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エルフの国
PHASE-1052【役者が違う】
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「本当に勇者殿がこの国においでになったとは。なんと素晴らしい」
俺へと恭しく頭を下げるのは、この国では見慣れたもの。
「よくぞおいでくださいました。プロマミナス・カトゼンカと申します」
体を起こし、継いでの自己紹介を行えば再び頭を下げてくる。
基本、この人物はあまり表舞台には出ないそうで、こうやって王に呼ばれるまでは自宅にて政務をこなしていたという。
「ご丁寧に有り難うございます。遠坂 亨といいます」
「聞いていたとおりですね。独特なお名前ですな」
「でしょうね」
「これは、不興を買いましたかな?」
「いえ、まったく」
挨拶の後に一歩下がればそう思われてしまうか。
シャルナが不機嫌になっているので少し警戒しているだけですよ。
笑顔を貼り付けつつ返しながらも、内心ではそう思っている。
「シャルナもようやく帰ってきたのだね」
「ええ、どうも」
素っ気なく返せばプロマミナス氏は肩を竦めてみせる。
その奥ではルミナングスさんが胃の部分を擦っていた。
で、俺と目が合えば話を盛り上げようとするように、
「トール殿、そちらのカトゼンカ殿は我ら氏族――ヴァンヤールの筆頭です」
「おお。なるほど」
それを耳にすれば警戒は更に強いものになりますよ。
要はこの筆頭と他の氏族が王派閥と対立しているわけで、対立派閥の親玉みたいなもんなんだろうからな。
こちらを笑顔で見てくる顔は蛇を想像させる。
長身痩躯の身長は二メートルを超えている。
ゲッコーさんよりもたっぱはあるが、細い体だからか余計に蛇を連想させる。
「一見、勇者とは思えない風貌ですな」
「然り、然り」
なんか凄くムカつくことを言われたな。
聞き慣れてはいるが、挨拶もなく開口一番で言われるとムカつくし、何より語調が陰湿だ。
背後からの声に肩越しで見れば、これまた男前な二人が立っている。
ネチネチとした陰湿な言い様と顔がまったくもってマッチしていないな。
「そういった発言はやめましょうお二人とも。才能ある者は一見すれば愚者にも見える者です。そういった立ち回りをしているのですよね?」
「……ええ、まあ」
正面にいる蛇の方がよっぽど失礼な発言だよな。いま正に不興を買ったところだよ!
思いっきりぶっ飛ばして、衝撃で細目を見開かせたくなったよ。
遠回しに小馬鹿にするタイプなんだろう。そらシャルナも不機嫌になるわな。
「先ほどは我が部下達がご迷惑をおかけしたようで。申し訳ありませんね」
「とてもそうは思っていないようですがね」
その発言で陰湿のイケメンが誰なのか分かった。
こいつがポルパロングってやつか。
装身具が好きなのか、ネックレスやら指輪やらをゴテゴテとつけている。
物で着飾らないと自分を大きく見せられないタイプかな?
「ええ建前です。ですが当然でしょう。もし我が部下が危険にさらされていたらどう責任を取ったのです?」
「然り、然り」
横のヤツは然り然りとしか言えんのかな。
「何とも脆弱な発言で」
「なんと!?」
横からベルが口を出せばポルパロングがギロリと睨む。
でも直ぐに表情がやわらいだ――というよりいやらしい笑みに変わる。
美形のエルフであってもベルの美しさには魅了されるようだ。
「戦う覚悟のない者を警邏などの役職に就かせるのはどうなのでしょうね」
「私が言いたいのは、無駄なことで部下が危険な目に遭うのが嫌なだけですよ」
言いながらベルへと近づく。
下心が丸見えな表情に対し、
「シャァァァァ――!」
ベルに抱っこされたミユキが鬣を逆立てて威嚇。
接近は許さないといったところ。
いいぞミユキ。
「な、なんとも不思議な生き物をお飼いになっている」
「失礼。この子は醜い欲に染まった者を毛嫌いするので」
「うんん……言ってくれます――な!」
おっと、余裕を見せて切り返そうとはしてみたけども、はらわたの煮えくり加減は既にグツグツだったのか、我慢できずに声が不快感で震えているぞ。
沸点低いぞ短気のポルパロング。
長命な割に精神面がまったく育っていませんね~。
「部下のことを思うのは素晴らしいとは思いますが、それと同等、もしくはそれ以上に民のことを思うのが上に立つ者の器というものでしょう」
「美姫殿はこの国に来て日が浅いので分かっていないだけでしょう。人間と我らエルフとでの価値観を一緒として話せば恥を掻きますよ」
余裕を見せて自分が優位な位置にいることを誇示しようとしているようだけども、
「価値観の相違というものはあって当然ですが、上に立つ者が民の為に動けないような価値観に同調するくらいならば――恥を掻いた方が至福の極み」
「なに! おぉ……」
ベルお得意の嘲笑。
嘲笑といえばリンの十八番だが、そのリンですら恐れるのがベルだからね。
一応は敬語を使用しているけども、美女の侮蔑による笑みは気位の高いポルパロングには抜群だったようで、精神に大きなダメージを被った模様。
足を一歩後退させたのがいい証拠。一歩ですませたことは評価してやろう。
だがやはり強者の佇まいというのは見ていて小気味がいい。
ベル以外のパーティーメンバーを見れば笑みで返してくれる。
心の中で俺同様にサムズアップしていることだろう。
俺へと恭しく頭を下げるのは、この国では見慣れたもの。
「よくぞおいでくださいました。プロマミナス・カトゼンカと申します」
体を起こし、継いでの自己紹介を行えば再び頭を下げてくる。
基本、この人物はあまり表舞台には出ないそうで、こうやって王に呼ばれるまでは自宅にて政務をこなしていたという。
「ご丁寧に有り難うございます。遠坂 亨といいます」
「聞いていたとおりですね。独特なお名前ですな」
「でしょうね」
「これは、不興を買いましたかな?」
「いえ、まったく」
挨拶の後に一歩下がればそう思われてしまうか。
シャルナが不機嫌になっているので少し警戒しているだけですよ。
笑顔を貼り付けつつ返しながらも、内心ではそう思っている。
「シャルナもようやく帰ってきたのだね」
「ええ、どうも」
素っ気なく返せばプロマミナス氏は肩を竦めてみせる。
その奥ではルミナングスさんが胃の部分を擦っていた。
で、俺と目が合えば話を盛り上げようとするように、
「トール殿、そちらのカトゼンカ殿は我ら氏族――ヴァンヤールの筆頭です」
「おお。なるほど」
それを耳にすれば警戒は更に強いものになりますよ。
要はこの筆頭と他の氏族が王派閥と対立しているわけで、対立派閥の親玉みたいなもんなんだろうからな。
こちらを笑顔で見てくる顔は蛇を想像させる。
長身痩躯の身長は二メートルを超えている。
ゲッコーさんよりもたっぱはあるが、細い体だからか余計に蛇を連想させる。
「一見、勇者とは思えない風貌ですな」
「然り、然り」
なんか凄くムカつくことを言われたな。
聞き慣れてはいるが、挨拶もなく開口一番で言われるとムカつくし、何より語調が陰湿だ。
背後からの声に肩越しで見れば、これまた男前な二人が立っている。
ネチネチとした陰湿な言い様と顔がまったくもってマッチしていないな。
「そういった発言はやめましょうお二人とも。才能ある者は一見すれば愚者にも見える者です。そういった立ち回りをしているのですよね?」
「……ええ、まあ」
正面にいる蛇の方がよっぽど失礼な発言だよな。いま正に不興を買ったところだよ!
思いっきりぶっ飛ばして、衝撃で細目を見開かせたくなったよ。
遠回しに小馬鹿にするタイプなんだろう。そらシャルナも不機嫌になるわな。
「先ほどは我が部下達がご迷惑をおかけしたようで。申し訳ありませんね」
「とてもそうは思っていないようですがね」
その発言で陰湿のイケメンが誰なのか分かった。
こいつがポルパロングってやつか。
装身具が好きなのか、ネックレスやら指輪やらをゴテゴテとつけている。
物で着飾らないと自分を大きく見せられないタイプかな?
「ええ建前です。ですが当然でしょう。もし我が部下が危険にさらされていたらどう責任を取ったのです?」
「然り、然り」
横のヤツは然り然りとしか言えんのかな。
「何とも脆弱な発言で」
「なんと!?」
横からベルが口を出せばポルパロングがギロリと睨む。
でも直ぐに表情がやわらいだ――というよりいやらしい笑みに変わる。
美形のエルフであってもベルの美しさには魅了されるようだ。
「戦う覚悟のない者を警邏などの役職に就かせるのはどうなのでしょうね」
「私が言いたいのは、無駄なことで部下が危険な目に遭うのが嫌なだけですよ」
言いながらベルへと近づく。
下心が丸見えな表情に対し、
「シャァァァァ――!」
ベルに抱っこされたミユキが鬣を逆立てて威嚇。
接近は許さないといったところ。
いいぞミユキ。
「な、なんとも不思議な生き物をお飼いになっている」
「失礼。この子は醜い欲に染まった者を毛嫌いするので」
「うんん……言ってくれます――な!」
おっと、余裕を見せて切り返そうとはしてみたけども、はらわたの煮えくり加減は既にグツグツだったのか、我慢できずに声が不快感で震えているぞ。
沸点低いぞ短気のポルパロング。
長命な割に精神面がまったく育っていませんね~。
「部下のことを思うのは素晴らしいとは思いますが、それと同等、もしくはそれ以上に民のことを思うのが上に立つ者の器というものでしょう」
「美姫殿はこの国に来て日が浅いので分かっていないだけでしょう。人間と我らエルフとでの価値観を一緒として話せば恥を掻きますよ」
余裕を見せて自分が優位な位置にいることを誇示しようとしているようだけども、
「価値観の相違というものはあって当然ですが、上に立つ者が民の為に動けないような価値観に同調するくらいならば――恥を掻いた方が至福の極み」
「なに! おぉ……」
ベルお得意の嘲笑。
嘲笑といえばリンの十八番だが、そのリンですら恐れるのがベルだからね。
一応は敬語を使用しているけども、美女の侮蔑による笑みは気位の高いポルパロングには抜群だったようで、精神に大きなダメージを被った模様。
足を一歩後退させたのがいい証拠。一歩ですませたことは評価してやろう。
だがやはり強者の佇まいというのは見ていて小気味がいい。
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