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新公爵
PHASE-927【泰然自若――固まる】
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タチアナのようなアコライトや上位であるプリーストクラスの募集や育成を優先しないとな。
ギルドにはそういった面子も増えてきているけどまだまだ足りない。
この領地にも回復系の人材は多いはず。
この地の冒険者ギルドとも協力してその辺の連携も取っていきたい。
「医療施設に風俗営業の話は今度にいたしましょう。まずは公都を纏めるための行動が最優先です」
ここで荀攸さんの登場。
「ご歓談にて皆様の心と体は弛緩しております。緊張と緩和。これより前者の姿となっていただきましょう」
継いで荀攸さんが冷たさを混ぜた声を発すると、俺達も自然と背筋を伸ばす。
先生とはまた違った凄みがある。
「主殿、ご準備を」
「はい」
先生と違って殿をつけるところに他人行儀さを感じる。
忠誠心MAXとそうじゃないかの差なのかな。
寂しくもあり、新しい呼び方に背中がこそばゆくもある。
別荘の外での懇談による継承式。
陽気に眠たくもなってくるけども――、
「ではこれよりミルド領新領主であるトール・トオサカ・ゼハート閣下が皆様に安寧を与えるためのお力をお見せいたします。魔王軍など閣下のお力の前では無に等しい存在。皆様が枕を高くして快眠できる世界の為のお力を是非、刮目してお持ちくださいませ」
しっかりとよく届く声は、俺の側に立つ荀攸さんから。
温厚な表情とは違った力のある声に緊張が走ったのか、諸侯たちは背筋を正す。
先ほどまでメイドさん達に酒を勧められて綻んでいた表情だった諸侯の顔つきが、引き締まったものに変わる。
ピシリという音が諸侯たちの方から聞こえたような気がした。
しかし荀攸さんも人が悪い。
枕を高くして寝ることが出来るって言ってるけど、裏を返せば俺がそれだけの力を有しているから、良からぬ事を抱いてはならないと脅しているようなもんだ。
圧を与えるような声音だったし。
叔父である先生と似たような意地悪さも持っているようだな。
『準備は整っている』
俺の耳元に届く声は、先ほどまで酒を楽しんでいたゲッコーさん。
イヤホンマイクによる連絡の取り合いは今では当たり前。
荀攸さんの耳にも装着されている。
最低限の使用方法はS級さんの中でもメカニックに秀でたオジマさん教わったそうだ。
説明は受けても、声が耳に直接届く経験は初めてのことだからか、表情は驚いたもの。
小声で「なんとも便利な」と感心の声も漏らしていた。
「主殿」
独白に続いて俺へと声をかける。
これを合図として俺はプレイギアを湖の方へと向け、
「ミズーリ」
発せば大きな輝きが一帯に広がる。
美しい湖面による反射もあってか、輝きは普段よりも強く感じだ。
諸侯側からは恐れを感じた悲鳴混じりの声も聞こえてくる。
――――しじまの訪れ。
澄んだ空気であるこの土地では、わずかな音ですら耳朶に入ってくる。
緊張から唾を飲んでいる音もしっかりと届いたし、歯がカチカチと当たっている音も聞こえる。
原因はもちろん、突如として湖に現れた巨大な船。
しかも鋼鉄に覆われたこの世界ではあり得ない船。
全長が二百七十メートルにもなる超弩級戦艦アイオワの三番艦ミズーリ。
「こ、これは……」
俺の背後では爺様が驚いて口をポカンと開け、
「いやはや想像以上……。これを今すぐ赤壁に持っていきたいですね」
荀攸さんも実物を見るのは初めてだもんな。
屋敷の池に召喚した時は、ここでの段取りをつけるための話し合いをしていたからね。
でも赤壁になんて持っていったら、曹操が早々に天下統一するので却下。
ユニークスキルに【泰然自若】を持っていても、超弩級のインパクトにはスキル関係なく驚いてしまうようだな。
ギルドにはそういった面子も増えてきているけどまだまだ足りない。
この領地にも回復系の人材は多いはず。
この地の冒険者ギルドとも協力してその辺の連携も取っていきたい。
「医療施設に風俗営業の話は今度にいたしましょう。まずは公都を纏めるための行動が最優先です」
ここで荀攸さんの登場。
「ご歓談にて皆様の心と体は弛緩しております。緊張と緩和。これより前者の姿となっていただきましょう」
継いで荀攸さんが冷たさを混ぜた声を発すると、俺達も自然と背筋を伸ばす。
先生とはまた違った凄みがある。
「主殿、ご準備を」
「はい」
先生と違って殿をつけるところに他人行儀さを感じる。
忠誠心MAXとそうじゃないかの差なのかな。
寂しくもあり、新しい呼び方に背中がこそばゆくもある。
別荘の外での懇談による継承式。
陽気に眠たくもなってくるけども――、
「ではこれよりミルド領新領主であるトール・トオサカ・ゼハート閣下が皆様に安寧を与えるためのお力をお見せいたします。魔王軍など閣下のお力の前では無に等しい存在。皆様が枕を高くして快眠できる世界の為のお力を是非、刮目してお持ちくださいませ」
しっかりとよく届く声は、俺の側に立つ荀攸さんから。
温厚な表情とは違った力のある声に緊張が走ったのか、諸侯たちは背筋を正す。
先ほどまでメイドさん達に酒を勧められて綻んでいた表情だった諸侯の顔つきが、引き締まったものに変わる。
ピシリという音が諸侯たちの方から聞こえたような気がした。
しかし荀攸さんも人が悪い。
枕を高くして寝ることが出来るって言ってるけど、裏を返せば俺がそれだけの力を有しているから、良からぬ事を抱いてはならないと脅しているようなもんだ。
圧を与えるような声音だったし。
叔父である先生と似たような意地悪さも持っているようだな。
『準備は整っている』
俺の耳元に届く声は、先ほどまで酒を楽しんでいたゲッコーさん。
イヤホンマイクによる連絡の取り合いは今では当たり前。
荀攸さんの耳にも装着されている。
最低限の使用方法はS級さんの中でもメカニックに秀でたオジマさん教わったそうだ。
説明は受けても、声が耳に直接届く経験は初めてのことだからか、表情は驚いたもの。
小声で「なんとも便利な」と感心の声も漏らしていた。
「主殿」
独白に続いて俺へと声をかける。
これを合図として俺はプレイギアを湖の方へと向け、
「ミズーリ」
発せば大きな輝きが一帯に広がる。
美しい湖面による反射もあってか、輝きは普段よりも強く感じだ。
諸侯側からは恐れを感じた悲鳴混じりの声も聞こえてくる。
――――しじまの訪れ。
澄んだ空気であるこの土地では、わずかな音ですら耳朶に入ってくる。
緊張から唾を飲んでいる音もしっかりと届いたし、歯がカチカチと当たっている音も聞こえる。
原因はもちろん、突如として湖に現れた巨大な船。
しかも鋼鉄に覆われたこの世界ではあり得ない船。
全長が二百七十メートルにもなる超弩級戦艦アイオワの三番艦ミズーリ。
「こ、これは……」
俺の背後では爺様が驚いて口をポカンと開け、
「いやはや想像以上……。これを今すぐ赤壁に持っていきたいですね」
荀攸さんも実物を見るのは初めてだもんな。
屋敷の池に召喚した時は、ここでの段取りをつけるための話し合いをしていたからね。
でも赤壁になんて持っていったら、曹操が早々に天下統一するので却下。
ユニークスキルに【泰然自若】を持っていても、超弩級のインパクトにはスキル関係なく驚いてしまうようだな。
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