1,099 / 1,668
トール師になる
PHASE-1099【上から約五十トン】
しおりを挟む
「いい加減にしろ! ブラストスマッシュ!」
姿勢を崩しつつも三つの拳が俺たち三人に向けられる。
即座に二人からはプロテクションという声が上がり、至近にいた俺もピーカブースタイルでイグニースを展開。
使う時には柔軟に使う。
「あら!?」
問題なく防げると思ったけども中々の威力だった。
圧縮された風の塊による衝撃を正面から受ければ、ガードは出来ても体が浮かされる。
「くたばれ!」
宙を舞う俺に迫る大きな掌。
「なろ!」
宙空で姿勢を整えて、俺は空中に立つ。
シャルナの機転でプロテクションを足場としてくれる。
迫る掌に、
「パーにはチョキだろ」
障壁を蹴って跳躍し、二振りの刀剣で迎撃。
掌に斬撃二閃。
「あらら!?」
残火は振り抜くことが出来たが、左手に持ったエドワードが途中で止まってしまう。
さらに悪いことに俺の手からも離れてしまう。
床へと着地してガグの掌を見れば、しっかりとエドワードが刺さっていた。
「なぜこうも思い通りにいかん! この力は最強となるべく与えられたというのに! ええい! こんなところで時間を使うのも馬鹿らしい!」
苛立ちつつ、残火で斬られた箇所と掌に刺さったエドワードを引き抜いて直ぐさまヒール。
続けてイライラをぶつけるように抜いたエドワードを大きな手でへし折った。
「ああ! 俺のエドワード!」
「黙れ! これはそんな名ではない! そもそもテイワイズの得物であろうが!」
「まあ、そうなんだけど。戦利品で俺の剣にしたんだよ」
「勇者ではなくただの盗人だな。この国もそうやって奪うつもりなのだろう。あの御方の仰るとおりだ。やはり次のための行動を起こさねば」
「だから、あの御方って誰だよ!」
「……」
なんでそこで沈黙するんだコイツは……。
それに次ってなんだよ。
もしかして王様に取って代わるつもりの行動に移行するって事か?
口にする御方ってのが誰だか分からんが、もしかしたらそいつもこの国で行動している可能性がある。
――――これ以上ここで時間を使うのはよろしくないな。
もう二刀流の練習も出来ない事だし、一気に決めにいこう。
「その刀を代わりによこしてもらおう!」
「お断りだね。エドワードの仇を取らせてもらう!」
「ならばテイワイズの仇である」
「殺してねえよ!」
「貴様は殺してやる!」
殺意満々だけども、搦め手の攻撃を受ければ対応できなくなったり、思い通りにならない発言からガグの力を全て発揮できていないのは分かる。
「その力を扱うにはまだまだのようだな。ぶっつけ……」
――……本番で扱えるなんて思うな! と、発言をドヤって続けたかったけど、俺も基本ぶっつけ本番なので、ブーメラン発言を回避するため途中でやめた……。
「とにかく力に振り回されてるぜ」
「ぬかせ! 貴様等の体もこの剣のようにしてやろう!」
「トール。さっさとやっちゃって!」
シャルナの発言に従ってさっさと終わらせよう。
片手が寂しくなったのでエドワードの代わりにプレイギアを左手に持つ。
「エドワードの仇はエドワードで! さあ出てこいブラックプリンス歩兵戦車」
「なんだ!?」
ガグの頭上にプレイギアを向ける。
天井付近に発生する強い光を直視しないよう、ガグは残った腕三本を使って顔を覆う。
「それは失敗だ。タンクメテオをくらうヨロシ」
「ぬぅ!? うぉぉぉぉぉぉぉ……」
光が消えると同時に現れるのは全高約三メートル、全長約九メートルの黒い巨塊。
ガグのサイズを超える巨塊が頭上から落ちてくる。
その巨塊を受け止めようとしているけども、如何に強靱な肉体を持つ巨体であっても難しいだろう。
約五十トンからなるブラックプリンスの重量を支えるのは不可能。
だと思ったけども、
「フゥウンンンンンンッ!」
片膝をつき、三本の腕で懸命に支えて下敷きになるのを回避している姿は凄いと称賛をおくりたい。
小癪な手を使うとばかりに、血のような赤い虹彩に囲まれた黒い瞳孔を細めると、こちらを強く睨んでくる。
現状、睨みしか出来ないと言うのが正解かな。
支えるだけで手一杯。
でもそれも限界。
「ぅ、ヌァァァァァァァァァ――!」
――はい、終了。
巨体であり怪力であろうとも、流石に五十トンを支えるだけの膂力はないよな。
この重量に耐えうるのはファンタジー世界でも難しいところだろう。
「戻れ」
ブラックプリンスをプレイギアに戻す。
まあでも――、
「肉塊にならなかっただけでもファンタジー世界の不思議な力には驚かされるけどね」
普通なら五十トンが上から落ちてくればミンチだからな。
「はぁ……ハァ、ハァ…………」
伏臥の姿勢で息も絶え絶え。
もう戦うだけの気力も体力もないだろう。
姿勢を崩しつつも三つの拳が俺たち三人に向けられる。
即座に二人からはプロテクションという声が上がり、至近にいた俺もピーカブースタイルでイグニースを展開。
使う時には柔軟に使う。
「あら!?」
問題なく防げると思ったけども中々の威力だった。
圧縮された風の塊による衝撃を正面から受ければ、ガードは出来ても体が浮かされる。
「くたばれ!」
宙を舞う俺に迫る大きな掌。
「なろ!」
宙空で姿勢を整えて、俺は空中に立つ。
シャルナの機転でプロテクションを足場としてくれる。
迫る掌に、
「パーにはチョキだろ」
障壁を蹴って跳躍し、二振りの刀剣で迎撃。
掌に斬撃二閃。
「あらら!?」
残火は振り抜くことが出来たが、左手に持ったエドワードが途中で止まってしまう。
さらに悪いことに俺の手からも離れてしまう。
床へと着地してガグの掌を見れば、しっかりとエドワードが刺さっていた。
「なぜこうも思い通りにいかん! この力は最強となるべく与えられたというのに! ええい! こんなところで時間を使うのも馬鹿らしい!」
苛立ちつつ、残火で斬られた箇所と掌に刺さったエドワードを引き抜いて直ぐさまヒール。
続けてイライラをぶつけるように抜いたエドワードを大きな手でへし折った。
「ああ! 俺のエドワード!」
「黙れ! これはそんな名ではない! そもそもテイワイズの得物であろうが!」
「まあ、そうなんだけど。戦利品で俺の剣にしたんだよ」
「勇者ではなくただの盗人だな。この国もそうやって奪うつもりなのだろう。あの御方の仰るとおりだ。やはり次のための行動を起こさねば」
「だから、あの御方って誰だよ!」
「……」
なんでそこで沈黙するんだコイツは……。
それに次ってなんだよ。
もしかして王様に取って代わるつもりの行動に移行するって事か?
口にする御方ってのが誰だか分からんが、もしかしたらそいつもこの国で行動している可能性がある。
――――これ以上ここで時間を使うのはよろしくないな。
もう二刀流の練習も出来ない事だし、一気に決めにいこう。
「その刀を代わりによこしてもらおう!」
「お断りだね。エドワードの仇を取らせてもらう!」
「ならばテイワイズの仇である」
「殺してねえよ!」
「貴様は殺してやる!」
殺意満々だけども、搦め手の攻撃を受ければ対応できなくなったり、思い通りにならない発言からガグの力を全て発揮できていないのは分かる。
「その力を扱うにはまだまだのようだな。ぶっつけ……」
――……本番で扱えるなんて思うな! と、発言をドヤって続けたかったけど、俺も基本ぶっつけ本番なので、ブーメラン発言を回避するため途中でやめた……。
「とにかく力に振り回されてるぜ」
「ぬかせ! 貴様等の体もこの剣のようにしてやろう!」
「トール。さっさとやっちゃって!」
シャルナの発言に従ってさっさと終わらせよう。
片手が寂しくなったのでエドワードの代わりにプレイギアを左手に持つ。
「エドワードの仇はエドワードで! さあ出てこいブラックプリンス歩兵戦車」
「なんだ!?」
ガグの頭上にプレイギアを向ける。
天井付近に発生する強い光を直視しないよう、ガグは残った腕三本を使って顔を覆う。
「それは失敗だ。タンクメテオをくらうヨロシ」
「ぬぅ!? うぉぉぉぉぉぉぉ……」
光が消えると同時に現れるのは全高約三メートル、全長約九メートルの黒い巨塊。
ガグのサイズを超える巨塊が頭上から落ちてくる。
その巨塊を受け止めようとしているけども、如何に強靱な肉体を持つ巨体であっても難しいだろう。
約五十トンからなるブラックプリンスの重量を支えるのは不可能。
だと思ったけども、
「フゥウンンンンンンッ!」
片膝をつき、三本の腕で懸命に支えて下敷きになるのを回避している姿は凄いと称賛をおくりたい。
小癪な手を使うとばかりに、血のような赤い虹彩に囲まれた黒い瞳孔を細めると、こちらを強く睨んでくる。
現状、睨みしか出来ないと言うのが正解かな。
支えるだけで手一杯。
でもそれも限界。
「ぅ、ヌァァァァァァァァァ――!」
――はい、終了。
巨体であり怪力であろうとも、流石に五十トンを支えるだけの膂力はないよな。
この重量に耐えうるのはファンタジー世界でも難しいところだろう。
「戻れ」
ブラックプリンスをプレイギアに戻す。
まあでも――、
「肉塊にならなかっただけでもファンタジー世界の不思議な力には驚かされるけどね」
普通なら五十トンが上から落ちてくればミンチだからな。
「はぁ……ハァ、ハァ…………」
伏臥の姿勢で息も絶え絶え。
もう戦うだけの気力も体力もないだろう。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
婚約破棄され、聖女を騙った罪で国外追放されました。家族も同罪だから家も取り潰すと言われたので、領民と一緒に国から出ていきます。
SHEILA
ファンタジー
ベイリンガル侯爵家唯一の姫として生まれたエレノア・ベイリンガルは、前世の記憶を持つ転生者で、侯爵領はエレノアの転生知識チートで、とんでもないことになっていた。
そんなエレノアには、本人も家族も嫌々ながら、国から強制的に婚約を結ばされた婚約者がいた。
国内で領地を持つすべての貴族が王城に集まる「豊穣の宴」の席で、エレノアは婚約者である第一王子のゲイルに、異世界から転移してきた聖女との真実の愛を見つけたからと、婚約破棄を言い渡される。
ゲイルはエレノアを聖女を騙る詐欺師だと糾弾し、エレノアには国外追放を、ベイリンガル侯爵家にはお家取り潰しを言い渡した。
お読みいただき、ありがとうございます。
最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
羽海汐遠
ファンタジー
最強の魔王ソフィが支配するアレルバレルの地。
彼はこの地で数千年に渡り統治を続けてきたが、圧政だと言い張る勇者マリスたちが立ち上がり、魔王城に攻め込んでくる。
残すは魔王ソフィのみとなった事で勇者たちは勝利を確信するが、肝心の魔王ソフィに全く歯が立たず、片手であっさりと勇者たちはやられてしまう。そんな中で勇者パーティの一人、賢者リルトマーカが取り出したマジックアイテムで、一度だけ奇跡を起こすと言われる『根源の玉』を使われて、魔王ソフィは異世界へと飛ばされてしまうのだった。
最強の魔王は新たな世界に降り立ち、冒険者ギルドに所属する。
そして最強の魔王は、この新たな世界でかつて諦めた願いを再び抱き始める。
彼の願いとはソフィ自身に敗北を与えられる程の強さを持つ至高の存在と出会い、そして全力で戦った上で可能であれば、その至高の相手に完膚なきまでに叩き潰された後に敵わないと思わせて欲しいという願いである。
人間を愛する優しき魔王は、その強さ故に孤独を感じる。
彼の願望である至高の存在に、果たして巡り合うことが出来るのだろうか。
『カクヨム』
2021.3『第六回カクヨムコンテスト』最終選考作品。
2024.3『MFブックス10周年記念小説コンテスト』最終選考作品。
『小説家になろう』
2024.9『累計PV1800万回』達成作品。
※出来るだけ、毎日投稿を心掛けています。
小説家になろう様 https://ncode.syosetu.com/n4450fx/
カクヨム様 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896551796
ノベルバ様 https://novelba.com/indies/works/932709
ノベルアッププラス様 https://novelup.plus/story/998963655
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。
碧
児童書・童話
異世界転生したものの、チートもなければ、転生特典も特になし。チート無双も冒険もしないけど、現代知識を活かしてマイペースに生きていくゆるふわ少年の日常系ストーリー。テンプレっぽくマヨネーズとか作ってみたり、書類改革や雑貨の作成、はてにはデトックス効果で治療不可の傷を癒したり……。チートもないが自重もない!料理に生産、人助け、溺愛気味の家族や可愛い婚約者らに囲まれて今日も自由に過ごします。ゆるふわ癒し系異世界ファンタジーここに開幕!【第2回きずな児童書大賞・読者賞を頂戴しました】 読んでくださった皆様のおかげです、ありがとうございました!
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる