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トール師になる

PHASE-1198【君たちも加わるつもりなんだね】

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 気圧されるルーシャンナルさん。どうすればいいのかとばかりに俺へと目を向けてくるのを確認。

 なので助け船を出すように――、

「これからもよろしくお願いしますよ。ルーシャンナルさん」
 と、言えば、

「私の命を捧げさせて頂きます」
 と、お偉いさん達の視線を躱すように俺へとしっかりと目を向けて返してくる。
 
 なので――、

「あ、いいです。とんでもなく長い天寿をちゃんと全うしてください」
 そう返せば更に困った表情となるルーシャンナルさん。
 ここはビシッと、俺にその命を預けてください! って言えばよかったのかもしれないが、いつまでもルーシャンナルさんが辛気くさかったので、つい笑いの方に傾倒してしまった。
 お偉いさん達にはウケたけど、ルーシャンナルさんは更に困った顔になっていた。

「懸命に戦い、汚名を払拭すればいいだけだ」
 ここで俺とは違い、側にいた人物から助け船。
 対するルーシャンナルさんは苦笑いを浮かべ、

「経験者としての助言として聞き入れましょう」
 と、丁寧に返していた。
 丁寧だけども若干の皮肉も混じっていたからか、言われた当人はフンッとぶっきらぼうに鼻で返事。

「兄さんが言えることじゃないから。お願いだから無様な姿だけは勇者様たちの前で見せないでね」

「わ、分かっている!」
 妹であるルマリアさんにきつめに言われると、慌てながら返す――、

「ネクレス氏も先発隊に参加してくれるんですね」

「借りは返す」
 エリスによって反乱がなかった事になったから罪には問われないけども、ダークエルフさん達がこの国にこのまま留まるのは居心地が悪いと判断したエリスは、先発隊へと参加したい者達を集ったそうだ。

 結果、大半のダークエルフ男性陣は、この先発隊に我も我もと参加。
 参加してくれた面々に、エリスは丁寧に頭を下げて礼を述べていたとネクレス氏。
 憑きものが取れたかのように笑顔を湛えながら述べてくれた。
 今まではぶっきらぼうな表情しか見たことがなかったからな。笑顔は新鮮だ。
 褐色肌のイケメンスマイルは、王都にいけば女性陣の心を大いに魅了する事だろう。
 羨ましいルックスですよ。
 この笑顔こそが本来のネクレス氏の姿なんだろうけども。

 反乱を起こした時、エリスを人質として利用する事が可能だったのに、それをしなかった人物。
 軟禁状態だけに留めたのは、族長であるルリエールとの関係を知っていた数少ない人物でもあったからかもしれない。
 だからこそ軟禁状態にして保護していたとも考えられる。
 そうする事でイエスマン、カゲストから守っていたのかもね。
 まあ、真意は本人のみぞ知るってところか。

「さてさて……」
 ルーシャンナルさんやネクレス氏。
 ハイエルフやエルフだけでなく、ダークエルフの面々と共に王都までの旅をするわけなのだが……。

「えっと……なんこれ?」

「ええっと。どうやら自分たちも参加したいとのことでした……」
 エリスは苦笑になりつつ俺に返してくれる。

「ギャ! ギャギャ!」
 一人が発せば、

「「「「ギャァァァァァァ!!!!」」」」
 唱和する。
 聞きようによっては阿鼻叫喚のような声なのだが……。

「……ああ、ルーシャンナルさん」
 名を口にすれば――、

「我々も恩人のために協力する――との事です」
 うん……。気持ちだけで十分だよ……。
 ――……そういう風に訳してほしかったけども……。
 口には出せなかった……。
 黄色い瞳を爛々と輝かせ、やる気を漲らせた視線を俺へと向けてくるのはゴブリン達……。
 気概ある瞳に断りづらくなってしまった俺。

「本当について来るつもりなのか……な?」
 力なく声を漏らせば、

「ギャ!」
 代表して一人が俺とは正反対の快活な声にて応える。
 最低限の人語は理解しているって事かな?
 やる気を見せるように、手にした石槍を高らかに掲げて振り回してみせるが――、

「……ギャァ……」
 お約束とばかりに長柄が後頭部に当たりふさぎ込んでしまう。
 明らかに戦えるだけの域には達していないよね……。

 で、これに加えて――、

「ミストウルフなんだな」
 なぜにミストウルフがこの場にいるのか。

 しかも――、

「ゴブリン達が騎獣してるんですが」
 ルーシャンナルさんに介してもらえば――、ゴブリン達もなぜ自分たちに協力しているのか分からないという。
 だが自分たちを乗せて移動してくれたので、そのまま協力関係になっているという事だった。

 ――……ふむん。

 これはデミタスによる指示って事なのだろうか……。
 ゴブリン達が俺に協力していたから今後も共闘すると判断し、その強化のためにゴブリン歩兵からゴブリンライダーにクラスチェンジさせたような感じなのかな。
 俺を守る為に自分の前に立ち塞がったゴブリン達に感心していたし。
 
 だがしかし。
 いくら蹂躙王ベヘモトが嫌いだからってこちら側――しかももう一人の仇である俺にここまでの協力をするとは考えにくいんだよな。
 ――……協力じゃなくて利用だったな……。
 だとしても、利用とは違った他意が含まれていると困る。
 かといって当人達がやる気になっているところで断るのもな~。
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