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ミルド領・閑話
PHASE-1017【泣きのオノマトペ】
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「見せてくれ。トールの成長を」
「あ、うん。でも……」
「まさかこれだけの面子の前で、ミルドの領主である公爵様が逃げるなんて選択はないよな?」
「まったくですよ。何たって傭兵団のトップに余裕で勝ったわけですからね。そもそも勇者が逃げるとか」
「だよな」
おっとゲッコーさんとコクリコ。茶々入れ組がなんとも悪い笑みで俺を見てくるね~。
頭にくるったらありゃしない。
「さあどっちに賭けますか? 無論、我らが領主様にですよね?」
コクリコォ!
なんて悪い奴だ!
何が悪いって、王都と違ってここの面子でベルの強さをしっかりと認識している者は少ない。
もちろん練度の高い面々だから、佇まいだけでベルが圧倒的な強者ってのは理解しているだろうし、ゴロ太をモチーフにした新公爵旗を馬鹿にした傭兵団も圧に当てられただけで押し黙り、後退りしたことから、その強さをしっかりと理解はしているはず。
だが――、強すぎる力というのは際限がない。
なので強さを見誤ったりもする。
ここにいる者達が想像している範囲内での強さで推し量っているとするなら、まだまだ見る力がないだろう。
ベルの強さというのは、遙か彼方の範囲外に存在するもの。
規格外であるベルの強さを推し量れる眼力を持っている者達は、この中では限られる。
ゲッコーさんやS級さん達くらいのもんだ。
リンも十分に強者ではあるが、際限のない強さを推し量れる眼力は持ち合わせていないのは確か。
分かっていたら、自分の根城である地下施設でベルと戦うなんて選択はしなかったはずだ。
よって、実力がリン以下の者達となれば、ベルの強さをしっかりと推し量れる者はいないと考えるのが妥当。
下手したら、俺がベルと良い勝負をする存在だと思っている連中もいるかもしれない。
そこを狙ってコクリコは大儲けをしようと画策しているようだ。
だからこそ、我らが領主様と発して兵達の忠誠心を刺激し、更に傭兵団には団長に勝利した男という発言で誘導し、俺にベットさせようとしている。
コクリコ……なんて恐ろしい子! こいつはマジョリカと違って、悪役令嬢になれる素養が十二分にある。
ダメ押しとばかりに爺様も賭けに参加させていた。
可愛い孫という殺し文句を使えば、爺様は当たり前のように俺にベット。
前公爵がそうするのならと、見定めていた兵達も俺へと次々にベットしていく。
コクリコの後ろに続くゲッコーさんは、どこから取り出したのか大きな麻袋を用意して、S級さん達と一緒になって賭け金を麻袋に入れていく。
傭兵たちも団長に勝利したんだからと、今はこっちに敗れて私物は没収されているが、後で支払うと言い、コクリコに賭け金を伝えれば、自伝用のメモ帳にその金額を記入。
傭兵団も俺へとベットしていた。
見事に自分の思い通りに事が運んだからだろう、メモ帳に記入しているコクリコの表情が、一瞬だったがもの凄く悪い笑みになったのを俺はしっかりとこの目で捉えた……。
しかもコイツ、パーティーメンバーとカイルやマイヤたちを賭けに参加させないという腹黒さ。
あいつ……いや、ゲッコーさんもか。あの二人、自分たちだけ大儲けしようとしてやがる。
二人して歪んだ笑い顔だ……。
――――全体がベットし終わった後に、しっかりと揃ってベルに賭ける辺り堅実だね。
でもさ……。俺の成長を願っているなら、そこは俺に賭けてもいいんじゃないの。特にゲッコーさん……。
「今日は俺の奢りだ!」
「「「「イィィィィハァァァァァァ!!!!」」」」
ドミヌスの言葉にバラクラバの面々は大喜び。
俺の成長よりも、晩の酒か……。
「腐ってやがる!」
「腐っていると思うのならば、コクリコとゲッコー殿の期待を大いに裏切ってやれ」
一応、木刀は構えるけどさ……。
どうやって裏切ればいいんでしょうかね……。ベルさん。
貴女を相手にしてどう裏切れと?
攻略不可能なムリゲーだよ……。
「では――いくぞ」
「………………ぴえん……」
「あ、うん。でも……」
「まさかこれだけの面子の前で、ミルドの領主である公爵様が逃げるなんて選択はないよな?」
「まったくですよ。何たって傭兵団のトップに余裕で勝ったわけですからね。そもそも勇者が逃げるとか」
「だよな」
おっとゲッコーさんとコクリコ。茶々入れ組がなんとも悪い笑みで俺を見てくるね~。
頭にくるったらありゃしない。
「さあどっちに賭けますか? 無論、我らが領主様にですよね?」
コクリコォ!
なんて悪い奴だ!
何が悪いって、王都と違ってここの面子でベルの強さをしっかりと認識している者は少ない。
もちろん練度の高い面々だから、佇まいだけでベルが圧倒的な強者ってのは理解しているだろうし、ゴロ太をモチーフにした新公爵旗を馬鹿にした傭兵団も圧に当てられただけで押し黙り、後退りしたことから、その強さをしっかりと理解はしているはず。
だが――、強すぎる力というのは際限がない。
なので強さを見誤ったりもする。
ここにいる者達が想像している範囲内での強さで推し量っているとするなら、まだまだ見る力がないだろう。
ベルの強さというのは、遙か彼方の範囲外に存在するもの。
規格外であるベルの強さを推し量れる眼力を持っている者達は、この中では限られる。
ゲッコーさんやS級さん達くらいのもんだ。
リンも十分に強者ではあるが、際限のない強さを推し量れる眼力は持ち合わせていないのは確か。
分かっていたら、自分の根城である地下施設でベルと戦うなんて選択はしなかったはずだ。
よって、実力がリン以下の者達となれば、ベルの強さをしっかりと推し量れる者はいないと考えるのが妥当。
下手したら、俺がベルと良い勝負をする存在だと思っている連中もいるかもしれない。
そこを狙ってコクリコは大儲けをしようと画策しているようだ。
だからこそ、我らが領主様と発して兵達の忠誠心を刺激し、更に傭兵団には団長に勝利した男という発言で誘導し、俺にベットさせようとしている。
コクリコ……なんて恐ろしい子! こいつはマジョリカと違って、悪役令嬢になれる素養が十二分にある。
ダメ押しとばかりに爺様も賭けに参加させていた。
可愛い孫という殺し文句を使えば、爺様は当たり前のように俺にベット。
前公爵がそうするのならと、見定めていた兵達も俺へと次々にベットしていく。
コクリコの後ろに続くゲッコーさんは、どこから取り出したのか大きな麻袋を用意して、S級さん達と一緒になって賭け金を麻袋に入れていく。
傭兵たちも団長に勝利したんだからと、今はこっちに敗れて私物は没収されているが、後で支払うと言い、コクリコに賭け金を伝えれば、自伝用のメモ帳にその金額を記入。
傭兵団も俺へとベットしていた。
見事に自分の思い通りに事が運んだからだろう、メモ帳に記入しているコクリコの表情が、一瞬だったがもの凄く悪い笑みになったのを俺はしっかりとこの目で捉えた……。
しかもコイツ、パーティーメンバーとカイルやマイヤたちを賭けに参加させないという腹黒さ。
あいつ……いや、ゲッコーさんもか。あの二人、自分たちだけ大儲けしようとしてやがる。
二人して歪んだ笑い顔だ……。
――――全体がベットし終わった後に、しっかりと揃ってベルに賭ける辺り堅実だね。
でもさ……。俺の成長を願っているなら、そこは俺に賭けてもいいんじゃないの。特にゲッコーさん……。
「今日は俺の奢りだ!」
「「「「イィィィィハァァァァァァ!!!!」」」」
ドミヌスの言葉にバラクラバの面々は大喜び。
俺の成長よりも、晩の酒か……。
「腐ってやがる!」
「腐っていると思うのならば、コクリコとゲッコー殿の期待を大いに裏切ってやれ」
一応、木刀は構えるけどさ……。
どうやって裏切ればいいんでしょうかね……。ベルさん。
貴女を相手にしてどう裏切れと?
攻略不可能なムリゲーだよ……。
「では――いくぞ」
「………………ぴえん……」
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