1,123 / 1,579
トール師になる
PHASE-1123【という夢を見た。とかではなく?】
しおりを挟む
――――狭苦しい建物に侍女達といるお偉いさんは戦いを望んでいないという。
ならば――、
「族長殿」
「ルリエールで構いません勇者様――いえ、トール様」
周囲の顔色を窺えば、皆さん優しく笑みを湛え、首肯で返してくれる。
問題なしということか。
「では――ルリエール」
「はい!」
「是非とも挙兵を止めていただきたい――です」
「当然です」
清々しいほどに気持ちのいい即答だった。
「ならば直ぐに――ってわけにもいかないんでしょうね……」
「はい……」
と、ここでも即答。
二つ前と違って同じ返事でも声には暗さがあった。
それで悟るよね。
「これってようは軟禁状態ですか?」
「はい」
三度、同じ返事。
「だが監視はないようだが?」
「ですよね。ないならここから脱出できるのでは?」
ゲッコーさんに続くようにルリエールに問うてみれば、
「私はここから逃げるわけには参りません」
握り拳を作って強い視線を俺に向けてくる。
なんだろう。強い意志を感じさせるね。
「だったらしっかりと反対を伝えれば」
「伝えたところで聞き入れません。男性達を押さえ込むだけの力が我々に無かったのが情けないところです。見張りを付けないのがよい証拠です。完全に侮られています」
だよね。
俺のパーティーだと逆なんだけどね。
女性陣を押さえるだけの力を持っていないからね。男性陣は……。
「なんだ?」
「いえ、なんでも……」
最強格であるゲッコーさんであっても、温泉で覗きをした時は、ベルからしっかりと修正されてたもんな~。
「そもそも逃げる選択肢はありません。ここを離れるわけにはいきませんから」
「理由は?」
「それは――」
なんか急にモジモジと恥ずかしそうに体をくねらせ始めた。
それを見る侍女の皆さんは、あらあら、まあまあといった感じで柔和な笑みとなり、その姿を愛でていた。
なんなのこのほんわかリアクションに包まれる空気は? 緊張感ってのがないな。
――――返答待ちの俺を置いてけぼりにして、ルミエールは両手を頬に当てて、更に体をくねらせて恥ずかしそうにしている。
――……本当に……なんなの? 何を見せられているの?
「……あの……いいでしょうか?」
いつまでもくねくねダンスを見せられるのもね……。いや、可愛いけど。
「これは失礼いたしました」
なんて言いながらもルミエールから笑みは消えない。
軟禁に近いこの状況下で頬を紅潮させてのその余裕。大物のようだな。
「理由――ですね。それはとても簡単です」
「はい」
なら簡潔に述べてもらいたいものです。
「私がエリスヴェン様と恋仲の関係だからです。愛する殿方を置いて私だけここから逃げ出すことなど出来ません!」
――……。
「あ~はん?」
アホな声を出しつつゲッコーさんと顔を見合わせる。
ゲッコーさんも眉頭をわずかに上げ、俺と同じようなリアクションを見せてくる。
つまりは――何を言っているんだこの子は? である。
ルーシャンナルさん。そして王族の側で働くリンファさんを見てもやはり同様のリアクションである。
ただ俺達と違い、周囲のダークエルフさん達はルリエールのリアクションを愛でているスタイルを変えることはない。
「ええっと――妄想? 夢?」
「妄想でも夢でもありません!」
しっかりと怒気の籠もった返事だった。
――ふむん。
「本当にエリスと恋仲ってこと?」
族長相手にタメ口になってしまったが――、
「そうです」
スルーしてくれたので――、
「エリスってのは王族で、次の王であるエリスヴェンのことなのかな?」
エリスに接するように口調を敬語から変更。
「先ほども言いました。エリスヴェン様と」
「あ~うん。そうだよね」
念のために周囲の美人ダークエルフさん達にも問うてみた。
ルミエールが俺達と出会う前に頭を打っていなかったか? 悪いものでも食べていないか? と。
もちろんそんな事は無かったと、些か怒気の混じった声が壁に沿った位置から返ってくる。
7.1サラウンドサウンドみたいな臨場感ある返事だった。
ならば――、
「族長殿」
「ルリエールで構いません勇者様――いえ、トール様」
周囲の顔色を窺えば、皆さん優しく笑みを湛え、首肯で返してくれる。
問題なしということか。
「では――ルリエール」
「はい!」
「是非とも挙兵を止めていただきたい――です」
「当然です」
清々しいほどに気持ちのいい即答だった。
「ならば直ぐに――ってわけにもいかないんでしょうね……」
「はい……」
と、ここでも即答。
二つ前と違って同じ返事でも声には暗さがあった。
それで悟るよね。
「これってようは軟禁状態ですか?」
「はい」
三度、同じ返事。
「だが監視はないようだが?」
「ですよね。ないならここから脱出できるのでは?」
ゲッコーさんに続くようにルリエールに問うてみれば、
「私はここから逃げるわけには参りません」
握り拳を作って強い視線を俺に向けてくる。
なんだろう。強い意志を感じさせるね。
「だったらしっかりと反対を伝えれば」
「伝えたところで聞き入れません。男性達を押さえ込むだけの力が我々に無かったのが情けないところです。見張りを付けないのがよい証拠です。完全に侮られています」
だよね。
俺のパーティーだと逆なんだけどね。
女性陣を押さえるだけの力を持っていないからね。男性陣は……。
「なんだ?」
「いえ、なんでも……」
最強格であるゲッコーさんであっても、温泉で覗きをした時は、ベルからしっかりと修正されてたもんな~。
「そもそも逃げる選択肢はありません。ここを離れるわけにはいきませんから」
「理由は?」
「それは――」
なんか急にモジモジと恥ずかしそうに体をくねらせ始めた。
それを見る侍女の皆さんは、あらあら、まあまあといった感じで柔和な笑みとなり、その姿を愛でていた。
なんなのこのほんわかリアクションに包まれる空気は? 緊張感ってのがないな。
――――返答待ちの俺を置いてけぼりにして、ルミエールは両手を頬に当てて、更に体をくねらせて恥ずかしそうにしている。
――……本当に……なんなの? 何を見せられているの?
「……あの……いいでしょうか?」
いつまでもくねくねダンスを見せられるのもね……。いや、可愛いけど。
「これは失礼いたしました」
なんて言いながらもルミエールから笑みは消えない。
軟禁に近いこの状況下で頬を紅潮させてのその余裕。大物のようだな。
「理由――ですね。それはとても簡単です」
「はい」
なら簡潔に述べてもらいたいものです。
「私がエリスヴェン様と恋仲の関係だからです。愛する殿方を置いて私だけここから逃げ出すことなど出来ません!」
――……。
「あ~はん?」
アホな声を出しつつゲッコーさんと顔を見合わせる。
ゲッコーさんも眉頭をわずかに上げ、俺と同じようなリアクションを見せてくる。
つまりは――何を言っているんだこの子は? である。
ルーシャンナルさん。そして王族の側で働くリンファさんを見てもやはり同様のリアクションである。
ただ俺達と違い、周囲のダークエルフさん達はルリエールのリアクションを愛でているスタイルを変えることはない。
「ええっと――妄想? 夢?」
「妄想でも夢でもありません!」
しっかりと怒気の籠もった返事だった。
――ふむん。
「本当にエリスと恋仲ってこと?」
族長相手にタメ口になってしまったが――、
「そうです」
スルーしてくれたので――、
「エリスってのは王族で、次の王であるエリスヴェンのことなのかな?」
エリスに接するように口調を敬語から変更。
「先ほども言いました。エリスヴェン様と」
「あ~うん。そうだよね」
念のために周囲の美人ダークエルフさん達にも問うてみた。
ルミエールが俺達と出会う前に頭を打っていなかったか? 悪いものでも食べていないか? と。
もちろんそんな事は無かったと、些か怒気の混じった声が壁に沿った位置から返ってくる。
7.1サラウンドサウンドみたいな臨場感ある返事だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
432
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる