える中、更にそこからコクリコが前へと出て、馬車の屋根に飛び乗ってからのガイナ立ち。
 居並ぶ面々を見下ろして最高に気分は良さそうだけども、

「……ぬぅ……」
 なぜか表情が曇る。
 新人さんではあるけども、思いの外、自分と位階が同等の者が多いことが原因だろう。
 馬車から軽やかに跳躍し、俺が騎乗するダイフクに飛び乗ってくる。

「得心がいきません」
 俺の後ろに着地したコクリコが耳打ち。
 耳打ちという接近もそうだけど、結構な密着を美少女がしてくるもんだから俺はテンパってしまう。
 テンパってしまうが新人さん達の前でもある。
 無様な表情は出来ないからポーカーフェイスにて対応しているけども、心臓はバクバクですよ。
 コクリコはもっと女の子としての恥じらいを持つべきじゃないの。
 王都への途上中、野営時に腰が痛いと言うから擦ってやると言えば、気安く柔肌に触れられるとでも? なんて言ってたくせに、自分は俺にガッツリと体を密着してくるじゃないの。
 男に密着するなんてことを気軽にするなんてはしたないぞ。と、年上としては注意しないといけないのだろうけども――。
 反面――以外と柔らかいじゃないか。って邪な考えが生まれてしまう。
 とういうより、その考えに支配されていく。
 まな板だと思っていたが、一応はあるんだな。
 ――侮っていたよ。
 
「聞いてますか?」

「聞いてりょ」

「なんで呂律がまわっていないんですか」
 お前がくっついているからだよ。
 ポーカーフェイスではあるが、鼓動の高鳴りによる精神の高ぶりがどうしても表面に出てきてしまうようだ。
 童貞だからね。仕方ないね。

「これでは私は恥をかきますよ」

「だからちゃんと位階を上げるのは約束しているから心配すんなよ。今回のエルフの国での八面六臂の活躍は認めているんだから」

「でしたら黄色級ブィとは言わずにもっと上をお願いしますよ」
 くっつくなよ!
 なにコイツ!? まさかの色仕掛けで俺を籠絡させようとしているのか!?
 だとしてもその胸では……。

「お願いしますよ」

「う~む……」
 ――……って! なにを考え込んでんだ俺! 
 十分にその胸によって籠絡されかけているじゃないか。

「駄目! お前はしっかりと俺みたいに地道に向上していくように!」

「けちくさいですね」

「コクリコのためでもあるんだからな」
 ここで二階級アップなんてすれば、絶対に調子に乗るもの。
 これ以上、調子に乗らせてはいけないからな。
 手綱はしっかりと握らせてもらう。
 ――……それよりも耳打ちを止めて。俺のポーカーフェイスがにやけに変わってしまいそうだから……。

「と、とにかく地道にだ。納得してくれよな」
 ――…………。
 なんだよその間は?
 この間にコクリコの温かさと柔らかさを背中で存分に堪能しものいいのかな?

「ハッ!」
 堪能するつもりだったけども、何とも馬鹿にしたような返事がくる。
 肩越しに見れば琥珀の瞳が半眼となっており、返事と同様に表情も馬鹿にしたものだった。
 その表情に俺はコクリコの柔らかさを堪能する以上にイラッとしてしまう。

「納得しろよ。地道が一番だぞ」

「嫌ですね」
 コイツ……。王都に戻った途端これだよ。
 周囲の面々の認識票を目にして欲が出たな……。

「じゃあその白から変更なしでもいいんだな?」

「八面六臂の私の活躍を一階級昇進だけで済ませれば、他が納得しませんよ。他の者たちの不満を抑えるためにも必要な事だと具申します」
 コクリコの活躍。
 確かに今までの功績に加えて今回のエルフの国における大活躍を考えると、勇者パーティーの中でも頑張ってくれたのは事実。
 
 最初の頃は調子に乗っていたコクリコを勇者パーティーから追放してやろうと考えてもいたっけ。
 追放した後に活躍を耳にしたところで、こちらは土下座しながら泣いて戻ってきて! と、言わない自信しかなかったけども。
 冗談はさておき――、励んでいる人材が相応の扱いを受けなければ、やる気に繋がらないし不満も出てくるってのは分かる。
 結果、それらが積もり積もることでギルド全体に不協和音が出てくるだろう。

 頑張っても正当な評価が受けられないのなら別のギルドに流れたり、自由な野良へと戻る事になるかもしれない。
 ――それでもいいのですか?
 と、至極真っ当なことを己の位階アップの為に耳打ちによって力説してくる。
 コレには俺も首肯でしか対応できなかった。
 しっかりと背中に伝わる控えめな柔らかさを堪能しながらだけど。
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