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ミルド領
PHASE-944【無駄足……か】
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頭をさすりつつも、右手に持ったワンドを構えながら早速、先頭に立とうとするコクリコに対し、
「安心してください。ここにはモンスターなどおりませんよ」
と、防御壁に守られた都市内側でそんな脅威はないとアビゲイルさん。
先頭に立とうとするコクリコよりも更に前に立ち、
「こちらです」
と、自ら雑木林の中に入っていき俺達を案内してくれる。
下生えを踏み、枝を払いながら進んで行く。
「――お!」
視界が開ける。
「これは公爵様」
と、ケトルハットタイプの鉄兜を被った兵達が俺の前で跪こうとする。
「いいよそんなことしないで。別の貴族にはしないといけないだろうけど、俺にはしなくていいよ」
格式張った挨拶はいいと都市の兵士に伝えれば、困惑しつつも所作を中断して一礼による簡単な挨拶に変更する。
俺達がここへと来ると伝えていたこともあり、問題が起こらないように周辺を前日より見張ってくれていたそうだ。
素晴らしいね。男爵のとこのククナルでは現着が遅かったりして残念な兵士も目立ったけど、ここの面子はしっかりとしてくれているね。
鎧も乱れなく装備しているし、複数のツーマンセルで編制された立哨は周囲に目を光らせての警戒。
その姿は頼りになるものだ。
「俺達がここに来ると伝えてから、ここへ入った者たちはいるかい?」
「いえ、おりません。この廃墟の見張りは前日からでしたが、それ以前から雑木林の外周にて見張りはしておりました。唯一来られたのは目出し帽を被った公爵様の従者の方々だけです」
なるほど。
しっかりと見張ってくれて助かると労えば、喜んでくれる。
公爵からの労いは兵士たちにとっては誉れのようだ。
そういった立ち位置なんだな。俺。
しっかりと励んでくれる兵士たちに恥じないように行動しないとな。
「じゃあお邪魔しますかね」
言えばここでもアビゲイルさんが案内をしてくれる。
コンクリートによる白亜の建物――だったモノ。
それの成れの果て。諸行無常という四字熟語が頭に浮かぶ。
爆発により大きく損壊し、残った部分も蔦や植物が絡みついている。
所詮、人工物など自然の力の前では容易く呑み込まれていくという摂理を見せられているようだ。
――内部へと入れば蔦は内部の壁にもびっしりと伸びていた。
所々、天井が破損していて陽が差しているから灯りは必要なく、スムーズに通路を進める。
「なんか脅威になるようなモノを感じたりする?」
ベル、シャルナ、リンに問うてもないと言う。
感知タイプのベルに、自然や霊的なものに敏感なシャルナ。霊的なものに特化したリン。
三人揃ってないと言うのでこの施設に脅威はないとみていいだろう。
――で、
「ここまでです」
「終わりですか?」
「はい」
だよね。殆どが壊れているんだからな。
入って通路を歩き、ついた先は天井が完全に消失している場所。
かろうじて残る壁や折れた支柱などから広さを想定するに、ここがこの施設で最も広い場所だったのだろう。
ここが爆心地だったようだ。
研究施設の何もかもが吹き飛んでいる。
S級さんもここいらを隈無く調べたんだろうけど、こりゃ無駄足になったようだな。
そもそもここは三十年前に消失した場所だしな。
ここを利用して何かをするってのは無理がある。
これなら別の場所に隠れ家でも建てて実験をしたほうがいいよな。それこそ白装束の連中はカリオネルに気に入られてたんだからな。
合成獣の力に魅了されたカリオネルなら、そんな連中に施設の一つや二つ建てるだろう。
でもそれをしなかったって事は、そもそも実験場所はこの都市じゃないって事か?
だが合成獣の入っていた木箱はこの都市から運ばれたって話だし、アビゲイルさんも木箱がカリオネル配下の兵達によって公都に運ばれたという内容をここまでの道中でも語ってくれた。
この都市とは違うのか、それともこの都市にカリオネルだけが知る隠しダンジョン的なモノでもあるのか。
――いや、それは考えられないな。
存在するならS級さんによる聴取で簡単に口を割っているはず。
となると、あいつは本当に知らないわけだ。
この都市から運ばれた合成獣を目にして、自分は特別な力を手に入れたと満足し、それ以上は深く考えもしなければ、白装束たちに追求もしなかったと考えるのが正解だな。
あいつのことだ、特別な力を使用して新たなる王として君臨する。という野望の二文字に頭内が支配され、他の事なんて考える余裕もなかったんだろうな。
「安心してください。ここにはモンスターなどおりませんよ」
と、防御壁に守られた都市内側でそんな脅威はないとアビゲイルさん。
先頭に立とうとするコクリコよりも更に前に立ち、
「こちらです」
と、自ら雑木林の中に入っていき俺達を案内してくれる。
下生えを踏み、枝を払いながら進んで行く。
「――お!」
視界が開ける。
「これは公爵様」
と、ケトルハットタイプの鉄兜を被った兵達が俺の前で跪こうとする。
「いいよそんなことしないで。別の貴族にはしないといけないだろうけど、俺にはしなくていいよ」
格式張った挨拶はいいと都市の兵士に伝えれば、困惑しつつも所作を中断して一礼による簡単な挨拶に変更する。
俺達がここへと来ると伝えていたこともあり、問題が起こらないように周辺を前日より見張ってくれていたそうだ。
素晴らしいね。男爵のとこのククナルでは現着が遅かったりして残念な兵士も目立ったけど、ここの面子はしっかりとしてくれているね。
鎧も乱れなく装備しているし、複数のツーマンセルで編制された立哨は周囲に目を光らせての警戒。
その姿は頼りになるものだ。
「俺達がここに来ると伝えてから、ここへ入った者たちはいるかい?」
「いえ、おりません。この廃墟の見張りは前日からでしたが、それ以前から雑木林の外周にて見張りはしておりました。唯一来られたのは目出し帽を被った公爵様の従者の方々だけです」
なるほど。
しっかりと見張ってくれて助かると労えば、喜んでくれる。
公爵からの労いは兵士たちにとっては誉れのようだ。
そういった立ち位置なんだな。俺。
しっかりと励んでくれる兵士たちに恥じないように行動しないとな。
「じゃあお邪魔しますかね」
言えばここでもアビゲイルさんが案内をしてくれる。
コンクリートによる白亜の建物――だったモノ。
それの成れの果て。諸行無常という四字熟語が頭に浮かぶ。
爆発により大きく損壊し、残った部分も蔦や植物が絡みついている。
所詮、人工物など自然の力の前では容易く呑み込まれていくという摂理を見せられているようだ。
――内部へと入れば蔦は内部の壁にもびっしりと伸びていた。
所々、天井が破損していて陽が差しているから灯りは必要なく、スムーズに通路を進める。
「なんか脅威になるようなモノを感じたりする?」
ベル、シャルナ、リンに問うてもないと言う。
感知タイプのベルに、自然や霊的なものに敏感なシャルナ。霊的なものに特化したリン。
三人揃ってないと言うのでこの施設に脅威はないとみていいだろう。
――で、
「ここまでです」
「終わりですか?」
「はい」
だよね。殆どが壊れているんだからな。
入って通路を歩き、ついた先は天井が完全に消失している場所。
かろうじて残る壁や折れた支柱などから広さを想定するに、ここがこの施設で最も広い場所だったのだろう。
ここが爆心地だったようだ。
研究施設の何もかもが吹き飛んでいる。
S級さんもここいらを隈無く調べたんだろうけど、こりゃ無駄足になったようだな。
そもそもここは三十年前に消失した場所だしな。
ここを利用して何かをするってのは無理がある。
これなら別の場所に隠れ家でも建てて実験をしたほうがいいよな。それこそ白装束の連中はカリオネルに気に入られてたんだからな。
合成獣の力に魅了されたカリオネルなら、そんな連中に施設の一つや二つ建てるだろう。
でもそれをしなかったって事は、そもそも実験場所はこの都市じゃないって事か?
だが合成獣の入っていた木箱はこの都市から運ばれたって話だし、アビゲイルさんも木箱がカリオネル配下の兵達によって公都に運ばれたという内容をここまでの道中でも語ってくれた。
この都市とは違うのか、それともこの都市にカリオネルだけが知る隠しダンジョン的なモノでもあるのか。
――いや、それは考えられないな。
存在するならS級さんによる聴取で簡単に口を割っているはず。
となると、あいつは本当に知らないわけだ。
この都市から運ばれた合成獣を目にして、自分は特別な力を手に入れたと満足し、それ以上は深く考えもしなければ、白装束たちに追求もしなかったと考えるのが正解だな。
あいつのことだ、特別な力を使用して新たなる王として君臨する。という野望の二文字に頭内が支配され、他の事なんて考える余裕もなかったんだろうな。
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