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エルフの国

PHASE-1048【がっかり】

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 ――――。

「にしても随分とギラついとったの」

「だな。それだけこの国の階級制度に不満があるんだろうね」
 自尊心が高いからな。人間以上に階級には不満を持つんだろう。
 お互いの自尊心ソレが原因で、三千年前には騒乱に発展したわけだし。
 でも、新たに設けられた現階級であるウーマンヤールに落とされることで、ダークエルフ達は死による処刑を免れたのも事実。
 
 処刑は免れてもあの生活。
 時代が下れば不満はいずれ――、

「爆発せんといいがの」
 代弁するようにギムロン。

「爆発はそんな先ではないでしょうね」

「怖いことを言うなよコクリコ……」
 冗談じゃねえぞ。俺が訪れたら何かが起こるなんてのはなしにしてもらいたい。
 探偵漫画の主人公たちのような、フラグ一級建築士なんかには絶対になりたくないからな――――。

「ここだね」

「はい。有り難うございます」
 サルタナ君の村にはすんなりとお邪魔することが出来た。
 敵意というものも感じる事はない。
 客人が訪れるのは稀なのか、物珍しさから衆目は集まるけどその程度の視線だ。
 俺が勇者だってのはここではそんなに伝わっていないようで、騒ぎにはならない。
 中央だけが騒がしいようだな。
 でも騒がしくもある。
 理由はもちろん、サルタナ君が無事だったことに村の方々が安堵している声。

 そんな優しい方々と会釈を交わしつつ、通り過ぎる方々の耳を見れば、殆どが短めの長耳。
 ここは主にハーフエルフの方々が生活を営むククリス村。

 樹上生活ではなく、人間なんかと一緒で地面に家を建てての生活のようだ。
 共同生活というような感じの木造の長屋からなっている。
 ここだけ江戸時代にタイムスリップしたかのようだった。
 一つの井戸を皆で共有し、食料も共有。皆で助け合って生活を営んでいるそうだ。

 ハイエルフ、エルフやダークエルフの面々と違って髪の色や肌の色は多彩なもの。
 エルフという種族より、肌や髪は人間に近いから親近感が湧くね。

「ここが僕の家です」
 と、土道を進み集合住宅のドアの一つの前でサルタナ君が立ち止まれば、

「サルタナ!」
 バンッ! と、勢いよくドアが開く。
 そこから綺麗な女性が飛び出してきた。
 セミロングの金髪に碧眼。ハーフエルフではなくエルフの女性だろう。
 そんなエルフの女性が飛び出してくる時の動きには違和感があった。

「お母さん」
 お、そうか。
 もう驚かない。
 人間の目で見たら二十代の美人さんにしか見えないが、お母さん、
 人間だって二十代で母親もいれば、十代でもいるからね。
 にしても若いな。ビックリだよ。
 ――……さっそく驚いてるな俺……。

「集落までのはずだったでしょ! 村の皆も心配してくれたのよ。ファロンド様の部下であるルーシャンナル様が来てくださって無事を教えてくださったの」

「ごめなさい。薬草を採ってたんだけど……」

「そんな事しなくてもいいのよ……」
 飛び出してドアから出てきた時の違和感はびっこを引いていたからか。
 おかしいな。

「あの、ルーシャンナルさんが来てくれたんですよね?」

「申し訳ありません勇者様。話は伺いました。息子を救ってくださった方にお礼も言わずに」

「いえ、いいんですよ。それよりも――」

「はい。ルーシャンナル様です」

「そうですか」
 ふむん。お母さんがびっこ引く姿を見ているはずだろう。
 魔法が使用できるルーシャンナルさんなら治してやればいいのに。
 あの人の事だから何かしら理由があったのかもしれないけど。
 急いで各所に報告をするためとかかな? ルミナングスさんだけだと大変だから。
 いやでも他にも部下がいるしな。
 それに回復なんて直ぐすむだろうし。
 なんかがっかりだな。 

 そもそもがウーマンヤールだけでなく、民階級であるテレリも魔法を使用する事が許されないってのが問題だよな。
 反乱を起こさないためってことらしいけど、やりすぎだろう。
 民がいるから国家が成り立つのに。
 それに騒乱が起こった時、テレリは王族や氏族の味方だったのにな。
 
 呪印で魔法を禁じたのなら、その分、民の為に回復魔法やら回復アイテムの供給くらいしてやればいいだろう。

「なんか俺が思っているエルフとは違うな」

「目の前の親子の事じゃないなら同意しますよ」

「同意してくれ」

「分かりました」
 なんてコクリコと交わす会話は呆れ混じり。
 俺達の間に立つギムロンもブスッとしている。
 どうも上にいる大半のエルフは、シャルナみたいなオープンな性格ではないようだ。
 そりゃシャルナも外の世界に出るわな。

「では早速――トール」

「お前は爺様にポーションを大量にもらっているのにここで使わないとか、階級の高いエルフ達みたいだな。同意したよな」

「わ、私は使わないとは言ってませんよ!」
 焦ってんじゃねえか。
 俺のハイポーションを使わせようとしてたんだろ。

「まあ、ここはロードウィザードである私のハイポーションで」

「なんか渋った感じの声音じゃな」

「そんな分けないでしょう! 私は豪気なる存在」

「まったく伝わってこんわい」
 ギムロンの嘲笑。
 干し肉の代金をギムロンからはしっかりと徴収していたからな。
 その当人に言われれば、ぐぬぬ……。でしか返せない、なんちゃってウィザード様なのだった。
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