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エルフの国
PHASE-1034【ブロッコリーに屋敷】
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「ロマネスコ――な」
ゲッコーさんが訂正してくるけども、
「ドリルブロッコリー!」
テンションのままに俺が大声で返せば、
「ああ、まあ。それでいい」
「ドリルブロッコリー!!」
ドリルはロマン。漢字で浪漫。
凄いぞこの巨大なドリルブロッコリー。
巨木というレベルではない。
物語なんかに出て来る世界樹的なものが現実に存在するなら、正に目の前のドリルブロッコリーがそうなんじゃないだろうか。
なんたって一本の巨木が城になっているんだからな。
というか、木なのだろうか?
どう見てもドリルブロッコリーだから、もしかして野菜なのでは?
茹でたりすると食べられるのでは?
「あの城って食べることとか出来ます?」
「はい?」
ルミナングスさんの頭の上に、疑問符が浮かんだのを幻視する。
とんでもなく馬鹿な質問をしてしまった。
口を開いた直後に即後悔していた俺……。
大人であるルミナングスさんは笑みを湛えるだけ。俺の話は無かったかのようにスルーしてくれると、
「愛馬たちはこちらでお預かりします」
と、城の側に設けられた馬小屋で、ダイフクと爺様の馬車を預かってくれる。
JLTVをプレイギアへと戻せば、エルフさん達は不可思議な力を使用すると言いつつ、俺を見ていた。
長い時を過ごすエルフさん達から見ても、俺の力は異質なようだ。
反面、ルミナングスさんは残念そうな表情になっていた。
あれだな。初対面の時におもちゃ売り場の子供みたいな顔でJLTVを見ていたからな。
じっくりと後で見たかったんだろうね。
そんな思いを振り切るかのように顔を横に振った後、
「こちらよりお入りください」
幹と例えるべきか茎と例えるべきは分からないが、地面に接する部分に作られた門が開かれれば――、
「「ほえ~」」
開けた空間が飛び込んで来る。
ギムロンと一緒になって声を上げ、
「こりゃワシんとこの窟が恥ずかしくなってくるわい」
ギムロンが付け足す。
外観と内装ではまったくの別物。
外観は植物然とした超巨大な一つの植物だけども、内装は鮮麗されたものだった。
床は正方形に切り取られた黒光りする鉱石が敷石として使用されており、下を向けば鏡のように自分の顔が映るほどだ。
「チッ」
顔が映った次には、俺は小さく舌打ちをする。
うちの女性陣の足元をチラ見。
でも誰もスカートをはいていなかった事を思い出して、心底で悔しがってしまった。
「本日は我が屋敷でおくつろぎください。王は勇者殿御一行とは明日会うと仰っておりました。本日はゆっくりと休んでいただきたいそうです」
と、ルミナングスさん。
「ありがとうございます」
別段、疲れているわけでもないから今からでもいいんだけども、王様となると何かと忙しいだろうからね。
今日は俺達に時間を割く余裕がないというのが本音かもしれないね。
ご厚意として受け取ろう。
――現在、地面と同じ高さの床を歩く俺達。
艶のある敷石の上をしばらく歩けば、いよいよエルフさん達の生活の拠点となる樹上の方へと移動することになる。
その為の階層移動に使用されるのが――、
「エレベーターなんだな」
ブルホーン山の闘技場では、合成獣を地下から地上へと上げるものがあったけど、ここのは人力ではなく魔法によるものだという。
エルフといえば風とばかりに、風魔法を利用した昇降機なのだそうだ。
防御壁を覆い隠す霧に昇降機。魔法を上手く組み込んで活用するのがエルフの叡智って事だろう。
そう考えると、ミルド領の魔術学都市ネポリスも負けてはいないと身内贔屓。
いずれはアビゲイルさんにもこの地に足を運んでもらって、見聞を広めてもらいたいね。
「まあまあね」
リンが言えば勝者としての発言にも思えてしまう。
それくらいリンのとこの地下施設が立派だったってことだけど、まあまあねとか言いつつ、昇降機は採用させてもらうと続けていた。
壁に沿った螺旋状の階段を利用して、一番下まで移動したのを思い出したよ。
移動方法は参考させてもらうと思う辺り、自分の所の施設の欠点は素直に認めているようだ。
そもそもリンの場合はレビテーションが使えるし、働くスケルトン達もアンデッドだから階段の上り下りも苦にならないからな。
そういった理由で昇降機という発想に至らなかったのかもな。
俺達が乗れば蛇腹式扉が閉じられる。
昔のエレベーターってこんな扉だったんだよね。
レトロな扉って風情あるよな。
この世界だと先端だけど。
ふわりとした感覚を足元から感じとるのは何とも久しぶりだな。
生前を思い出す。
――今も生きてるけど。
蛇腹式扉の隙間から見える風景が変わっていく。
程なくすれば扉が開かれ、再び通路を歩く。
一階だけでなく、このドリルブロッコリーの内部の床は全て同じ敷石が使用されているようだ。
しばらく歩き開かれる扉は外へと続いていた。
道はそのままアーチ橋へと繋がっており、更にその先の終着点であるドリルブロッコリーを形成するフラクタル構造の一つへと続く。
「あれが私の屋敷です」
「ほうほう」
THE・ファンタジーですな。
まさかのフラクタル構造からなるものが屋敷だったとは。
いくつも存在する屋敷は、ハイエルフの者達が生活の場とするところだそうだ。
ここまでの道中で見たツリーハウスに住む下のエルフ達と比べるとかなりの差が見受けられる。
やはり階級社会なんだな――――。
ゲッコーさんが訂正してくるけども、
「ドリルブロッコリー!」
テンションのままに俺が大声で返せば、
「ああ、まあ。それでいい」
「ドリルブロッコリー!!」
ドリルはロマン。漢字で浪漫。
凄いぞこの巨大なドリルブロッコリー。
巨木というレベルではない。
物語なんかに出て来る世界樹的なものが現実に存在するなら、正に目の前のドリルブロッコリーがそうなんじゃないだろうか。
なんたって一本の巨木が城になっているんだからな。
というか、木なのだろうか?
どう見てもドリルブロッコリーだから、もしかして野菜なのでは?
茹でたりすると食べられるのでは?
「あの城って食べることとか出来ます?」
「はい?」
ルミナングスさんの頭の上に、疑問符が浮かんだのを幻視する。
とんでもなく馬鹿な質問をしてしまった。
口を開いた直後に即後悔していた俺……。
大人であるルミナングスさんは笑みを湛えるだけ。俺の話は無かったかのようにスルーしてくれると、
「愛馬たちはこちらでお預かりします」
と、城の側に設けられた馬小屋で、ダイフクと爺様の馬車を預かってくれる。
JLTVをプレイギアへと戻せば、エルフさん達は不可思議な力を使用すると言いつつ、俺を見ていた。
長い時を過ごすエルフさん達から見ても、俺の力は異質なようだ。
反面、ルミナングスさんは残念そうな表情になっていた。
あれだな。初対面の時におもちゃ売り場の子供みたいな顔でJLTVを見ていたからな。
じっくりと後で見たかったんだろうね。
そんな思いを振り切るかのように顔を横に振った後、
「こちらよりお入りください」
幹と例えるべきか茎と例えるべきは分からないが、地面に接する部分に作られた門が開かれれば――、
「「ほえ~」」
開けた空間が飛び込んで来る。
ギムロンと一緒になって声を上げ、
「こりゃワシんとこの窟が恥ずかしくなってくるわい」
ギムロンが付け足す。
外観と内装ではまったくの別物。
外観は植物然とした超巨大な一つの植物だけども、内装は鮮麗されたものだった。
床は正方形に切り取られた黒光りする鉱石が敷石として使用されており、下を向けば鏡のように自分の顔が映るほどだ。
「チッ」
顔が映った次には、俺は小さく舌打ちをする。
うちの女性陣の足元をチラ見。
でも誰もスカートをはいていなかった事を思い出して、心底で悔しがってしまった。
「本日は我が屋敷でおくつろぎください。王は勇者殿御一行とは明日会うと仰っておりました。本日はゆっくりと休んでいただきたいそうです」
と、ルミナングスさん。
「ありがとうございます」
別段、疲れているわけでもないから今からでもいいんだけども、王様となると何かと忙しいだろうからね。
今日は俺達に時間を割く余裕がないというのが本音かもしれないね。
ご厚意として受け取ろう。
――現在、地面と同じ高さの床を歩く俺達。
艶のある敷石の上をしばらく歩けば、いよいよエルフさん達の生活の拠点となる樹上の方へと移動することになる。
その為の階層移動に使用されるのが――、
「エレベーターなんだな」
ブルホーン山の闘技場では、合成獣を地下から地上へと上げるものがあったけど、ここのは人力ではなく魔法によるものだという。
エルフといえば風とばかりに、風魔法を利用した昇降機なのだそうだ。
防御壁を覆い隠す霧に昇降機。魔法を上手く組み込んで活用するのがエルフの叡智って事だろう。
そう考えると、ミルド領の魔術学都市ネポリスも負けてはいないと身内贔屓。
いずれはアビゲイルさんにもこの地に足を運んでもらって、見聞を広めてもらいたいね。
「まあまあね」
リンが言えば勝者としての発言にも思えてしまう。
それくらいリンのとこの地下施設が立派だったってことだけど、まあまあねとか言いつつ、昇降機は採用させてもらうと続けていた。
壁に沿った螺旋状の階段を利用して、一番下まで移動したのを思い出したよ。
移動方法は参考させてもらうと思う辺り、自分の所の施設の欠点は素直に認めているようだ。
そもそもリンの場合はレビテーションが使えるし、働くスケルトン達もアンデッドだから階段の上り下りも苦にならないからな。
そういった理由で昇降機という発想に至らなかったのかもな。
俺達が乗れば蛇腹式扉が閉じられる。
昔のエレベーターってこんな扉だったんだよね。
レトロな扉って風情あるよな。
この世界だと先端だけど。
ふわりとした感覚を足元から感じとるのは何とも久しぶりだな。
生前を思い出す。
――今も生きてるけど。
蛇腹式扉の隙間から見える風景が変わっていく。
程なくすれば扉が開かれ、再び通路を歩く。
一階だけでなく、このドリルブロッコリーの内部の床は全て同じ敷石が使用されているようだ。
しばらく歩き開かれる扉は外へと続いていた。
道はそのままアーチ橋へと繋がっており、更にその先の終着点であるドリルブロッコリーを形成するフラクタル構造の一つへと続く。
「あれが私の屋敷です」
「ほうほう」
THE・ファンタジーですな。
まさかのフラクタル構造からなるものが屋敷だったとは。
いくつも存在する屋敷は、ハイエルフの者達が生活の場とするところだそうだ。
ここまでの道中で見たツリーハウスに住む下のエルフ達と比べるとかなりの差が見受けられる。
やはり階級社会なんだな――――。
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