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エルフの国
PHASE-1054【派閥構図】
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そういえば、この国を見て回る前にシャルナを誘ったけど、その時、母親と姉に会うって言ってたな。
目の前のおしとやか美人がシャルナの姉ちゃんか。
「姉様――じゃないでしょ。ここまではまだ許されるけど、この先ではその呼び方は禁止でお願いしますよ。シャルナさん」
「ああそうだった。じゃない。そうでしたリンファ様。あの母様――じゃなかったカミーユ様もいらっしゃるんですか?」
「奥の間で準備をしています」
俺達の歓迎の準備をしてくれているという。そこでシャルナの母親とも会えそうだな。
「リンファ殿」
姉妹の再会を邪魔するのはポルパロング。
ベルの対応の失礼さは目に余るので、ここより先には入れるべきではないと発言。
事の発端は自分たちだろうに。
蛇さんもそれを認めていたのに、ここでまた蒸し返すとか馬鹿なヤツだ。
「シッタージュ様の発言に問題があったことが原因であると、扉向こうでは判断いたしました」
「いやしかしですな」
「シッタージュ様、判断いたしたのは私ではありません。ご理解いただけますね」
「ぬぅ……」
キッと目に力を入れてシャルナのお姉さんが言えば、押し黙ってしまう。
流石は勝ち気なシャルナのお姉さんだな。目力が強かった。
で、発言に出て来る判断した人物はポルパロングを黙らせるだけの人物。
この先にそれが出来るのは一人しかいないよな。
「トール様。よくぞお越しくださいました」
ポルパロングの時とは違い、柔らかい笑みを向けてくれるシャルナのお姉さん――リンファさん。
本当、シャルナもおしとやかになればこんな風になるんだろうにな。
「なにこっち見てんのよ! 比べないでよ!」
俺が見比べているのを即理解して直ぐにムキになる。この性格じゃあお姉さんみたいにはなれないな。
「まったく……。いつも妹がご迷惑をかけているようですね」
おお、ルミナングスさんの娘さんだというのが分かる。
親父さんと初めて会った時も同じような事を言っていたからな。
「いえ、ミルド領では死にかけたところを救ってもらいました」
「まあ!」
急にお姉さんが驚くから俺も驚くよ。
おしとやかさから真逆の驚きようだったからな。
やはり勇者ならば、危機に陥ることなく敵を簡単に倒すといったイメージなのだろうか?
もしそうなら期待に応えられないで申し訳ないね。
「とにかく妹さんには助けられてます」
「妹の活躍や勇者様個人のお話も聞きたいのですが、私以上に主がお会いしたいでしょうから、今度お時間があればゆっくりとお話し出来ることを願っております」
おしとやかさとは違って蠱惑な笑みを向けてこられ、心が奪われそうになってしまった。
妖艶さも兼ね添えてるんだな。
俺個人とか、今度お時間があればゆっくりとかその表情で言われるとエロい事しか思い浮かばないですよ。
――おっといかん。表情豊かな美人に見惚れている場合じゃないな。
俺に会いたいというエルフ王をこれ以上待たせるのも失礼というものだ。
何よりここで見惚れ続けたらベルやゲッコーさんに怒られる。
――リンファさんを先頭に、俺達も扉の向こう側へと足を進める。
納得がいかないのか、横を歩くポルパロングはこちらを睨んでくるが、小者の睨みなんて意にも介してやらない。
ベルに凄まれてヘタレた後にそんな睨みをされても滑稽でしかないよ。
何となくだけどカリオネルと同じニオイがする。
カリオネルと違って少しばかり頭は良いんだろうけど。
――謁見の間へと通される。
ここで遅れてやってきた氏族の二人が合流。
この後の奥の間での準備指示で遅れたという事だった。
俺に挨拶をしてくる表情はポルパロング達とは違って自然な笑みだった。
でも、直ぐに蛇さんのところに合流するあたり、やっぱり蛇さんサイドなのかな。
この二人をいれて氏族は揃ったようだ。
六氏族ってことか。
でも人数が増えれば圧迫感を覚える。
謁見の間はそこまで広くない。
王都や公都、エンドリュー候の所と比較すると狭い。
広さにして十畳くらい。無駄なモノは置かないシンプルな作りからなっていた。
豪華な物といえば、廊下に敷いてあった絨毯がここでも使用されているというくらいだろう。
そして、豪華ではないが一番に目を引くのは眼前の簾だ。
大河ドラマなんかで天皇が座っているところと対面者を仕切るのに使用されているイメージがあるやつ。
「こういう場では御簾って言うんだ」
俺が分からない表情を浮かべれば直ぐにゲッコーさんが教えてくれるのには毎度、感謝してます。
御簾ってのは分からなかったが、その御簾の奥にはまだ誰もいないのは分かる。
「しばらくお待ちください」
リンファさんに言われるままにその場で待つ。
氏族の面々は御簾を中心に両サイドに並び、俺達は挟まれるように中央で待機。
――しばらくすれば、
「随分と小さい影だの」
「ギムロンより小さいな」
小声でやり取りをする中で、御簾の向こう側では小柄な人影が動いているのが見えた。
続いて大人の背格好の人影も現れる。
「いくら早く会いたいからといって私より先に行くものがあるか」
「申し訳ありません」
ってやり取りが御簾の向こう側から聞こえてきた。
「なんかしまらんの」
「だな」
ここでも小声でやり取り。
エルフさん達は耳がいいから細心の注意をしつつギムロンと語る。
どんな王様が現れるかと思ったけども、やりとりにこっちの緊張は解ける。
「お待たせして申し訳ない」
「いえ、てっきりこちらが待たせているものかと」
「いやなに、少し扉向こうの話が長かったようなので休憩をいれていたのだ」
「本当に申し訳ありません」
「いやいや、会話の内容からしてこちら側に問題があった」
と言えば、御簾の向こう側で頭を下げているのが分かる。
ポルパロングを見れば色白の肌が蒼白に変わっていた。
自分の主に頭を下げさせているってことだろうからね。
「ですが王よ!」
蒼白になりつつも固唾を呑んでから異議申し立て。
でも却下される。
却下されれば黙りこくるけども、決してエルフ王に言われたから黙ったのではなく、自分の横に立つ蛇さんに制されたので黙ったといったところだった。
派閥による力関係が窺える。
両サイドに立つ氏族は片方ではルミナングスさんだけがボッチ。
もう片方では蛇さん、ポルパロング、然り然りのイエスマンと遅れてきた二人が同じ列に並んでいる。
唯一ルミナングスさんの援軍といった形で、リンファさんがルミナングスさんの列側に立っているってところか。
目の前のおしとやか美人がシャルナの姉ちゃんか。
「姉様――じゃないでしょ。ここまではまだ許されるけど、この先ではその呼び方は禁止でお願いしますよ。シャルナさん」
「ああそうだった。じゃない。そうでしたリンファ様。あの母様――じゃなかったカミーユ様もいらっしゃるんですか?」
「奥の間で準備をしています」
俺達の歓迎の準備をしてくれているという。そこでシャルナの母親とも会えそうだな。
「リンファ殿」
姉妹の再会を邪魔するのはポルパロング。
ベルの対応の失礼さは目に余るので、ここより先には入れるべきではないと発言。
事の発端は自分たちだろうに。
蛇さんもそれを認めていたのに、ここでまた蒸し返すとか馬鹿なヤツだ。
「シッタージュ様の発言に問題があったことが原因であると、扉向こうでは判断いたしました」
「いやしかしですな」
「シッタージュ様、判断いたしたのは私ではありません。ご理解いただけますね」
「ぬぅ……」
キッと目に力を入れてシャルナのお姉さんが言えば、押し黙ってしまう。
流石は勝ち気なシャルナのお姉さんだな。目力が強かった。
で、発言に出て来る判断した人物はポルパロングを黙らせるだけの人物。
この先にそれが出来るのは一人しかいないよな。
「トール様。よくぞお越しくださいました」
ポルパロングの時とは違い、柔らかい笑みを向けてくれるシャルナのお姉さん――リンファさん。
本当、シャルナもおしとやかになればこんな風になるんだろうにな。
「なにこっち見てんのよ! 比べないでよ!」
俺が見比べているのを即理解して直ぐにムキになる。この性格じゃあお姉さんみたいにはなれないな。
「まったく……。いつも妹がご迷惑をかけているようですね」
おお、ルミナングスさんの娘さんだというのが分かる。
親父さんと初めて会った時も同じような事を言っていたからな。
「いえ、ミルド領では死にかけたところを救ってもらいました」
「まあ!」
急にお姉さんが驚くから俺も驚くよ。
おしとやかさから真逆の驚きようだったからな。
やはり勇者ならば、危機に陥ることなく敵を簡単に倒すといったイメージなのだろうか?
もしそうなら期待に応えられないで申し訳ないね。
「とにかく妹さんには助けられてます」
「妹の活躍や勇者様個人のお話も聞きたいのですが、私以上に主がお会いしたいでしょうから、今度お時間があればゆっくりとお話し出来ることを願っております」
おしとやかさとは違って蠱惑な笑みを向けてこられ、心が奪われそうになってしまった。
妖艶さも兼ね添えてるんだな。
俺個人とか、今度お時間があればゆっくりとかその表情で言われるとエロい事しか思い浮かばないですよ。
――おっといかん。表情豊かな美人に見惚れている場合じゃないな。
俺に会いたいというエルフ王をこれ以上待たせるのも失礼というものだ。
何よりここで見惚れ続けたらベルやゲッコーさんに怒られる。
――リンファさんを先頭に、俺達も扉の向こう側へと足を進める。
納得がいかないのか、横を歩くポルパロングはこちらを睨んでくるが、小者の睨みなんて意にも介してやらない。
ベルに凄まれてヘタレた後にそんな睨みをされても滑稽でしかないよ。
何となくだけどカリオネルと同じニオイがする。
カリオネルと違って少しばかり頭は良いんだろうけど。
――謁見の間へと通される。
ここで遅れてやってきた氏族の二人が合流。
この後の奥の間での準備指示で遅れたという事だった。
俺に挨拶をしてくる表情はポルパロング達とは違って自然な笑みだった。
でも、直ぐに蛇さんのところに合流するあたり、やっぱり蛇さんサイドなのかな。
この二人をいれて氏族は揃ったようだ。
六氏族ってことか。
でも人数が増えれば圧迫感を覚える。
謁見の間はそこまで広くない。
王都や公都、エンドリュー候の所と比較すると狭い。
広さにして十畳くらい。無駄なモノは置かないシンプルな作りからなっていた。
豪華な物といえば、廊下に敷いてあった絨毯がここでも使用されているというくらいだろう。
そして、豪華ではないが一番に目を引くのは眼前の簾だ。
大河ドラマなんかで天皇が座っているところと対面者を仕切るのに使用されているイメージがあるやつ。
「こういう場では御簾って言うんだ」
俺が分からない表情を浮かべれば直ぐにゲッコーさんが教えてくれるのには毎度、感謝してます。
御簾ってのは分からなかったが、その御簾の奥にはまだ誰もいないのは分かる。
「しばらくお待ちください」
リンファさんに言われるままにその場で待つ。
氏族の面々は御簾を中心に両サイドに並び、俺達は挟まれるように中央で待機。
――しばらくすれば、
「随分と小さい影だの」
「ギムロンより小さいな」
小声でやり取りをする中で、御簾の向こう側では小柄な人影が動いているのが見えた。
続いて大人の背格好の人影も現れる。
「いくら早く会いたいからといって私より先に行くものがあるか」
「申し訳ありません」
ってやり取りが御簾の向こう側から聞こえてきた。
「なんかしまらんの」
「だな」
ここでも小声でやり取り。
エルフさん達は耳がいいから細心の注意をしつつギムロンと語る。
どんな王様が現れるかと思ったけども、やりとりにこっちの緊張は解ける。
「お待たせして申し訳ない」
「いえ、てっきりこちらが待たせているものかと」
「いやなに、少し扉向こうの話が長かったようなので休憩をいれていたのだ」
「本当に申し訳ありません」
「いやいや、会話の内容からしてこちら側に問題があった」
と言えば、御簾の向こう側で頭を下げているのが分かる。
ポルパロングを見れば色白の肌が蒼白に変わっていた。
自分の主に頭を下げさせているってことだろうからね。
「ですが王よ!」
蒼白になりつつも固唾を呑んでから異議申し立て。
でも却下される。
却下されれば黙りこくるけども、決してエルフ王に言われたから黙ったのではなく、自分の横に立つ蛇さんに制されたので黙ったといったところだった。
派閥による力関係が窺える。
両サイドに立つ氏族は片方ではルミナングスさんだけがボッチ。
もう片方では蛇さん、ポルパロング、然り然りのイエスマンと遅れてきた二人が同じ列に並んでいる。
唯一ルミナングスさんの援軍といった形で、リンファさんがルミナングスさんの列側に立っているってところか。
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