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トール師になる
PHASE-1186【国宝とか……】
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「まったく!」
「私が差し上げたモノでご迷惑をおかけしました」
「いいんですよ。コイツが時と場所を選ばないのが悪いんです」
コクリコに代わってしっかりと謝罪をするのはカトゼンカ氏。
――コクリコがホクホクな理由は、今回の活躍の礼を戴冠式前で忙しい王族に代わって自分がしたいとカトゼンカ氏が申し出たところから始まる。
当然、俺や他のパーティーは別に報酬のためにやった事ではないという事から拒んだけども、訪れたカトゼンカ氏の屋敷の応接室にてコクリコの目に留まったモノがあった。
それが今現在、俺に迷惑をかけているものだ。
俺に迷惑をかけた正体は――タリスマン。
だがこのタリスマンは武器や装飾品にはめ込んでの能力強化や補助という代物ではない。
コクリコの意思によってコントロールが出来るというサイコミュ兵器みたいなタリスマンだった。
コクリコが使用可能な魔法を同様の威力にて放つことも出来るという優れもの。
コクリコの周囲を飛び回るもよし、標的まで接近させて使用してもよしのオールレンジ攻撃を可能とし、ますますサイコミュ兵器を彷彿とさせるアイテムである。
カトゼンカ氏の家に代々伝わる一対からなるサーバントストーンと呼ばれる林檎サイズのタリスマン。
長い時を過ごすエルフ。しかもハイエルフ。もっと言うなら氏族筆頭の家に伝わる家宝。
とてもではないがおいそれと手放すような代物ではない――のだが、これからの事を考えれば屋敷に飾っているなど馬鹿馬鹿しいという理由から、最前線にて活躍する勇者一行にこそ相応しいと述べ、タリスマンを欲したコクリコに対し、家宝であるにもかかわらず躊躇することなく与えたのである。
しかもその二つのタリスマンを個々に収納する為に作られた、ミスリルからなる凝った装飾の小箱まで与えてくれた。
それをベルトの両側面に取り付けたコクリコはそこからずっと上機嫌。
――これが戴冠式で静かにしていた原因。
いい物を手に入れてウハウハだったから戴冠式ではとても静かだった。
式の最中、目立たず静かにしておくってのを約束にして譲渡したカトゼンカ氏の慧眼は素晴らしいと言える。
それにしても家宝をポンと与えてくれるカトゼンカ氏は豪気な方だよ。
真意を理解するまでは、ソレを使ってこちらに取り入ろうとしたのかと邪推もしたけどね。
「魔王討伐が成功した後にちゃんとお返ししますので」
「絶対に嫌です! 勝手なことを言わないでほしいですね。トール! アドンとサムソンは既に私のモノです! 後に英雄として語り継がれる私が扱う装備として自伝に記す予定です!」
もう名前つけてんのかよ……。
しかもアドンとサムソンて……。
リンのダンジョンで手にいれたタリスマンにはオスカーとミッターと名付けているし……。
コイツは本当にこの世界の住人なのだろうか? と、疑いたくなるネーミングセンスだよ……。
「絶対に返しませんよ!」
「お前な……」
狼もビックリなうなり声でこちらを威嚇してくるあたり、本当に返すつもりはないようだ。
「私も譲り渡したものと思っておりますので。魔王を倒した勇者の供である偉大なる大魔導師が使用した装備が、エルフ、カトゼンカより与えられた宝具だと後に広まれば、それはそれで良しですからね」
「流石は氏族筆頭! 分かっていますね! 貴男の名声が天井知らずとなるよう、このコクリコ・シュレンテッドが助力しましょう」
「お願いしますよ」
なんで貰った方が偉そうなんだよ。
まあ、如何にもコクリコらしいムーブではあるが……。
俺とベルが苦笑いで二人のやり取りを眺めていれば、
「まてまて! プロマミナス卿だけが名声を高めるのはおもしろくないぞ!」
「これは前王」
ここで大広間からバルコニーに足を運んだのは、今日の午前中までこの国の王だった御方。
「トール殿のお供が氏族筆頭から家宝を与えられたのならば――なあ息子よ!」
「もちろんですとも!」
ここでエリスも現れる。
前王と現王がバルコニーへと移動すれば、自然と大広間に集まった面々の衆目もこちらへと向けられるわけだ。
「僕の師にはこの国の宝を託すべきだと思います」
国宝って事かな?
「その豪気さは素晴らしいぞ息子よ!」
なんでテンション上がってんでしょうね……。酔ってんのか?
「あの、国宝とか気が引けるんでいいです」
「そんな事を言わないでくれ。プロマミナス卿が家宝を渡したのだからな。ここは王族も格好を付けさせてもらわないと。何がいいのだトール殿」
「ですから別にいいです」
「父上。師匠は二刀流の修練を行っているようです」
「ほう、そうか!」
俺の拒否をスルーして勝手に二人で盛り上がらないでくれるかな。
「だが佩いているのは、火龍ヘラクレイトス様の鱗から作られた刀が一振。あと一振りは何処に?」
「短い付き合いでしたがエドワードという剣を一振り所有していたのですが、ガグ戦で失いました」
「それは申し訳ないことをした」
いや、前王が頭を下げなくていいんですけどね。
ポルパロング邸でイキッてた私兵のまとめ役だったテイ……なんちゃらってのから拝借しただけのモノだったし。
「父上。国宝と言うのならば、鋳塊を渡してはいかがでしょうか」
「おお! それはよいな!」
鋳塊ってなんだよ。
真っ先に思い浮かぶのは黄金のインゴットなんだけども、絶対にソレを凌駕してくる代物だろう。
大層な物を頂くのはちょっとね。
公爵であっても元々が一般庶民なんだからね。国宝ってだけでへっぴり腰になるというもの……。
しかもその国宝ってのが長い時を過ごすエルフが所有する代物なんだからな。とんでもない宝なのは間違いない。
そんな宝を頂くとか……。俺の胃がエメンタールチーズになる……。
「私が差し上げたモノでご迷惑をおかけしました」
「いいんですよ。コイツが時と場所を選ばないのが悪いんです」
コクリコに代わってしっかりと謝罪をするのはカトゼンカ氏。
――コクリコがホクホクな理由は、今回の活躍の礼を戴冠式前で忙しい王族に代わって自分がしたいとカトゼンカ氏が申し出たところから始まる。
当然、俺や他のパーティーは別に報酬のためにやった事ではないという事から拒んだけども、訪れたカトゼンカ氏の屋敷の応接室にてコクリコの目に留まったモノがあった。
それが今現在、俺に迷惑をかけているものだ。
俺に迷惑をかけた正体は――タリスマン。
だがこのタリスマンは武器や装飾品にはめ込んでの能力強化や補助という代物ではない。
コクリコの意思によってコントロールが出来るというサイコミュ兵器みたいなタリスマンだった。
コクリコが使用可能な魔法を同様の威力にて放つことも出来るという優れもの。
コクリコの周囲を飛び回るもよし、標的まで接近させて使用してもよしのオールレンジ攻撃を可能とし、ますますサイコミュ兵器を彷彿とさせるアイテムである。
カトゼンカ氏の家に代々伝わる一対からなるサーバントストーンと呼ばれる林檎サイズのタリスマン。
長い時を過ごすエルフ。しかもハイエルフ。もっと言うなら氏族筆頭の家に伝わる家宝。
とてもではないがおいそれと手放すような代物ではない――のだが、これからの事を考えれば屋敷に飾っているなど馬鹿馬鹿しいという理由から、最前線にて活躍する勇者一行にこそ相応しいと述べ、タリスマンを欲したコクリコに対し、家宝であるにもかかわらず躊躇することなく与えたのである。
しかもその二つのタリスマンを個々に収納する為に作られた、ミスリルからなる凝った装飾の小箱まで与えてくれた。
それをベルトの両側面に取り付けたコクリコはそこからずっと上機嫌。
――これが戴冠式で静かにしていた原因。
いい物を手に入れてウハウハだったから戴冠式ではとても静かだった。
式の最中、目立たず静かにしておくってのを約束にして譲渡したカトゼンカ氏の慧眼は素晴らしいと言える。
それにしても家宝をポンと与えてくれるカトゼンカ氏は豪気な方だよ。
真意を理解するまでは、ソレを使ってこちらに取り入ろうとしたのかと邪推もしたけどね。
「魔王討伐が成功した後にちゃんとお返ししますので」
「絶対に嫌です! 勝手なことを言わないでほしいですね。トール! アドンとサムソンは既に私のモノです! 後に英雄として語り継がれる私が扱う装備として自伝に記す予定です!」
もう名前つけてんのかよ……。
しかもアドンとサムソンて……。
リンのダンジョンで手にいれたタリスマンにはオスカーとミッターと名付けているし……。
コイツは本当にこの世界の住人なのだろうか? と、疑いたくなるネーミングセンスだよ……。
「絶対に返しませんよ!」
「お前な……」
狼もビックリなうなり声でこちらを威嚇してくるあたり、本当に返すつもりはないようだ。
「私も譲り渡したものと思っておりますので。魔王を倒した勇者の供である偉大なる大魔導師が使用した装備が、エルフ、カトゼンカより与えられた宝具だと後に広まれば、それはそれで良しですからね」
「流石は氏族筆頭! 分かっていますね! 貴男の名声が天井知らずとなるよう、このコクリコ・シュレンテッドが助力しましょう」
「お願いしますよ」
なんで貰った方が偉そうなんだよ。
まあ、如何にもコクリコらしいムーブではあるが……。
俺とベルが苦笑いで二人のやり取りを眺めていれば、
「まてまて! プロマミナス卿だけが名声を高めるのはおもしろくないぞ!」
「これは前王」
ここで大広間からバルコニーに足を運んだのは、今日の午前中までこの国の王だった御方。
「トール殿のお供が氏族筆頭から家宝を与えられたのならば――なあ息子よ!」
「もちろんですとも!」
ここでエリスも現れる。
前王と現王がバルコニーへと移動すれば、自然と大広間に集まった面々の衆目もこちらへと向けられるわけだ。
「僕の師にはこの国の宝を託すべきだと思います」
国宝って事かな?
「その豪気さは素晴らしいぞ息子よ!」
なんでテンション上がってんでしょうね……。酔ってんのか?
「あの、国宝とか気が引けるんでいいです」
「そんな事を言わないでくれ。プロマミナス卿が家宝を渡したのだからな。ここは王族も格好を付けさせてもらわないと。何がいいのだトール殿」
「ですから別にいいです」
「父上。師匠は二刀流の修練を行っているようです」
「ほう、そうか!」
俺の拒否をスルーして勝手に二人で盛り上がらないでくれるかな。
「だが佩いているのは、火龍ヘラクレイトス様の鱗から作られた刀が一振。あと一振りは何処に?」
「短い付き合いでしたがエドワードという剣を一振り所有していたのですが、ガグ戦で失いました」
「それは申し訳ないことをした」
いや、前王が頭を下げなくていいんですけどね。
ポルパロング邸でイキッてた私兵のまとめ役だったテイ……なんちゃらってのから拝借しただけのモノだったし。
「父上。国宝と言うのならば、鋳塊を渡してはいかがでしょうか」
「おお! それはよいな!」
鋳塊ってなんだよ。
真っ先に思い浮かぶのは黄金のインゴットなんだけども、絶対にソレを凌駕してくる代物だろう。
大層な物を頂くのはちょっとね。
公爵であっても元々が一般庶民なんだからね。国宝ってだけでへっぴり腰になるというもの……。
しかもその国宝ってのが長い時を過ごすエルフが所有する代物なんだからな。とんでもない宝なのは間違いない。
そんな宝を頂くとか……。俺の胃がエメンタールチーズになる……。
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